表紙に戻る
MONO代表・土田英生のブログです

2017年08月16日

「きゅうりの花」終了

 土田英生セレクション「きゅうりの花」の公演が終わった。
 いやあ、楽しかった。

233397.LINE.jpg


 ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。

 実を言えばMONO公演「ハテノウタ」が終わってから、どうも調子が出なかった。
 ま、個人的にも色々あったしね。
 正直にいえば、初めて「そろそろやめた方がいいかも」という考えが頭をよぎったりした。
 やめたところで、他にできることもないんだけど、それでもどうも続けていく自信を失っていたのだ。
 自分の能力に対する疑いがどんどん広がり、もう無理なんじゃないかと思えてしまう。社会の動きを見ていても嫌になることばっかりで、こんな世の中で一体私は何を創って行くつもりなのか、そんな覚悟はあるんだとうかと自問した。

 こんな状態で「きゅうりの花」ができるんだろうか?
 
 そんな時、ケラさんから呑もうよと誘ってもらった。
 あれで助かった。
 差し呑みをしながら色々と話す中で、随分と楽になった。
 
 「きゅうりの花」の稽古が始まったのはそんな時だったのだ。

 この企画の難しいところは、昔、書いた自作を演出することだ。
 どうやら私は、“現在考えていることを作品にして発表すること”が好きらしい。過去にすでに書かれたものにあまり興味が湧かないのだ。それもあって「本当にできるんだろうか」と不安だったのだ。
 
 今回はキャストとスタッフの頑張りに背中を押してもらった。
 金替君は別として、他のメンバーはこの作品をやるのは初めてなわけで、彼らが戯曲に向き合ってくれることで、私自身も新たな発見ができ、結果、モチベーションが上がって行った。

 本当、皆、真面目に稽古に取り組んでくれたしね。
 チームワークも良く、まるで劇団のようだった。とても大人な座組でキャッキャとはしゃぐ訳でもなかったけど、皆が適度な距離を取り、仲良くやってくれてたし。

 大阪の最終日。
 東京に戻るメンバーもいたので、その時間まで皆で焼肉に行った。

IMG_6807.jpg


 ……この店がとても美味しかった。
 「うまいよね」という言葉が、皆の口から出た。
 金替君は5回くらい言っていた。

233418.LINE.jpg


 とにかく終わった。それもいい感じで。

 そうだ。
 食べ物といえば、諏訪君に影響されて、東京公演に入ってから、私は低糖質ダイエットを試みた。
 始めて四日くらいで痩せてきた。
 お弁当もおかずだけ。朝もパンなどは食べない。
 あんなに大好きなあんぱんすら控えた。
 差し入れにいただいた甘いものなども我慢した。
 いや、正直に言えばちょっとだけ食べたけど。特にアンコのものは……大判焼きなどは何個も食べたけど。

 嬉しかったのは大阪公演に空晴の岡部さんがきてくれた時、彼女は……なんとそのことを知っていて、低糖質のものを差し入れてくれた。あのクッキーはいいね。むさぼり食べたよ。美味しかった……。

 一々、諏訪君に「これ食べてもいいかな」と聞きながら過ごした。
 なんせ私のダイエット師匠なのだ。

 問題は……師匠も時々ブレることだ。
 師匠自身が誘惑に負けて食べてしまうことがある。
 これは困る。
 しかもだ。そういう時、必ず彼は言うのだ。「これくらい大丈夫」と。そして私にも食べることを勧めてくる。元々食べたいのに、師匠にそんなこと言われたら百パーセントの確率で食べてしまう。
 
 東京公演の最終日も、皆で飲んだ後、諏訪君と二人で呑みに行き、二人でレタスチャーハンを食べてしまった。それにしても……アレ……美味しかったな、マジで。

 大阪の最後もそうだった。
 焼肉を食べ、それから私たちはピザが美味しいという飲み屋に入った。
 私は飲むだけで我慢するつもりだったのに。

 なのに。

 師匠は……師匠は……。

IMG_6816.jpg


 ……師匠が食べたら弟子も食べてしまう。
 アレも美味しかった……。

 終わってからの二日間、京都の家でじっとしていた。
 戦争のドキュメンタリーばかり見ていた。

 本当に切実になってきたね。

 歴史から学べというけれど、なかなかそうは行かないらしい。

 問題は……人は原理原則だけでは動かないということだ。
 情けないことにすぐに感情に支配される。
 自分と同じ考えでも、嫌いな人が言うから反対に回ったり、面倒になるとスイッチを切ってしまったり。
 一旦言い出すと引けなくなっちゃうし。

 後、怖いのは世の中の動きなどに関して「仕方ないや」と思ってしまうことだ。
 今ある範囲で物事をやろうとしてしまう。
 その範囲がおかしいなら、そこに対して物を言わなければいけないのに。
 根本にある問題をすぐに見失うんだよね。
 
 黒澤明の「七人の侍」を良く思い出す。

 敵から嫌がらせをされて困っている農民たちは、最初、七人の侍たちに助けを求める。
 七人は農民の為に戦う。
 当然、敵の攻撃も激化する。
 と、ある時、農民たちは言うのだ。
 「あんたたちのせいでこんな目に遭う」というようなことを。

 相手を倒さなければ根本解決にはならないのに。
 
 自分が何を望むのか、静かに向き合わなければいけない。

 芝居創りでも一緒だ。
 こんな条件だからこうする、とか、あの人に褒めらるからこうする、とか、そういうことではなく、本当は自分がどんな芝居がしたいのか、それだけは見失ってはいけないしねえ。
 
 色々と嫌な気持ちになるけど、今の私には創作意欲はある。
 どんなことをやりたいか、具体的に見えてもいる。
 
 やって行くしかない。
posted by 土田英生 at 04:38| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月11日

たまには愚痴じゃないことを

 いつも愚痴ばかり書いているという印象があるらしいので、今日は陽気に行ってみよう。
 美味しいものを食べ、帰ってきてからヒンヤリする入浴剤を入れたお風呂に長く浸かり、そしてハイボールを飲んでいるので楽しいことが書ける気がする。

 「きゅうりの花」の東京公演は終了。
 「土田英生セレクション」という、とても申し訳ない気分になる名前の企画もこれで4回目だ。5回目もある……と、思うけど……どうなんだろう。
 「きゅうりの花」はおかげさまで評判もよく……いや、きっとツマラナかった人たちは何も言わずに帰って行くだけなのではっきりは言えないけど、無事に11ステージを終了。

 明日から大阪公演。MONOでもいつも使わせていただいているABCホール。
 
 今日は仕込みだった。
 私は夕方に舞台チェックに行くことになっていた。

 しかしだ。

 その前に私には済ませなければいけないミッションがあった。

 いきなりになるが、私にはとても苦手なことがある。
 だらしないのか、なんなのか……ちょっとしたことが出来ない。
 洗濯とか掃除とか、そんなことはあまり苦にならない。
 問題は……例えばハガキや手紙を出すとか、そういうことがどうしてもパッと済ませられないのだ。
 だいたい、出そうと思ってから3日くらいかかって、やっと手紙などを書く。しかしここからが難関だ。切手も貼る。住所も書く。しかし……それがいつまでも机の上に置いてあったりするのだ。
 で、今日こそ出そうと思ってカバンに入れると、それから一週間くらいカバンに入ったままだったりする。

 ポストに入れる時はだいたい、シワシワになり、妙にアンティークな手紙になったりする。

 私事になるけど、私には今年の4月、ちょっとした転機があった。
 まあ、その、簡単に言ってしまえば一人になった。

 で……ここからがミッションの始まりなのだが……。

 京都の家にはいろいろな支払いの振込用紙などが溜まっていた。税金や保険、年金などの封筒が山のようにある。

 しっかり見ればわかるはずなのだが、どうしてもそれが処理出来ない。
 これまでこうしたことを全く自分でやってこなかったツケだ。

 5月はしばらく京都にいたのだが、その間にもそれが済ませらなかった。
 なので、とにかく全部袋に入れて東京に持って行った。

 「きゅうりの花」の稽古期間、ずっと気になっていた。

 毎朝決心はしていたのだ。

 「今日こそ払おう!」

 そう思って袋から大量の封書を出し、じっくり見てみる。
 中には支払い期限が切れているものあり、コンビニなどでは払えないと書いてある。
 「あああ、嫌だもん」と名古屋弁で独りごちて結局袋に戻す。

 その繰り返しだった。

 その袋は私と一緒に京都に戻ってきてしまった。

 一念発起!

 銀行に向かった。東京公演の時、楽屋でそのことについて喋っていたら、お弁当を食べている金替君が「銀行なら払えると思いますよ」と優しいふにゃふにゃとした言い方で教えてくれたからだ。

 iPhoneにインディージョーンズのテーマ曲を入れ、大音量で聴きながら向かった。
 
 受付番号の票を取る。273番。
 「……じゅうさんばんの方」
 あ、私だ。
 そう思って勇んで窓口に行ってみたら聞き違いだった。
 その間違いを二回した。
 やっと私の番になった。
 窓口のお姉さんはすでに笑っていた。

「やっと順番になりましたね。お待たせして申し訳ありません」

 優しい口調だ。
 すでに私は泣きそうだった。

「今日はどのような御用件で?」

 私は袋から大量の封書を出し、ドサッと置いた。
 そして一気に説明をした。

「いや、本当は、あの、もっと簡潔に済ませらることだと思うんですけど、実は、4月にその私はあの……それで、今まで任せてきてしまっていたので、本当、こんなことじゃダメだと思うんですけど、しかしですね」

 最後には私は涙声になっていた。

「大丈夫でございますよ。一緒に整理しましょう」

 女神だ……。
 桂駅の近くに女神がいたとは。
 阪急電車で嵐山から3区間という近い場所に女神はいたのだ。

 彼女は根気よく、全部整理して、支払いを手伝ってくれた。
 そして最後に彼女は付け加えた。

「いつでもお困りの時はいらしてくださいね」

 もう、これから困ったら女神に会いに行こう。

 そんなこんなで、偉大なる女神のおかげで大きなミッションは終わった。
 銀行を出る時の私は誇らしげな表情をしていたと思う。

 そんな状態だったので、劇場に行って舞台チェックも寛大だった。
 普段なら「あそこのパネルをもっと傾けてくれ」とか「あの照明が目立ちすぎる」とか細々言うのだが、今日はどうも気にならない。
 スタッフの皆に対しても「いい! オッケー! お疲れ様です!」という感じだった。

 劇場を出て、私は淀屋橋に向かった。
 そこには東京組が宿泊しているホテルがある。
 そこで先乗りしていた加藤啓君、内田淳子さんと待ち合わせをしてしゃぶしゃぶを食べた。
 豚しゃぶなのだが、一人用の鍋でそれぞれが食べるのだ。

IMG_6782.jpg


 美味しかった。
 途中で柿喰う客の七味まゆ味さんも顔を出した。

IMG_6780.jpg


 七味さんはすぐに帰り、店を出る頃、千葉さんが到着したという連絡があった。
 なので四人で今度はカレー屋さんに行った。
 どんだけ食べるねん、という感じだ。

IMG_6791.jpg


 で、私は一人京都に帰ってきた。
 けれどその時、グループLINEに神田君がホテルに着いたという連絡があった。
 と……啓くんが「神田君、ご飯食べた? 食べてなかったら付き合うよ」と返信している。
 神田君も「行きたいです」と返信していた。

 おそるべし加藤啓だ。
 しゃぶしゃぶ、カレー、更に何を食べるというのだろうか?

 ……明日は本番だし、朝も早いのでもうやめて眠ろうと思ったが、神田君の話が出たのでもう少し書こう。

 彼は23歳。イケメンのナイスガイだ。
 事務所に入って、つまり俳優業を初めてまだ半年。
 これまでには一回だけアンサンブルの出演があるだけだ。
 だから実質、この「きゅうりの花」が初舞台になる。
 そう考えると……いやあ、本当に立派だ。
 ちゃんと芝居も出来ているし、本番に入ってからもどんどんよくなっている。
 
IMG_6750.jpg
 

 写真は……諏訪君にきゅうり柄の手ぬぐいをもらって嬉しそうにしている神田君。
 楽屋の鏡前にはメイク道具などで汚さないように手ぬぐいを敷くのが通例になっているのだが、神田君はそれを知らなかった。すると諏訪君が休演日に買ってきてあげたのだ。

 そんなかわいい神田君だが……。
 まあ、稽古の最初は……さすがに全然ダメだった。
 台詞も歌ってしまって聞こえないし、動くと身体はバラバラになるし、人の台詞に反応も出来ていなかった。
 
 けれど、私は余裕だった。「できる」と判断した役者は絶対に大丈夫なのだ。

 私なりに順番を考えた。
 最初の一週間は台詞をフラットに言うことだけしか言わなかった。
 次の週になって、反応の説明をした。
 立ち稽古になってからも動きは変だったが、だんだんと芝居に馴染んできた。
 で、通し稽古になってから、動きのことを伝え、更に最後の稽古でやっと感情の話をした。いや、感情じゃないね、流れだね。
 彼は見事だったねえ。どんどん吸収して行くし。
 大阪ではもっと化ける可能性もある。楽しみだ。

 もちろん彼の成長は彼自身の能力と頑張りによるものが大きいけれど、下手な演出の仕方をすればダメになってしまう可能性もあったと思う。

 前にとある稽古場を見学した時だった。
 
 その演出家は出来ていない役者に向かって、延々と「そこどういう気持ちでやってる?」などと聞いていた。
 役者も役者で「こんな気持ちでやっています」とか答えている。
 おいおいと思った。
 そんな稽古では絶対に役者は伸びない。
 
 だいたい、表情とか感情についてどうこうってさ……。
 表情も感情も、演技の結果「役者から出てくるもの」であって「意識して出す」もんじゃない。
 演出家がそうしたいのなら、そうなるように段取りを組むのが仕事なのだ。

 さらにその稽古場では演出家が延々喋っていた。
 「あそこのシーンではどう」とか、「ここでは表情がどうなっている」とか。
 だからそれは結果だし、ただの感想にすぎない。演出家は観客じゃないんだからねえ。
 「ダメ出し」は演出家が感想をいう場ではないしね。

 まあ、私も喋るんだよねえ。
 ほとんど無駄話だけど。中学時代の初恋エピソードとか。
 これは必要ない。だから改めないとな。

 稽古でもっとも大事なことは、身体に馴染ませる機会をいかに役者さんたちに与えられるかだと思っている。
 段取りを組んで、なんどもやってみる。すると役者さんたちは自分でモチベーションを見つけ始める。全ての行動や台詞がモチベーションで埋まってくると、その結果、感情が出てくるものなのだ。

 それにそんなにたくさんの話をしたって、役者さんが処理出来ないし。
 私はどんなベテランの役者さんに対しても1日5つ以上はダメを出さないように心がけている。
 ちなみに神田君には3つにしようと決めていた。
 順番に、ワンステップずつ、問題をクリアにして行けばいいのだ。

 結果、彼は本番の中で舞台を生き、すると私の想像を超えた表情を見せたりしてくれているのだ。

 そんな「きゅうりの花」は明日からですので、皆様お待ちしています。
 チラシをクリックすると特設サイトに飛びます!
 
IMG_0101.jpg
 

 
posted by 土田英生 at 01:18| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月29日

きゅうりの花、初日。

 「きゅうりの花」の初日が終わった。
 本当は今日も昼に通し稽古をしてから、本番を迎えるつもりだったが、すでに合計で13回も通しているので、今日は小返し(シーンの稽古)に切り替えた。
 演出助手のイーリーこと入倉さんが細かくチェックしてくれているので安心して稽古ができる。
 で、まあ、それなりに初日の緊張感を持って……なんとか無事に終わった。
 もちろんミスはたくさんあったし、まだまだ改善できることは山ほどあるけれど、逆に初日ならではの良さもあった。
 写真は開演前。
 配られたパンフレットに目を通す加藤啓、諏訪雅、神田聖司。
 
IMG_6745.jpg


 終演後、ロビーで乾杯をしてから帰った。
 そして帰り道は諏訪君と二人だった。

 ……突然だが、諏訪君はずっとダイエットをしている。
 低糖質ダイエットだ。
 そしてどうやら私はすっかり影響を受けてしまった。そして昨日から突然はじめてみた。
 私にとって諏訪雅は先生だ。
 差し入れなどのお菓子も、いちいち先生に聞いてから食べることにしている。

 で、今日の帰り。
 二人で下北沢で降りた。
 どちらからともなく、もう少し飲みたいねという話になって……二人で焼肉に行った。
 もちろん先生に聞きながら食べた。

IMG_6747.jpg


 そういえば、昔、諏訪君がMONOに出てくれた時、一緒に断食もした。
 あの時は、断食明けに諏訪君と二人で食べ過ぎてダイエットに失敗した。
 だから今回はかなりしつこく先生に質問をした。
 先生は言う。

「肉は大丈夫です」

 しかし……気になったのは途中で彼が放った一言だ。

「ま、今日は初日だし、いいんじゃないですか、食べても」
 
 どういうことだろう?
 もしかしたらまた失敗しているのかも知れない。

 ……ま、そんなこんなでとにかく初日が終わった。
 東京では6日までやっているので是非。

 →◉特設サイト
posted by 土田英生 at 02:05| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする