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MONO代表・土田英生のブログです

2006年07月08日

触発。

 いい本などを読むと触発される。いい舞台を観ると悔しいながら自分もやる気になる。それが相乗効果というものだ。今日は何も書かないつもりでいた。もう夜も遅いし、仕事の締切りも間近に迫っていることだし。
 しかしだ。さっきある研究成果を読んで非常に日記心を触発されてしまった。

 しかし少し長くなるかも知れない。

 ……あれは神戸だった。港の近くにあるクラブ。そこでガバメント・オブ・ドックスのコントライブがあった。イベント的な企画だったので私達はベスト版的なネタを集めてライブに望んだ。私は水沼君とコンビを組む事が多く、その中でも「理由なき反抗」というネタはこれまでどこでやってもすべったことがないという十八番だった。
「舞台は戦場の最前線。水沼扮する上官が部下である私に次々と不条理な命令を下す。それは全てこの危機的状況を脱する為であるという。しかしあまりに理不尽な命令の数々に「なぜですか?」と私が問いただすと、彼は「理由は後でいう」というだけで、更なる難題をふっかけて来る……」

 ……ここ神戸でも滑り出しは受けていた。しかしだ。ネタの中で次のようなやりとりがある。
水沼「(爆発音の中)おい、お前、高見山って知ってるか?」
土田「(あまりの唐突な問いに)はあ……」
 と、水沼はいきなり私の眉毛に“黒いテープ”を貼る。つまり高見山のような眉毛にして、
水沼「よし、これで一安心だ」
土田「いや、これ、あの……これ、なんの意味があるんですか?」
水沼「理由は後で言う!」

 しかし神戸で水沼は「高見山って知ってるか?」という台詞の後、なぜかいきなり小さな声で「……畜生」と呟いた。おかしなアドリブだなと思っていると彼は本当に悔しそうな表情を見せた。そして中々私の眉毛にテープを貼って来ない。

 ……どうやら水沼がテープを用意するのを忘れたのだと悟った。

 と、何を思ったか、彼は親指で私の眉毛を擦った。私は黙って擦られていた。後で聞けば心の中で「眉毛よ、太くなれ」と念じたそうだが、もちろんそんな奇跡は訪れるはずもない。客席からの異様に静かな反応が訪れただけだった。
しかし「いや、これ、あの……これ、なんの意味があるんですか?」という台詞をあれほど心を込めて言った事はない。水沼も「理由は後で言う!」という台詞をあれほど力強く言ったことはなかった。
 
 あれは扇町ミュージアムスクエアだった。MONOの『Holy Night』という芝居中だった。私は袖の中にいた。舞台では皆が調子良く台詞を回している。客席も沸いていた。水沼君が台詞を言いながら袖にはけて来る。設定では二階に上がって去って行ったことになっている。

 そして彼はしばらくして二階から下りてくるはずだった。
 
 皆の台詞がとまる。袖にいた私はおかしいと思って舞台中を覗いた。皆が固まっている。私は慌てて袖の中を走り回った。そこには出番のはずの水沼が幕の陰で大の字になって寝ていた。私は彼をつついた。
 と……。
 彼は気づいたようで、慌てて舞台に飛び出して行った。
 二階に消えたはずの彼は、一階から姿を現した。
 
 今日書きたかったエピソードはこの二つだ。
posted by 土田英生 at 04:41| 京都 ☁| MONO | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする