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MONO代表・土田英生のブログです

2013年12月04日

飽き性

 前回が徳島で終わっている。
 京都に戻って、しばらくは基本的に引きこもり生活だった。
 MONOの台本を書かなければいけないと思いつつ、スケッチブックに絵を描いたりしていた。

 絵心などない。
 しかし、急に「俺、絵が下手だよなあ」と思ってしまったのだ。
 そう思うともうダメだ。
 本屋に行ってデッサンの基礎の本を買い、その足で画材屋さんに行って、スケッチブックや鉛筆各種、練り消しゴムやらなんやら、本に書いてあったものを購入し、しばらくは絵ばかり書いていた。
 
 いつもこうだ。
 字が下手だと思った時にはペン字を二週間くらい必死でやった。
 数学が苦手だと中学からのドリルを買ってきて、あの時は一ヶ月くらいはやった。
 こうして中途半端に終わった思いつきの残骸が、私の部屋には至る所にある。
 
 しかしだ。
 実は私はこれが気に入っている。
 最後までやるにこしたことはないが、その一週間で学べることもある。

 デッサンも飽きてきた。
 そろそろやめる。
 というより、台本を書かないといけないし。
 
 ほんの一ミリ、絵がうまくなった。

 一昨日から東京。
 こっちに来てからは仕事モードだけどね。
posted by 土田英生 at 12:42| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月11日

歴史は夜つくられる

 京都に戻って来た。
 昔の映画で「歴史は夜作られる」というのがあったが、東京にいる間、毎日の予定は夜ばかりだった。
 夜に出かけて、芝居を観たり、お酒を飲んだりして、朝方眠って、次の日の夜にまた出かけて……。
 
 それにしても滅入るニュースばかりだ。
 ニヒリズムに陥りそうになる。
 だから引きこもって絵を描いたりしてしまうのだ。
 殻に閉じこもりたい気分だ。

 そんな時、私を救ってくれたのは旧知のプロデューサーだった。

 昼間、絵を描いているといきなり電話があった。
 まだ着地するかどうかは分からないが、来年のドラマ企画を、一緒にやれないかという電話だった。
 概要を聞いて、翌日までに話を考えて行くことになった。
 電話を切ってから考え出したが、頭が働かない。
 二時間くらい考えて、やっとぼんやりと設定が浮かんだ。
 その設定でアイデアを形にしてみる。
 しかし詰めが甘い感じがした。色んな部分に矛盾が生じる。
 解決策はないままだ。
 
 次の日、そのままの状態で局に向かった。
 会議室には懐かしい顔が揃っていた。
 テンションは上がった。
 しかし……
 アイデアを話してみると……

「基本的には面白いですけど、◯◯はどうなるんですか?」

 さすがだ。詰めの甘い部分を的確に指摘してくる。
 私は言葉に詰まる。
 やはり思うように頭が働かない。
 ああだ、こうだと話してみるが、やはり無理なものは無理なのだ。
 挙げ句の果てには、

「いやあ、確かに矛盾はありますけど……実際に書いたらなんとかなる気がするんですよねえ」

 などという、乱暴な答えをして逃げようとしてしまう。

 しかしだ。
 この人はここからが素晴らしいのだ。決してダメだとは言わない。
 基本的に褒めて待ってくれる。
 私を転がすのがうまいのだ。

「いや、いけるとは思います。ただ、土田さんなら、この矛盾もなんとかしてくれると思って」

 なんだか、身体がふわっとなるのが分かった。
 そして重かった頭が軽くなる感じがした。
 私は少しでもけなされると、即、役立たずになるが、持ち上げられるとすぐに調子に乗れる。

 小さい時、おばあちゃんの家で「ヒデ君はたくさん食べるねえ」と言われただけで、ハンバーグを五つも食べられた男だ。その日は腹痛で病院に行ったが、食べている間は、「ああ、オレ、褒められている。俺は食べる男なのだ」という快感しかなかった。
 学校の帰り道、好きな女の子から「土田って意外に足速いよね?」と質問されただけなのに、突然駆け出したことだってある。
 あの時も「ああ、俺は足が速い。きっとあの子は、”なんて早いのかしら……”と、俺の背中をうっとり見ているのだ」という快感に浸って走ったんだと思う。そのまま家まで走って帰ったが、冷静に振り返ると彼女は不思議な気持ちで私を見ていただろう。突然走って帰るし。トイレにでも行きたいと思ったかもしれない。
 
 そしてこうした性格は基本的に今も変わっていない。

 私は立ち上がった。

「ちょっと休憩させてください。一本だけタバコ吸ってきます」

 休憩とは言いながら、私は頭がフル回転しているのを感じた。
 と……いきなり全てが解決した。
 私はタバコをすぐに消して会議室に戻った。
 
 思いついた解決策を話した。
 オッケーになった。

 これがきっかけになって、なんだか仕事の頭に戻った気がした。
 その日、話したアイデアをプロットにまとめて送った。

 やっぱり歴史は昼間につくられるね。
posted by 土田英生 at 03:45| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月12日

刺激。

 今日はKKP『振り子とチーズケーキ』を観て、終演後には賢太郎君と呑んだ。
 出演者の竹井君、舞台監督の野口さんも一緒だった。
 野口さんとも一度、仕事をさせてもらったことがあるし、竹井君とは……どういう縁だろうか……とにかく同じ役を何度もやったことがある。
 私はMONOと並行してGOVERNMENT OF DOGSというコントユニットをやっていたのだが(現在も解散はしていない)、その座付き作家が故林広志君。彼は東京へ移動してから親族代表に台本提供をしていたので、私もやったことがあるネタを何本もやっているのだ。そしてなぜか同じ役が多かった。
 そう言えばラーメンズと知り合ったのも、故林君がきっかけだった。
 GOVERNMENT OF DOGSで『ニッキーズ・パビリオン』という作品に出て、そこに松尾貴史さんやラーメンズも参加していたからだ。
 
 で、今日も……楽しかった。
 刺激を受けた。

 賢太郎君はラーメンズ、KKP、ポツネン……色んな表現の場を持っている。
 個々のネタであったり、アイデアであったりのクオリティーはもちろんだが、それ以前の段階で彼がすごいのは「小林賢太郎の創り出す世界を好きな私が好き」と観客に思せる力だ。賢太郎君はそれをいとも簡単にやってのける。それが彼のカリスマ性だ。
 
 何年か前、私は『劇作解体新書』というイベントを企画した。
 様々な劇作家を呼んで、作品について語ってもらうという趣旨で、一回目だけは私の作品について横山拓也君に質問してもらったが、それ以降は私がナビゲーターになり、小林賢太郎、倉持裕、長塚圭史、ケラリーノ・サンドロヴィッチという豪華なラインナップだった。
 一つの戯曲や作品を観客の皆にも読んで来てもらう。そして、その作品に対して私が質問したり、批評してみたりしながら、本人の口から創作の裏側を解説をしてもらうのだ。
 
 で、賢太郎君。満席のお客さん。
 そこで私は彼に色々と質問をした。
 ナビゲーターとしてお客さんとつながなければという意識もあったので、とぼけた振りをして質問をした。『え? 本当にそんな風に考えて書いてるの?』『それ、メモさせてもらっていい?』などと、私としては精一杯盛上げたつもりだった。彼から多くの言葉を引き出したいからだ。

 終わってから観客の皆さんのアンケートを読んだ。
 と……私に同情を寄せているお客さんが……たくさんいた。
 以下のような文章が書かれていた。

「土田さんへ。小林賢太郎さんは私たち凡人とは違うので、分からなくても気にすることはありません。落ち込まないでくださいね」

 優しい文章の数々。
 しかし、それを読んで私は落ち込んだ。
 一応……私も同業者なので彼が話す内容は理解できるのだ。
 もちろん、私は確かに凡人だし、彼のように創作することはできない。
 それでも……。
 そして思った。
 これこそが彼のブランド力なのだ。
 
 今日も結局、創作方法についての違いを話した。
 やっぱり私は彼のようには創れない。しかし、だからこそ、多いに刺激を受けた。
 MONOの新作を前に、彼と話せてよかった。

 なんだか……やる気満々になった。
 
 そんなMONOの新作『のぞき穴、哀愁』。→

 みなさん、観に来てください……って、最後はステマみたいになってしまった。すいません。


posted by 土田英生 at 02:51| 京都 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月13日

黒い私。

 せっかく昨夜、あんなにやる気になったというのに。
 全然進まなかった。
 なんで、こんなにすぐに気が散ってしまうのか?

 白く清らかな私と、欲望にまみれた黒い私。

 せっかく白い私の言うことを聞いて、素直に仕事を始めたのに……途中で黒い私が出てきてしまった。

 朝はやる気だったのだ。
 コーヒーを淹れ、静かな音楽をかける。
 うん、準備万端だ。
 ノートを広げ、台本の構想を詰め始めた。なんて清らかな気持ちなんだ。
 白い私も黙って微笑んでいる。
 「頑張ってるね。その調子だよ」
 私は白い私に向かってウインクしたい気分だった。

 「外側から入るタイプ」である私は、毎作品、取りかかる前には新しいノートを買う。
 ちなみに今回の『のぞき穴、哀愁』の為に買ったノートは結構いい値段がする。やる気を出す為の出費だ。
 すでに10ページくらいは構想を書いてあり、設定、登場人物の配置は決まっている。
 これからは「箱書き」。つまり構成を考えるのだ。
 決心した。絶対に今日中にラストまでの構成を考え、そして台詞を書き始める。

 ノートを開いて……途端に気分が萎えた。
 すでにここで黒い私が目を覚ましていたのかも知れない。

 私は万年筆が好きなのだが、万年筆に合うノートはあまりない。だからこのノートにもボールペンで書いていた。しかし、この前、やっぱり万年筆で書きたいと思って書き始めたところ、インクが裏側に沁みてぐちゃぐちゃになってしまったのだ。
 外側から入る私は、それを見てすっかり沈んだ。

 黒い私がささやき始める。
「ほら、もう仕事なんてやめちゃえよ」
 白い私が言い返す。
「ダメだよ。さ、続けて。それにほら、新しいノートのこと思い出して!」

 そうだ。
 新しいノートを作っていたのだ。
 ツバメノート。これは……30枚くらいだと150円くらい。
 こんなに安価だというのに、使われているフールス紙は万年筆で書いても滑りはいいし、裏抜けすることもない。デザインもシンプルで、本当に優秀なノートなのだ。
 だったら毎回これにすればいいのに。
 新しいノートを見るとついつい浮気してしまう。
 
 そのノートを取り出し、しばらくは仕事をした。
 万年筆もスイスイだ。

 白い私も再び微笑む。
 黒い私はふてくされたようにどこかへ消えた。

 再び、気分は乗って来た。
 しかし中々構成は決まらない。

 考えながら……ぼんやりとペンケースを眺めていた。
 随分、ボロボロになってきたなあと思った。
 革製品好きでパーカーファンなので、このロールペンケースもパーカー製だ。
 このタイプはもう生産していないらしい。
 3本入れるタイプなのに、無理やり6本入れていた為かボロボロになってしまっている。
 新しいのを買わないとなあ、だけどこれはもう売ってないんだよなあ……とぼんやりと考えた。

IMG_2696.jpg  
 
 と……。
 思い立ってしまった。
 どうしてそんなことを思ったのか分からないが、自分で作ってみたいという衝動にかられてしまった。
 ちなみに私は革で物を作ったことはない。

 「やめとけ」と白い私が言う。
 「いやいや、作ってみたらどうだ、グへへ。台本より楽しいぞ」と黒い私が対抗する。
 「今日、ラストまで考えるんだろ」と白い私。

 ……黒い私が勝ってしまった。
 いつも最後に黒が勝つ。
 どうも白い私は弱い。弱すぎる。いや、黒が強すぎるのかも知れない。
 この前、突然、デッサンに目覚めた時も、黒い私にそそのかされて、いきなり画材屋に行ってしまった。
 
 台本を書くのをすっかり忘れ、さっそく手芸屋さんに向かった。
 店の人に聞いて、ひとまずの道具を揃え、革を買って帰ってきた。
 家に戻って来て、見よう見まねで夜までずっと革と格闘していた。
 やり方が分からない。ネットなどで調べながらとにかくやってみる。

 一応、できた。

 IMG_2697.jpg
 
 IMG_2698.jpg

 ……やっぱり、いきなり素人が作ったものは出来が悪い。
 ああ、なにをやってるんだか。
 仕事をしていればよかった。
 ずるいことに、やりたいことをやり終えると、黒い私は存在を消しやがる。
 白い私だけが私を責める。

「最後まで構成を考えるんじゃなかったのかよ」
 
 黒い私は沈黙したままだ。
 お前が謝れよと思うが……仕方ない。

 だから……今は静かに仕事の続きをしているが、終わりそうにない。
 明日は大分に行かなければいけないので、朝まで頑張るわけにもいかない。
 
posted by 土田英生 at 02:08| 京都 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月15日

気がつかない

大分に来ている。
ずっとなにかを忘れていると思っていた。
しかし、それがなにか分かなかった。
今日は朝の5時に起きた。仕事をしようと思ったのだ。明日はMONOの舞台美術の打ち合わせがある。だからよりイメージを明確にしておかなければ。
ノートを開いて、書き込む。
いや、やはり台本の形にしてみよう。

……そこで気づいた。パソコンを持って来ていない。なにか忘れている感じがしていたのはこれだったようだ。
posted by 土田英生 at 08:32| 大分 ☁| MONO | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月16日

下北沢

 大分から帰って来た。しばらく京都。
 数日したら再び東京に行く。

 下北沢に劇団で部屋を借りて3年以上経つ。
 そして私の部屋化してしまっている……気がする。
 すっかり街にも慣れた。歩いていると店の人などにも声をかけられたりする。
 
 そして……下北沢は演劇関係者が多いせいか、頻繁に知り合いに遭遇する。
 先日もタバコを買いに出たら、いきなり女性から腕を取られた。
「なにしてんの?」
 スエット姿の私は慌てた。
 名前を書いていいのかどうか分からないので控えるが……昔からの知り合いで、今やすっかりお茶の間でも顔が知られている女優さんだった。
 私はこの人が大好きだ。
 15分くらい近所を散歩して、近況報告をした。つかの間のデートは楽しかった。
 
 これも同じ時期だが、下北沢駅の西口で井の頭線の踏切が上がるのを待っていた。
 振り返ると……これも名前は控えよう……これまた世間に顔のよく知られた俳優さんが立っていた。
 多分、ほとんどの人が知っていると思う。

 実はこの方には下北沢でよく会う。
 一緒に仕事をしたこともあるので、会うと立ち話をしたりする。
 だから、この時も声をかけようと思ったのだが、見ると女性から囲まれているところだった。
 そりゃ、有名人だしねえ。ファンだっているだろうし。
 私は声をかけるのを遠慮して立っていた。
 しかしだ……かすかに聞こえてくる会話がちょっとおかしい。

「いや、だから、ここは南口じゃなくてですね、南口に行くにはそこを渡って、階段を……」

 彼が熱弁を振るっている。
 ん?
 どうやら道を聞かれているだけなのだ。
 しかも……囲んでいる女性達の感じからすると、その人が誰なのか分かっていない。
 私は驚いた。だって、だって……気づかないなんてあるんだろうか?
 
 女性達は真剣な表情をしている。
 まだ道が分からないらしい。

「いや、だから……そこに歩道橋のようなところがあってですね……」

 彼も一生懸命、丁寧に説明をしている。
 私は思わず合図をした。

 その人は私に気がつき、「おお!」と言った。
 女性達が不思議そうに見ている。
 
「あの、僕、これから南口に行くので、案内しますよ」

 私は申し出た。南口に行く途中だったからだ。
 すると「ああ……実は俺もなんだよね、南口」
 と、彼は言う。
 
 踏切が上がった。
 なんだか変な感じだった。
 私と彼は話をしながら歩く。普通に近況を喋ったりした。
 後から女性達はついてくる。
 すれ違って行く人は彼に気づいたりしているが、女性達はただの道案内だと思って、後からついてくる。
 私たちと彼女達の間には微妙な距離がある。
 中学生が始めてダブルデートしたものの、ちょっと照れて同性同士で喋っている……という感じだ。
 しかし私たちは四人の団体で歩いた。
 ブレーメンの音楽隊のような感じで、私たちは南口に到着した。
 そこで私たちは別れた。

「道案内、ありがとうございました」

 爽やかに女性達は去って行った。
 最後まで彼には気づかなかった。
 

 あ、そうだ。
 今週の「ごちそうさん」に、数日ですが坊主頭の私が出ていると……思います。
 よかったら観てくださいね。
posted by 土田英生 at 04:00| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月18日

口がチューチュー鳴る

 昨日、夜に美術の打合せがあったので、それまでにアイデアを詰めようと、午後になってからノートを持って出かけた。

 台本の書きやすい店を探してウロウロする。

 気がついた時には文房具屋さんにいた。
 私は万年筆好きだ。
 ガラスケース越しにパーカーのデュオフォールドをじっと見ていた。
 こんなことをしている場合ではないと頭では分かっていた。つい最近、新しいものを買ったばかりなのだ。
 ダメだ。さ、ここから離れるんだ。
 横を通った女子高生が私を不思議そうに見ている。
 ん?
 うわ、まずい。
 私は……無意識に口の中でチューチュー音させていた。

 ……前にも書いたことがあるが、私はどうやら好きなものを見たりすると、無意識にチューチュー音を鳴らせてしまう。口の中で舌を折り曲げて吸ってしまう癖があるのだ。
 犬を撫でたりしている時も、例外なくチューチューと音をさせている。
 
 フロイト的に言えば口唇期固着なのだと思う。
 赤ちゃんはおっぱいを吸ってミルクを飲む。つまり口で快感を得る。
 ここで乳離れが早過ぎたり、逆に遅過ぎたりすると、大人になってからもその欲求に異常にこだわると言われている。口唇期的性格という分類もあって、本によればそういう人は……我慢ができない、タバコを吸う、お喋り、爪を噛む……と、まあ、なんというか……カテゴリーにキレイに入り過ぎて嫌になる。
 
 女子高生は気持ち悪かったと思う。万年筆を眺めながらチューチューと口を鳴らせている男がいたのだ。ただ、私にとっては彼女は救いの女神だった。買い物をしていてチューチューし出した時は、ほぼ間違いなく買ってしまう。しかし、彼女のおかげで私は我に返り、そして買うのを踏みとどまった。
  
 誘惑の森から抜け出した。
 いいカフェを探そうなどろウロウロしているからこんなことになるのだ。
 こうなったらいつもの場所で書こう。
 
 そう思って店に入った。
 で、ノートを広げた。
 ……いきなり辛い。
 なにも浮かんでこない。
 
 と、向こうで同じように考え込んでいる人が目に入った。
 ヨーロッパ企画の上田君だった。
 彼とは別の店でも前に一緒になったことがある。
 席を立って挨拶をしに行った。
 すると上田君は言った。

『松居大悟って知ってます?』

 知ってると答えると、彼は指をさした。
 そこには仕事をしている彼がいた。
 三人で写真を撮った。

IMG_2707.jpg

 そして、それからは言葉も交わすことなく、それぞれ仕事をしていた。
 気がついた時には上田君がいなくなっていて、その次には松居さんもいなくなった。
 一人になった。
 なんだか……とても寂しかった。
 自分だけ宿題が終わってないような、そんな気分だった。

 東京でも倉持君と一緒になったことがある。→
 あの時は私は仕事はしてなかったのでちょっと状況は違うか。

 ……劇団をつくったばかりの頃。
 私が22、3歳の時だ。
 私は大学を中退していたが、他のメンバーは学生だった。
 稽古を立命館大学でやっていたので、ノートを広げるのは大体『無限洞』という喫茶店だった。
 マスターが演劇好きだったので、コーヒー一杯で何時間台本を書いていても文句の一つも言われなかった。むしろ頑張れと言ってくれたりした。
 で、アイデアが出ずに漫画などを読んでいると、水を注ぎに来てくれたマスターが言う。

『漫画読んでる場合じゃないでしょ。松田君は頑張ってるよ』

 見ると、向こうのテーブルでは松田正隆さんがノートに向かっていた。

 ああ、懐かしい。
 そんなことを思い出していたら、口がチューチュー鳴ってしまう。
posted by 土田英生 at 05:04| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月20日

哀しそうなチェーホフ。

 来年の頭からMONOの稽古が始まる。
 『のぞき穴、哀愁』
 看板に偽りはない。
 タイトル通り、のぞき穴が出てくるし、さらには哀愁を感じさせる作品になる予定だ。
 鋭意執筆中だ。最初の5ページくらい書いた。
 自分では書きながら笑ったが、それはあてにならない。
 冷静に進めなければ。
 
 今回は20代から40代までバラエティーにとんだ出演者。
 ベビーフェイスだった尾方君も微妙におっさんになって来た。
 いつも若い役は彼にやってもらっていたが、今回は心配ない。
 若い人は若い役を、そうでない人はそうでない役をやってもらうつもりだ。
 カエサルのものはカエサルに、神のものは神に返しなさいだ。
 意味不明だと思うが、書いている私にも意味不明だ。

 多分、昨日、寝る前に資料として『新約聖書』を読んでいたので、つい出て来たのだと思う。
 
 しかし……今日もあまり進まなかった気がする。
 材料は結構揃って来ている。
 後は……集中さえすれば書けるはずなのだ。
 なのに……なのに。

 自宅の仕事部屋には机が二つある。
 一つはパソコンが載っている。そしてもう一つはノートを広げる為にある。
 だからいつもなるべくキレイにしてある。いつでも物が書けるようにしてあるのだ。
 
 しかし……。
 ああ……。
 中途半端にレザークラフトの道具を買ってしまったせいだ。
 こっちの材料も揃ってしまっている。

 昼過ぎに起きて、最初は仕事をしていた。
 ノートを広げていた。
 この前、自作したペンケースが目に入る。
 手縫いだったのだが、糸の始末が汚い。
 そう思うや否や、気がつけば『レザークラフト』の本を読み出してしまった。
 ふんふん……なる程。
 
 そして……2時間後には机からノートが消えて……こうなっていた。

IMG_2726.jpg

 どう見ても……書き物をする為の仕事机ではなくなっている。
 革細工の作業台だ。
 見張りの為に置いてあるはずのチェーホフが、心なしか哀しそうな表情だ。
 
 どうしてこういうことには集中できるのだろうか?
 ……それから3時間は黙々と……革と格闘していた。
 で……作ってしまった。新たなペンケースを。

IMG_2728.jpg

 まだまだ汚いが、前のものよりはましになった。
 やっぱり2回目だと少しは進歩するんだなあと思ったが、こんなことをしている場合ではない。
 台本を書かなければいけないのだ。

 慌てて机を片付けて、再びノートを広げた。
 チェーホフも笑顔になった気がする。

 ……と、ここまで書いて、チェーホフを画像ソフトで加工して笑顔にしたい衝動にかられている。
 いや、やらない。

 踏ん張る。台本を書く。
posted by 土田英生 at 02:26| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『初夜と蓮根』

 結構、台本は進んだ。
 そろそろ寝よう。

 しかし、思い出した。
 さっき、別のことを書こうと思って、ここを開いたんだった。
 それだけ書いてから寝よう。

 映画『初夜と蓮根』。
 DVDが発売されています!
 中年夫婦が初夜を迎える話です。
 レンタルもあると思うので、皆さん、ぜひ観てください!

 ……ということを宣伝しようと思ったのだ。
 なのにペンケースの話で終わってしまった。

 そして……こうして宣伝は終わったものの、中途半端だ。

 もう少し続けてみよう。

 この作品の原作となっているのは演劇集団『円』に書き下ろした戯曲。
 舞台では金田明夫さんが主演。
 私が脚本を書いたドラマ『天才! 柳沢教授の生活』に金田さんは助教授役で出ていた。しかし脚本と出演者ではなかなか話す機会もなかった。
 同じ頃、高畑淳子さん主演で青年座に書かせてもらった『悔しい女』も上演されていて、それを金田さんが観に来られた。その楽屋で話が盛り上がり、『いつか舞台やりましょう』と約束した覚えがある。

 それが実現したのが『初夜と蓮根』だった。

 立命芸術劇場の後輩で、朝日放送に勤めている奈良井君から連絡があった。
 映画を創ろうという。
 一緒に話し合ってこの戯曲を選んだ。映画の脚本に直した。大学の後輩がプロデュースする作品で脚本を書くのは妙に嬉しかった覚えがある。

 舞台で金田さんがやっていた役を、映画では風間杜夫さんが演じている。
 妻役を麻生祐未さん、娘役が市川由衣さん、その婚約者をテンダラーの浜本さんが好演している。

 そう言えば……この映画の本読みの時だ。

 通常、顔合わせがあって、それから休憩を挟んで読み合わせをする。
 休憩の時には、
『初めまして』『よろしくお願いします』と、部屋の各所で挨拶が交わされる。
 私も風間さんや麻生さんの所へ挨拶に行った。
 で、市川由衣さん。
 どう挨拶しようか、私は少しばかり悩んだ。
 実は彼女とは会ったことがあるのだ。

 しかし……問題は向こうが覚えているかどうかだ。
 『NANA2』という映画。
 オープニングはタクシーに乗っている市川由衣さんのシーンから始まるのだが、その時、運転手役で座っていたのが私なのだ。撮影の時、軽く会話はしたが、本当に一瞬のことだった。

 だから私は、

『初めまして。脚本の土田です』と挨拶した。

 すると、市川さんが言ったのだ。

『ひどい……初めてじゃないですよ』

 私はまさかと思った。

『あの……もしてかして……』

 と、私はそれでも言い淀んでいた。
 すると、

『タクシー運転手さんでしょ?』

 と、向こうから言ってくれた。

 ……やっぱり一日に二回更新すると、どうにも中途半端になる。
 しかも内容が散漫だ。

 困った。

 最後はやっぱり劇団公演を宣伝して終わろう。

 MONOの『のぞき穴、哀愁』……よろしくお願いします! →
 
posted by 土田英生 at 06:17| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月21日

恥をさらす

 冷静な判断ができなくなることがある。

 友達の恋愛話などを聞いていると、「おいおい、それはどう考えても脈がないだろ」と思ったりする。
 それでも彼は「でもさ、こう言ってくれたこともあるしさ」などと、儚い望みを抱いたりしている。
 「こいつ、こんなことも分からないのか」と驚いたりするのだが、自分が恋愛をしてしまったりすると同じような過ちをしてしまう。
 詐欺の話などでもニュースなどを見ていると笑ってしまう。
 そんなものに引っかかるなんて、よっぽど頭が悪いか、もしくは欲にかられたんだなあと思う。
 
 私はそんなことはない。

 ……はずだった。

 私には欲しい万年筆がある。
 随分前に生産中止になっている。
 だから買えない。

 時々、ネットなどで検索していると中古品が出ていたりする。
 ああ、やっぱり未使用品はないよなあ……と諦めていた。
 ごく稀に新品が出ているのを発見するのだが、見ると『完売』になっている。
 
 昨日。
 仕事の休憩中にふと検索をかけた。
 すると……なんと……あった。
 しかも『在庫一つ』と書いてある。
 慌てた。急がないとすぐになくなってしまう。
 で、急いでそのサイトに登録をして注文をかけた。

 おかしい。
 支払い方法でクレジットカードを選べない。
 ここで気づくべきだった。

 しかし……なくなってしまうという焦りに促された私は、銀行振込を選んでメールを送った。
 
 で、そこで冷静になった。
 『振込先はメールでお問合せ下さい』……と書かれている。
 どうして?
 ……ん?
 冷静になった私は会社概要を見る。
 特定商取引法による住所なども書かれていない。電話番号もない。
 問い合わせはメールのみだ。
 営業時間も10:00〜18:0000となっている。
 秒単位って。
 どれだけ厳密に店を閉めるんだという感じだ。
 怪しい。……というより、これは明らかだ。
 さらには丁寧なことに、『当店の名前を使った詐欺サイトにご注意下さい』と書かれている。

 すぐに通販詐欺の情報が集まるサイトへ行った。
 間違いない……。
 多くの人が同じ手法で騙され、お金を振込んでしまっている。
 カバン、靴、自動車のパーツなど多岐に渡っている。
 「欲しかったものなので、つい買ってしまいました」と書かれていたりする。
 ああ、私と同じだ。
 振込むと連絡がなくなるか、もしくは粗悪品が送られてくるらしい。

 私はお金を振込んではいないので、厳密にいえば詐欺被害に遭ったわけでない。
 だから断定はできないが、このサイトも限りなく黒だ。
 業者からメールが来る。
 集めた情報と全く同じ文面。
 
 京都府警に情報提供をした。

 実は勘違いしたのには伏線もある。
 その万年筆を探していたという事情もあるが、昨日、別のものをネットで買ったとき、そのサイトが手作り感満載でとても見にくかった。それと比べると万年筆のサイトは巧妙にできていた。
 
 大体、どれだけネットで買い物してるんだという話だ。
 今は台本を書いているので、外に買い物に行くことに罪悪感を感じてしまう。
 で、ついつい、ネットで色々と買ってしまうのだ。
 もうやめよう。

 付け足しになるが、別の物を買ったサイト。
 そこからは丁寧なメールが来ていた。
 会社の住所も書いてある。しかし疑心暗鬼になっていた私は、その住所で検索をかけた。
 グーグルのストリートビューで店の外観が出る。
 個人がやっている感じの店。
 想像が出来た。
 「おい、うちもそろそろ、その、ネットで販売とかしてみよう」
 で、息子さんが必死でサイトを作ったのだ。
 いや、知らないけど。

 ということで、恥をさらしてしまったが、皆さんも気をつけてくださいね。 
posted by 土田英生 at 16:28| 京都 ☔| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする