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MONO代表・土田英生のブログです

2015年10月04日

ソラミミホンネレソラシド

 今、稽古をしているのは、歪(いびつ)公演「ソラミミホンネレソラシド」という舞台だ。
 私としては、これまでつけたことのない感じのタイトルであり、内容もちょっと異質だ。
 普段、私はその時の自分の内側にあるものを探し出して、それを発展させて作品を作る。
 少し変わった設定にして、その想いをフィクションにして行く。
 ただ、今回は違う。
 最初のスタートが自分ではないのだ。
 
 出演するのは20代の女性3人。高橋明日香、阿久澤菜々、石丸奈菜美。
 彼女たちの企画で、私は作と演出を担当している。
 全員が昨年私がやっていた「土田英生俳優育成講座」の参加者だ。

 この公演のきっかけは私が高橋明日香と喋っていた時で、今年の春くらいだったと思う。

 彼女とは知り合って四年くらいになる。
 2011年にMONO特別企画「空と私のあいだ」のオーディションで出演してもらって以来、一緒にkittというユニットを結成し「梢をタコと読むなよ」「ウインカーを、美ヶ原へ」を上演、それからはMONO「のぞき穴、哀愁」「ぶた草の庭」、更にこの前終わったばかりの土田英生セレクション「算段兄弟」にも出てもらっている常連だ。

 彼女はよくオーディションに落ちる。
 その時も、そんな話を彼女としていた記憶がある。
 私は「やりたいことは自分で動いてやるべきだ。もちろん、何かのきっかけで道が開けることはあると思うけど、待ったり選ばれたりすることを望む前に、本当にやりたいことを自分でやっていかないと何も見えなくなる」というようなことを彼女に言ったと思う。
 
 それからしばらくして、彼女からリーディング公演をやりたいという話があった。
 カフェなどを借りて低予算でいいからやりたい。
 なにかテキストはないだろうか?

 最初は私もああだこうだとアドバイスをしていたが、話を聞いているうちに、だったら自分で書きたいという気分になった。はっきり言って仕事にはならないので、その代わり、どうせなら普段、私だけでは書けないものを書かせて欲しいとお願いした。
 そこで私は出演者三人と個別に会い、インタビューをさせてもらうことにした。
 抱えている悩みやトラウマ、好きなもの嫌いなもの、他の二人に対する印象や思いなどを赤裸々に話してもらい、それを元に作品を書いた。キャラクターも彼女たちの話を聞きながら創った。
 
 三人組のボーカルユニットが楽屋で喋っている内容だが、その姿は女優をやっている三人の素と重なって見えてしまう。もちろん、インタビューしたことをそのまま書いている訳ではないし、あくまでフィクションではあるけど、出てくる言葉や台詞は彼女たちのものだったりするのだ。

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 これはとても面白い体験だ。
 稽古していても、書いた時のイメージと全然違う演技を見せられることが多々あり、その方がリアリティーがあったりする。きっと、私の書いている言葉の向こう側に、自分たちの現在を彼女たちが勝手に見ているせいなのだと思う。その方が正しい気がしてしまい、稽古に合わせてどんどん台詞も変更している。
 正直に言えば、ラストも私には分かっていない。
 三人に導かれて、きっとラストは出てくる。だから稽古をしながら台詞を書き足して行く毎日だ。

 1時間、彼女たちが喋っているだけの舞台。
 時間も飛ばず、設定も普通。
 しかし、そこにはもがいている彼女たちのリアリティーがある。
 演出をつける以前に、とんでもない表情を見せてくれたりするしね。だから、今回の私は技術的な整えをしているだけだ。不思議な感じ。
 
 2日間、3回だけの公演。
 それも一回に入れるお客さんは50人程度。
 ワンドリンク付きで2,000円。
 
 ぜひ、皆さん、来てください。そして彼女たちの今を眺めてください。

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  ※チラシはクリックすると大きく見られます

 チケットはこちらから予約できます→

 
posted by 土田英生 at 04:53| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月08日

加藤武さんのこと

 加藤武さんの劇団葬に参列しながら、いろんなことを思い出した。
 もちろん、そのほとんどは加藤武さんへの感謝だ。

 私がバイトをやめて、演劇で生活させてもらえるようになったのは29歳の時だった。
 その頃、外部から台本の依頼をしてもらうようになったからだ。
 京都でお蕎麦やさんのアルバイトをしながら、細々と活動をしていたのに、突然、環境が変わった。

 きっかけはマキノノゾミさんから劇団M.O.Pに書き下ろしてくれと頼んでもらったことだった。「遠州の葬儀屋」という芝居を書いた。そこから急に色々な方から声をかけてもらえるようになった。G2プロデュース「いつわりとクロワッサン」、パルコプロデュース「BOYS TIME」、草g剛「ヴォイス」と立て続けに書かせてもらった。

 そして、その翌年、文学座と劇団劇団青年座からほぼ同時に新作の依頼をもらった。

 自分がまさかそうした老舗劇団に台本を書くことなど想像もしていなかったので、とても嬉しかったのを覚えている。これでもう自分はプロの劇作家としてやっていけるんだと思ったりした。
 劇団青年座には高畑淳子さん主演の「悔しい女」、そして文学座に書かせてもらったのが加藤武さん主演の「崩れた石垣、のぼる鮭たち」だ。

 しかし、その頃の急激な環境の変化に対応できず、私はやや精神のバランスを崩した。

 その2作を書いている途中、初めて連続ドラマの脚本の依頼があり、打合わせがスタートしていた。テレビなんかほとんど初めてなのに、チーフライターとして書くことになっていた。テレビの中で見ていた人たちと会い、派手な記者会見に出席する。京都と東京を往復し続けた。
 
 そして、段々と神経症的な症状が出るようになったのだ。
 そのことは誰にも言えなかった。

 劇団青年座にも迷惑をかけ、締め切りを4ヶ月すぎてやっと初稿を出した。
 そして、文学座の方はさらに遅れた。
 なかなか書き終わらなかった。
 
 その公演は中部地方の演劇鑑賞団体と文学座がタッグを組んだ企画だったので、多くの人たちがお金を出していた。

 ある日、様々な鑑賞団体が集まる場で私は話をすることになっていた。
 そして台本が完成しないまま、徹夜で静岡に向かった。
 壇上にのぼって、加藤武さんと私、そして演出の西川さんの三人で話をした。
 しかし台本が書けていない状態の私は……とても小さくなっていた。
 質問コーナーがあり、そこでは辛辣な意見が出た。
 お金を出資している人たちからすれば、もっと有名で信用のおける劇作家に書いて欲しいと思うのは当然だ。
 矢継ぎ早にそうした意見が出る。
 永井愛さんはダメだったんですか? 鐘下辰男さんはどうだったんですか? 私はマキノノゾミさんが良かった……なのに、本が遅いってどういうことですか?
 立ち上がって喋る人は、皆、そんな意見だった。
 私に味方はいない。
 ただ小さくなって黙っていた。
 
 と、加藤武さんがマイクを取った。
 そして静かな声で言った。

 「私たちは芸者でございますので、皆様方あってのことだと思っております。なので何の文句もございません。しかし、どんな有名な作家でも最初は無名でございます。あなたたちは、私たち、文学座に今回のことを任せてくださいました。そして……」

 そこで加藤さんは一旦黙った。

「その、任せていただいた私たちが選んだ作家なんですから、黙ってできを待ってろ……というような、思いもございます」

 と、一気に言ってマイクを離した。そしてそのマイクを私に渡し、

「おい、黙ってないでなんか言いなさい」

 私は今でもダメダメ人間だが、その時はもっと弱かったので、そこで泣いてしまった。
 別れ際、お礼を言った私に加藤さんは怖い表情で「お礼なんていいから、しっかり書いてくれ」

 ……そして、なんとか幕はあき、地方の巡演も始まった。
 きっと大ベテランである加藤武さんにとっては、若い私が書いたつたない台本に対する不満もあったと思う。
 MONOを観に来てくれた時も「なんだかペラペラと早口で喋るねえ。俺はあんな早口は嫌だよ」
 などと言っていた。
 しかし、不満は私の耳には入らなかった。きっと皆が気を回してくれていたのだと思う。
 加藤武さん本人にお会いしても、全く不満を聞いたことはなかった。

 それは三ヶ月もあるロングランだった。
 私は一ヶ月くらい経ったある日、久しぶりに観に行った。
 ああ、あれも静岡だ。
 
 そして終演後、作家を囲む会を開いてくれた。
 加藤武さんの横に座った私は色々と話をさせてもらった。台本の話、演出の話
 と、その中で酔ったスタッフの一人が呟いた。

「俺たちはこのつまんない台本に12月まで付き合わないとダメなんだからさ……」

 私は固まった。
 何を言われたのか、一瞬、理解できなかった。
 あれ? 悪口を言われたんだなあとやっと判りかけた時だった。
 机をバンと叩き、加藤武さんが立ち上がった。

「おい! お前! 何を失礼なこと言ってるんだ? お前はそんなにえらいのか! 俺たちはな、この人の書いた台詞を一生懸命に稽古して、それで舞台をやってるんだよ! 帰れ! 今すぐ消えろ!」

 そのスタッフは土下座して、すぐに帰らされた。
 そして加藤さんは私に頭を下げた。
 ちなみに加藤武さんはお酒を飲まない。飲めない。
 しかし、頭をあげた加藤さんはお店の人に向かって言った。

「……大きな声を出し、みっともないところ見せて申し訳ございませんでした。この店で一番いいワインを一本開けていただけませんか?」

 周りが焦った。
 そして「武さん、飲めないでしょ」などと諭し出した。
 しかし、加藤さんはガンとして譲らなかった。

「作家さんにこんな迷惑をかけておいて、飲めるも飲めないもあるか、俺は今日、土田さんと朝まで飲む」

 そして実際に三時頃まで加藤さんと飲んだ。
 フラフラになった加藤さんはタクシーに押し込まれるようにしてホテルに帰った。

 ……そして数年後。
 関西のある駅のホーム。
 ファンに囲まれている加藤武さんと偶然お会いした。
 私は「あ」と思ったが、邪魔してはダメだと思い、会釈して通り過ぎた。
 すると後ろから「土田君」と大きな声がした。

 武さんはそのファンの人たちに「友人と会いましたので失礼します」と言って、私のところに来てくれた。
 そしてホームで立ち話をした。
 最近はどうしてると聞かれたので、その頃忙しかったドラマの話などをした。もしかしたら、順調にやっているということを伝えたかった私の話し方は、やや得意気だったかもしれない。

 その時も加藤武さんは静かに言った。

「活躍してくれてるのは嬉しいし、あんたがそれでいいなら俺は満足だ……しかし、とにかく地に足をつけて、いい台本を書いてください。できれば演劇の台本を書いてください」

 そして私が電車に乗るとドアが閉まる寸前に、ホームで大声を出した。

「土田英生君、頑張れ!」
 
 金田一耕助シリーズに出ていた時の「分かった!」と叫ぶ、あの声だった。
 見ると加藤さんは顔をくしゃくしゃにして笑っている。それはまるでいたずらっ子だった。
 ドアが閉まって、電車が動きだす。
 車内にいた人たちはみんな私をチラチラ見ている。とても恥ずかしかったが、幸せだった。
 
 その加藤武さんが急逝した。
 ヤフーニュースでそれを知った時、私は体から力が抜けた。
 ちょうど「算段兄弟」の本番前、ダメ出しをする前だった。

 あれから時々、加藤武さんのことを思い出した。
 久しぶりに喋った時、「あんたの芝居はテンポが大事だろ? だからさ、俺みたいな年寄りにとってはきついんだよ。年寄りの冷水っていうけど、まさにそんな感じなんだよ。けど、また、冷水を飲ませてくれよ」

 次に機会があれば、と、ずっと願っていた。
 今度こそ、加藤武さんに満足してもらえる本を書こうと心に決めていた。
 しかし、それはもうかなわない夢になってしまった。

 本当にありがとうございました。
 
 加藤武さんからもらった言葉は大事にしようと思う。
 知っている人の訃報に接する度に、後悔が襲う。

 とにかく今、きちんと、できることをする。
 怠けずにやらないと、申し訳が立たない。
posted by 土田英生 at 04:01| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月12日

広島→京都→東京

 1ヶ月ぶりに広島でアステール演劇学校俳優学校。
 20人のメンバーを5チームに分けて、それぞれに台本を書いてもらった。それを私が手を入れさせてもらい一本にまとめて行っている。下地の台本はできていたので、それを元に各班で自主稽古をしてもらっていた。
 手伝ってくれている象君がその稽古に付き合ってくれているので安心はしていたのだけど、それでもあまり期待はしないようにと言い聞かせて、これまでの出来を見せてもらった。

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 ……面白い。予想以上にそれぞれがいい味を出している。
 とにかく私が見られる稽古時間が少ないので、とにかくダメ出しの数を減らし、なるべくポイントだけを伝えるよう心がける。
 ここで気を抜かずに愚直に練習を繰り返してくれれば、もっと空気を掴むことができるはずだ。
 試演会は25日だ。

アステールプラザの演劇学校【俳優コース】試演会
『あの10分間、そしてそれからのこと』
作:土田英生+劇作する受講生
出演:石橋磨季/上岡久美子/梅田麻衣/大村彩寧/落合晶子/鍵本恵子/勝又由佳/黒瀬志保/砂掛優子
   曽里田祐樹/立川茜/西尾美香/濱ア仁美/林大貴/深海哲哉/藤沢春菜/松本朋子/松尾敢太郎
   宮前愛子/山本陽子 ※五十音順
assistant:象千誠
日時:10/25(日)15:00開演(14:45開場)
会場:JMSアステールプラザ5F視聴覚スタジオ
※入場無料(要予約)
お問い合わせ:tel:082-244-8000
e-mail:naka-cs@cf.city.hiroshima.jp
http://h-culture.jp/

 さてと。

 問題は私のiPhoneの充電だ。
 私はなんでも革の袋に入れる習性がある。
 レザークラフトが趣味なので、何からなにまで専用の袋を作ってしまうのだ。
 パソコン、ノート、筆記具、タバコやライターはもちろん、ポケットティッシュからフリスク、リップクリームからイヤホンなど、ありとあらゆるものが革に包まれている。時には革の袋から革のケースを取り出し、そこから革に包まれた何かを出すという、革マトリョーシカ状態だ。

 で、もちろんiPhoneの充電セットが入った革ケースももちろん持って来た。
 そしてホテルでそれを開くと……なんと、そこには……人からいただいた名刺の束が出て来た。
 そうだったのだ。
 充電ケースは新しく作り直したのだった。
 なのに前のケースを持ってきてしまった。
 
 革に包むことで困るのはこれだ。この前も、薬を持って来たつもりだったのに、そこに入っていたのは百円ライターだった。
 
 そういう訳でiPhoneの充電ができない。
 いや、まあ、そんなものはどこかで買えばいいのだが、もう買い過ぎて私の手元には山のようにあるのだ。なので持ってくれるなら、買わずに済ませたい。

 今から京都へ移動し「狂言ハイブリッド」というイベントに出演させてもらい、夜には歪(いびつ)の稽古。
 私は東京を離れているので、この二日間は稽古に出られなかった。
 しかし、彼女達は稽古中。
 一時間、ただただ二十代女性が会話するだけの芝居。
 しかし彼女達にインタビューもさせてもらい、私なりに完全に当てて台詞を書いたので、なんだか他の人が書いた台本を見ているようで面白い。
 16日と17日の二日間だけの上演。
 →

 去年の俳優講座で出会った3人。
 彼女達がうまくなって行く様を、まるで孫の成長を見るように楽しんでいる。
 途中でちょっと振りがあり、その動画を送ってきてくれたので、それを広島でチェック。

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「ふんふん、いいんじゃないの、ハハハハ、ここ失敗してるよ、フフフフフ」

 おいおい、孫の運動会の動画が送られてきた訳じゃないんだから。
 まだまだ隠居する訳にはいかないしね。
 今日はなるべく早く東京に戻って、ガンガン稽古しないと。
 
 チケットはこちらから申し込めます。→
 全て当日引換えになりますので、申し込んでただ会場に来て下されば大丈夫です。
 三回しかないのでご予約はお早目に!

 さてと、ホテルを出て京都に向かわないと。
 
posted by 土田英生 at 06:37| 広島 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月13日

まるでマンガ

 朝に広島を出て、京都へ着いた。
 茂山家の狂言イベントに出演させてもらう為だ。去年は東京、そして今年は名古屋、京都と三回目の出演だ。
 少し早く着いたので京都をブラブラする。
 来年のMONOの新作の為に、資料が欲しかったので本屋に行く。
 歩いていると……京都は本当にいい町だなあと思う。
 なにげない路地がいいよね。

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 写真を撮りながら……おいおい、これではまるで観光客ではないかと思う。
 私は京都市民なのだ。
 本籍地だって今は京都だ。
 いくら下北沢にいても、選挙のときは、遠隔地投票で京都4区に投票している。
 あまりに京都にいない時間がながくて、新鮮に映ってしまっている。
 まずいね。
 またMONOの稽古が始まればずっと京都にいることになるのだ。
 ただ、公演期間中は時間がなくてゆっくりできないということが難点だけど。

 イベントの会場はとても趣がある大江能楽堂。
 100年の歴史がある能楽堂だ。

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 さすが地元ということで大盛況。
 なんだか狂言に関わらせてもらいたくなってしまった。
 一緒になんかやりたいと、童司君と話したりした。

 で、出番が終わるとまたしても京都駅にダッシュ。
 観光シーズンですごい人だ。
 新幹線はグリーン車まで全て満席。
 エクスプレス予約で何回もアクセスしてやっと席を一つ見つけた。

 で、ボトル式の缶コーヒーを一本持って飛び乗った。
 隣には若い女性。
 私は資料として買った本を読もうと頑張った。

 しかし……寝不足が続いているのでウトウトしてしまう。
 結局、本は半分くらい読んで後は眠っていた。 
 気がつけば新横浜。
 ああ……次は品川だ。

 私は目を覚まそうと、まだ開けてなかった缶コーヒーを開けた。
 一口飲む。
 
 ……。

 悲劇はそこからだった。
 若い女性の声が聞こえてきた。

「あああ、ああ、あああああ」

 そして、いきなり手首を掴まれた。
 下半身に不愉快な感覚が広がる。

 どうやら私は蓋をあけたまま、眠っていたようだ。
 そしてそこからコーヒーがどぼどぼ、私の……股間周辺に……注がれ続けていたようだ。

 隣の女性が私の手首を掴み、なんとかそれを阻止しようとしてくれていたのだ。
 まるでマンガだ。
 しかもラブコメでもないね。
 股間に自分でコーヒーを注ぐ男とそれを止める女性。
  
 しかし、寝ぼけていてなんのことだか分からなかった私は「あ、大丈夫です」と言って蓋をしめた。

 ……いやいや、大丈夫ではない。
 どうやら相当の量が注がれたようだ。
 見ると、まるでちびったようにジーンズの股間一帯は色が変わっている。
 目が覚めてきた。
 
 で、随分と遅れて、改めて隣の女性にお礼を言った。
 
 品川で降りて山手線に乗り換える。
 電車はいつもの混雑。
 私が立っていると、目の前で座り、ゲームをしている若い男性が時々、不思議そうに顔をあげてキョロキョロしている。
 彼の心の声はしっかり聞こえる。

「ええ? なんだこれ? なんでこんなにコーヒーの匂いがするんだよ? どこから……おかしいなあ」

 そして歪の稽古。
 2日ぶりに観てみるとぐっとよくなっている。
 ちょっと感動した。

 残りの稽古は3日。
 しっかり仕上げをしていこう。

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 チケットはコチラから!→
 
posted by 土田英生 at 11:23| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月17日

奇妙な懐かしさ

 昨日は歪[いびつ]公演「ソラミミホンネレソラシド」の初日だった。
 そして……今日は楽日。
 どういうことだ? そうなんだよね。
 本番は二日しかない。
 MONOも本番はそんなに長い方ではないが、前回の「ぶた草の庭」だと20日間23ステージ。
 今回の歪は2日間3ステージ。
 短い。あまりにも短い。

 そういえば、むかしむかし、MONOの前身であるB級プラクティスを今はなきKSK HALLで水沼君たちと初めてやった時、土曜、日曜の2日間4ステージだった。

 考えてみればあれも二日だ。

 そして、普段、演出の私は仕込みの日の夕方に劇場に顔を出す。
 そして舞台のチェックをして、「ああしてくれ」とか「あのパネルの色を変えて欲しい」とか勝手なことを言って帰る。すると次の日には直っている。
 なにからなにまでスタッフが周到な準備をしてくれている。

 しかし……今回はそうは行かない。
 もちろん、これは若い女性三人の企画で、彼女たちはよくやってくれている。
 けど、三人共出演者なのだ。
 気になったことがあっても、人手が足りない。

 バタバタしながら本番を迎えたが、奇妙な懐かしさを味わった。
 初心を思い出す感じだった。
 
 客席も50席しかない。それでも満席になった状態を見てとても嬉しかった。
 
 そして、なにより、生き生きと演技をする女優三人はとてもたくましく見えた。
 まだ、改善するところはあるけど、今日の二回も楽しんでやって欲しいね。
 自分達の舞台なんだし。

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 まだ、今日は入れますので、皆様、ぜひ、下北沢までおこしください。
 →
posted by 土田英生 at 07:57| 東京 ☔| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月19日

大人なのに思春期

 2日間だけの公演が終わった。
 規模の小さな公演だったが、やはり終わればそれなりに疲れが出る。

 今日は起きてから一歩も外にも出なかった。
 ただ、考えていた。
 いや、なにかを具体的に考えていた訳ではなく、ただ座っていたという方が正確だ。
 
 小学校四年生の時だったと思う。
 夕方、暗くなる部屋にいて電気をつけようとした時だった。
 突然、自分が分からなくなった。
 電気をつけようとしている自分とは何だろうと急に考え込み、暗くなっていく部屋の中で不安に押しつぶされそうになった。
 私はななんの為に存在してるんだろう?
 あれが初めて、自分の存在に疑問を感じた時だった気がする。
 思春期の入口に誰しも経験する感覚なんだと思う。

 今日は起きて顔を洗っていたら、突然、手が止った。
 大人のくせに、小学校の、あの時と同じような感覚に襲われた。
 
 ……公演の前、人と喋っていた時の何気ない一言が身体に食い込んだ。
 無意識に発せられたその言葉から、私は自分がとんでもない誤解をしているのではないかと感じた。人の為によかれと思うことと、相手が受け取ることの差異。そこに気づいていていなかったとしたら、私は考え直さなければいけないと思った。
 
 なのでじっと座っていた。
 まるで座禅だ。
 しかし何も悟れず、答えも出ず……。

 まあ、全く意味のない時間を過ごした一日だった。

 広島の試演会の準備もしなければいけないし、MONOの新作のプロットも書き上げなければいけない。
 明日は高円寺にある劇作家協会の事務所で、タイの演劇事情について話を聞くというイベントもある。
 まだ、参加はできると思うので、興味のある方は一緒に話を聞きましょう。
 → 

 現実に戻らなければ。
posted by 土田英生 at 04:20| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月23日

千穐楽と初日と初日

 歪[いびつ]公演「ソラミミホンネレソラシド」が終わって、私は広島にいる。
 二日だけの公演だったので、千穐楽もなにもないのだが、それでも公演が終われば疲れが出る。
 特に今回は若い女優さん三人の企画で、彼女達の“現在”を舞台にあげようという試みだったので、なにより本人たちが、ぞれぞれに想いを込めているのが分かった。
 それに付き合うことで、私も感化された気がする。

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 で、広島にいるのはアステールプラザの演劇学校【俳優コース】の試演会が25日にあるからだ。
 6月から始まり、何度も広島に来た。
 とにかくワークショップワークショップワークショップ。
 そこで私の考える演技をなんとか伝えようとしてきた。
 参加者は20人。
 試演会はその総仕上げというか、まあ、成果を見てもらおうということだ。
 
 20人を5チームに分けて、それぞれに設定を考えてもらった。
 各チームに台本を書いてもらった。一本は私が書いた。
 それぞれの話に加筆修正を加えながら、それを一つの話にまとめた。
 一回だけの公演だが、初日は初日だ。
 →
 
 今日は15時から稽古。
 朝、早くに起きてブラブラと散歩する。
 私が行く場所は決まっている。
 
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 ここはお気に入りが並んでいるという広島での私の聖地だ。
 大学堂書店は古本屋さんだが、なぜか私が欲しい本が並んでいる。
 しかもセットで揃っていたりする。
 今日も次のMONOの為の資料になりそうな本があったので購入してしまった。
 大きな本なので重たい。
 そして隣のNAKAMICHIはタバコの専門店で葉巻や喫煙具がたくさん揃っている。

 
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 携帯灰皿が壊れたので、新しいものを買った。
 そしていつものカフェで仕事。
 期待した程は進まなかったが、それでも進展があった。
 面白くなりそうな、まあ、種ともいうべきものは発見した気がする。
 
 正直、プライベートでは色々と悩みは尽きない。
 現実のことを考えると、気分は滅入る。
 だからこそ、まあ、創り事の世界にいるしかないね。
 まあ、いつかは出てこないといけないんだけど。

 もう一つ、初日がある。
 ソウルのLGシアターで上演される「少しはみ出て殴られた」。
 2012年にMONOで初演し、同じ年にはホリプロの若手俳優でも上演してもらった。
 それが今回、韓国キャストで幕を開ける。
 韓国ではこれまで「悔しい女」「ウェルズロード12番地」などを上演してもらってきた。
 特に「悔しい女」は時間を空けながら三年間も再演を繰り返してもらった。
 演出はどっちも仲のいいパク・ヘソンだった。
 
 今回はキム・カンボ。
 LGシアターは規模も大きい。
 どんな作品になっているのか気になる。まあ、初日に観る予定なんだけど。

 
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posted by 土田英生 at 14:04| 広島 | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月28日

混乱中。

 広島で5ヶ月やって来たアステールプラザの演劇学校【俳優コース】が終わった。
 6月から計5回。毎回、土、日を使ってワークショップをした。参加者は20人。

 途中からは台本作りや稽古も交え、最後だけ4日間集中的に稽古をして25日に試演会をやって終了した。
 プロの役者としてやって行きたい人、趣味で役者をやっている人、初めて演劇に触れる人……経歴もモチベーションも様々で、しかも私の主観で言わせてもらえば“変わった人”が多かった。

 それでも全員が最後までやめる事なく、お客さんを入れての試演会もいい出来で終えられて安堵した。

 
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 打ち上げは……前にも行ったことがある鉄板焼き屋さん。
 貸し切りの全員参加。
 食べ物はどれも美味しかった。最後のお好み焼きはもちろんだけど、お肉が……ホント……。

 
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 ここのマスターとは前に来た時もかなり喋ったけど、この日も色々な話で盛り上がった。

 
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 打ち上げは盛り上がった。
 初舞台を踏んだ人の興奮、別れの寂しさ、そしてアルコールも手伝って、席のあちらこちらでが泣いてる人ががいた。誰かが泣いて、隣の人がもらい泣きするという感じだ。

 まあ、鉄の心を持ち合せた私は全く動じなかったけどね。
 ふふふ。冷徹な男である私はそんなことくらいでは心を動かさない。
 アドバイスをしていたら涙をポロポロ流し始めたOさんに対して、私の声が震えていたのは……きっと寝不足だからだ。

 私が泣いたりしない人間であることは、つい最近、終わったばかりの「歪(いびつ)」の打ち上げでも証明されている。大入りを配る時、出演者の一人が涙声で話していた。それを聞いている私が泣ていると思った人もいただろうが、あれだって、ただ疲れて目がショボショボしただけだ。

 ……なんで私はこんなに涙腺が弱いのか……。
 
 広島の打ち上げでも私は喋り過ぎたようで、途中で声が出なくなった。
 皆がコソコソしていると思ったら、途中で色紙と共にプレゼントをくれた。
 ドラゴンズファンの私に、カープのグッズ。広島にもっと馴染んでもらう為らしい。

 それにしても……色紙をもらうのなんていつ以来だろう? 
 確か……演ぶゼミの時が最後だったと思う。
 その場で読んだりして、万が一にでも涙を見せたりしたら恥ずかしいのでホテルに戻ってから読んだ。

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 翌朝、ホテルから広島駅までのタクシーの中で、広島の街並を眺めながら感傷的な気分になった。
 運転手さんがやたら喋って来る人で、私は聞かれたことに返事をしていた。
 すると「お客さん、そんな生き方はダメだよ」 
 と、突然、注意された。
 そこからは私の何がダメなのかを、運転手さんの理屈で教えてくれた。
 「秋の広島、私のセンチメンタル」はどこかへ行ってしまった。

 東京に戻ってきて、今日は下北沢の事務所にこもってMONOの新作準備に費やした。
 じっとノートを広げて……そう……じっと、じっと……結局はじっとしていた。
 そうなのだ。なかなかアイデアがまとまらない。
 気づけば夕方だった。

 本当は昨日の夜の間に色々とまとめて、今日の朝、それを制作に伝えるはずだったのだ。
 なのに一日経っても進んでいない。
 このままではダメだと思い、ノートを持って外に出た。
 ゆったりカフェなら下北沢にだってたくさんあるが、いや、ダメだ。
 あの店に行こうと思った。
 渋谷にある昭和な感じの喫茶店だが、どうもあそこだと仕事が捗るのだ。
 ただ、少し切ない記憶も絡んでいて、最近は行ってなかった。
 しかし、背に腹はかえられない。「ぶた草の庭」の構想を立てた時にも、あの店で劇的に進んだ覚えがある。
 
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 やはりだ。
 座って約一時間で、話の骨格が固まってきた。
 これは……面白い。珍しく人情話だ。
 ただ……なかなかタイトルがもう一つしっくりこない。
 店にいる間に全部で四十個くらいは考えたけど、決定打には至らない。
 
 そのまま帰るつもだったが、やはりというべきか……東急ハンズに立ち寄ってしまった。立ち寄れば、自然と何かしら買ってしまうのではないかという不安があったが、その通りだった。買ってしまった。
 
 そんなこんなで……まだタイトルで悩み中だ。
 急がなければ。
 来週はソウルで「少しはみ出て殴られた」を観たりするので、時間がない。
 いやいや、その前にも予定がある。

 どうやら私はこれに出る。
 もちろん前から話は聞いていた。
 そして、出る約束もした。
 しかし……さっき、ツイッターでタイトルなどを知った。
 『土田の英』と書いてある。
 ……これはどういうことだろう?
 
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 しかも本番まで一週間ないではないか。
 ああ、急に胃が痛くなってきた。
 出る以上は恥をかかないようにしなければ。
 →
 
 他のイベントも告知することで、緊張を和らげよう。

 劇団☆APB-Tokyo『醒めて歌え・青少年のための無人島入門』のトークゲスト。
 これは11月26日。
 寺山修司さんの作品。演出をしている高野美由紀さんはずっと前からの仲良し。
 このことはまた近づいたら改めて書く。
 別に不思議なことではないけれど、私がここで喋るのはちょっと珍しい気がするからだ。→

 で、次の日、27日は大阪。

 
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 これは劇作家協会関西支部がやるイベントだ。→
 企画は私が立てたものだが、動いてくれているのは横山拓也君や関西支部の皆だ。
 すみません。当日は必死で頑張ります。
 
 ああ、ブログを書くことでちょっと頭を整理しようと思ったはずが、なんだか余計に混乱して来てしまった。
 しかも書いている途中で、連絡しなければいけない人に、連絡できてないことも思い出したりした。
 
 眠ろうか。
 いやいや、MONOのタイトルを決めないと。
posted by 土田英生 at 07:07| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする