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MONO代表・土田英生のブログです

2015年11月05日

少しはみ出て殴られた

ソウルだ。
快適なホテルに滞在させてもらっている。
調子に乗ってジャクジーでゆったりしすぎて、身体がユルユルな感じだ。しかもフカフカベッドに横になってこれを打っている。だからちゃんとした文章を書く自信もない。「本当は書きたいけど説明が面倒な部分」は省略して書くことにする。
本当は書きたい、つまり本来ならば書くはずな訳だから、あえてその部分には「(中略)」などと入れてみよう。

まず……昨日になるのか一昨日になるのか分からないが、久しぶりに京都で舞台に出させてもらった。THEGO AND MO’Sの『土田の英』という作品。『ベトナムからの笑い声』をずっとやっていた黒川君が、解散後に始めたユニットだ。
 ずっと知ってはいたし、気になってはいたのだが、ほとんど交流はなかった。(中略 )いう経緯で、やっと一緒にやらせてもらうことができた。色々と話せて嬉しかったね。特に(中略)などで盛り上がった。
 しかも会場は私が自分で劇団をスタートした時から(中略)のでなんだか懐かしかった。

 ……しかし、反省した。自分をかいかぶっていたようだ。
 お題があって、それを自分で書いていくことになっていたのだが、なんか面白いものは浮かぶだろうと考えていた。なので、前日までは何もしていなかった。京都に移動し、MONOの打ち合わせなどを済ませ……わざわざホテルを取ってそこで書こうと思っていたのだが(中略)、という理由で夜中の2時から書き始めた。ネタは4つ。1つは思いついたが(中略)、で、結果、徹夜しての本番になってしまった。

 で、終わって、打ち上げ的な飲み会を抜けて、最終で東京に戻った。そしてソウル。『少しはみ出て殴られた』が始まるからだ。
 準備してなかったので、またしてもほとんど眠れずに出発することになってしまった。しかも羽田に向かう途中、(中略)だった。

 ソウルに着いてからも(中略 )で、(中略 )ので(中略 )なんとか到着。

 けど、今日はドキドキしたね。

  これまでも海外で上演してもらったことはあるし、特にソウルでは『悔しい女』を長い間やってもらっていたりするので、自分の作品を観に来るのも初めてではない。しかし、今回は初日前日ということもあって、皆もピリピリしているのが伝わる。ダメだしや、転換の確認をしているのを眺めていると落ち着かない気分になる。だけど(中略)で楽しかった。

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楽屋で皆と一緒にお弁当を食べる。美味しい。で、ふざけて(中略 )した。

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……まるで(中略 )なってしまった。


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 で、最後はゲネプロを観させてもらい、インタビューなどを受けてからホテルに戻った。途中で(中略)だったけど。

 明日はいよいよ本番。その前に一部をマスコミにプレビューして、そこで取材を受ける。私もそれに参加する。ちゃんと喋らないとね。

 上演してくれているLGシアター。

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 左が「少しはみ出て殴られた」。隣が次にやる蜷川さんの「海辺のカフカ」。その隣が三谷幸喜さんの「オケピ!」……私の地味さが申し訳ないくらい抜きん出てしまっているが、仕方ない。

 もうちょっと眠ろう。
 それにしてもフカフカだね、ベッド。海辺の(中略 )。あ、そういえば(中略)だ。大事なことは一つだけ、(中略 )だと思う。


                       
posted by 土田英生 at 06:18| ソウル 🌁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月12日

トーク、そしてMONOの新作

 ソウルから戻ってきて、次の日は15年前に一緒に芝居をした2人と会った。
 俳優さんと女優さん。
 まだ、続けていることが嬉しかった。
 二人共あまり変わっていない。
 しかしだ。実はこうしてのんだりするのも初めてだった。
 その公演の打ち上げ以来だ。
 私が稽古中などに話したことを細かく覚えてくれていて、とても嬉しかったと同時に、あまり自分が成長していないことにも気づかされた。
 今とほとんど変わらないことを喋っていたようだ。
 人間、やっぱりなかなか変わらないね。
 「土田さんは全然変わってませんね、そのお喋り」……どうやら昔からずっと今と同じように喋っていたようだ。

 なんか、最近、昔知り合った人に再会して話す機会が増えた。
 
 で、今月の26日にトークゲストで呼んでもらっている劇団☆APB-Tokyo 『醒めて歌え 青少年のための無人島入門』。→

 寺山修司さんの作品だ。
 普段、私がしている芝居とはかなり雰囲気が違う。
 どういうつながりなのか。
 劇団の代表で、演出・出演をしている高野美由紀さんとは、昔、同じ劇団にいたことがある。
 私が21歳で、彼女は23歳だった。
 私たちはとても仲がよく、ほぼ毎日一緒にいた。
 周りは完全に付き合っている思っていただろうけど、お互いに付き合っている人は別にいたし、全くそういう関係ではなかった。
 それでも一緒にいた。
 親友という表現が一番しっくりくるね。

 私には時々、こういう人が出来る。
 女性でホントに気が合い、親友という感じになる人がいる。その存在に助けられる。
 今もそういう人はいて、やっぱり救われている気がする。

 話を戻す。
 私はその劇団を一年でやめた。
 やめる時、高野さんからかなり怒られたのを覚えている。
 あれは新宿のダンキンドーナツだった。

 それでも関係は続いていた。
 時々、電話で喋ったりしていたし、MONOが初めて東京で公演した時には、仕込みから手伝いにきてくれたりした。

 で、今回、トークに出演する。
 皆さん、来て下さいね。

 先日は文学座のトークに呼んでもらった。
 12月の頭にあるオイスターズの公演にもトークに出る。
 ……なんだろう、これ。
 公演のトークにばかり出ている気がする。
 
 おかげさまで韓国で上演中の「少しはみ出て殴られた」の評判がいい。
 題材がとても現在の韓国に合っているようで、日本で上演した時よりもビビッドに受け止めてもらっている気がする。
 今日もLINEでスタッフとやり取りしていた。
 しかし、私は韓国語ができない。
 向こうも日本語が読めない。
 彼女は英語も得意ではない。
 なので翻訳ツールを使ってのやり取りだ。翻訳が結構、おかしなことになるので、私の言葉もどのように伝わっているのか不安だ。

 ……そして……。
 やっとMONOの新作の構想がかたまってきた。
 最初は初めての時代劇をやろうと思った。
 そして、江戸時代の話にしようと思っていたのだが、二転三転して……とんでもない設定になって来た。
 まあ、これはこれで面白くなりそうなので、このまま進めてやる。

 それにしても……風邪をひいてしまった。
 熱も出て、頭がぼーっとするし、歩くとフワフワする。
 まずいね。
 今日は早めに寝よう。
 ……もう二時半だけど。
 
 
posted by 土田英生 at 02:34| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月14日

迷惑をかける……。

 昨日から関西。
 しかし、いるのは京都ではなく伊丹。
 今日から高校演劇の兵庫県大会の審査員をさせてもらっているのだ。
 20代の頃はよくやらせてもらっていた。
 そういえば、ヨーロッパ企画の酒井君と初めてあった時、「土田さんに僕は高校時代に講評してもらったんですよ」と言われたこともある。
 最近はあまりやることはないが、今回、熱心に誘っていただいたのでこさせてもらった。
 
 会場は尼崎のピッコロシアター。
 伊丹のホテルに滞在しているので30分もあれば到着できる。

 昨日は伊丹に到着してAI・HALLの前を通った。
 そしたらiakuの仕込みをやっていた。
 顔を出して、横山君としばらく喋る。
 iaku『walk in closet』は今日が初日。自信作らしいので私は東京で観させてもらうつもりだ。→
 
 で、ちょっと近くにいる知り合いと会って、早目にホテルに戻った。
 そしてベッドに入った。
 集合は9時。
 遅刻する訳にはいかないし、それに……ちょっと風邪で体調がよくないのだ。

 朝の4時半に目が覚めた。
 身体がキツい。
 まだ風邪が治ってないのだ。
 しかし、中途半端な時間に目が覚めたので、起きて仕事をした。
 もうそのまま行くつもりだった。
 それまでの時間、MONOの新作のプロットを練る。
 朝の7時過ぎまでやって、そろそろ朝食でも食べて、出かける準備をしようと思った。
 
 で……ハッと起きた。
 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
 嘘だろ? と思った。

 ああいう時ってなんだろうね。
 起きた瞬間に『あ、やってしまった』と、分かる。
 動悸は激しくなるが、妙にスッキリしていたりする。

 時計を見ると……9時26分。
 すでに集合時間に26分遅刻している。
 しかし、まだ、私はホテルにいるのだ。

 すぐに電話をして事情を話して謝り、部屋を飛び出す。
 フロントでタクシーを呼んでもらうが、ちょっと時間がかかるという。
 あああああああ、もうダメだ。

 私はホテルを出て、道を走った。
 しかしタクシーは走っていない。
 阪急の伊丹駅まで行くと、タクシー乗り場に一台停まっているのが目に入った。
 飛び乗って『お願いします! ピッコロシアターです!!」と言うと、私の叫びとは無関係な感じでタクシーはゆっくりと走り出す。
 とてものんびりとした感じの運転手さんで『産業道路は……右折できませんし、どうしますかあ?』と笑っている。
 もちろん、運転手さんに罪はない。
 しかし、急いで欲しい。

『すぐにつきますよね?』

 と、懇願するように聞くと、

『いやあ、そんなすぐにはつきませんわ』と笑いながら答える。
 とてもよさそうな人だ。
 嫌いではない。
 しかし、しかし……今は……。

 私は深呼吸をした。
 時計を見ると……9時40分。
 10時からは最初の高校の上演が始まってしまうのだ。

 私は考えた。
 そしてなるべく静かに言ってみた。

『実は寝過ごしましてね。10時5分前には着きたいんですが……いやあ、乗ったタクシーがベテランの運転手さんで助かりました』

 すると……。
 この言葉が効果を発揮してくれた。

『まあ、そうですなあ。私は長いこと乗ってますからなあ』

 と、いうやいなや、前の車を抜き始める。ちょっと詰まると車線を変え、スイスイと車は走った。
 劇場に着くと、先生が外で待っていてくださった。

『あ、こっちです!』

 私は廊下を走った。
 少し開演は予定より遅く始まった。

 ……とても落ち込んだ。
 深く、深く落ち込んだ。

 そして初日が終了。
 終わってからは講評。

 遅刻したくせに……結構、喋ってしまった。
 そうなのだ。私はなぜか喋ってしまう。
 そして喋り出すとスイッチが入ってしまうようだ。

 しかも、帰りにはピッコロ劇団の舞台監督鈴木田君と、MONOにも何度も出てもらっている亀井さんと雑談をした。
 そこでも喋った。
 ベラベラ喋った。
 風邪なのに喋っている間は全然しんどくならない。
 なんだろう、この体質は。
 喋り過ぎて、帰る時はピッコロ劇団の方々に喋り過ぎを謝った。

 で、ホテルに戻った。
 そして、また深く反省。

 とても眠たかったが、逆に早く寝過ぎることを警戒した。
 また、今日と同じ過ちを犯したくないからだ。
 なので仕事をした。

 で、今から寝る。
 これでちょうどいいはずだ。
 
 ……最近、連続してこういうことがあるのだ。
 寝坊ではないが、木ノ下歌舞伎を観に行くつもりが、マチネをソワレを間違えて行けなかった。
 とても迷惑をかけた。
 ヨーロッパ企画も時間を2時間勘違いしてしまい行けなかった。
 とてもとても迷惑をかけた。

 大人なのにね。
 全然、ちゃんとできない。
 
 アラームもかけたし、うん、大丈夫。
posted by 土田英生 at 00:49| 兵庫 ☔| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月18日

気もそぞろ

 パリの事件やその後の世の中の流れを見ていて色々と考えてしまい、モヤモヤが身体に浸食してきている。
 お願いだから静かにしててという感じだ。
 モヤモヤは不安に近い。いや、恐怖かな。
 これからどうなって行くんだろうという漠然とした不安もあるが、最も怖いのは言葉が通じなくなっていっていることだ。

 人が、どうも簡単に善悪を分けて、自分の立場を安易に表明してしまっている気がする。
 そして、一旦、自分の立場をはっきりとさせると、他者の言葉は耳に入らない。
 相手を打ち負かそうとすることだけに情熱を傾ける。
 理性的に物事を考えたり、自分の間違いに気づいて考え方を変えたりする余地がない。感情を軸にして動くだけだ。なにかに取り憑かれているようにすら感じる。

 政治に対してだって、文句を言うと「国益を考えた方がいい」などと言われたりする。
 抜け落ちている気がするのは、そもそも「国」とはなにかという点だ。
 日本は国民主権なのだ。つまり国とは私たちの総体のことだ。様々な考え方を持った人の集まりが国であって、政府や国家体制が国なのではない。だからそれぞれが勝手に意見を言えばいい。そしてその中から、この国の形が見えてくるというのが筋道だ。

 とにかく冷静に対話できる状態でなければ、お先真っ暗だ。
 
 社会なんて面倒くさいものなのだ。
 
 最近、私はとてもよくミスをする。
 気もそぞろという感じだ。
 まあ、これは別に社会のせいではない。
 多分に個人的な問題だ。

 変化がありすぎるせいかも知れない。

 歪[いびつ]「ソラミミホンネレソラシド」の公演が終わって、すぐに広島のアステールプラザで俳優コースの稽古と試演会の本番があって、京都ではTHE GO AND MO'S「土田の英」に出演して、翌日からはソウルに行って「少しはみ出て殴られた」の初日に立ち会って、この前は高校演劇の兵庫県大会の審査と講評。

 この一ヶ月の間、店などから出た時、財布やiPhoneを持った店員さんが追いかけてくることがしょっちゅうある。この前、品川駅では新幹線に乗ろうとしたら「お客様、商品を!」と、店員さんが『深川めし』を持って走ってきたし、あれと思ってトイレに戻ったら、ポンと財布が置いてあることもしばしばだ。

 だから迷惑もかける。

 少し前になるが木ノ下歌舞伎を観るつもりでいたら、制作の本郷ちんから「どうしましたか?」とメールが来た。昼の公演だったのにすっかり夜だと勘違いしていたのだ。
 で、この前はヨーロッパ企画を観るつもりでいたら、一緒に行こうと言っていたもたいさんからメールが来た。時間を2時間勘違いしていたのだ。
 
 そして……高校演劇の兵庫県大会では初日に遅刻をしてしまった。
 大会が始まるのを遅らせてしまった。
 次の日からはもう必死だった。
 怖くてなかなか眠れない。
 で、眠ったとしても、朝の5時くらいに目が覚めたりすると、そこからじっと起きていた。
 朝食を取ろうとして「あ、もうしばらくお待ち下さい」と言われたりもした。
 レストランに早く行き過ぎたのだ。
 
 最終日。
 不安だったが、起きることができた。
 随分と早くにホテルを出た。
 泊まっていたのは伊丹。会場は尼崎。
 電車で行くのだが、歩いても40分くらいで着く距離だ。
 最後の日に遅刻しなかったという喜びで、私は歩いてみることにした。
 音楽をかけて、気分良く歩き出す。
 一緒に歌ったりした。
 
 ……と、途中で……とてもトイレに行きたくなった。
 そうだ。大きい小さいで表現すれば、大きい方だ。
 まだ、歩き出して15分。
 先は長い。
 このまま行けるか、いや、どうだろう……。
 考えながら歩いていると、公園が遠くに見えた。
 あそこに立ち寄ろう。
 しかし、思ったよりも公園は遠かった。
 そして。
 そして……。
 やっと到着した公園だというのに……ないのだ。トイレがないのだ。
 
 人の身体は心とつながっている。
 公園にはトイレがあると思い込んだせいで、すっかり身体は“すっきりするモード”になっている。
 ああ……。
 私は公園を後にして元の道に戻ろうとした。
 苦しい。
 すでに歩き方がおかしい。まるで開発途中のロボットだ。
 きっとアシモの方がスムーズに歩けるだろう。
 
 どうすればいいんだ。
 絶対に劇場までは持たない。
 と……今度は……ローソンが遠くに見えた。
 遠いよ……と思ったが、他に方法はない。
 あそこを目指すしかない。
 もう、私にはローソンのミルク缶のマークがトイレの便器にしか見えない。
 ゆっくり、ゆっくり歩いた。
 やっとローソンが目の前に現れた。
 私は必死で言い聞かす。

『安心するんじゃないぞ、私の身体よ』

 公園ですら気が緩んだのだ。
 万が一、ローソンでダメだったらもう終りだ。
 イヤだ。
 こんな大人になって、失敗したくない。
 しかもこれから高校演劇の審査なのだ。
 あんなに余裕があったはずの時間も、トイレを我慢してゆっくりペースで歩いたのと、あの公園の遠回りで結構、ギリギリになって来ている。

 私はローソンに入った。
 店員さんが爽やかに『いらっしゃいませ』と言う。
 私は下半身には力を入れたまま、なるべく何気ない笑顔で『ちょっと、トイレ借りていいですか?』と言ってみる。「そんなにしたくはないんだけど、念の為に行っておこうかな」という雰囲気を醸し出す。

『どうぞ』
 
 爽やか店員さんは笑顔で言う。
 しかし、私はかなり限界だったので、もう、ロボットとすら呼べないくらいおかしな歩き方でトイレに向かった。アシモどころではない。ブリキでできたロボットという感じだ。
 嬉しいことにトイレは空いていた。
 私は入るなり、猛烈に急いだ。
 
 ……ああ、こんな幸せなことがあるだろうか。

 間に合った。
 私は、私は間に合ったのだ。
 
 トイレの床には投げ捨てられたように、私のリュックやiPhoneが転がっている。
 そうなのだ。
 丁寧に持ち物をどこかに置く余裕なんてなかったのだ。
 
 そしてトイレから出た。
 すっかり生まれ変わった私は時計を見る。
 早足で歩けば間に合うなという感じだった。
 トイレを借りたのだ。
 買物くらいしよう。
 そう思ってコーヒーなどを買った。
 
 で、レジだ。
 財布がない。
 何度探しても財布が見当たらない。
 あれ?
 もしかしたらトイレかも知れない。
 ポケットに千円札が入っていたので、取り敢えずそれで払い、爽やか店員さんに『ちょっと、トイレに忘れ物をしたかも知れないので』と言って、もう一度トイレに向かった。
 赤になっている。
 誰かが入っている。
 と……やがて流す音が聞こえて、ジャージ姿のややコワモテのおじさんが出て来た。
 私はトイレを覗いた。
 なにもない。
 
 ……人を疑ってはダメだ。
 そう思いつつ、さっきのおじさんを疑ってしまう。
 しかも、その人はトイレから出ると、そのまま店を出て行った。
 
 せっかく爽やか気分になったというのに。
 私は仕方なく歩き出した。
 急がなければいけないのに……どうもスピードが出ない。
 
 と、電話が鳴った。
 鈴木田君だった。

『先輩、財布忘れてますよ』

 鈴木田竜二の声は天使の声として耳に心地よく響いた。
 彼はピッコロ劇団の舞台監督だ。
 MONOでも昔、一緒に仕事をしたことがあるし、外の舞台でも何度も組んでいる。大会はピッコロシアターで行われているので、前日の夜、一緒にご飯を食べて、そのまま車で送ってもらったのだ。で、朝見たら助手席に私の財布がポツンと置かれていたらしい。

 私はすごいスピードで歩き出した。
 足がどんどん動く。
 きっとアシモでは追いつけないだろう。

 そしてジャージのおじさんのことを思い出した。
 
『ああ、疑ってすみません』

 彼はセリヌンティウス、私はメロスだ。

 早足で歩いた結果、時間にも間に合った。
 財布も受け取った。
 ただ、汗だくだった。
 
 だから私だけTシャツ姿で高校生の舞台を見た。
 きっと兵庫の高校生たちは「なんであいつ、あんなに薄着なんだ」と、不思議に思っただろう。
 
 ダメだ。
 こういうことが多すぎる。
 落ち着き、気をつけて過ごそう。
 そう決心した。

 ……翌日は予定の新幹線に乗り遅れた。
posted by 土田英生 at 06:30| 東京 ☔| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月21日

フワフワと話がそれる


 昨日、昼間にいくつかの用事を済ませ、そのまま下北沢をブラブラしていたら、突然、フラフラしてきた。
 ブラブラとフラフラは似ているけど全然違う。
 
 ちょっと前からやたらフワフワはしていた。
 フワフワとフラフラも違う。
 フワフワはなんか身体が浮いているような感覚で、これは昔からよくある症状だ。
 原因も自分では分かっているので問題はない。
 いや、全くない訳ではないが、心配はない。
 ただ、フワフワに加えて、昨日はフラフラし出した。

 つまり、フワフワした状態でブラブラしているとフラフラして来たのだ。

 ……なんか、すごいな「フ」。
 「フ◯フ◯」という表現は一体どれくらいあるんだろう?
 ちょっと書き出してみよう。
 ……。
 いや、意外と思いつかなかった。
 
 話がそれた。
 今は「フ」は置いておこう。
 風邪の話だ。

 事務所に戻ると……明らかにしんどかった。
 寒気がして、どうやら熱が出てきた。
 そのまましばらく眠った。
 
 ……ハッとして起きた。
 18時半。
 18時から人と会う約束をしていたはずだ。
 まずい。
 まただ。
 この前、反省したばかりなのに。
 私はどれだけ遅刻したり、寝坊をすれば気が済むんだろう。
 そう言えば小学校の時、
 いや、話がそれるのでやめよう。

 見ると……LINEにはメッセージ。
 もう、すでに三十分も待たせている。
 私は慌てて電話をして謝り事務所を出た。
 やはりフラフラする。
 しかも寒い。
 
 駅では、去年、俳優講座を受けていた「うにちん」こと、傳田うにが待っていた。
 彼女の話を聞く約束をしていたのだ。

 店に入って色んな話をした。
 ひとしきり喋り終わった頃「啓君」こと、加藤啓がやって来た。
 うにちんが呼んでくれたのだ。

 で、三人でのんだ。
  
 実は……彼とこうしてお酒をのむのは15年振りだ。

 むかし、『ニッキーズパビリオン』という舞台に出演した時だ。
 出演は松尾貴史さん、ラーメンズ、そして啓君。
 東京公演はそれにプラスしてサモアリナンズ、大阪公演ではGOVERNMENT OF DOGS(ガバメントオブドックス)だった。

 GOVERNMENT OF DOGSは私がいたコントユニット。
 いや、解散はしていないのでまだ在籍しているはずだ。
 1991年から96年くらいまで関西を中心に活動していて、なにも言わずにすっかり活動をしなくなり、そして11年振りにいきなりコントライブをやり、カーテンコールで「これからもガバメントオブドックスをよろしくお願いします」といいながら、再び活動していないという気まぐれなユニットだ。
 座付作家は故林広志。
 笑いのセンスは傑出しているが、社会性が欠落していると評判の男だ。
 若いときから髭が濃く、本番前にはまるで草刈り機のような音をさせて髭を剃っていた男だ。教会の牧師さんに英語の個人レッスンを受けていた男だ。
 いや、今は彼の話ではなかった。
 GOVERNMENT OF DOGSの説明だった。メンバーは故林君とMONOの水沼君、犬飼若博、エディ・B・アッチャマン、そして私。

 いやいやいや、GOVERNMENT OF DOGSの話ではない。
 またしても話がそれている。
 「ニッキーズパビリオン」の話だ。

 作、演出は故林広志。
 なので私たちも出ることになったのだ。
 
 なんの話だ?
 そうだ、啓君だ。
 加藤啓について書こうと思って、こんなに遠回りをしているのだ。

 とにかく、その舞台で私たちは共演した。
 まあ、ほとんど絡みもなかったんだけど。
 とにかく、啓君とは……その打ち上げで飲んで以来だったのだ。

 啓君はありとあらゆる舞台に出ている。
 私が何かを観に行くと、なぜか彼が袖から出てくる。
 「あ、これにも出てるんだ」と、その度に思う。
 今年もそうだった。
 舞台上の彼を何度も観た。

 しかし、15年だ。
 最初の頃は会えば「おう、元気にしてる?」と挨拶していた。
 しばらくすると「おお、どうも」と軽い挨拶になった。
 そして最近は見かけると「おう」と、小声で会釈する感じになっていた。
 なので、ゆっくり喋る機会もなく時間は過ぎていた。

 昨日……なぜかとても楽しかった。
 そして、私が勝手に思い込んでいた「加藤啓」という人物像と、昨日の彼は違った。
 結論を言えば、もっと早く喋っておけばよかったと後悔した。
 不思議なもんだね、なんだか。
 
 で、熱があることも忘れてしまい、結構のんだ。

 今日、起きたら熱は下がっていた。
 フラフラも治った。
 ただ、フワフワは残っている。
 重力がおかしい。
 
 MONOの新作がようやくはっきりとした形になった。
 タイトルや登場人物も決まった。
 来週には正式に発表できるはずだ。
 今日もかなり構想は進んだ。
 合間に……粘土でこんなものを作った。

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 ま、これがちょっと新作に関係したりするんだけど。

 フワフワするので眠ろう。
 明日は二本も舞台を観る予定だし。
posted by 土田英生 at 03:35| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月24日

プレッシャーに弱い。

 ストレスがたまると、身体がフワフワする。
 身体は元気満々なのに、真っすぐ歩けなくなったりする。

 で、最近……またしてもそれがひどい。

 もうこれは二十代の頃からで、これまでもそれで何度も病院にも通った。
 自律神経失調症からくるめまいらしい。
 交感神経と副交感神経。
 簡単に言えば、交感神経は気が張っている時に活発になり、リラックスをすると副交感神経が優位になる。
 
 で、どうやら私はリラックスをすることがとても下手なのだそうだ。
 いつも「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる」感じらしい。だからじっとしている時でも、交感神経が優位になっているのだ。

 二十代の後半に私はバセドウ病になったが、それもストレスが原因じゃないかと言われた。
 そんなこと言われましても……という気分だ。
 私なりに必死でリラックスしているのに。

 バセドウ病が一番ひどくなったときは大変だった。
 手は震えるし、目はどんどん大きくなるし、挙げ句の果てに右目が動かなくなった。
 で、入院することになったのだが、ちょうど『約三十の嘘』という芝居を稽古中だったので、頼み込んで本番が終わるまで待ってもらった。
 ただ、目の焦点が合なくなり、まともに見えなくなってしまったので、私の役は眼帯をする設定に書き直した。詐欺師たちの話だったので都合がよかった。ラストだけその眼帯を取って、それも嘘だったというオチに使わせてもらった。

 今はそんなにストレスを感じるような状況にはないはずなのに。
 先月から今月にかけてバタバタしていたせいだろうか?
 身体は元気なので外に出たいが、歩くとフワフワして変な感じになってしまう。
 
 で、昨日は仕事をしながらじっとしていた。
 ただ、感情が安定しない。
 眠ると昔の夢ばかり見る。
 
 卓球の試合の夢を見て目が覚めた。
 泣きたい気分だった。

 中学時代、実際に私は卓球部だった。
 下手ではなかったと思う。
 ただ、試合には弱かった。
 緊張すると全く力が出せないタイプだった。だから校内で部活のメンバーと試合をすると割と強いのに、他校との試合になると弱かった。
 なのでレギュラーギリギリの位置にずっといた。
 その頃の卓球の団体戦は、大体4人で試合に出る。
 1番手、2番手、ダブルス、4番手、5番手。
 この5試合で3つ勝った方が勝利になる。

 大きな試合の前。
 校内でトーナメント戦があった。
 私はとても調子がよかった。
 これなら選ばれるのではないかと思った。

 で、大会当日。
 選手が発表になった。
 私は5番手で出ることになった。
 私のいた大府中学は強かった。
 私まで回らずにどんどん勝ち上がった。
 そして準決勝まで進んだ。

 最初の選手が勝った。次が負けた。ダブルスで勝った。次が負けた。
 2対2だ。
 ……とうとう私に回ってきた。
 私が勝てば決勝。
 負ければ敗退。

 ……もう、卓球台に向かって歩くときから私はダメだった。
 試合前のウォーミングアップですらぎこちなかった。

 あんなに昔のことなのに。
 思い出すと今でもイヤな気分になる。
 私はもうただ、スマッシュを打たれるだけの存在になっていた。
 相手はどんどん乗ってくる。
 1セット目は完敗。
 2セット目に向かう時、顧問の先生から怒鳴られた。

「お前、なにしてるんだよ!」

 2セット目はもっと悲惨だった。
 結局、そこで敗退。
 大会からの帰り道、私はずっと下を向いていた。
 消えたかった。
 
 昨日、スマッシュを打たれ続けている夢を見て飛び起きた。
 
 起きてから、そういえば……『私はずっとそうだったな』と様々なことを思い出した。
 少年サッカーをやっていた時の準決勝もそうだった。
 私はキャプテンに指名された。私のミスから点を取られて負けた。
 
 駅伝の選手に選ばれた時もそうだった。
 私はアンカー。
 で、2位でタスキを受け取ったのに、後半でどんどん私は抜かれて行った。
 結果は6位くらいだった気がする。
 
 とにかくプレッシャーに弱かった。
 いや、きっと今でもそうだ。
 
 ……それにしてもフワフワするねえ。
 まるで宇宙飛行士だ。
 お風呂にも長く浸かったりしてるのに。
 
 
posted by 土田英生 at 05:35| 東京 🌁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月30日

MONO『裸に勾玉』!

 慌ただしくなってきた。

 劇団☆A・P・B−TOKYOのトークゲストをしてその後、初日打上に参加させてもらった。
 演出、主演の高野さんとは昔、同じ劇団に在籍していた過去がある。
 芝居にはその時の香りがあって、私としてはとても懐かしかった。
 翌日は大阪へ移動。劇作家協会関西支部のイベント『劇作バトル』。イキウメ/カタルシツの前川君と彼の書いた『語る室』を題材にトーク。この企画はなにより私が勉強になった。なるほどと思ったり、新しい発見があったりして、新作に取りかかっている私としてはとても嬉しい企画だ。前川君とここまでゆっくり喋ったのも初めてだったし。そしてやはりお酒をのみに行った。
 大阪に泊まって、朝はMONOの打合せ、そしてTHE ROB CARLTONを観る。若い集団ながら、私はここでも懐かしさを覚えた。なんだろ? 一回りしてきたのかなという感想を持った。
 そのまま東京に戻る。
 今日は朝から取材。
 新作の執筆に本腰を入れているのだ。

 MONO第43回公演『裸に勾玉(まがたま)』。
 
 舞台設定は弥生時代後期。
 もちろんリアルにはできない。
 卑弥呼などが出てくる訳でもない。その頃の庶民のなんてことない生活を描く。
 そういう意味では普段の芝居と変わらないのだが、やはり調べなければいけないことはたくさんある。リアリティのないものはイヤなのだ。
 どの辺りに虚構を設定するのか、悩みながらも楽しんでいる。
 
 芝居とか表現は、現在、生活していて感じることから始まる。どうしたって社会に対するリアクションになる。私にだって思うところはたくさんあるし、いいたいこともある。
 かといって、その主義主張を開陳しようというのではない。
 あくまで、人々の有様を描き、そのことで“言葉だけではない”なにかを表現したい。
 時代設定を変えることで、より、現代を描けるはずだと踏んでいる。

 だからまずは、舞台の世界を自分のものにしなければいけない。
 スターバックスで話されている会話を書くように、高床式倉庫の下で喋る人たちの会話を書きたい。
 そういう意味でも、今日は収穫があった。
 
 明日は舞台美術の打合せだ。
 なので、帰ってきてから構想を詰めた。
 面白くなるね。
 ここ数日の間に受けた刺激がいい形で私を奮い立たせている。
 やっぱり、作品を創るのは……苦しいけれど楽しい。

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posted by 土田英生 at 01:33| 東京 ☀| MONO | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする