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MONO代表・土田英生のブログです

2016年04月04日

なんとかなるね。

 なんだか久しぶりだ。
 やっとここを更新できるくらいに回復して来た。
 ……私はとても疲れていたらしい。
 ま、今も色々とあるけれど、少しはましになった。
 
 おかげさまで「裸に勾玉」の公演は無事に終了した。
 弥生時代のセットともさようならだ。

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 ……よく見たら高床式倉庫の上に脚立がのってるな。
 私が撮ったのでこんなことになった。

 とにかく弥生時代を舞台にした芝居は終わった。
 何度も書いたことだが、今回は本当に不安だった。
 上代語をベースに、嘘弥生語で台詞を書き、現代の人と交錯させる。
 そこにリアリティーは生まれるのか、全く自信がなかった。
 もちろん賛否はあると思うが、概ね、想像したように観客は受け取ってくれたように思う。

 タイムスリップ的な設定に迷いもあった。
 これはとても難しい。下手すると完全に“ベタ”なものになってしまう。
 私が狙いとして考えていたのは、その理由などを全てすっ飛ばそうということだった。
 
 私たちは目の前に広がる世界を現実だと認識している。
 けれど、そう思っているこの場所だっておかしい。
 冷静に考えると、不思議で仕方ない。生まれて育つ過程で、目の前に広がる世界を“現実”だと信じているに過ぎない。

 中学校の時、FAXの仕組みが分からずに混乱した。
 絵を電気信号に変換してそれを送り、向こうでもう一度絵にするのだという説明は理解できた。
 しかし、感覚的に分からなかったのだ。
 だって、絵がそのまま送れるなんてあり得ない。
 それがパソコンが発達し、今や、なんでも送れてしまう。
 この環境で育てば、それが現実世界だ。

 だから、いきなり目の前が弥生時代になってもいいと思った。
 描きたかったのは「どうしてその時代に行ったか」ではなく、「その時代にいたとしたらどうなるか」なのだ。
 
 東京公演を観た小林賢太郎君が「発明だよね。全く説明しないって」と言っていた。
 少しだけ安堵した。
 大体、弥生時代を使って、結局書いているのは今の人間のことだったりするしね。
 ストーリーをみせたいんじゃなくて、そこにる人の有様を描きたいんだし。
 
 とにかく公演は無事に終わった。
 全員は写ってないけど、東京のゲネプロ終りに撮った写真。

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 谷古宇さん撮影だ。
 だからなのか、脚立ものってない。

 大阪公演が終った途端、私はいきなり現実に戻った。
 無理をしていたせいか、身体も心もダウンした。
 次の日は久しぶりにMONOの事務所で荷下ろしやり、京都の運転免許試験場で免許証の更新をし、東京に移動した。
 下北沢に着くと……もう完全に落ちていた。
 
 2日間、いや、3日間……よく分からないが、とにかくじっとしていた。
 4月中旬を目指して書いているものがあるので、それを時々はやっていたし、一度だけ友達と会ったりしたが、基本的にぐてーっと横になっていた。
 動き出さなければと思うのだが、身体も心もいうことをきいてくれない。
 現実にある片付けなければいけない問題ばかりが、頭の中をグルグル回っていた。
 このまま溶けていってしまうのではないかというくらいダラダラした。

 何もする気がおきない。
 お芝居などをやっている人には経験があると思うが、公演の翌日は差し入れでもらった食べ物で済ましてしまうことがある。
 アーモンドやドライフルーツもたくさんもらった。
 お腹が空くとそれらを食べてしまう。
 ちゃんと食事をしないと。
 そう思うのに、出かける気にもならないのだ。
 
 このままではいけない。
 とにかく外に出なければ。そしてきちんとしたものを食べなければ。
 そう思って、ある友達をご飯に誘ってみた。
 覇気がないままでも会える間柄だ。
 お肉でも食べよう。
 そして、これをきっかけに浮上しよう。
 張り切ったのもつかの間だった。
 ……都合が悪いという返信だった。
 また、フニャフニャになった。
 やっぱり溶けよう。アーモンドで過ごそう。
 木の実で過ごすなんて……まるで縄文時代だ。
 ああ、芝居の設定よりも、時代が戻ってしまっている。

 ダメだ。
 これではダメだ。
 重い身体を無理矢理起こして、外に出た。
 なぜか春が来ている。
 店に入って日替り定食を注文した。

 と、別の友達から連絡が来た。
 「ご飯食べましょう」という誘いだった。
 タイミングいいのか、悪いのか。
 結局、夕方会うことにした。
 そして会ったら……朝まで喋ってしまった。
 気がつけば10時間経っている。
 私は人と会うと、自然と張り切ってしまうのだ。

 しかし、その勢いを使って、ずっとご無沙汰だった病院にも行った。
 そうなのだ。
 ある薬が切れていたのだ。
 これも気分がすぐれない原因だったのだと思う。
 
 段々と動き出した。

 と……やたら色々な人からLINEが来る。
 本当に次々と来る。
 全員が会おうというお誘いだ。
 どうしたんだろう?
 皆で相談でもしているんじゃないかと勘ぐりたくなるくらい、連絡は続く。
 しかもだ。「この日はどうですか」という提案は誰もかぶっていない。
 上手い具合にずれているのだ。
 で……予定が一気に埋ってしまった。

 人は因果律で物事を考えたりする。
 悪いことが起きると、この前、あんなことをしたからじゃないのかと思ったり。
 関係のないことを結びつけてしまったりする。

 どうして急に、次々、友達が会いたいといってくるのか?
 それもうまい感じで、ローテーションを組んで。

 もしかしたら、私の身になにか起こるんじゃないか。
 私は終わってしまうのではないか?
 そのことを皆は知っていて、連絡をくれているのかも知れない。
 そういえば、最近、悟りを開いたかのような考え方をしている。
 「人間だもの。みつを」という感じなのだ。
 これはいけない。

 今日は十年来の友人の結婚パーティー。
 ロンドンで出会って以来、ずっと仲良くしてもらっている大事な友達だ。

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 彼女はとてもキレイだった。
 私も幸せな気持ちになった。
 新婦の友人代表で祝辞も述べさせてもらった。
 色んな想い出や会話が走馬灯のようによぎって行く。

 しかも、久しぶりに宮本亜門さんと会った。
 嬉しかった。
 昔、「BOYS TIME」という舞台を一緒にやったのだ。
 あの時の記者会見は緊張したなあ……取材に来ている芸能レポーターをみて興奮し、サインをもらおうとして「脚本家なんだからやめた方がいい」とアドバイスされたなあ……あああ……懐かしい……。

 「いい人生だったもの。ひでを」

 ……まずい。
 やっぱり悟っている。
 終わってしまう、終わってしまう!
 
 いや、大丈夫だ。
 大丈夫なことは自分が一番よく分かっている。
 今日もパーティーの後半にあったダンスタイムで、私は率先して踊っていた。
 しかも「エヴリバディ、カモン!」と叫んだりした。
 悟り切った人間は「カモン」とは言わないはずだ。

 それに大体、最初、勘違いして別の会場に行ったのだ。
 そこで「受付はまだですか?」と聞いたら「なんのでしょうか?」と言われたりした。
 私がいたのは恵比寿。会場は飯田橋。
 タクシーに飛び乗り、「後、何分で着きますか?」と5回も運転手さんに尋ねたし。
 まだまだ生々しいね。
 悟りとはほど遠い。

 目の前には色々と片付けなければいけない事柄があるけれど、なんとかなるね。
posted by 土田英生 at 07:12| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月19日

いやな春だけど。

 全然、更新してないね。
 毎年のことだが、公演が終わるとどうも気分が落ちてしまう。
 昨年もそうだった。今年も終わった途端にどうもバランスがおかしくなった。

 何人もの友達が下北沢まで遊びに来てくれた。
 くだらない話をして少し楽になった。
 去年やったユニット、歪[いびつ]の三人が花見を企画して誘ってくれた。
 とても寒かったが、また少しだけ回復した。
 
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 その後も劇作家協会の花見に顔を出したり、仕事で宮崎に行ったりして段々と社会復帰していった。

 宮崎は取材だったのだが、とても楽しかった。
 新しいことを知り、色んなことを考えた。
 宮崎についてはまた書きたい。

 とにかく海がよかったねえ。
 サーフィンのメッカになっているだけあって、波がすごかった。
 久しぶりに海を見て、とても癒された。

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 そんなこんなで、やっと少し浮上した。

 だから、更新しようと思った。
 楽しいことを書こう。

 そんな時……熊本の地震があって……またしても書く気を失った。
 地震の被害を目の当たりにしてショックを受けたこともあるけど、それに対する社会のリアクションが私をさらに凹ませた。

 ホント、殺伐とした世の中になった。
 人の余裕のなさが気にかかる。
 柔軟性がないというか、皆が自分の立場を決め込んで、その場所に固執する。
 リアルな会話のやり取りがない。

 例えば、川内原発についてもそうだ。

 熊本、そして大分でも地震が起きた。
 活断層に沿って地震が連鎖しているらしい。そして、まだ続いている。
 今後の地震活動がどんな風になって行くのか、分からないと専門家も言う。
 そんな中、川内原発を止めて欲しいという声が出る。当然のことだと思う。

 けれど、そのことに対しても実際にどうした方がいいかという話にはならない。
 原発推進の立場にいる人たちからは一斉に攻撃をされる。反原発の人たちがなんか言ってるよ、、◯◯ガル以下だからどう、素人がつべこべ言うな、規制委員会が判断するからいい、などなど……。
 すでにそこに議論の余地すらない。あるのは対立だけだ。

 立場を越えて他人を想像してみるということがない。

 生活レベルで考えたら分かることなんじゃないかと思う。
 福島第一原発での事故があり、それすら収束していない事実を私たちは見ている。その上で……。
 気象庁も今回のような地震は希有だという。分からないという。だったら、南西で大きな地震が起きるかも知れない。近くには唯一稼働している川内原発がある。

 ……心配するのはとても自然な感情だ。

 なのに、大丈夫だというニュースが僅かに流れるだけで、テレビなどでも、どうすればいいのか議論しているところすら見ない。触れることすらタブーになってるとしたら……もうダメだよね。大丈夫なんだとしたら、きちんとそのことに触れて解説すればいい。
 
 とにかく、皆が立場でだけ物を言う。違う立場の意見はすべてを攻撃だと受け止め、それぞれが都合のいい知識を振り回して、相手を倒そうとする。
 そこに本当の理性的な会話はなく、感情的なやり取りがあるだけだ。喧嘩だ。

 議論と喧嘩は違う。

 知らないことがあれば、そうなのかと自分の考えを刷新し、そしてまた新しい意見を出す。
 それをすり合わせて、新しい結論を生み出して行く。
 一緒に何かを生み出そうという意思を持ち合うこと、それを絆と呼ぶんだと思う。
 絆とは「同じ日本人だから」とか、そういうことではないのだ。意思疎通があって、関係が生まれるからこそ、絆になるのだ。

 ああ、なんか、イヤな春だ。

 閉じてニヒリズムに陥ってしまったのではダメなんだと分かってる。
 だから私は親しい人の顔を必死で思い浮かべる。
 あの人たちが生きている、そう思うことで社会に好意を持とうとする。
 
 復活しないと。
 素敵な人たちもたくさんいるしね。
posted by 土田英生 at 08:07| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月23日

どうでもいいことを書く

 今日はどうでもいいことを書こう。

 別に私は普通なのだが、どうも最近、ここやTwitterで書いていることが暗いらしく、メールなどでやり取りする人たちから「大丈夫ですか」といきなり聞かれたりする。
 確かに「気分が落ちる」とか、そんなことを書いているので仕方ないんだけどね。
 というか、やっぱりアピールしてるんだろうね。
 誰にだよ、と思う。

 大変な問題を抱えている人たちは山のようにいるだろうし、比べることではないけれど、今、被災している人たちから見れば、私が個人的に悩んでいることなど屁でもない。
 部屋の中にいて、こうしてパソコンに向かえているんだしね。
 さっきはあんトーストも食べた。
 こんな幸せなことはない。
 
 とにかくなんとか今月中に書き上げようと思って取り組んでいるものがあるのだが、これがなかなか進まない。いや、絶対に終えるつもりではいるのだが、今月も残り少なくなってしまった。
 そして、私は書けないとすぐになにかを作り出したり、部屋をいじり出したりする傾向がある。
 試験勉強中に部屋を片付け出すという経験は誰しも持っていると思うが、まあ、とてもそれに近い。

 私は最近は基本的に東京にいる。
 京都には帰らず、下北沢にいる。
 ただ、問題はここが完全に私の部屋ではないことだ。
 ここは……MONOというか、MONOの制作を請け負っている有限会社キューカンバーの事務所だ。
 私は一応、キューカンバーの代表取締役でもあるので、別にここにいるのは構わないが、問題の根本は“私だけの空間”ではないということだ。

 けれど、私は……周りの景色が、つまりインテリアがあまりに自分に合ってないと気分が悪くなる。
 自我というか、自分の意識が部屋全体に及んでいる感じで、例えば部屋が散らかっていると仕事は全くできない。だから書く前には掃除をする。
 マンスリーマンションに滞在したり、いや、ホテルでも数日間同じ部屋にいると、勝手にカスタマイズしてしまう。しかも基本的にアンティーク家具が好きだったり、DIYが好きなので、無駄に工夫をしてしまうのだ。

 歴代の部屋たちもおかしなことになっていた。

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 ……これは随分と昔だ。
 やっと演劇で生活ができるようになり、2部屋あるマンションに引越した時だ。
 京都の壬生というところだった。
 一人暮らしなのにイスは6脚あった。皆からは家具屋さんと呼ばれていた。

     * * * *

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 写真が汚いが、ここは次に引越したマンションの仕事部屋。
 分譲マンションだったので部屋数も多く、内装もいじり放題だった。
 壁も全部自分で塗った。このマンションの時は玄関から入った廊下もサーモンピンクにしていたので、時々、宅配便の人がドアを開けて「うお」っと小声を上げたりしていた。
 
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 これだ。
 壁をぶち抜いてステンドグラスを入れたりしたし、ドアの周りや天井と壁の継ぎ目には全てモールディング材をつけたり、とにかく自分でやるのは大変だった。材木が100本以上家に届いて困った覚えがある。まあ、自分で注文したんだけど。

     * * * *

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 これは現在の京都の自宅の仕事部屋。
 これはさすがにプロにやってもらった。
 イギリスっぽいのだが、ここに座って仕事をしているのは私なのだ。基本的にあぐらが好きなので、イスの上であぐらをかいたりしてる。だったら和室にすればいいのに。
 そういえば、ロンドンに留学している時、日本が大好きなイギリス人がいて、家に畳を敷いていた。少しだけ不似合いで面白かった。まあ、それと同じだし、ボジョレーヌーボーの解禁を祝っている日本人を見て、私は笑ったりしているが、やっていることは同じだね。

     * * * *
 
 とにかく私は自分の周りをいじるのが好きだ。
 そうでないと仕事ができないという厄介な特性を持っている。
 
 でも、ここは……さっきも書いた通りMONOの事務所だ。
 必要最低限のものしか置かないように気をつけているし、アンティーク趣味も封印し、さらにはイギリスっぽさも全くない。
 だけどいじりたい。
 だから行くのは百均か東急ハンズ。
 で、ちょっとだけ作ったりしている。
 
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 今の事務所の机周りはこんな感じだ。
 気をつけていたはずだが、結構、物が増えている。しかも自作のレザークラフトであふれてもいる。
 これは……次に誰かがここに来た時に怒られるのではないか。
 まずい。
 あくまでMONOの為に事務所をいじっていると主張しなければ。

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 玄関の靴箱の上をこんな風にしておいた。
 これで、これで私の主張は受け入れられるだろう。

 
posted by 土田英生 at 06:29| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月28日

土田英生トークライブ vol.2@atlier下北沢

土田英生トークライブ

日時◎5月11日[水]
場所◎atlier?下北沢[アトリエ]


19:00〜21:00
1,500円[ワンドリンク付] 
地図[食べログの地図]→

 ※終わってから、残りたい方はそのままお店で飲めます。

 参加希望の方はこちらの予約フォームでお願いします。
 予約フォーム→
 また、atlier[アトリエ]までメール、もしくは電話で申込みしてくださっても大丈夫です。
 下記に店舗情報を書いておきます。

* * * *


atelier?[東京都世田谷区北沢2-37-3-2F]

【TEL】03-5790-9719
【E-mail】powershift.kou@gmail.com
【FBページ】→リンク
【twitter】@atelierqqq

[アトリエについて]
下北沢にあなたのアトリエ。しあわせごはんと銀河なビールで素敵な夜を。
お一人様welcom!!東京砂漠にあなたのオアシス(*´▽`*)
プロジェクター等の機材も使える貸切営業(2〜35名様)、劇場、イベントでのケータリングも承ります。

* * * *


 当日いきなりでも大丈夫だと思いますが、万が一いっぱいに……いや、ないですね。けれど、念の為ということで。昨年は定員20名までと書いたものの、本当にちょうど20人の申込みで、だったら定員なんて書かなければよかったと反省しているのと、定員20名と書いて当日5人とかだと恥ずかしいので、そこは曖昧にして行うことにした。

 去年は「本編のないアフタートーク」という名目でやったのだが、慣れていないせいか、力が入り過ぎた。聞き手として渡辺啓太君に来てもらったにもかかわらず、私の失敗談ばかりを話して終わり、その後、来てくれた人たちとただ飲むという……よく分からない会になってしまった。

 今年は一人で喋らせてもらう。

 台本を書く時のこと、劇団のこと、他の仕事のこと、世の中のこと、あの人のこと。

 基本的に愚痴が多くなる不安はあるが、力を抜いて話そうと思っている。会場は小さな店なので、一緒に飲むつもりで気軽に来て下さい!
posted by 土田英生 at 12:00| 東京 ☀| 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月29日

自分のことだけが分からない

 私は高校生の頃から心理学に興味を持ち始めた。
 楽しくも、それなりに悶々とした10代だったので、興味というか必要だったんだと思う。
 なぜこんなに苦しいのか、その理由が知りたかった。
 で、全く専門的ではなく、それなりに本を読んだりして来たわけだけど、とにかく確実に得たことは一つだ。

「自分のことは分からない」

 このことを知っただけで、私は随分と助かってきた。
 
 フロイトという人は随分と批判もされてきたけど、無意識という概念を作ったことはとても大きい。
 この概念のおかげでかなり色んなことが説明できるようになったんだと思う。
 
 簡単に言えば「意識できないこと=つまり自分では分からないこと」が自分の心の中にはどんと居座っていて、それが様々な形で自分の意識や身体に影響を与えているということだ。

 小さい時などにあったイヤな出来事、これを頭は必死で忘れようとする。
 覚えていたら、いつまで経ってもイヤな気持ちになるからだ。
 例えば、小さい時に親にひどく傷つくことを言われたとする。
 これをいつまでも覚えていたのでは、親を好きになれないし、だから子供はなかったことにする。
 
 けれど、忘れたことは実際には消えていない。
 いつまでも心の奥底に、つまり無意識の中には生々しく残っている。
 今の例でいえば、親から言われた言葉や、その発言をしたときの親の顔などは、「もしかしたら愛されていないではないか」という不安と共にいつまでも無意識に残っているのだ。

 無意識に残っているとどうなるか。
 イヤな出来事は必死で表に出て来ようとする。
 これが厄介なのだ。
 
 出て来てしまうと人はイヤなことを思い出してしまうので、必死でフタをして自分で気づかないようにする。
 この、必死でフタをしているのが「自我」と呼ばれるものだ。
 
 必死でフタをしているので、普段の行動にも影響は出る。
 大体、このフタをしている状態が心にとったら苦しいことなのだ。
 無意識はそれらを表に、意識に出そうとする。
 
 だからフタが緩むとそれがちょっと顔を出したりする。
 眠っている時に夢に出て来たりするのだ。

 ちなみに、自我は眠っているときも必死で働いていて、生々しいイヤな出来事をそのまま夢に出させないように頑張る。夢の検閲と呼ばれたりしている作業だ。だから夢は歪曲されて、おかしな不条理なものになったりする。
 
 夢の話はおいといて、つまり、自分にとって、本当にイヤなことなどは無意識に追いやってフタをしているので、どうやっても自分では意識ができないということだ。
 正直に話せ、などと言うけれど、そんなことは所詮無理なのだ。
 だから、他人の方が私の本質を見抜いていたりする。
 人にとても的外れなことを言われて、腹が立つことがある。
 ……そういう時、多分、無意識の何かにヒットしているのだ。
 つまり当たっているんだと思う。
 しかし、ヒットしたことを私の心は認めない。認めてしまうと自分が危うくなるからだ。
 
 くだらない例になるけど、小学生の時、大好きだった女の子がいた。
 しかし、実際は自分がその子のことを好きだとは思っていなかった。
 仲はよかったけど、その子を好きだという事実はとても恥ずかしいこと考えていたんだと思う。
 小学生だし。
 一番、恥ずかしい頃だし。
 もちろん、その時は別にその子のことは好きではないとしか考えていなかった。

 ある時、友達に言われた。「お前、◯◯が好きなんだろ?」
 私は驚いた。
 そして否定した。あるわけないだろ、と反論した。
 「正直に言えよ」と、そいつは言った。
 私は正直に言っているつもりだった。そして、その友達にとても腹が立った。
 
 ……振り返って考えてみると、私はやっぱりその女の子のことが好きだったんだと思う。
 
 自分が本当に望むことは、なかなか自分自身では見つけられない。
 自分のことだけは分からないのだ。

 で、的はずれなことを言われた時、それをゆっくり考えてみるようにしている。 
 本当はこのことを書こうと思っただけなのに、長くなってしまった。
 
 最近、ある人から言われた何気ない言葉がいつまでも残っている。
 それは、なんでもない言葉だった。
 深刻な会話をしていたわけでもない。
 むしろ、冗談のようなやり取りの中で発せられた言葉だ。
 私が傷つく必要もないはずのものだ。

 なのに、その言葉がヤケに気にかかっている。
 私の無意識にある何かに当たっている証左だ。

 ……なんだろう?

 演劇をすると、台本を書くと分かったりすることもあるんだけどね。

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 好きな女子に気づけなかった頃の学芸会。
 「山猫5」という役を演じるだけでは、なにも分からなかったね。

 5月11日にトークをします。→コチラ
posted by 土田英生 at 01:38| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする