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MONO代表・土田英生のブログです

2016年07月15日

開く!

基本的に毎日「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の稽古をして、他の時間は書き物をするという毎日だ。
稽古はとても地味にやっている。
その辺りの過程はこっちに書くことにした。まあ、公演が終わるまでの期間限定だけど。→「土田英生の創作日誌」

稽古していて、役者をどう開いてもらうかで悩んでいる。

役者は自分の経験や感覚に置き換えて理解して演技をしようとするが、知識や想像力がないと小さな理解しかできない。自分が見て信じている世界が全てではないのだ。
だから、役者自身にも開いてもらわないといけない。
自分の思い込みを自覚し、その自分を編み変えてもらうことも必要になる。
けれど、役者は無意識に抵抗してしまう。
まあ怖いしね。

その恐怖を押しのけ、未知の自分に出会っていける人は、どんどん伸びていく。
今の自分にしがみつく人は変化していけないし、何も発見しない。

社会もそうだなと思う。
開く動きがあれば、必ずそれに抵抗して閉じようする動きが出てくる。

明らかに今はそうした力が働いている。
なんで、こんなに日本、日本とうるさいんだろ?
確かにここは日本と呼ばれる国で、そこに問題があればよりよくしていけばいい。
問題を具体的に考えるのはいい。
というより、考えなければいけない。
だけど、そこを飛び越し、いきなり「日本人の精神性」だとか、そういうところに考えが行ってしまうのは違うと思う。
それは明らかに自分を守るだけの……つまり閉じる動きだ。

テレビを見ていても、やたら日本人をフィーチャーした番組が多い。
世界に行って日本人に会ったり、逆に外国から来た人たちに日本の魅力や独自性を語らせたりする。
日本であるとか、日本人であるとかいう事実に極端にこだわるのは閉じようとする力だ。

私だって日本で生まれて育った。愛知県だったので、何にでも味噌をつけて食べ、パンにはアンコを塗って食べていた。そしてそれは今でも好きだ。食べると「ああ美味しい」と思う。
けどね、それは慣れ親しんだものだからであって、その食文化が特に優れているわけでもない。

私は10年前にイギリスに留学していた。
皆は「イギリスって食べ物まずいんでしょ」と言う。
今はそんなことはない。けど、問題はそこではない。

私は今でも時々無性にイギリスのソーセージが食べたくなることがある。パン粉とひき肉、それにハーブなどが入っている太いソーセージ。なかなか日本では売ってない。あれは特別美味しいものなんだろうか?
私は大好きなのだが、食べ物として優れているのかどうかは分からない。

留学していた時、よくソーセージ&マッシュを食べた。大量のマッシュポテトに大きなソーセージが二本どんと乗っていたりするだけのものだ。けど、一年留学しただけの私でもあの味を懐かしく思い出したりする。食べたい食べたい。
わたしにとってはあんトースト並みに好きなものだ。

話がそれた。

外国のこういうところが素晴らしいと話すと、途端に不機嫌になる人がいる。そして反論のように「でも、日本だってこうですよ」的なことをアピールしてきたりする。いや、分かってるって。私だってここで生まれ育ったんだから。
けど、どこの国にもいいところがあり、悪いところがあるだけの話だ。
さらにいえば、日本人はどう、イギリス人はどう、韓国人はどう、中国人はどう……そんなことどうでもいいよという気分だ。

私は日本人で嫌いな人たちもたくさんいる。
それより好きな人たちはたくさんいる。
そして……それはどこの国に行っても感じることだ。留学中だって嫌いなイギリス人もいた。けれど大好きなイギリス人はたくさんいた。
最近、韓国にいく機会も結構ある。
ソウルで何度も作品を上演してもらっているからだ。で、韓国にはとても仲のいい、信用できる演出家や役者が何人もいる。しかし仕事を一緒にしても仲良くならない人だってもちろんいる。それは日本で仕事をしている時と全く同じ比率だ。

〇〇人だからどうだということは全くない。

とにかく、大事なのは個人を鍛えることだ。
日本人であるとか、愛知県出身だとか、そうした外側で自分のアイディンティティを保つのではなく、自分自身の考え方であるとか、知識であるとか、恥ずかしい言い方になるけど生き方であるとか……そうした部分を鍛えて行けば、存在が不安になることはない。

私は最終的に開く動きが勝っていくのではないかと考え、そこに光を見出す。

時々、私はロンドンでとても仲のよかったサリーという女性のことを思い出す。
彼女はマンチェスター出身で、小学校の時はクラスはほとんど白人だったそうだ。
ある時、パブのテラスで私とサリーは一緒にランチをしていた。多分、私はビールを片手にソーセージ&マッシュを食べていただろう。
と、前の道を黒人と白人のカップルが通り過ぎた。
アジア人と白人の混じったグループが談笑していた。
サリーはポツリと私に言った。

「美しいね」

……確かに開くことは怖い。
しかし、開きたい。
もちろん全部開き切ってしまったら、真っ白な世界に漂うだけになってしまうけど、限界まで開き、いろいろな考えを受け入れたい。
きっと、そこには美しいものがあるはずだし。

社会も役者も……開かないとね。

IMG_8976.jpg


全然関係ない写真になってしまった。

稽古場は事務所から歩いていける場所にある。
毎日、途中のローソンで買い物をする。
今日は唐揚げの梅しそ味とアイスカフェオレを買った。
そして稽古場に着いて、とりあえず荷物を置いた。

私はリトルシガーと呼ばれる、タバコ型の葉巻を吸っている。
カフェオレとリトルシガーは合うのだ。

私は外の喫煙スペースでカフェオレを飲みながらゆっくりしようと思った。

……で、外に出て気がついた。
私が手に持っていたのは唐揚げだった。
どっちもプラスチックカップだったので間違えたようだ。

残念ながらリトルシガーと唐揚げの梅しそ味は合わない。

……いくら開いて自分を変えようが……どうもそれは無理だね。
posted by 土田英生 at 04:46| 東京 🌁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする