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MONO代表・土田英生のブログです

2016年10月04日

心技体のバランス

 全く休みのない日々が始まった。

 これまでもバタバタしていた。29日の夜だけは空いていたが、30日は大阪へ日帰りで行きヒアリングとミーティング、翌日からは泊まりで群馬に行き2日間のワークショップ、今日は「解夏」の稽古初日で、朝の10時半から夜の9時まで稽古。しかも終わってからは……個人的なことで深刻な話し合いもあった。
 明日も朝から稽古だから、眠ろうとベッドに入ったのだが……ダメだ。
 眠たいはずなのに眠れない。

 稽古は体もキツイけど、頭が疲れる。
 「解夏」は二人でやるリーディングドラマだが、違う組み合わせで9組もあるので、演出である私はずっと頭を使っていなければいけない。この稽古が4日続き、翌日からは香川で3日間の戯曲講座、戻ってきて1日だけ稽古オフの日があるので、昼と夜にそれぞれ芝居を見て、翌日はまた「解夏」の稽古、さらにその翌日からは4日間広島に滞在して稽古と本番。次の日から31日まではずっと「解夏」の稽古と本番だ。しかも戯曲賞の審査をしているので戯曲も読まなければいけない。

 ……ああ、踏ん張らないと。

 心技体という言葉がある。
 精神、技術、身体。
 今の私は……全部がバラバラな感じだ。
 心、体はもちろん、私がこれまで頼ってきた技の部分まで危うい。
 自業自得だけどね。

 この前、唯一空いていた夜、少し友達と喋った。
 私の中に伝えたいことがあったので、私はそれを勢い込んで話した。
 すると……今度は違う角度から、私に対しての指摘があった。

 私が話そうと思っていたことと……角度の違う切り込み方だった。

 自分が崩れて行くのを感じた。そんな話になるのだとしたら、さっき話したことを取り消したかった。いや、違う形にして、まとめて話したかった。けれど、もう遅いのだ。
 
 ここは反論せずに聞かないとダメだと思った。
 こんな機会はなかなかないからだ。
 もともと、私の方から伝えたいことがあったので、一瞬は「いや、でもね」という気持ちが芽生えたが、そこで言い合いをしたところで、どちらにもメリットはない。
 もったいないと思った。
 私が伝えたいことは、また、別の形でゆっくりと伝えればいい。
 そう、もっと、柔かい形で。
 ちゃんと相手に届く方法で。
 それが、私にはそもそも欠けていたのだ。
 
 私に関しての指摘はとてもよくわかった。
 ただ、時間が経つと、話の本筋以外の、尖った言葉の破片ばかりが心に残る。

 あ、具体的な内容を書きたいわけではない。
 それは話した私たちの問題だからだ。ざっくりいえば、私にとっての、人との距離の取り方というか、自分の見せ方というか、つまりコミュニケーションの方法に関することだった。つまり技の部分だ。少なくとも、その友達にそれがどう映っているのかを聞くことができた。
 で、考えた。
 そうか、少しだけ変えてみよう。
 そう思った。
 
 群馬でのワークショップは楽しかった。
 ほとんど眠っていない状態で向かったのだが、積極的な受講生の前に立つと私は自然にテンションが上がる。
 みなもよく笑ってくれ、説明する内容が伝わって行くのも感じる。
 群馬での公演などはしたことがないので、完全アウェー覚悟で臨んだのだが、私の戯曲を読んだりしてくている人もたくさんいたし、地元の劇団がよく上演もしてくれているらしい。中には私すら持っていない、これまでの私の戯曲集や小説、DVDなどを山のように持ってきて、サインしてくださいなどと言ってきてくれる人もいた。夜の懇親会はほとんど全員が出席して、いろんな話をした。
 本来なら私はゴキゲンMAXの環境だ。

 しかし、何度も私は考えた。
 その調子に乗っいる自分に疑いを持った。
 これこそ、今までの技ではないか。
 まったく同じじゃないか。
 
 懇親会が終わってホテルに戻り、私はさらに考え込んだ。
 
 翌日、再び私は喋り、大きな声を出し、意味なく身体を動かした。
 一緒だ。
 まったく変わらない。
 ワークショップはいい感じで終了した……と、思う。

 群馬からの帰り、またしても私は考えてみた。
 
 そして今日。「解夏」の稽古。
 若い俳優と女優が4人。
 私は落ち着いた感じで稽古をスタートした。

 ……気がついた時にははしゃいでいた。
 結局、朝から晩までフルテンションだった。
 やっぱりそこは変わらないらしい。
 
 まあ、これは仕方ないんだけどね。

 もう、ずっとそうなのだ。人といる時は「悩みのない人」だとか「楽しそう」だと言われ、一人になった時は異様に暗くなるというのを繰り返してきた。死ぬまでこうなんだろうか?

 とにかく10 月は乗り切る。
 そして、心技体のバランスを取り戻さないといけない。
 そうだ、バランスだね。

 ……そういえば、平均台とか 苦手だったしね、昔から。
posted by 土田英生 at 03:29| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月16日

はてにひとはな

 13日から広島にいる。
 アステールの演劇学校、俳優コース最後の講座が連続してあるのだ。
 最終日の今日は試演会。おかげさまでお客さんも満席らしい。

 戯曲の審査を終えてから移動しようと思っていたのだが、時間がなくて広島まで台本を持ってきていた。
 年末に劇作家協会新人戯曲賞の最終審査をさせてもらうのだが、今年は2次審査も引き受けさせてもらったからだ。例年だと忙しさを理由に2次審査は断らせてもらっていたのだが、そんな時に支えてくださった小松幹生さんが……今年はいないのだ。亡くなってしまったのだ。私はとてもお世話になった人だ。
 なのでやることにさせてもらったのだ。2次で読んだのは11本。戯曲を読むのは本当に疲れる。
 広島にきて2日目になんとか審査表を提出した。
 
 なんだか妙に忙しい秋になってしまった。

 連続ドラマをやれたらいいなあと思っていたのだが、今年は機会がなかった。なかったのでワークショップなどをどんどんすることにした。結果、目まぐるしいことになってしまったようだ。
 今月だけで広島に2回、群馬の伊勢崎、香川の坂出。

 さすらいのワークショッパーだ。
 それぞれ出会った人たちの顔が浮かぶ。
 いい人たちだったね、皆。

 おかげでLINEにはわからないニックネームが増えた。
 なるべく、本名と、どこで出会ったのかを書いておくようにしているのだが……間に合ってないね。
 ちゃんと書いておかないと、半年後とかに、いきなり誰だかわからない人からメッセージがきたりするのだ。
 どうでもいいけど、あれは焦る。
 「お元気ですか? もーちゃんです!」などというメッセージを前にかなり深く考え込むことになるのだ。
 もーちゃん……誰だよ……?
 
 峠は超えたと思うが、とにかくキツかった。
 宮崎の作品もまだ書いている中、来年のMONOの新作も書き始めた。
 宮崎の方はプロットは出来上がっているのだが、MONOはまだ構想段階だ。タイトルも決まりかけているが、まだ悩んでいる。
 
 ああ、全部、きちんと終えられるのだろうか?
 よく「忙しい」と騒いでいる人を見かけるが、あれは勝手にそうしてるんだね。
 私はまさにそれだ。
 きっと暇になると不安だからだろうね。

 そして、朗読劇「解夏」の本番も迫っている。
 まだ終わってないけれど、この「解夏」の稽古は難しかった。
 同じテキストで9組が朗読劇をする。
 相手役が変わらない人もいれば、組み合わせが変わって3人とやる人もいる。
 つまり演出プランは変えられない。
 人によって変更するわけにはいかず、多少のゆとりを持たせながらも同じ演出をするのだ。
 同じようにやっているのに、役者によって全然違うものに見える。台本も何度も修正した。
 そうだ。
 この脚本も書くのが難しかったねえ。
 18日からは再び怒涛の1日10時間稽古が続く……。

 とにかく目の前のことをきちんとやらないとね。
 一つでも手を抜くと、全部がダメになる気がする。
 私は結構だらしないけれど、その恐怖心だけは常にある。
 
 今日も試演会もなんとか間に合った気がする。
 『はてにひとはな』という40分弱の作品になった。
 13人全員が女性。年齢もまちまちだが皆が女子高生の格好をする。そういう設定なのだ。

IMG_9421.jpg


 今日はゲネ、本番、打ち上げ。
 明日の朝には東京に戻って、打ち合わせ、そして夜は高円寺で斎藤憐さんを偲ぶ会。
 次の日からは、そうだ……10時間稽古の再開だ。

 ずっと微熱があったのだが、どうも風邪だったみたいだ。
 市販の薬をのんでいたらずいぶんしになった。
 熱も、多分、今はない。
 
 写真は昨日の朝。
 
IMG_9418.jpg
 

 この店については詳しく書こう。
 とにかく……これだけのパンを食べることになったのだが、この経験も2度目だ。
posted by 土田英生 at 09:18| 広島 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月20日

知り合うこと、出会うこと

 今、稽古をしている『解夏』は10人が出演する。→
 正確に書けば出演するのは毎回2人。相手が入れ替わったりして、全部で9組。
 これを同じテキストと演出で朗読劇にしている。
 もう私の頭はパニック状態だ。あの組はこうだった、この組はああだったと、覚えておかなければいけないからだ。
 
 しかも初めて仕事を一緒にする人がほとんどなのだ。
 朴璐美さんは演劇集団円に私が書き下ろした『胸の谷間に蟻』に出演してくれていて、個人的にも親しくさせてもらっているし、内田朝陽君はホリプロで私の『少しはみ出て殴られた』を上演してくれていた時に出演していたので会ってはいる。
 けれど、それ以外は全員が初めましてだったのだ。

 全員の稽古が一通り済んで少しだけホッとしている。
 全員人柄がよかったからだ。
 稽古の合間も話が弾むし、「創る芝居は地味なくせに、ダメ出しだけが騒がしい」という私の演出も素直に受け入れてくれる。

 いつもそうだけど、初めてやる時は怖いのだ。
 どんな人だろうかと不安になる。
 皆、普通に仕事をしているわけだから、そんな変わった人はいないと思っているのに、それでも怖い。
 今回は出会えたなあと思える役者さんがたくさんいて嬉しい。
 ま、それは先にならないとわからないんだけどね。

 知り合うことと、出会うことは微妙に違う。
 この前、広島で試演会をした『はてにひとはな』を観ていて、そんなこと考えていた。
 ラストで13人の女性が並んで座るシーンがある。

hateni.jpg


 このシーンを観ながら、私は一人一人の顔を眺めた。
 半年間、広島に通いながらワークショップをしたメンバーなので、もちろん、それぞれに愛着は湧いている。
 
 けれど、観ながら私はなんだか切なくなった。
 まあ、そういうシーンだったということもあるけど。

 ……これまでこうして何百人と知り合ってきた事実を思い出したのだ。
 稽古場で、ワークショップの現場で、他の仕事場で……知り合い、仲良くなり、その時は一緒に笑いあったりしている。連絡先を交換し、ご飯を食べに行ったりする。別れの寂しさも手伝って、「またこのメンバーでやろうね」などと盛り上がる。そこに嘘などない。
 しかし、終わってしばらくするとだんだん疎遠になり、やがてお互いの生活の中から消えて思い出になっていってしまうのだ。

 これまでに通り過ぎて行った役者さんたちを思って、妙に切ない気持ちになった。

 今月だけでも多くの人と知り合った。
 群馬の伊勢崎でワークショップをやった時にも面白い役者さんがたくさんいた。
 中には私が昔出した同人誌や、MONOのVHSのビデオなどを持ってきて見せてくれた人もいた。
 坂出の戯曲講座でも参加者はもちろん、スタッフも含めて仲良くなった。
 そして、もちろん広島でも。
 打ち上げでもらった皆からの寄せ書きを読みながら、一人一人のことを思う。

 改めて、長く一緒に活動している人たちのことを考えた。
 最初は皆ともこうして知り合ったはずだ。
 そんな中から、お互いの視界から消えずに残り続ける人たちが出てくる。
 MONOのメンバーもそうだけど、これはどういうことなんだろうね。

 秋だからこんなことを書いているのか?
 いや、今、考えている新作が「別れ」を題材にしたものだからかも知れないね。

 明日も「解夏」の稽古。
 今はほんの少し先のことだけ考えて頑張ろう。
 
posted by 土田英生 at 23:51| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月30日

小さなことを済ます

 もう完全に状況を見失ってしまっているね。
 返信していないメールとか、出せていない原稿もたくさんあると思う。
 ああ……。
 そうなのだ、こうした小さなことをまずは済ませないといけないのだ。

 今は朗読劇「解夏」の本番中。
 私は基本的に自分の演出した作品は本番も観るが、ステージ数が多くなれば、ところどころ観なかったりする。ただ……今回はなかなかそうはいかない。
 9組あるので初日の連続なのだ。
 昨日でやっと全員が本番を迎えたので、今日は他の仕事をさせてもらっている。
 
 そんな中、人には会っている。
 今年はたくさん知り合いが亡くなった。
 会いたい人とは、なるべく会っておきたい。後悔したくない。
 もちろん、自分にとって大事な人じゃなければ、別に会う必要はない。
 
 一昨日も本番が終わって劇場を出た時、知り合いのプロデューサーから電話があった。
 下北沢にいるという。
 私は迷うことなく行きますと答えた。
 この人には本当にお世話になっているのだ。そしてなにより、私を理解してくれている。
 大事な人だ。
 最近のテレビのことなどをただダラダラ喋っただけだが、とても元気が出た。今年はドラマを一本も書かなかったんですと話すと、まあ、無理にやらなくてもいいじゃないですか。けど、これからも面白いことを一緒にやりましょうね、と力強く言ってくれた。
 
 昔は短気だったが、いつからか私はかなり温和になった……と、自分では思っている。
 稽古場でもはしゃいだりはするけど、怒鳴ったりはしない。
 
 けれど、仕事で揉めることは……結構ある。
 ドラマの仕事などでも揉めて途中で降りたり、降ろされたことも何度もある。
 脅しのような言葉をかけられたこともあるし、はっきりと裏切られたこともあるしね。
 だけど、こっちだって理不尽なことは呑めない。
 それで仕事がなくなったとしても仕方がない。
 なにより、私には劇団だってあるし、自分の表現をできる場がある。
 まあ、劇団は仕事にはならないんだけどねえ。

 けれど、だからこそ信用してくれる人もいる。
 一昨日会ったプロデューサーはそんな一人だ。
 頭の中に、そういう人は何人か浮かぶ。だから私はまだまだ頑張れる。

 それにしても、昨日は……会いすぎた。
 まず、「解夏」は3公演あった。
 けれど、小屋入りする前、福岡の劇団「万能グローブガラパゴスダイナモス」の作家、川口君と制作の橋本さんと会った。わざわざ劇場まで来てくれたのだ。
 そして本番が始まるまで昔ながらの喫茶店でコーヒーを飲みながら、小さな声で喋った。

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 そして公演。
 一番最初は荒木宏文君と山本紗也加さんペア。
 この2人はこの回で最後なのだ。さようならなのだ。
 終演後、お疲れさまでしたと挨拶したり、演出助手の若林君も交えて記念写真を撮ったりしていた。

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 ……けれど、すでに内田朝陽君と彩吹真央さんが劇場に入っている。
 5分後には段取りの確認をしなければいけない。
 このペアはこの回が初めての本番なのだ。
 私は混乱する。
 お疲れさまなのか、よろしくお願いしますなのか、もう分からない。
 そして最後が鍵本輝君と朴璐美さんコンビ。
 
 劇場を出ると……疲れのせいか目眩がひどかった。
 私は下北沢に急いだ。
 まだまだやることはあるのだ。
 香西さんという映画監督と会うのだ。つい最近撮ったばかりの「しまこと小豆島」という短編映画に、私は声の出演をすることになっていた。けれど時間が合わず、まだ声を収録してもらっていなかったのだ。
 なので……二人きりで声を撮ってもらった。
 もう短い間にクラインクインとアップを済ませた。
 ここでもよろしくお願いしますとお疲れさまの間が短かった。

 この人は猛烈に忙しい人だ。
 昨日も下北沢の駅に機材などを抱えて現れたが、もう夜逃げしてきたような状態なのだ。
 しかも撮り終わると……彼女はもう一つの打ち合わせに向かっていった。
 私も……最後にもう一人会った。

 で、香西さんと話が合ったのは忙しい時こそ、小さなことをきちんと済ますということだねという話だった。
 短い原稿でも、メールの返信でも、ちょっとしたことが積み重なってしまうとどんどん沈んでいく。
 もちろん台本を書くという仕事が一番時間がかかるが、小さなことを全て済ましてしまい、書くだけになれば随分と心持ちが違うのだ。

 さてと、劇場へ向かおう。

 返信を待つ間にこれを書いていたのだが……ああ、だったら小さなことを済ませればよかった……。
 
posted by 土田英生 at 14:26| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする