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MONO代表・土田英生のブログです

2016年11月05日

MONOの新作

 しばらく更新していなかったけど「解夏」が終わった。
 10人で9組の朗読劇はなにかと大変だったけど、その分、多くの人と知り合うことができたし良かった。
 
 終わっていきなり現実がやってきた。
 宮崎で来年にやる舞台の脚本を早く完成させないといけない。途中で止まったままだ。早くラストまで書き上げなければ。

 来年のMONOの新作も書き始めなければいけない。けれど11月も割とバタバタと忙しいのだ。
 一応、構想は固まった。情報公開はまだだけど、タイトルも決まった。

 『ハテノウタ』
 
 元々は映画と舞台のコラボで何かしようと大谷健太郎監督と話していた企画だった。それが進まない中、私の中で構想が膨らんでしまった。電車に乗っていたり、普段ぼうっとしていても台詞などが浮かんできてしまう。見かけはバラバラなのに同級生という設定だ。
 大人がやる青春群像劇。渋くて切ない。絶対に面白くなる。

 私は思いついたら、すぐに書きたくなってしまう。
 夏にやった大分のワークショップ。
 最終日に発表会があった。
 参加者の年齢がバラバラだったので、この設定を使って15分くらいのものを創ってみることにした。
 もちろんそれはワークショップに合わせたものにはなっていたが、色々と発見があった。
 さらに書きたくなった。
 なので、広島のアステールの演劇学校の試演会でも同じ設定でやってみることにした。
 『はてにひとはな』というタイトルをつけた。
 これは受講生の上岡さんや、手伝ってくれていた深海君も書いてくれて、それを私が40分にまとめたので独立した作品なのだが、またしても発見があった。

 で、この設定を元にMONOの新作を書いている。
 しかも見せ方をいつもと少し変える。
 これも去年から考えていたアイデアだ。次回公演は音楽劇にすると言ってきたのがそれだ。

 私はストレートプレイが書きたいので、音楽を自然に取り入れられるような仕組みにしようと思った。
 同窓会でカラオケを歌い、その歌が物語とリンクして行く。
 なので音楽は重要だ。その為に絶対必要だと願っていた人もキャスティングできた。

 準備は進んでいる。

 歌詞の内容は台本とリンクしているので、私がベースを考えて、それを整えてもらおうと思っている。
 問題は曲だ。
 これが一番、今、頭を悩ませているところだ。

 曲を作ってもらう人を当たったりしているのだが、なかなかぴったりな人に出会えないね。お金の問題もあるしねえ。
 何人かにそれぞれに合った曲を作ってもらおうと思っているのだけど、誰かいないかねえ。
 
 欲しいのは作品のテーマとなるバラードと、皆で盛り上がれて懐かしい感じがする曲、そして演歌調の曲だ。
 これ、募集しようかな。
 相談してみよう。
posted by 土田英生 at 15:13| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月06日

種類は変われど。

 奈良にいる。
 けれどホテルから出ていないので、全く奈良を味わっていない。
 ずっと台本を書いていた。
 人のコンプレクックスや悩みに関する台詞を書きながら苦しくなった。なのでやめることにした。
 明日も早いので、そろそろ眠らないといけない。
 
 昨日、偶然のことだったけど、ある女優さんと呑むことになった。
 20代で随分と活躍をしている。きっと、これからもっと世間にも認知されて行くだろう。
 外から見ていると順調そのものだ。
 けれど、彼女は自分のコンプレックスとか悩みを話していた。私はそれを聞きながら、懸命に励ました。
 
 どうでもいいけど、あの店、美味しかったな……。

IMG_9532 (1).jpg


 いや、それはいいや。

 けれど、いつまでたってもそんなに楽にはならないんだよね。
 自分との付き合い方は上手になるけど、本質的なところはきっと変わらないんだと思う。
 確かに、私も20代の頃はコンプレックスの塊だった。
 まずは生活。
 勢いで演劇を始めたものの全く生活ができない。
 居酒屋、お蕎麦屋さん、会社の事務、いろんなバイトをしたけどすぐに休んでしまう。そしてやめてしまう。
 だから常にお金がなかった。
 昼過ぎに起き、食べるものもなく、「ああ、俺は社会のクズだ」とよく思った。
 同級生が結婚をして式に招待されても、ちゃんとした服がないわ、ご祝儀も皆のように出せないわ。本当、みんなに申し訳なかったし、恥ずかしかった。
 とにかく生活は悲惨だったのだ。
 母親がこっそり送ってくれたダンボールを開けると、そこに入っているのはマヨネーズやジャム。
 つけるものがない。パンもなければ野菜もないのだ。
 さすがに母親もそこまでだとは思っていなかったのだろう。
 マヨネーズをそのままチューブから吸ったりした。宇宙食かと思った。
 ジャムもそのまま食べたね。
 鈴虫だった。
 家賃も9ヶ月溜めたことがある。
 一ヶ月、肉体労働をして払った時には、「祝」と書かれたビールを大家さんがくれた。
 なんの祝いだったんだろう?
 
 親にもよくお金を借りた。
 ちょうど、その頃、日本劇作家協会ができ、入会しようと誘われた。
 年会費は1万2千円。
 それを母親に無心した。
 と、母親は自分のカードで振り込んでしまい、

『英生、どうしよう? お母さんの名前で振り込んじゃったがね』

 と、電話があった。
 そうなのだ。うちの母親は私よりも先に劇作家協会に入会してしまったのだ。
 後日、事務局にその訂正の電話をしたのだが、とても恥ずかしかったのを覚えている。

 けれど劇団だけは真面目にやっていた気がする。
 一緒にやっていた水沼君も私と似たり寄ったりだった。
 だからいつも一緒にいた。一緒にいてもお互いにお金がない。
 ただ、歩き、そしてよく喋った。
 いつか食えるようになるかなあと、夢のような話ばかりしていた気がする。

 アルバイトをやめたのは29歳の時だった。
 何のきっかけでというのは覚えていない。
 ただ、その頃、急に環境が変わったのは確かだった。

 そのちょっと前、劇団の公演では突然お客さんが増えた。
 忘れられないのは『約三十の嘘』という舞台の時だ。
 初日からお客さんがたくさんきた。その頃は日時指定でもなかったので、偶然、お客さんが初日に偏ったのだと思った。けれど、二日目も三日目もお客さんは入った。
 そしてそれからしばらくして、『─初恋』という芝居を創った時だ。
 関係者と言われる人が、次々に楽屋にやってきた。
 そして台本を書いてくれと言われたのだった。

 まず、マキノノゾミさんから連絡をもらった。そして今はなくなったが、劇団M.O.P.に戯曲を書いてくれと頼まれたのだ。『遠州の葬儀屋』という作品を書いた。
 それが私が人に頼まれて書いた最初の台本だ。
 だから今でも私はマキノさんに会うたびに、心の中で深く頭を下げている。

 ほぼ、同時期にG2プロデュースに『いつわりとクロワッサン』、そしてパルコプロデュースに『BOYS TIME』、劇団青年座に『悔しい女』、文学座に『崩れた石垣、のぼる鮭たち』と立て続けに台本を書かせてもらった。草𦿶剛さんの朗読劇も作演出させてもらったし、本も出した。続けて初めての連ドラ脚本『天才! 柳沢教授の生活』をやらせてもらった。
 全て二、三年の間のことだ。
 よく全部やったなあと思う。
 そして、MONOも『きゅうりの花』という作品で利賀のフェスティバルに呼んでもらい、東京公演も毎回するようになった。

 生活は安定したが、この頃の私は別のコンプレックスで苦しかった。
 自分に才能があるとはどうしても思えなかった。
 私の周りには面白い人がたくさんいたのだ。
 仲のよかった松田正隆さんと鈴江俊郎さんは岸田戯曲賞を同時受賞した。続いて深津君も受賞した。私はどの賞の最終候補にも残らなかった。マキノさんは全国で活躍していたし、一緒にコントをやっていた故林広志君の書くものは本当に面白いし……。
 だからテレビで頑張ろうとドラマも一生懸命書いたが、なかなか視聴率も振るわない。
 いくら仕事をしても、どこかで私は『ズル』をしているような気分だった。
 本当は才能ないのに、みんなは気づかずに仕事をくれている……いつか化けの皮が剥がれてしまう。

 そういう時、ずっと支えになっていたのが劇団の存在だった。
 彼らは全然変わらなかった。
 
 ある時、稽古中に私は泣き出したことがある。
 皆は稽古をやめて、こっちを見ている。
 私は言った。

『なんでこんな才能のない俺と一緒にやってるの?』

 その日は、またしても戯曲賞の最終候補に残らなかったと分かった日だったのだ。
 メンバーは何も言わなかった。
 ただ、稽古しようよ、と言った。

 そうしたコンプレックスからいつ頃解放されたのか?
 多分、ロンドンに留学したのがきっかけだったと思う。
 
 で、現在。
 悩みがないかといえば……悩みだらけだ。
 種類は変われど、常に自分の心は晴れない。
 けれど、これはきっとずっと続くんだよね。
 そして、今抱えている問題は……書けないね、やっぱり。
 終わったことだと笑い話にできるんだけどね。
 
 寝よう。
posted by 土田英生 at 00:29| 奈良 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月12日

とりあえず眠る

 昨日、久しぶりに出掛ける用事がなかった。
 出さなければいけないものはあったし、書かないといけないものもたまっている。
 なのでじっくりそれらを書くつもりだった。
 けれど、どうもペースが掴めない。
 今月も移動が多いので、生活のパターンが定まらない。
 京都に寄って、奈良に行き、そこから宮崎に向かった。
 宮崎では取材や対談などを行った。来年に上演する予定の台本を書いているのだ。
 まだ……半分くらいしか書けていない。
 宮崎では……美味しかったけどね、いろいろ。
 これは「お通」の雑炊。

IMG_9583.jpg


 宮崎から東京に戻り……その翌日が昨日。
 しかも風邪をひいてしまい、しっかりと眠ってしまった。
 少しはましになった気がするけど、まだ本調子ではない。
 身体もだるい。
 そして身体がだるいと、やっぱり心も傾く。
 
 疲れが出ているんだろうねえ……。
 けれど、やらないといけないことは多いし、今月はまだこれからも兵庫に行き、東京に戻り、大阪に行き、京都に寄ってから東京に戻る。
 
 その間に宮崎の台本を書き上げないといけないし、戯曲もたくさん読まないといけないし、MONOも書かないといけないし。……いや、まだあった。

 今日、編集の人と打ち合わせをした。小説の校正が戻ってきたのだ。
 話している内に少し書き足そうという話になった。

 書いていた内容と現実があまりに近くなってきてしまっているので、それに対しての修正をしようという話になったのだ。

 ああ……。
 世界は閉じよう閉じようとしている。
 開きすぎると人は不安になる。
 個人でいることはとても苦しい。
 だから、確実なアイデンティティーを求めて、狭い所に身を置こうとする。
 出自とか、民族とか、宗教とか、ナショナリティーとか、思想とか。
 そして他者を攻撃することで、自らの正当性を守ろうとする。
 
 身近な人が閉じていく様を見るのは辛い。
 なんだかこっちまで負けそうになる。
 私の中にもそうした気持ちは存在するからだ。
 閉じることは、とても分かりやすくて楽だ。だけど、そこに身を任せてしまったら、世の中は闇だ。
 憎悪や悪意の中で暮らしたくはない。

 それぞれに理由もあるんだと思うけど、イギリスのEU 離脱やトランプが当選したのだって、「閉じる」動きに他ならない。
 そして閉じ始めた流れを止めることはとても難しい。
 開くことは面倒だし、苦しいことだからね。
 だからこそ、自分の中にあるそうしたものに抗ってきたつもりだ。
 書いてきた台本だって『燕のいる駅』も『その鉄塔に男たちはいるという』も『橋を渡ったら泣け』も『少しはみ出て殴られた』も結局はそんな話だ。

 けれど、現実は想像以上の速さで逆に向かっていく。
 とても憂鬱だ。虚無感に襲われる。
 けれど、諦めてしまったら終わりなのだ。
 
 まだまだ、同じように考えている人たちはたくさんいるしね。
 劇団も長くやっている。
 そうだ。
 千葉雅子さんから同級生劇団でトークをやろうと誘ってもらった。
 「猫のホテル」「カムカムミニキーナ」「MONO」はほぼ同じだけ続いている。
 だから千葉さんと松村さんと私で東京でトークショー(?)をすることになった。
 きっとこれまでのこと、今、そしてこれからのこと。
 渋谷のサラヴァ東京で12月29日。年末も年末ですけど、皆さん、来てください!
 →
 
 寒くなったせいか、それとも世の中のせいか、もしくは私個人の問題なのか……とにかく無性に人恋しい。
 けれど、そんなことを言っている場合ではないんだよね。
 小説の直しも今月中だ。

 終わるのかね、全て?
 と、疑問文にしている場合ではない。
 終わらせるのだから。

 そんな中、ワークショップも企画してしまった。
 知り合いの役者さん数人を集めて、試してみたいことがあったのだ。
 
 それはいいんだよね。
 どんなに忙しくても、自分のやりたいことはやらないと、軸がなくなってしまうし。

 早く眠って風邪を治そう。
 ……って、もう朝だな、どうやら。
posted by 土田英生 at 06:04| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月14日

物語の力

 風邪が治らず、身体が怠い。
 そのせいか台本も捗らない。

 夜になっても気分が乗らないのでDVDでテリーギリアムの『バロン』を観た。
 もう、何度目だろうね。50回以上は観てるはずだ。創作に行き詰ると私はこれを観る。
 ということは50回以上行き詰まっているということだ。
 ほぼ、全編、バカバカしいシーンの連続だけど、創作や想像力が現実を突破するという夢を見せてもらえるのだ。国などの権力がどういう風に民衆を縛るのか? 恐怖心を煽って支配する様などもとても分かりやすく描いている。
 そして、物語の力も。
 
 元のタイトルは『The Adventures of Baron Munchausen』。
 つまり『ミュンヒハウゼン男爵の冒険』だ。
 日本では『ほら吹き男爵の冒険』という名前で知られている話やエピソードを使いながら、それをテリーギリアムが一つの話にしている。
 私はこの『ほら吹き男爵の冒険』が昔から好きだった。
 話は全然違うけど、これをヒントに『床下のほら吹き男』という芝居にしたこともある。
 
 演劇もそうだけど表現は現実を抜きには語れない。
 今の社会に対するリアクションだし、現実を映す鏡でもある。
 だけどねえ。
 それだけでは面白くないんだよね、なんか。
 あまりにリアリティーのない作品も嫌いだけど、ただ人の暗部をあぶり出すだけの作品にも飽き飽きしている。

 やはり夢を見たいしね。
 信じられる夢を描く。そのためには現実を下敷きにしながら、そこから物語をきちんと紡ぐ必要がある。
 
 観終わって、書こうという気になった。
 これこそ、物語の力だね。
 
 
 
posted by 土田英生 at 05:13| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月16日

目的

 昨日、舞台を観ていて……どう表現したらいいのか、「ああ、わかる」という気がした。
 作者の現在の心情のようなものが、作品の至る所にこぼれ出ている気がして、その想いに勝手に共感した。もちろん作品はそんなことは描いていない。けれど、本当に私の自分勝手な解釈で「わかるなあ」という気がしたのだ。
 
 昨日観た劇団は人気があって、劇作家としてだって、誰もが羨むポジションを獲得している。だから周囲は「順風満帆じゃないの」という感じで眺めているんだと思う。けれど本人はきっと……。

 いや、私の勘違いかもしれないね。

 表現するにあたって、社会的な認知が拡大していくことは大きな支えだ。
 やっていたことが認められたという気分になれるし自信にもつながる。
 けれど、そのグラフは自分が思い描いているように右肩上がりには進まない。というより、あるところまで認められると、周囲はまた新しい才能を探して去って行く。「うわ、あなたが◯◯さんですか?」と、最初の頃に皆が集まってきた感じは全くなくなる。自分では進歩して行っているつもりだし、前よりも面白い作品を創っているのに、最初の頃のようには誰も騒いでくれない。少なくとも本人はそう感じる。

 隣の芝生はいつも青いし。
 
 京都でチヤホヤしてくれなくなったなあと寂しく思っていた頃、気が付いたら周囲の興味はヨーロッパ企画に行っていた。
 どんな劇団なんだろうと、「サマータイムマシーンブルース」をDVDで観た。
 実際に面白かった。こんな風に会話を創る劇団があるんだとショックを受けたのは確かだ。
 まあ、自信喪失もしたね。

 だけどねえ、自分で面白いと思うことをやり続けるしか道はないしね。

 まあ、そんなこんなで今でもやっている。
 上田君とも仲良くしている。そして……結構、話は合う。
 この前、偶然、飲み屋で会い、朝まで二人で話したりもした。

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 そんな上田君と、彼の劇作方法について話すイベントがある。
 劇作家協会関西支部の企画で『劇作バトル』というものだ。
 自然な感じで告知につなげられたな。
 詳しくは劇作家協会関西支部facebookページを見てください
 →

 そういえば……。

 京都でヨーロッパ企画が話題になり始めた頃、ネットで叩かれているという話を聞いた。
 その時、私は彼らと知り合いではなかったけれど、人から教えられて好奇心からそのページを読んだことがある。そこには妬みから出てくる様々な言葉が並べられていて、ひどいなあと思った。
 けれど、「いい加減なこと書くのやめろよ」と書いている人も中にはいた。
 私は「おお、お前、頑張れ」と思ってその人の文章を読んだ。
 しかしだ。
 なんと……その人の文章の最後に……「どうせこれって、MONOの人たちがヨーロッパ企画の人気に嫉妬して悪口を広めてるんでしょ」と、いうようなことが書かれていた。
 おいおい、と思った。
 さっきまで応援してあげてたのに。
 なんだか裏切られた気分だ。

 と……。
 さらにそれに対する弁護をしている人が出てきた。
「土田さんはそんな人じゃないと思いますよ」と、書いてくれていた。
 もう私はそのコメントをした人が大好きになった。
 愛を伝えたいとすら思った。
 けれど、続きのコメントをみてまたしても驚いた。
 「お、本人登場」と書かれていた。
 おいおいおいおいおい、と、さっきよりも「おい」の回数を増やしながら思った。
 私が愛したその人は「違いますよ」と否定するのだが、「必死さが怪しい」などと、どんどん私だということになっていってしまっている。
 『本人はここに登場だ!』と、思わず書き込みそうになった。
 
 完全に話がそれた。

 大事なことは、常に自分の興味を失わず、謙虚に創るしかないということだよね。

 今日、ちょっと試したいことがあったので、知り合いの役者に集まってもらってワークショップをした。
 こういう作業はとても大事だね。
 役者と言葉の距離を試したいと思って、わざわざ一晩かけてかなり長い台詞を書き、それをやってもらった。
 結構な分量の一人台詞だ。これまでに私が書いたこともない内容だった。読むと10分以上あった。

 ……全然、自分の予想通りにはならなかった。
 そのことで逆に考えが変わったりした。
 そうか、そういうことなのか。
 役者の皆には申し訳ないと思ったけど、これこそワークショップだしね。
 ワークショップ=工房なんだから、作品に直接繋がらなくても、色々と試してみればいいのだ。なにより、私は発見があったし、そのことで次に試してみたいこともはっきりした。
 参加者の皆に言いたい。
 あの台本だけは捨ててくださいね。
 
 こうして、試行錯誤を重ね、それが次の作品につながっていけばいい。
 目的がなくなることが一番怖い。
 目標など何もないけど、やりたいことはまだまだある。
 ああ、幸せだ。
 今日の昼間はMONOの次回公演『ハテノウタ』のチラシの打合せだった。
 これも楽しみだ。
 作品については情報が公開されてから書こう。
 
 風邪も治らず、頭痛も続いているけど、それくらいがちょうどいい気がした。
 ワークショップの場でも必要以上にはしゃがないで済んだし。
 けれど、また朝になってしまったよ。
 今日は姫路に移動。
 準備して眠ろう。
posted by 土田英生 at 05:19| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月17日

出会った二人の女性

 姫路のホテルにいる。
 明日は早い。
 なのでベッドに入った……けれど、眠れない。
 分かってはいる。
 こういう時はじっとしていればいい。
 けれど、私は……落ち着きがない。
 それでも30分以上は頑張った。

 結局、起きだしてコンビニに行ってしまった。
 ウイスキーを買ってきた。
 ちょっとだけ飲んで眠ろうという作戦だ。アーモンドとチョコレートはある。
 
 ……どうでもいいことを書いて眠ろう。
 よし、今日、私と出会った二人の女性についてだ。


 姫路までの新幹線は比較的空いていた。
 私はA席だった。
 つまり3列席の一番窓側だ。
 BもCも空席で誰もいない。
 だからのんびりだ。
 品川駅で買ったシュウマイ弁当が崎陽軒のではなかったことに驚き、しかし食べてみたら予想より美味しくて喜び、食べたら眠たくなったので30分くらい眠り、起きてから車内販売でコーヒーを買い、ノートを広げた。
 
 MONOの新作の人物相関図を書いた。
 時々、新幹線が揺れるので、関係があったらだめな二人が線でつながってしまったりしたが、それでも結構はかどった。こうなったら姫路に着くまでにこれは完成させようと思った。
 相関図が決まると、途端に話は進むのだ。

 名古屋に着いても隣には誰も乗ってこない。
 考えるのに疲れて、喫煙コーナーに行こうと思った……その時だ。
 車掌さんが「ここになります」と女性を案内してきた。
 スーツケースに、鞄が一つ、それにパンパンに膨らんだエコバックと、さらにお土産っぽい紙袋を持っている。彼女はC席だ。
 私は「上にあげるの手伝いましょうか?」
 と、声をかけた。
 
「いや、ここに置くのでいいです」

 と、爽やかな笑顔でBに荷物を置き、さらにその前にスーツケースを置いた。
 私は完全にふさがれてしまった。
 まるで要塞ではないか。
 これでは私はトイレにも行けない。
 なので「あ、上あげますよ」
 もう一度言ってみた。
 彼女はまたしても爽やかに笑って、

「いいですよ。あ、通る時はおっしゃってください」

 なぜか笑顔がとても自然だ。

「いや、あの喫煙コーナーにも行ったりしますので」

 私はささやかな抵抗を試みた。
 と……。

「ああ、大丈夫です。私も行きますから」

 そう言って彼女は座っている。
 人間は不条理に弱い。
 私は意味がわからなかったが、とっさに「そうですか」と言って引き下がってしまった。
 どういうことだろう?
 喫煙コーナーに私が行きたい時、彼女も行くということなのか?
 私は諦めてじっとしていた。
 彼女はお弁当を食べ、そして……しっかり眠った。
 ああ。もう私はカゴの中の鳥だ。
 
 相関図を書くのは止まってしまった。
 アイデアが煮詰まった時、そのためのタバコなのだ。
 私は昔、禁煙に成功した。
 その状態で台本を1本書いた。内容が浅い気がした。
 まあ、それは言い訳だと思うが、タバコを吸いながら塾考する時間がなかったせいだと思った。
 
 新幹線は京都に着いた。
 まだ彼女は眠っている。
 
 ……諦めて私も眠った。

 目がさめると彼女はいなかった。
 荷物だけがあった。
 どうやら喫煙コーナーに行っているらしい。
 私は今なら出られると思ったが、どうも動く気がしなかった。
 かといって、もう書く気も起こらない。
 ……それにしても彼女は全く戻ってこない。
 戻ってきたのは新神戸をすぎてからだ。
 30分くらい経っている。
 そして戻ってくると、私を見てなぜか微笑んだ。
 さらに鞄をゴソゴソして、「食べてください」と、私にチョコレートを差し出した。
 とても自然な笑顔だった。
 ……。

 姫路に着いてホテルにチェックインする時、応対してくれたのはベテランの風情を醸し出している女性だった。
 しかし……声が小さいのだ。
 雰囲気だけは手馴れているのに何を言っているのか全く聞き取れない。

「……でございます……ふにゅふにゅ……」

 けれど、予想はできるので私は名前を記入したりした。

「……1階の……して……から……9時まで……す」

 聞こえないが、朝食について教えてくれているのだろう。
 私はうなずいていた。
 と……。

「あ、もうし訳……ん……ほん…………すか?」

 何かを私に聞いた。
「はい?」私は聞き返した。

「ほん……ちゅう……は……すか?」

「え?」と、も一度聞き返した。

「あの……本日……ちゅう……は……すか?」

 ……本当に聞こえないのだ。
 仕方ないので「あの、なんでしょうか?」と聞き返した。
 すると、今度は驚くような声で

「本日、駐車場のご利用はございますかっ?」

 と非常に大きな声で質問された。

「ありません!」と、つられて私は大きな声で答えてしまった。

 さっき……眠れずにベッドから出て、コンビニに行こうと思った。
 真っ暗なフロントには、あの彼女が一人でいた。
 大きなホテルなのでロビーも広い。
 暗い中、そこだけが明るい。

「コンビニ行ってくるだけなんですけど、カギ預けた方がいいですか?」

 と、私は通る時に聞いてみた。

「……す……は」

 聞き取れなかった。
 なので、そのまま通り過ぎようとしたら。

「あ、お預けに!」

 と、急に彼女の大きな声がロビーに響いた。
 私はなぜか動悸を激しくしながらカギを預けた。
 で、だ。
 コンビニに行っていた時間は5分だ。
 戻ってきて、私はフロントにいた彼女に会釈した。
 それは当然、カギをもらうためだ。
 彼女は笑って私を見た。
 私はうなずいた。
 ……カギが出てこない。

「いや、あの……」

 と、私が言うと、

「いかが……たか?」

 聞き取りにくいが、「いかがいたしましたか?」と聞いている。
 
「いやあ、カギを……」

 もちろんちゃんと言わなかった私も悪いが、流れからして当然覚えていてくれていると思ったのだ。
 さっきもいたのは私だけ。
 今も私だけだ。

「お……ごうを?」

 お部屋番号と言っているらしい。
 私が番号を告げると、なぜか困ったような顔になって、変な間があった。
 やがて気がついたようにカギを持ってきて、そして、なぜか、もう一度元に戻り、何かをじっと見てから、

「……ださまですか?」

 私はもう読心術が身につき初めていた。

「土田です!」

 私の声が暗いロビーに響き渡った。

 では眠る。
posted by 土田英生 at 02:07| 兵庫 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月24日

刺激

 今日は劇作家協会関西支部のイベント『劇作バトル!』。
 会場は大阪だ。
 朝、下北沢から移動。

 それにしても先月あたりからかなりウロウロしているな。
 東京→大阪→東京→群馬→東京→坂出→東京→広島→東京→京都→奈良→宮崎→東京→姫路→東京→大阪→京都……今はここだ。

 あまりに不規則なせいか、なんだか食欲などがおかしい。
 この前、姫路から東京に移動した時もそうだった。
 一睡もせずに6時代の新幹線に乗り、妙にお腹が空いていた私は但馬牛の牛めし弁当を買った。そして食べたら思いの外美味しかった。
 ちょうと食べ終わった時だ。
 前に座っていた女性が、立ち上がって伸びをした。
 そして振り向いた。
 どういう訳だか長い間目が合った。
 と、私は無意識に「ああ、美味しかった」と彼女に向かって言ってしまった。
 そういえば、今日も朝から焼肉弁当を食べた。
 
 このイベントは去年が最初で、前回はイキウメの前川知大君の『語る室』だった。
 今年はヨーロッパ企画の上田誠君。
 取り上げさせてもらった戯曲は『月とスイートスポット』だ。
 これは上演も私は観ている。

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 最初に前半30分くらいのリーディング。
 横山拓也君が演出して、関西で活躍している役者さんたちが読んだ。
 それから……私と上田君でトークだ。
 彼のことはわかっているつもりになっていたが、話せば話すほど、自分との違いが明確になっていく。
 しかし、そういう書き方もあるのかと勉強になった。
 
 こういう企画は何より私にとって刺激になる。
 他人の書いたものを何回も読むし、そして話して理解も深まり、私の視野は広がる。
 お得だ。
 随分と前のことになるが、『劇作解体新書』というイベントをやらせてもらった時もそうだった。
 あの時も大変なメンバーだったしね。敬称略するが、小林賢太郎、長塚圭史、倉持裕、ケラリーノ・サンドロヴィッチ。
 
 まあ、そうした刺激を自作に生かさないとね。
 情報公開されたので一応宣伝。
 
 MONO公演『ハテノウタ』……これについては改めて。
 
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posted by 土田英生 at 03:32| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月26日

耳を塞ぐ

 自分と考えの違う人と話すのには労力がいる。

 話した結果、どちらかの考えが改められることももちろんある。
 お互い誤解していたねと、結果、同じ考えだったと分かって喜ぶこともある。
 また、最後まで違っていても、お互いの言い分を理解し合い、少しずつ譲って、『この辺りだったら双方が合意できるね』と、妥協点を見つけられることもある。

 けれど、いずれにしても……冷静に話し、お互いが理解し合おうという態度が前提になければどうにもならない。

 相手をやっつけるだけでは相互理解には到達しない。
 また、人は自分が正しいと思ってしまう生き物であり、攻撃されるとそれを守ることに執着してしまうのだということも分かって自分をコントロールしないと、自分に都合の悪い言葉は耳に入らない。

 そのコントロールする能力こそが理性であり知性だ。
 
 人間は動物のようには自然に生きられない。
 だからこそ、皆で、色々な『常識』を作り上げ、それを社会化することで共存しようとしてきた。
 そうした理性なんてどうでもいいと開き直った人には何を言っても通らない。
 どんなに正しい『事実』を告げようが、耳を塞いでいるので聞こえないし、別のことで粗探しをして反撃してくるだけだ。
 これは、どんな思想を持っていようが、こうなってしまったら『他者』と理解し合うことなどできない。
 そこにあるのは罵り合いだ。
 敵か味方か。
 問題はそれだけだ。
 もう内容は関係ない。
 
 日本全体がそうなってしまった。
 いや、世界がそうなっている。

 皆、自分の考えを補強して気持ち良くさせてくれる意見だけを取り入れ、自分と相容れない考えの人たちを罵る。もう事実なんかはどうでもいい。解釈次第でどうにでもなるからだ。

 そして、話はどんどん簡単になり、極端になっていく。
 原理主義というか、いや、ただ単純化して争っているだけだね。
 
 どう考えても明るい未来が待っているとは思えない。
 せいぜい出来ることは、冷静になろうと呼びかけ続けることくらいだ。

 大事なことは、ここはこうだけど、あそこは違うよね、と、しっかりと物事を見つめることなんだけどね。
 だって、100パーセント正しいなんてことはないのに。

 最近、日本人は素晴らしいなどというエピソードをやたら見せられるけど、実際には嫌なやつだっていっぱいるし。そんなに素晴らしいなら、国内で事件や揉め事なんて起きないはずなのにね。
 そうすると、今度は、そういう都合の悪い奴は外国人に違いないとか言い出すし。

 私はロンドンに留学していた時、いい人にたくさん出会った。
 けど、嫌な奴もいた。
 韓国で仕事をしていた時、いい人にたくさん出会ったし、いい思いもした。
 けど嫌な目にも遭った。
 中国でもそうだったし、アメリカでもそうだったし、高校の頃の姉妹校交換なんとかで行ったオーストラリアでもそうだったし、そんなこといったら、育った愛知県でもそうだったし、大学で京都に来てからもそうだっし、東京でもそうだし。
 時々嫌な目に遭うけど、幸せな体験の方が勝っているというか、どこでだってほとんどの人はいい人だった。
 文化や習慣に差はあっても、本質的な差異はない。
 
 自分と属性の近い人に味方したくなる気持ちはわかる。
 家族であるとか、出身地が一緒とかね。
 自分のアイデンティティーをそこに求めているから、きっと自分の一部なんだよね。
 
 けど、そんなこといっていたら世界は閉じるばかりだ。
 
 脚本を書いていて、そういうことばかり考えている。
 別に考えを披瀝しようとして作品を創っている訳じゃないし、エンターティメントとして楽しんでもらおうというのが最も大事なんだけど、どうしたって表現は社会に対するリアクションになるし。

 考えの違う人達に、どうしたら耳を塞がずにいてもらえるのか……。
posted by 土田英生 at 04:31| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月28日

ハテノウタ

 用事があったので、朝、ぶらぶら雨の嵐山を抜け、京福電車の嵐山駅に向かった。
 嵐電と呼ばれている路面電車だ。
 
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 四条大宮行きに乗る。
 熊本の震災に関する支援を訴える仕様になっていた。
 嵐山を発車すると、懐かしい景色が広がる。

 大学を中退し、東京へ行った。
 1年で挫折して戻って来た。
 そしてMONOをつくった。
 その時から長く住んでいたのがこの沿線なのだ。
 住んでいた「有栖川」のあたりは景色がすっかり変わっていた。
 けれど、やはり面影はところどころにあって、色んなことを想い出す。

 「帷子の辻」で北野線に乗り換える。
 隣に「撮影所前」という新しい駅ができていたりして驚いたが、次の駅である「常盤」は大学の1、2年の時に住んでいた街だ。
 モダンのトンカツ定食とか、王将とか、ファミリアとか……様々なワードが意味なく頭を駆け巡る。
 夜中に線路を歩いて帰ったこととか。
 スタンドバイミーじゃあるまいし、なんで線路を歩いたんだろうね。
 お金がなかったんだと思うけど。
 終点の「北野白梅町」に着く。
 改札を出てみると、ここは全然変わってない。
 串八の本店を見てなんだかホッとする。
 
 西大路通りを歩いて大学の方へ。
 Harbor cafeという24時間営業の店はまだある。
 昔はHoliday Houseという名前だった。
 犬飼君が劇団を抜けるという話し合いをしたのもここだったよね。
 
 少し早く着いたので北野天満宮を歩いた。
 
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 ……今日の用事は嬉しく思えば思うほど辛くなるという……不思議な状況だった。
 感傷的になってしまった。
 自分のこれからを考えざるを得ない日になった。

 書き出したわりに、なんの内容もなく終わってしまった。

 「懐かしさ」ということをつながりに作品のことを書こう。
 今からコツコツと宣伝をしておかないとね。

 MONOの次回公演は『ハテノウタ』だ。
 大人が出演する青春群像劇。
 高校時代の甘酸っぱさと、終末の切なさを同時に描く。

 そんなジャンルがあるのかどうかわからないけど、一言で表すなら「同窓会モノ」だ。
 しかしただの同窓会モノではない。
 バラバラな年齢の役者たちだが、全員が基本的に同い年という設定になっている。
 かといって、無理やり高校生の役をやるというようなことはしない。
 ある事情によって見かけは違ってしまっているけど、同じ年齢なのだ。

 それを同窓会の二次会的な場所を舞台に描く。
 歌もうたう……つもりだ。
 「ハテノウタ」は漢字にすれば「涯の歌」だ。

 ネタバレしているんじゃないかと思うかもしれないが、承知の上だ。
 制作とも相談した。
 こうした情報はチラシにも掲載する予定だ。
 で、この設定の中で、どれだけ普遍的な物語を編めるのか、そこに力点を置いて創ろうと思っている。

 出演はMONOの男性5人。
 ゲストには「のぞき穴、哀愁」以来2回目の出演になる松永渚さん、4回連続の出演になる高橋明日香さん、「ぶた草の庭」から3回連続になる松原由希子さんというMONOにも馴染み深い若い女優3人。

 そして……浦嶋りんこさんが出てくれる。
 
 彼女と知り合ったのは随分と前だ。
 「トリツカレ男」という作品の演出をした時、彼女は出演していた。音楽劇だったので、クラムボンの原田郁子さんや尾藤イサオさんと共に歌ってもらったりした。
 その時、ストレートプレイもやりたいという話を聞いたので、その後、一度一緒にやっている。
 けれど、できればMONOに出てもらいたいなあと思っていた。

 で、今回、歌もあるということで彼女にお願いした。

 懐かしさ、愉快さ、切なさ、間抜けさ……全てを取り込んだ作品にするつもりだ。
 皆様、チェックしておいてくださいね。

 と、宣伝していたら……少しだけ気分が上向いた気がする。
posted by 土田英生 at 02:41| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする