『チェーホフを待ちながら』→◎二日目。
夕方にのんびり劇場入り。
リラックスをして本番を迎えた。
20年もやっているとこんなものさ、と余裕を持って袖に入った。
途中で……私は……自分の台詞の途中で頭が真っ白になるのを感じた。
そうなのだ。突然、後に続く台詞が分からなくなったのだ。
困った挙げ句、目の前にいる金替君に向かって『おう、だろ?』という意味不明の言葉を発してみた。
間。
……金替君が子犬のような目をして私を見ている。
そうなのだ。
私が肝心な台詞を言わないので彼もつなげないのだ。
二人は黙って立っていた。
きっと時間にしたら5秒くらいだったと思うが、私には無限に感じられた。
James Bluntの『You're beautiful』という歌で、駅で一瞬目が合った女性との時間が永遠に感じるという歌詞が出て来るが、私はまさしく金替康博と永遠の時間を過ごしてしまった。
金替君がアドリブでつないでくれて何とか芝居は進んだ。
しかし……気が動転してしまっている私はそれから出て来る度に小さくとちった。
ああああ、やってしまった……。
明日からは万全を尽くす。
何年やっていても余裕などない。


