* * * *
男1 はあ? これ……この服は……。
男1は驚いて女1の顔を見る。
女1 そうです。
男1 ……私は男性なんですけど。
女1 ええ。
男1 これ……女性モノですよね? だってこれ……スカートですもんね……。
女1 そうですよ。だってあなたがそれを用意しろって要求したんじゃないですか。だから昨日必死で探してきたんですよ。
男1 え? あの……本当に訳が分からないんですけど。
女1 冗談はやめて下さい。
男1 冗談じゃなくって……。
女1 とにかく早くして下さいよ。皆さん待ってるんですから。
男1 これに着替える?
女1 はい。
男1 皆さんが待ってる?
女1 驚きましたよ。来ないから覗きに来たら……まだパジャマで座ってるんですから。
男1 本当に分からないんです。え? 皆さんって誰ですか?
女1 え……。
男1 というか……あなたは?
女1 はあ?
男1 あなたは……誰なんでしょうか?
女1 (笑って)待って下さいよ。私? 私が誰かって聞いてるんですか?
男1 ええ……。
女1は心配そうな表情になる。
女1 本当に聞いてるんですか?
男1 ええ……。
女1 私が分からない?
男1 です……ねえ。
女1はしばらく黙って男1を見ているが突然、
女1 (後に)ちょっと、誰か……誰か来て! おかしいの。
男1 え? 誰を……?
女1 (叫ぶように)来てよ! 早く! おかしいのよ。
外でガヤガヤと声がして男2と女2が顔を出す。
男2 ……どうしたの?
女2 あれ、まだパジャマで座ってるの。
女1 そんなことよりさ……私のことも分からないみたいなの。
女2 はあ?
男2 え? (笑いながら男1に)パンチョ。おい、パンチョ。早くしろよ。
男1 パンチョ?
男2 うん。
男1 パンチョって……何?
男2 パ、パンチョ……お前……。
三人は顔を見合わせる。
女1 でしょ? ずっとこの調子なの。
女2 確かに……おかしいですよね。
男1 待って……パンチョって何?
女2 ……自分のことも分からないんですか?
女1 みたいねえ。
男2 (男1に)おい、ふざけてる訳じゃないよな、パンチョ。
男1 ……パンチョって僕のこと?
男2 ふざけるなよ。
男1 ふざけてなんかないんですけど……。
女1 (男2達に)とにかく中止しよ。こんなことやってる場合じゃないもん。
男1 待って、待って。説明して。説明してくれたら分かるかも知れないし。
三人 ……。
三人はなにも言わない。
男1 え? 僕は……。
男2 お前は……パンチョだろ。
男1 パンチョっていうのは……その……あれ……呼び名?
三人の顔色が変わる。
女2 まずい。本当にまずいですよ。
* * * *
昨日の夜、気まぐれに書き始めた会話。
無構想でアドリブで続けて行く戯曲。
もしかしたら面白いものになってしまうのではないかと淡い期待をした。
しかし……やっぱり思いつきは思いつきだ。
ああ、遊びとはいえ書き直したい。考えて構成したい。