私はすぐに焦る。
例えば、家でトイレを我慢していて「もうダメだ」と思ったりした時、なぜか立ち上がった時にスエットを下ろしたりする。下ろしたまま、階段を駆け下りるので走りにくい。
順番が待てない。
芝居の稽古を始めると、最初は本当にもどかしい。
ええ? こんな風なの? 違うよね? という気になる。
だけど冷静に考えれば、最初からできあがっているわけではないのだ。
今からトイレに向かうのに。
すでにスエットを下ろしてしまっている感じだ。
特に新作の場合は、一度も形になったことがないので不安は大きい。
ダメだと思っても、その原因が台本にあるのか、演出なのか、演技なのか、それすら見極められない。
しかし分かっているのだ。
役者が台本に馴染み、台詞に体重が乗ってくれば、見えてくるのだということを。
だから待てばいいだけなのに、私はすぐに焦ってしまう。
私が稽古を休むとする。その日は役者さんだけで延々に台詞を回してもらったりする。
で、次の日。
やってみると劇的によくなっていたりする。
そういうものなのだ。
トイレに着いてからスエットは下ろそう。

2014年01月10日
