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MONO代表・土田英生のブログです

2014年08月19日

小倉の小さな冒険

 ホテルにこもって台本を書いていただけなのだが、それでも冒険はあった。
 小倉で起こった小さな小さな冒険について記したい。
 
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 まず、発端は……Macの電源アダプタを忘れてしまったことだ。
 書く物がたくさんあり、朝から泣きそうだったのに。
 泣きっ面に電源アダプタだ。
 最初はバッテリーだけで書いていたのだが、昼前には残り時間が1時間切った。
 北九州には23日まで滞在する。
 無理だ。買うしかない。

 Macを使っている人なら分かってくれると思うが、Apple製品はアクサリーも代替品が少ない。
 純正のものしか使えないことが多く、それはなかなか売っていないのだ。
 時間がある時ならいいが、こういう、咄嗟に必要になった時にはとても困る。
 調べてアップル製品を取り扱っている家電量販店に行く。
 本当はそんな時間すらもったいないのだ。足早に歩く。いや、走る手前だ。私はまるで競歩の選手だ。まあ、膝は曲げて歩いたので、大会だったら失格になるだろうが、私の目的は金メダルではない。アダプタなのだ。

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 そういえば「のぞき穴、哀愁」の時、この店に入ったなあなどと思い出しながら歩く。
 ここで集合してからボーリングに行ったね。そしてもつ鍋を食べたっけ。ああ、月日の経つのは早い。
 ……今はそんな哀愁に浸っている場合ではない。

 家電量販店では……目当てのアダプタがなかった。
 途方に暮れた。
 もう泣く寸前だった。
 量販店の店員さんがそんな私を見て言った。

「あの、うちとは関係ないんでアレなんですが、アップルの専門店が最近できてますよ」

 一瞬、彼が光って見えた。
 リバーウォークの中にあるという。北九州芸術劇場がある建物だ。
 私は三度くらい彼にお礼を言うと、そこに向かった。
 冒険の第二章だ。
 もう今度は走った。競歩からマラソンに変更だ。
 
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 さすがにアップルの専門店だけあって話が早い。
 店員のお兄さんが話を聞いてくれる。
 しかしだ。
 私は歩いてくる途中で、型番をメモした紙をどこかへやってしまった。
 困った。
 ホテルに戻ってもう一度確認すればいいのだが、それだとまたしても時間がかかる。
 私には時間がないのだ。本当にないのだ。
 
 色々説明したあげく……二択になった。
 AのアダプタかBのアダプタか。
 またしてもMacを使っている人だったら分かるが、フィルムを剥がしてしまったら返品は不可能なのだ。
 しかもアダプタは8千円くらいする。
 今、考えたらホテルに戻った方がよかったと思うが、焦っている私にはそんな判断はできない。
 私は大きな声で言った。

「こっち!」

 店員さんがさすがに、

「いや、こっちって……え? いいんですか」と、心配してくれたが、私はもう決めたのだ。

 買い終わると私は走ってホテルに戻った。
 マラソンから短距離に変更だ。
 
 部屋に帰ってみた。
 あっていた。間違ってなかった。
 ちょっと嬉し泣きしそうだった。
 しかし、堪えた。
 小さい頃から父に言われて育ったのだ。
 簡単に涙を流すなと。
 だから、きりっとした表情で、私は早速、仕事に取りかかった。
 しかし……水やコーヒーがないことに気づく。
 ああ、帰りに買ってくればよかった。

 仕方なくコンビニに行った。
 
 レジでカードを出した。
 しかし店員さんはそのカードを無視した。
 私は笑顔で「あの、これ」と言った。
 彼は気を遣った感じで、静かに答えた。

「それはローソンさんのカードですよね?」

 うわ、間違えた。
 なんでローソンカードを出してしまったのか。
 私は慌ててそのカードを引っ込め、そしてTポイントカードを出した。

「すみませんね、これですよね?」

 すると、彼の顔は本当に困惑した表情になった。
 演技の勉強になるくらい、絶妙な表情だ。
 
「……Tポイントカードはファミリーマートさんだと思います」

 そうなのだ。
 そこはセブンイレブンだった。

「あ、あれ? 間違えました」

 と、慌てて私はカードを引っ込めた。
 しかし、今度は彼が私を待っていた。

「いや……」

 そう言ったまま、彼は私を見ている。
 nanacoとかセブンカードとかを出すと思っているか?
 今度は私が困って言った。

「ないんです」

 ……こうして小倉での小さな冒険は終わった。

 いや、そんなに人生は甘くない。
 夕ご飯を食べに出た時だ。
 ラーメンを食べようとしたのに、店に入ってメニューをみながら「つけ麺」と小さな声で読んでしまった為に「はい、つけ麺ですね」と言われて、つけ麺を食べることになった。
 ホテルに戻ってから大浴場に行き、タオルを忘れて再び身体を振って出たりはした。
 再びというのは、前に城崎で同じことをしたからだ。

 こうして小さな冒険は続いた。

 そして、なんでもないメールがきっかけで私は泣いた。
 アダプタの時でも堪えたのに、なんて情緒不安定なんだろうか。

 明日は朝から福岡に移動して「姐さん女房の裏切り」の取材をたくさんしてもらう。
 夜には北九州に戻ってトークがある。

 もう、冒険が続かないことを祈る。
 明日もきっと色々あるだろう。冒険をする人間には休息も必要なのだ。
 
 


 
 
 
posted by 土田英生 at 02:07| 福岡 ☔| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする