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MONO代表・土田英生のブログです

2016年06月15日

大分県とか爽やかな女性とか。

 頭を使うことが多くて苦しい。
 そんな中、大分へ行ってきた。
 演劇大学というイベントで、創作ワークショップなどをする為だ。
 
IMG_8769.jpg


 もちろん大分ではそれに集中はするつもりだったけど、少しくらいは暇な時間があるのではと考え、書けていなかったいくつかの原稿を「大分に滞在している済ませます」と、伝えて出かけた。
 
 ……結果から言えばまったく他の仕事などはする時間がなかった。
 ワークショップをしたり、創作をしたり、トークをしたり、同じく参加していたアヤマドリの広田淳一君やA級Missinglinkの土橋君のワークショップを見学したり。
 
 私が創作を担当したチームの参加者は多種多様な人たちだったが、稽古で変化していく様がとても印象深く、このことは細かく書きたいくらいだが、今は時間がないしね。
 出会いもたくさんあって楽しかったのだが、問題は他の仕事がすっかり残ってしまっていることだった。

 最終日。
 打ち上げを途中で抜けて、ホテルに戻って朝まで書いた。
 翌日の午後、羽田についた時には疲れすぎて気分も沈んでしまった。
 夕方からはリーディングの稽古があるのだ。
 こんな状態でできるのか心配になった。

 羽田から品川を経由して渋谷についた。
 荷物を置きに下北沢の事務所に戻ろうと思ったからだ。
 井の頭線のホームを先頭車両に向かって歩いていた。

 と、後ろから走る足音が聞こえてきた。

「すいません、すいません!」

 振り返ると若い女性が走ってくる。
 私めがけてまっすぐ走ってくるのだ。
 私は立ち止まって待った。

 と、私の前で止まった彼女は息を切らせてすぐに喋れない状態だった。

「え? 私ですか?」

 と、聞くと声を出さずに何度も頷く。
 そして手に持っている空箱のような物を差し出して、

「これ、落としましたよね?」と聞いてきた。

 ……それは見覚えのないものだった。
 どうやら充電器が入っていたような透明な箱で、中には変換プラグが一つだけ入っていた。
 多分、誰かが買って必要な物を取り出し、いらない変換プラグだけを箱の中に入れていたのだろう。捨てるつもりだったのかも知れない。
 
「あ、いや……僕のじゃないと思うんですけど」

 そういうと彼女は悔しそうな表情をして、

「そうなんですか……いや、落とした瞬間は見てなくて、あれ、と思って拾ってキョロキョロしたんですけど……そしたらホームをスタスタと歩いている人が見えたんで、てっきり……」

 どう表現したらいいのか分からないが、とにかくそれは爽やかだった。
 走ったせいで額には汗をかいている。そして押し付けがましさを微塵も感じさせない親切心が滲み出ていた。

「なんか、申し訳ないですね。でも、ありがとうございます」

 私がそういうと、

「いや、勘違いしちゃっただけなんで。お礼を言ってもらうのおかしくないですか?」
 
 と、彼女は笑った。そして、

「でも、これ、どうしよう?」

 私は自然に「駅員さんに渡しましょうよ」と、言って歩き出した。
 彼女も一緒に歩き出す。
 そして二人で駅員さんにそれを渡した時、不思議そうに私たちを見ていた。
 こんなゴミのようなものを、なんで二人で渡しに来たのだろうという疑問がはっきりと顔に出ていた。
 
「付き合ってくれてありがとうございました」
「いや、こっちこそ」

 と、なんだかおかしな会話をして私たちは別々の車両に乗った。
 私の疲れは消えていた。
 あまりの彼女の爽やかさに感動すら覚えた。

 そしてリーディングの稽古に参加した。
 下北沢に戻って来た時、親しい制作者であるMさんにばったり会った。
 横には知らない女性が一緒にいたので私は挨拶をした。
 Mさんが「劇作家の土田さんです」と、紹介してくれた。
 すると……

「あ、はいはい。私、ブログ読んでます。ほら、革の……ねえ?」

 私がレザークラフトにハマっていることを書いたのを読んでくれていたのだろう。
 事務所に戻ってまた仕事。
 ただ、さすがに……知らない間にイスに座ったまま眠ってしまっていた。

 そして朝、イスの足にしがみつき、カーペットで眠っている自分に気がついた。
 
 今日は眠ろう。
 本当は気分を切り替える為にこれを書いていたのだが、もう今日はこのまま書いてもきっと無駄だ。
 また、イスにしがみつくことになるだけだ。
posted by 土田英生 at 01:51| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする