表紙に戻る
MONO代表・土田英生のブログです

2016年07月26日

全く書いていなかった

 こっちを全く書いていなかった。
 仕事などでバタバタしていた上に、ブログ的なものをココに書いていたのですっかり更新した気になっていた。
 
 これから随分と直すと思うが、書いていた小説の初稿がほぼあがった。
 締め切りを15回以上、遅らせてもらった。
 しかも途中、全く連絡していない期間もあった。

 そもそも話をいただいたのはもう二年以上前になる。
 その時は、半年後に出しますと約束をしながら、そのまま一年以上が過ぎてしまった。一応、3分の1くらいは書いてはいたのだが、なんか気が乗らないまま止まってしまっていた。
 去年、改めて「どうしましょうか」という話になり、そこまで書いたアイデアは全て捨てて新たに書くことになった。それから……約束しては書けずに延ばしてもらい……それを繰り返していたのだ。
 本当ならそれも5月くらいには終わっているはずだったのに。
 
 普段は戯曲や脚本しか書いてないせいで、なかなか馴染めなかった。
 いや、まだ完全には終わってないしね。
 
 歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の改訂は数日前に終わった。
 稽古には毎日行っている。
 おかげで随分と助かっている感じだ。
 芝居は面白い。
 だから皆さん、きてくださいね。
 あ、5日だけ前売りが残りわずかなので、できれば6日、7日だと助かります。
 情報はこちらです!→
 
 前に人生の谷間だと書いた気がする。

 ……実際にその通りだ。現実に様々な問題が私の肩の上に乗っかっている。
 そう書くと「どうしたんですか?」ということになるが、まあ、大したことじゃないね。
 誰でもそれぞれ問題や悩みは抱えているしね。
 いや、そういう気分になってきただけかも。
 状況に慣れてしまって麻痺しているのかもしれない。

 でも、そんな時こそ周りを見ないとね。
 余裕がなくなると、どんどん内側に入っていく。
 そういう性格でもあるし、特に何か書き物をしている時は、余計にそれがひどくなる気がする。
 自分のことばかりになってしまう。

 けど、少しそこから抜けてきた。
 きっかけは二つあった。

 一つは友達とちょっとした言い合いになり、その時は自分の言いたいことがうまく伝わらないもどかしさでいっぱいだったのに、次の日になると自分に対する反省が押し寄せてきた。
 で、冷静になった。
 そうだな。
 俺、ダメだな、これでは。……そんな気になった。
 
 もう一つは一週間前くらいだ。

 稽古にいく前に歪のメンバーからLINEがあった。
 スマホを稽古場に忘れたという。
 その稽古場は下北沢にあり、その日の稽古は阿佐ヶ谷だった。
 だから私が代わりに取ってきてあげようと思った。

 その稽古場に連絡を取ると、12時半以降なら大丈夫だということだった。
 しかし、稽古は阿佐ヶ谷で13時から。
 12時半に受け取って、そこから急いだとして少し遅刻してしまう。

 12時15分くらいにそこまで行って待機していた。
 すると20分にはスマホを受け取ることができた。
 電車を調べる。
 井の頭線で吉祥寺、そこから総武線で阿佐ヶ谷。
 乗り換え時間は4分。
 それなら間に合うということがわかった。

 私は急いだ。
 予定通りの電車に乗れた。
 これで間に合う。
 
 目の前には小さな女の子がいて、横にはおばあさんが立っていた。
 と、おばあさんが私に声をかけてきた。

「これ、吉祥寺まで行きますか?」

 私は行きますよと答えて、目が合った女の子にも微笑みかけた。
 女の子は照れてうつむいた。
 列車は順調に走る。
 彼女はドアの前に立ち、手すりに手を突っ込んで遊んでいた。
 電車がすれ違ったりすると「うわ、電車」などとおばあちゃんに言ったりする。
 微笑ましい。

 と……

「痛い……抜けない」

 と、女の子が慌てだした。
 見ると、手すりの間に腕が入ってしまい、抜こうと思っても抜けなくなってしまっていることがわかった。
 おばあちゃんは女の子の腕を掴んで引き抜こうをするが、「痛いよ」と女の子は叫んで泣き出してしまった。
 と、おばあちゃんは私を見た。

「ああ、どうしましょう、どうしましょう」

 自分でも驚いたのだが、明らかに自分の頭の中で「カチ」っという音がした。
 気がつくと、私は女の子の横にしゃがみ、頭を撫でながら大きな声で喋っていた。

「大丈夫だからね。お兄ちゃんが……いや、おじさんだね……ついてるからね。力を抜いて。だって、入ったんだから絶対に抜けるよ。大丈夫だからねえええ」

 私の口からあんなに高い声が、しかもちょっとしたオモシロトーンで出るとは驚きだ。
 女の子は頷く。
 ……しかし、汗をかいているためか、手すりに引っかかってしまい、どうやっても女の子の腕は抜けなかった。
 女の子はさらに泣く。
 横に立っていた大学生くらいの男子もとても優しく女の子を慰め始めた。
 おばあちゃんはオロオロしてパニック状態になっているだけだ。
 
 おかしな光景だった。
 私とその大学生が二人で女の子を励まし、そしてなんとか腕を抜こうと奮闘していた。
 後ろではおばあちゃんが「ああ、どうしましょう」と騒いでいる。

 どうやっても抜けない。
 
 電車が永福町に到着した。
 私は叫んだ。

「駅員さん呼んでください!」

 しかし、駅員さんは見当たらない。
 おばあちゃんはノックしたらいいですかね、と、まだパニック状態が続いている。
 私は電車を降りて、運転席まで行った。
 窓を叩き、「女の子の腕が手すりに挟まってるんです!」と伝えた。

 アナウンスが流れ、列車は停車したままになった。
 運転手、そして駅員さんが二人やってきた。
 私と大学生を加えた、五人が女の子を取り囲む。
 女の子がふとした拍子に腕の角度を変えた。
 今まではそうしようとすると「痛い」と泣いていたのだが、たくさんの人集まってきてびっくりしたせいか、腕を動かしたのだ。

 と、するりと腕は抜けた。
 歓声があがる。
 おばあちゃんも喜んでいる。隣に座っていた女性も「ああ、よかったねえ」と女の子に言った。

 そして運転手さんは戻り、列車は走り出した。

 すると、永福町から乗ってきた子ずれの母親が私に言った。

「いやあ、うちの子も、そこに手をすぐに入れるんですよ」

 ……父親だと思われたようだ。

 説明するのも面倒なので「この子も懲りたでしょう、はははは」と話を合わせた。

 「お客様対応により、遅れて運行しております」というアナウンスがなんども流れる。
 
 おばあちゃんはその度に「すみません」と謝っていた。

 で、吉祥寺に着いたのだが……乗り換えには間に合わずに遅刻してしまった。

 けれど、あの「カチ」っというスイッチのせいで私はなんだか元気になった。
 
きっと、自分のことばかりになっていたのに、スマホを取りに行き、女の子と関わったせいで、他人に目が向いたんだと思う。

 あれから随分と踏ん張りがきいている気がする。
 
 どこまで持つかわからないけど、このまま乗り切ろう。
posted by 土田英生 at 05:34| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする