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MONO代表・土田英生のブログです

2018年07月29日

落差

 自分の落差に疲れる。

 初めて会った人からは元気だと言われるし、実際、自分自身でもそう思う。
 よく喋るし、落ち着きなく動く。
 小学生の頃から多動症で、授業中もまとも座っていることができなかったが、それが大人になった今も続いている。

 稽古場でもそうらしい。

 私は他の演出家がやっている稽古をあまり見る機会はないけれど、今回でも稽古見学に来てくれた人たちからは「いつもそんな張り切った感じなんですか?」と聞かれる。
 立ち上がって稽古を見ているし、ダメ出しの度に無意味に役者のそばに行くし、不必要なコメントも多いし。
 時々、頑張ってイスに座ってみるのだが、落ち着きがなくなり、目の前にある紙をくしゃくしゃにしていたりする。
 出されたアーモンドやチョコレートもすぐに食べ尽くす。
 
 反対に一人でいる時の暗さは相当だという自信がある。

 だいたい、身動きせずじっとしているね。
 蛾と同じくらい同じ場所にいる。
 あの人たちも結構すごいよね。前の晩と同じ位置にいたりするし。

 まあ、これはこれでいい。
 きっとそうやって自分のバランスを取っているんだと思う。

 ただ、気を許す人たちといると……人の前でも悩んでいることがばれてしまうことがある。
 今日の稽古場ではそうだったと深く反省している。

 今回のテアトル・エコーの役者さんたちは、なんというか、本当に優しい。
 皆、協力的で、自分でいうのも変だけど……信頼をしてくれているのが伝わってくる。

 で……。
 まずは昨日のことだ。

 昨日、粗いままだけど初めて通し稽古をしてみた。
 時間は1時間40分。
 予定通りだ。
 これまで小返しばかりしていたので、部分部分は面白くなっている。
 
 しかし……通してみるとおかしなところが結構あった。
 何より、台本が気になった。
 もう一つ要素が足りない。

 稽古が終わってから皆で飲んでいて、見学に来てくれていた人たちからの意見も聞いた。

 皆は役者さんのことを言っていたけど、私にはそう思えなかった。
 演技がおかしく見えるとしたら、それはやっぱり台本のせいだし、演出のせいなのだ。
 
 ……私は出演している役者のことを言われるのがとても辛い。
 辛いという言葉では言い表せないね。

 はっきり言ってしまえば、自分が文句を言われているとしか感じられないのだ。
 MONOの公演でも「本はよかったけど、誰々がもう一つでしたね」などと言われると猛烈に傷つく。その人は私を褒めているつもりなのかもしれないがどうしたってそうは思えない。
 役者の容姿などについて言われることも許せない。
 私がいいと思って選んでいる役者さんなのだ。
 どうやら私は自分のアイデンティティーを出ている役者にまで広げてしまうようだ。

 なんだろう?
 家族の悪口を言われるのに近いんだよね。
 まあ、それで色々と辛いこともあるんだけどね。
 線が引けないというか。
 これは私の欠点だと自覚してるんだけど……どうも変えられない。

 だけど……。

 いい格好をする訳ではないが、演出としてその座組みを仕切っている以上、やっぱり責任は全て演出家にあると思うんだよね。
 今回は外部から乗り込んでいる形だけど、一緒にやってる間はそれも関係ないし。
 キャスティングだって、時にはいろんな事情で決まったりするけど、自分がオッケーを出しているのだ。
 稽古に入れば、自分なりに設計図を書き、この役者さんはこんな感じで運ぼうと計画しながらダメ出しするし、台本だって役者に合わせて変えて行く。

 だからやっぱり芝居がダメだとすれば悪いのは私だ。
 
 ま、そんなこんなで……昨日、通し稽古と飲み会のあと私は悩んだ。
 代々木上原から歩いて帰りながら猛烈に暗くなった。
 下北沢でなく一つ手前の駅で降りたのも、少しパニック状態に陥って電車に乗ってられなくなったからだ。

 深呼吸を繰り返しながら歩いた。

 ……いろんなことあって、今はもともとそんなに元気ではない。
 プライドや自信を失っている状態だ。
 けど、最初に書いたように、人がいるとシャキッとする性格なので、それでなんとか保っていた。

 稽古をすることで随分と気も張っていたし、皆もいい人だったのでそれで支えられていたのだが、その肝心の芝居で悩んだ途端、最後の糸が切れてしまったようだ。

 歩いていると知り合いの店から電話があった。
 昔、私の台本をやってくれたことがあるという女優さんが来ていて、会いたいと言っているという。
 帰り道だったので顔を出した。

 自分の暗さに耐えられなかったので助かった。
 本当に不思議だけど、元気に喋るんだよねえ。
 初めましてという女優さんと、一時間半くらい話した。

 事務所に帰ると、落差がすごかった。
 水力発電だったら、結構な発電ができるくらいの落差だ。
 
 頼まれた作業などもあったので、それをやっていたら朝になった。

 やっとウトウトした……と、思ったら電話があった。
 ……14時だった。
 稽古の開始時刻。

 寝坊した。

 その罪悪感に加え、自分をコントロールする準備をせずに稽古場に行ったせいで、テンションがいつものように上がらない。
 これではまずいと思うのに、どうにもならない。
 休憩時間などに役者さんたちがそれぞれ「大丈夫ですか」と声をかけてくれたりする。
 バレている。

 やばいやばいやばい。

 これ以上、優しくされたら、自分の弱さが出てしまう。
 はっきり言って泣きそうだったのだ。
 それだけは絶対に困る。
 そんなことになったら、テアトル・エコーで「泣き虫演出家」として語り継がれてしまう。

 昔、フジテレビでドラマをやっていた時、同じような状態で泣き出してしまい、後々まで「泣き虫脚本家」と呼ばれていた。
 TBSでも泣いて会議室を飛び出してしまい売店に隠れていたことがある。
 あの時は30分くらいしてから、大学を出たばかりの若いAPの女の子に見つけられ、「私と一緒に戻りましょう」と手を引かれて猛烈に恥ずかしい思いをしたのだ。
 何年か後にその人に再会した時、やっぱり彼女はそのことを憶えていた。
 
 もうそんなのはごめんだ。
 
 夕方まではなんとか稽古した。
 けど、やっぱり稽古場は明るくならない。
 私の出すアイデアも陳腐で、説得力がないのを自分でも感じる。
 
 休憩後に再開しようとしたら……もう始められなかった。
 これ以上続けると、自分が崩れるなとはっきりとわかった。
 
 台本を少し直してきますと告げて、稽古を切り上げさせてもらった。
 
 再び自己嫌悪。

 しかも事務所に戻った頃、Twitterに私が暗いコメントを書いたら、役者さんたちからLINEが来た。
 皆、優しい言葉を書き連ねてくれていた。
 ああ、申し訳ない。

 今回の座組みと関係ない人たちも星座の占いを送ってくれたり、月の写真を送ってくれたり。
 中には「何があったか知らないけど元気出してね」というメッセージと共にタイ料理の写真を送ってくれた人もいたけど、あれはなんだろう?
 ガパオライスだよね、あれは。
 まあ、嫌いでないんだけどね。
 
 
 とにかく……こんな状態では本当にダメだ。
 三時間ほど、蛾のようにじっとしたあと、台本を頭から見直してみた。

 一箇所、ここだと思った場所を発見したので、それを書き直す。
 そこはよくなったと思うけど、まだ足りない。

 今日は稽古オフ。
 ただ、昼からは友人に頼まれたクローズドのワークショップがある。
 しかもコントのワークショップ。
 

 少し眠らないとね。
 で、今日の夜、もう一度台本を直そう。
 まだ時間はある。

 絶対に面白くしてやる。

 
IMG_1560.jpg


 写真はこの前行った焼き鳥屋さんで食べたつくね。
 とても美味しかった。
 この文章が暗いので載せてみる。

 ガパオライスの写真で元気づけてもらったので真似してみた。
posted by 土田英生 at 04:46| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする