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MONO代表・土田英生のブログです

2017年10月14日

子守ブログ失敗

 広島に滞在して、アステールプラザの演劇学校の稽古中。
 明後日が試演会。
 今回やるのは『ヒヤクモノガタリ』。
 参加者それぞれに自分のエピソードを書いてもらい、それを百物語のように順番に語って行く。
 基本的に私は会話主体の物しかやったことないので、戸惑いも満載だ。

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 これは担当の金沢さんが撮ってくれてた写真だけど、なんだか、自分の姿にも戸惑いが見えるね。
 いや、無駄話をしているだけかも知れない。
 今年は大学生とかも多い。
 高校一年もいるしね。
 楽しい。
 けれど、喋っていて、例えにちょっと困ったりする。
 無理して『けものフレンズ』で例えようとして諦めたりしている。
 慣れないことはしない方がいい。
 今日は結局、例えが『生活笑百科』になってしまった。
 
 明日は一日中稽古。
 明後日の15時から試演会だ。

 ……書いていいのかどうかわからないけど、この俳優コースを担当するのは今年で最後にさせてもらおうと思っている。

 最初は4年前。
 演出コースの講師に呼んでもらった。その時は私の書いたテキストを三人の演出家がそれぞれ上演。私はオブザーバーのような形だった。それをやっていて、もっと直接何かを伝えたいという衝動にかられた。で、翌年から今年までの3年間は俳優コースを担当させてもらった。毎年、それぞれに楽しい。演出コースの一本に出演し、さらには翌年の俳優コースに参加していたのが、MONO特別企画「怠惰なマネキン」に出演する立川茜さんだったりする。

 これだけやっていると顔見知りも増えるし、友達もできる。
 当然のことながら広島にも思い入れが生まれる。

 自己確認の為だと思うけど、私は『誰かの力になっている』と錯覚することでモチベーションが上がる。
 作品を創りたいという欲求はもちろんあると信じているけれど、その根本を突き詰めて行くと怪しい部分があるんだよね。
 どうも……そこには人がいる。
 人からの求めに応じて、自分の何かが左右されるのだ。

 だから関係が近くなると思いは濃くなり苦しくなる。
 もっと関わりたいという気になるんだけど、同時に、責任は取れるのかという疑問も湧く。

 だから離れた方がいいんじゃないかと考えたりするんだよね。このまま続けたら、そのうち広島に引越したくなるかも知れないし。

 同じ人が同じ場所で、あまりに長い期間アレコレするのも弊害があるしねえ。

 こんなこと書きながら来年も関わってたりするかも知れないので、このあたりで控えよう。

 つい三日前までは香川の坂出にいた。こっちは三日間で短い作品を創った。
 坂出も三年連続だった。
 やはり思い入れが生まれてしまった。
 なんなんだろ、これは?
 浮気性なんだよね、結局。
 その場所、目の前にいる人、そこしか見えなくなってしまう。

 坂出と広島の間。
 1日半だけ京都の自宅に戻った。
 けれど、締切があったのでずっとパソコンに向かっていた。いや、知り合いの女優さんが京都にいたのでちょっと散歩してお茶したけど。
 だけど、あれで随分と救われたし。必要な時間だったよね。
 
 と、言いながら……締切には間に合わず広島にまで原稿を持ってきてしまった。
 
 移動が多いと本当に面倒だ。
 ゴミ出しに苦労するし、今回は選挙だ。
 不在者投票の為の書類を送ったりしないといけなかったし……ああ、面倒だ。
 こんな忙しい時に、意義の曖昧な選挙。
 いい加減にしてくれと思う。
 ……そりゃ、投票はするんだけどね。

 本当、このまま進んだらどうなっちゃうんだろ?
 右とか左とか、保守とか革新とか……簡単に立場を決めて、脊髄反射で言い合うだけじゃなく……本当、自分たちの未来がどうなっちゃうのか、冷静に想像してみないと。

 ああ、こんなこと書いてないで眠らないと。
 さっきまで脚本を終わらせようと躍起になっていたが……無理だった。
 しかも眠ろうと思って横になっても目は冴えたままだし。
 
 書いてたら眠たくなるかもと思ってこれを更新してみたけどダメだね。
 子守唄のようにはいかない。子守ブログは失敗だ。
 
 疲れているせいかのか、それとも、いろんな場所で、様々な人への思い入れが生まれたせいか……。

 これまで当たり前に思っていた考えや人間関係、他人や物への感情が、自分の内側で違う顔を見せる。これはこれで戸惑うんだよねえ。急に冷静になってしまったりして。
 
 どうも私にはこういうところがある。
 突然、気付いてしまう。「あ、そういうことか」と思った瞬間に景色がすっかり変わるのだ。
 これまでだって、いきなり大学を中退してみたり、突然留学を思い立ったり、人と別れたり、これまでの生活を変えてみたり。

 眠ったらもとに戻るかも知れないんだけどね。
posted by 土田英生 at 03:41| 広島 🌁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月08日

アンパンマン気分

 今は香川の坂出にいる。
 前回の更新の時は京都にいたらしい。
 書くのも久しぶりだしね。

 あれから広島へ行き、広島からは東京に向かった。
 東京から香川にやってきた。このあとは京都に行き、広島に行き、そして再び東京だ。
 
 詳細は書けないがドラマ脚本に取り組んでいる。
 環境はよく、とても気持ちよくやらせてもらっている。
 だから、きちんと書かないと申し訳ない。
 気力だけは充分なのだが、いかんせん時間が不足している。

 ここにも何度も書いたけど、基本的に同時に色々なことができないので、かなり混乱してる。
 
 MONO特別企画「怠惰なマネキン」の稽古も始まった。まだ台本は3分の1。
 昔、MONOで上演した「なにもしない冬」と同じモチーフで書いているが、それは自分の中での話で、実際はまったく別の作品だ。新宿眼科画廊のスペースOという、とても小さなスペースでの上演になるので、それに合わせたものにしている。舞台と客席も分けず、そのスペースで行われる人々の会話や行動を、一緒に体験してもらおうと思っている。→「怠惰なマネキン」サイト

 それに合わせて観劇三昧でイベントも行わせてもらうので、ぜひ、みなさん来てください。
  公演直前のiakuの横山君と「こんな俳優(特に若手)と仕事がしたい」というタイトルで喋ります!
 
 『月一観劇三昧/下北沢 土田英生と横山拓也の「こんな俳優(特に若手)と仕事がしたい』
 
 まあ、この告知の為にこれを更新しているんだね、きっと。
 これ、もう10日もないし。
 「きゅうりの花」のトークイベントをした時、告知が遅く、あまりにアットホームすぎる環境になった。一緒に喋ってもらった諏訪君にも申し訳なく思った。今回も急に横山君にお願いした。だから……なんとかみなさんに来てもらわないとと願っている。
 ああ、心配だ。
 観劇三昧さんでは小説に関するトークイベントもさせてもらったことがある。
 あの時はそこそこお客さんは集まってくれたけれど、それでも台風が来ていて予定人数より少なかった記憶がある。いや……私に皆を集める力がないだけだけね。

 ああ、本当に頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 今日は坂出でワークショップ初日。
 明後日、発表があるので作品の形にしないといけない。明日は演技の講座のあと、別枠で戯曲の講座も入っている。15日には広島でアステールプラザの演劇学校の試演会もある。
 東京に戻ってMONO特別企画もある。
 ドラマの脚本もある。
 本当は小説も書き終わっている予定だった。
 来年のMONOの公演の台本もある。

 ……その上だ。

 とにかく日々のニュースや社会の動きに、恐怖心を感じながら過ごしている。
 衆議院解散からの一連の動きは……不条理劇を見ているようだった。
 目の前で起きていることが信じられなかった。
 解散理由を本当のところ誰も信じていないにもかかわらず、それをあたかも前提として選挙に突入していくこの流れについていけない。土台がないところに家が建って行くのを眺めるような感覚だ。さらに不条理劇は続いた。民進党のゴタゴタもそうだしね。次々と柱が倒れていく。

 台本を書く時だって、まずは設定が大事で、その設定にリアリティーを与えられなければ、そこから話を組み立てられない。だから私はいつも最初のシーンを何度も書き直すのだ。土台があるから、ずらしたりすることで笑いやドラマが生まれたりする。

 けれど、もう、何を基準にしていいのかわからないね。

 本当、ここ数年、発する言葉の価値低下は凄まじく、それが一気に加速している感じだ。
 みんなどんな気持ちでセリフを書き、どんな顔で稽古場でダメ出ししてるんだろう?
 まあ、私もやってはいるんだけど。
 頭の中に雑音が響くよね。
 
 イエローモンキーの『JAM』は、価値観を保てなくなった状態の人が、信用できる存在である『君』に会いたくて、明日を待ってるというような歌だ。……と思う。

 あんな気分だ。

 一生懸命、そういう身近な人の顔を思い浮かべ、手を伸ばしてみる。
 まあ、それだって思い通りに行かないけどね。
 こっちが求めているようには、他人は与えてくれないし。
 まあ、孤独としっかり向き合い、自分を補強して踏ん張り続けるしかないんだとは思うんだけど。けど、手綱くらいは欲しくなっちゃうんだよね、どうしても。
 
 観劇三昧でのイベントを告知しようと思って書き出したのに。
 これじゃ、ダメだ。
 
 私は人の前に出ると、自動的に元気100倍アンパンマンみたいになるので……ま、一生懸命喋るんだけどね。
 
 けどさあ、アンパンマンも大変だよねえ。
 だって、自分の顔すら新しいものに変わっちゃうんだから。
 きっと不安だと思う。この頰すら、この目すら、自分のものだと思えないんだから。
 アイデンティティーとかどうやって保ってるんだろ?
 だから「愛と勇気だけが友達」なんだよね。そう思ってないと、きっと存在できないんだと思う。
 
 ああ、そういう意味でもアンパンマン気分だ。
 
 わからないまま終わる、そんなのは嫌だ!
posted by 土田英生 at 05:36| 香川 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月13日

僕の京都日記

 京都にいる間は執筆時間に当てようと決めていた。
 だからほとんど人とも会っていない。
 なのに、なのに。
 思ったようには進んでいない。
 すでに10日も経っているのに。

 毎日、掃除して洗濯してご飯を食べて……空いた時間はパソコンの前に座っているのだが、時間だけがすぎて行く。
 
 静かすぎるのも問題だ。
 刺激がない。

 「きゅうりの花」のキャスト達は終わってすぐにそれぞれ別の現場で忙しくしている。
 金替くんは壁ノ花団、諏訪君はヨーロッパ企画、千葉さんは「関数ドミノ」、神田くんは「OZMAFIA」、内田さんは「僕の東京日記」、啓君は自身で監督した映画「この凹にハマる音をちょうだい」の上映。
 
 啓くんの映画だけ観られたけど、神田くんは終わってしまった。
 「関数ドミノ」とヨーロッパ企画はこれからなので観られる。壁ノ花団は通し稽古をみせてもらうつもりだけど……やっぱり本番を観たい。
 
 そうだ。
 内田さんのも行けないんだよねえ。
 「僕の東京日記」は内田淳子さんだけでなく、大分のワークショップで一緒だった平嶋さんも出ているし。
 それに、永井愛さんの作品の中でも、これは私のお気に入りの戯曲なのだ。
 だからなんとかして観たかったんだけど。

 あ、そういえば愛さんの手帳カバー作らないと。
 前に作ったやつはサイズが合わず、すぐに作り直しますと言ってから、随分と時間が経ってしまっている。

 埋め合わせに公演の宣伝でもしてみよう。
 ブログのタイトルも似せてみた。
 15日からキラリふじみです。きっと面白いので皆さん行ってください。

 サイトはコチラ→

 昨日は久しぶりに人に会った。
 随分、会ってなかった人と、これまたご無沙汰のお気に入り焼肉屋さんに行った。
 昔、偶然入ってからファンになった店だ。
 それ以来、焼き肉は京都ではここしか行ってないくらいだ。
 「熟撰近江牛 SEJONG」という店だったのだが……行ってみたらない。
 焼肉屋さんではあるけど「牛力庵」と書いてある。
 うわ、なくなってしまった。
 と、焦ったけど……どう見ても店の感じはそのままだ。
 おそるおそる店に入った。
 ……顔を見たことのある店員さんもいたし、店長さんが出てきて「お久しぶりです」というので安心した。店名が変わっただけだったようだ。

 いやあ、本当、美味しいんだよねえ。
 昨日も……満足だった。

 今からは打合せだ。
 出かける準備をしないと。
posted by 土田英生 at 14:20| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月08日

Twitterの隙間

私もTwitterをやっている。

このブログも連携していて、更新されるとTwitterに流れる。ブログにはコメント欄などを設けていないので、文章に対する感想もTwitterのリプライでもらったりする。

3日に広島から京都に移動してきて、その日の夜、ブログを書いた。
それから2日間、更新していない。

Twitterでは時々何かを書いていた。

その断片をつなぎ合わせてみよう。

4日の12時56分。
私はこんなTweetをしている。

“別の家のインターホンだったのか……。慌てて一階まで降りてドアホンのボタンを押し「はーい」と返事してたのに。どうりで誰も映っていないはずだ。相手のいない切ない返事が道に響いていたんだろうね。”


東京から広島に移動する前日、京都に送る荷物を出した。
時間指定は4日の14時から16時。
しかしTweetは12時56分。
まだ、来るはずなどないのだ。

私は荷物が届く日はいつも緊張している。
仕事部屋も寝室も2階。だから返事が遅くなって不在だと思われたらどうしようと心配になるのだ。だいたい、下北沢にいる時ですら、寝ていて不在伝票を入れられたりすることがあるのだ。再配達してもらうのは申し訳ないし、今、運送屋さんでは再配達が大問題なのだ。こっちも指定した以上、きちんと受け取らなければいけないのだ。

この日も、寝不足のまま待っていた。
眠たい……。
けれど万が一眠ってしまったら荷物を受け取り損なってしまう。
だから必死で踏ん張っていた。
で、ドアホンが鳴る音が聞こえたのだ。
確かに異様に小さな音だった。
けれど、私には迷いはなかった。すごい勢いで階段を降りた。降りている間も「はーい! 今、行きます!」と叫びながらだった。

そしてキッチンにあるドアホンのボタンを押し「はい!」と元気よく返事した。
……しかし誰もいない。
「はーい……」
もう一度言ってみた。
ドアホンのモニターにはただの道が映っている。
家の前ののどかな風景。
人影もない。
……どうやら別の家だったようだ。
それで上のようなTweetをしたのだ。

荷物が届いたのは結局16時前だった。
急いで荷物を出す。
そこにはカメラのレンズや三脚などが入っていた。

なぜ、こんなに焦っていたのか?
実はこの日、壁ノ花団の稽古場写真を撮ってくれと頼まれていたからだ。だからどうしてもレンズと三脚を受け取らなければいけなかったのだ。

17時から制作の垣脇さんとミーティング。
来年の仕事のことなどを話し、そのまま京都芸術センターへ。
稽古を見させてもらい……素人ながら頑張って写真を撮った。

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出演者の一人、匿名劇壇の松原由希子さん。
MONOにも「ぶた草の庭」「裸に勾玉」「ハテノウタ」と連続して出てもらった女優さんだ。

稽古終了後、キャストの皆と「清水家」へ。

痩せたいという水沼くんに、諏訪師匠から伝授された「低糖質ダイエット」を教えた。
もちろん私はビールも我慢し、大好きな小芋も食べなかった。家でもビールを我慢しているという話になった時、「糖質ゼロのビールとか飲んだらいいじゃないですか」と金替君がアドバイスをくれた。その手があったなと今更ながら気づいた。

稽古を見せてもらった箇所は断片だけだったけど、それでも面白かった。
その帰り、電車に乗ってTweetしたのがこれだ。
4日、23時13分だ。

“壁ノ花団「ウィークエンダー」の稽古見学。微妙なニュアンスで攻める言葉選びに笑ったね。役者さんもみんないい。”

風呂から出ると、そのままベッドに直行してぐっすり眠ってしまった。
なんせ寝不足だったのだ。
しかも……翌日、5日の昼頃まで寝てしまった。荷物の届く予定もないし、ゴミ出しの日でもないので安心して眠ることができた。

あ、そうだ。
ちなみに「ゴミの日」の前日も私は緊張する。
周りの皆は朝の8時から9時くらいに一斉に出す。だからその時間に私も出さなければという重圧に苦しんでいるのだ。7時とかなら問題ないと思うのだけど、前に一度、持って出てみたらまだ誰も出していなかったので持ち帰ったこともある。あの時は待っている間に眠ってしまい、起きた時には出せなかった。

京都の“近所の目”はなかなか手強い。

実は……今日もゴミの日なのだ。
だから頑張って起きているのだ。
これを書いている理由はまさにそれだ。

とにかく5日は昼過ぎに起きて、そこから机に向かった。
ドラマの構想を大まかに立てて行くのだが、なかなか捗らない。
すぐに机を離れ、ベッドに転がってしまう。
それでもなんとか少しだけ考えた。

だけど、本来はそれを終えたら、MONO特別企画「怠惰なマネキン」の箱書きまで済まそうと思っていたのだ。

全然ダメだ……。
これでは「怠惰な私」だ。

夜、ご飯を食べてからは……ますますやる気が出なくなった。
一件電話があるかも知れなかったので、仕事に取り掛かるかどうか迷った。乗って来た時は一気にやりたいと思ったのだ。なんとなく待ちながら時間は過ぎてしまった。

そういえばメールの返信もしなければ……。
メールの返信だけ3通済ました。

そして5日、22時30分に次のようなTweetをしている。

“メールの返信を3件しただけなのに、今日の仕事をすべて済ました気分になってしまっている。”

この日は電話がないとわかったので、夜中になってから机に向かった。
ドラマは少し進んだが、「怠惰なマネキン」の方は手付かずのままだった。

翌日、朝、トイレに入ったらトイレットペーパー残りわずかだった。
買いに行かなければ。

嵐山は買い物するには不便だ。しかも、今は車もない。
行動はバスが電車になる。
面倒くさい。
買い物は……明日にしよう。

午前中、掃除などを済ませ、昼から「怠惰なマネキン」に取り掛かった。
……思いつかない。
ダメだ。ああ、もう、自分の能力のなさに嫌気が指す。
午後になっても全然ダメだった。

私はやっぱり出かけることにした。
トイレットペーパーも買いたいし、糖質の少ない食材も買わないといけないし、アーモンドも必要だし、金替君の勧めに従って糖質ゼロのビール的なものも欲しい。

どうせなら外で仕事しよう。

考えた挙句、私は昔住んでいたマンションの近くまで行くことにした。
スーパーもある。そして何より、一時期、頻繁に通ったカフェがある。

あそこで一度、驚異的にものが書けた記憶があるのだ。

あの時、MONO「なるべく派手な服を着る」を書きながら、同時並行でドラマ「斉藤さん」も書いていた。
それだけでも限界だと思っていたのに、当時のフジテレビのプロデューサーから電話があり、「ロスタイムライフ」というドラマを1話分書いてくれと頼まれた。
事情を聞いて引き受けることにしたのだが……初稿を3日後に欲しいという。
資料などをデータで送ってもらい、私はそのカフェに行った。
そこで40分くらいで構想がかたまり、私は翌日には脚本を書き終えた。そして、それはなかなか満足の行くものだった。

あそこに行けば書ける気がする。

バスに乗って「南広町」まで行った。
買い物を済ませ、私はそのカフェに入った。内装はきれいになっているが雰囲気は変わらない。
いつも頼んでいたカフェオレを注文する。

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16時2分のTweetはその時のものだ。

“7年前まで住んでいたマンションの近く。いつもノートを広げに通っていたカフェに来た。ここなら思いつくはず。”

そこから30分。
ノートはどんどん文字で埋まる。
そして……。
「怠惰なマネキン」の箱書きが終わった。

16時37分に写真付きでTweetしている。

“アイデアはまとまった。やっぱりこのカフェに来て正解だった。”
 

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もうこうなったらすぐにパソコンに向いたい。
私は構想はノートでしかできない。
まとまれば台本はパソコンで打つが、なぜか外では書けないのだ。
早く帰りたい。けれどバスなので時間を調べなければいけない。
市バスがどこを走っているかをアプリをひらいて見てみる。
それが16時45分。

“家に戻って台本書こう。カフェはバス停の目の前なので、これ見ててバス来たら出る。便利な世の中だ。

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家に帰って台本を書いた。
買ってきたトイレットペーパーを収納しようと戸棚を開けたら、そこには大量のトイレットペーパーの予備があって軽いショックは受けたけれど、それでも台本は進んだ。

その日の夜、ベッドに入って嫌な夢を見た。
今日の朝、起きて……そこからは気分がダウン気味だった。

一日中、机に向かって書いてはいたけど、他のことを考えてしまう。
これから先のこと、そして人間関係のこと、などなど。
気がつけば夜になっていた。

今日の21時52分。

“考え過ぎて気持ちが滅入って来た。これじゃ逆に書けないよね。こういう時、下北沢だと少しぶらっと出来るんだけど。嵐山は今日も真っ暗だ。”
 


何かしよう。
気分転換にはクラフトだ。
私は何かを作るのが好きなのだ。木工も好きだしレザークラフトも好きだ。
けれど、革は時間がかかるし、夜なので木工を一からやる訳にもいかない。
前にコーヒーのメジャースプーン掛けを作ったのだが、色がちゃんと塗れてなかったので、それをすることにした。すぐに終わった。かかった時間は20分。

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全く気分転換にならなかった。
時間が短すぎたようだ。

私は模様替えを始めてしまった。
タンスを移動し、食器棚を移動し……。
これは大変だった。途中で本当に嫌になった。

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けど、やめるわけにはいかない。
なんとか終えたが、気に入らない。
またの機会にやり直そう。

“気晴らしをしようと、こんな時間に模様替えをした。あっちを動かせば、こっちが出っ張り……1時間かけて前より変になった。もう戻す元気はない。”

このTweetは0時4分だしね。
これが現在のところ最も最近のTweetだ。

疲れてしまったので、お風呂に入った。出てきてから糖質ゼロのビール。

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ああ、もっと買ってくればよかった。
昨日、2缶。今日は3缶。
6缶入りだったので残りは一つになってしまった。

で、ビールを飲んでから台本の続き。
ひと段落して時計を見ると6時前だ。
そろそろ寝よう……が……今日がゴミの日だという事実に気づいてしまった。

起きていなければ。

で、これを書いている。
書くこともないのでTwitterの隙間を埋めてみた。

書き終わったけど……まだ……ゴミ出すには早いしねえ。

仕方ない。
もうちょっと仕事するか……。

あ、その前にTweetしてみよう。
posted by 土田英生 at 06:48| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月04日

徒然なるままに。

 ゆっくりお風呂にも浸かったし、一回ベッドに入ったんだけどね。
 涼しい風と虫の声があまりに秋の気配を押しつけてくる。
 秋は誰だってちょっと切なくなる。

 色々と考えていたら眠れなくなってしまった。

 ポークウンインナーをかじりながら、水割りを飲むことにした。

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 何を書くあてもない。

 だったら仕事をしろよという声も聞こえるが、それはとても小さな声だ。
 仕事部屋に置いてあるチェーホフの肖像画も「今日はもういいよ」と言ってくれている気がする。
 
 だから徒然なるままにこれを書こうと思った。

 広島に行っていた。
 アステールの演劇学校だ。10月に試演会があるので、今回はその台本作りがメインだった。
 今年の参加者は14人。女性11人、男性3人。高校生から大人までいる。
 この俳優コースを担当させてもらうのも3年目なので、今年で区切りをつけさせてもらおうと考えている。広島の街に対する愛着もどんどん湧いてきているけど、あまり長い間、同じ人がやり続けるのはよくない気がするからだ。ま、離れることを考えると寂しいんだけどね。

 出会いもある。
 一昨年の参加者の中に立川茜さんがいた。

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 現在、彼女は東京で働いているが、秋から本格的に演劇の道に進む。
 MONO特別企画「怠惰なマネキン」にも出演することになっている。

 広島の飲み会で一緒になった時、「東京にでも出て演劇続けたらいいのに」と私が無責任に言ったらしい。
 もちろん私の言葉にそんなに力があるわけでもないし、道を決めて行くのは本人なので、彼女の人生を背負う気はない。けれど、まあ、言葉を発した責任は感じる。
 
 声をかけたこと、かけることについて。
 時々、考える。

 大学を中退して東京に出て、その後、京都に戻って劇団を作ろうと思った時、私は水沼君、犬飼君、西山君に声をかけた。その4人でスタートしたのが現在のMONOの前身になっている。

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 これは「さよなら、ニッポン」の宣伝写真とした撮ったものだね。
 犬飼君(左)はMONOを抜けて俳優を続けているし、西山君(右)は完全に演劇から離れた。
 真ん中にいる……私と水沼君は今も一緒にやっている。
 
 あの時、声をかけなかったら今頃何をしてるんだろう?
 ま、そんなこと分かんないしね。

 で、そのまま関係が続くことにつても考える。
 長くやりゃいいってもんでもないけど、時々「うわあ」と、思ったりする。

「ハテノウタ」の楽屋でふと気がつくと水沼君が顔を洗っていた。
 他には誰もいなかった。
 洗面台に屈み込む後ろ姿を眺めながら、「長い間、この後ろ姿を見てるなあ」とぼんやり思ったりした。

 そして、それはやっぱり少し嬉しかった。

 なんでこんなこと書いてるんだろ?
 虫の声と水割りのせいだ。
 三杯目だし。

 その後、奥村君が参加し、尾方君が加わり……最後に、所属劇団が解散してフリーになっていた金替君に声をかけた。あれ20年前だよね。その人たちと今もやっている。
 そう考えると長いな。

 とにかく私はこれまで全員、自分で声をかけて来ている。
 一緒にやりたいと思った人を先のことなど何一つ考えずに誘ってきた。
 皆はどう考えているのか知らないけど、私には一片の後悔もない。
 
 立川さんに声をかけたのだって一緒なんだよね。

 いや、違いはあるな。

 現在のMONOのメンバーに声をかけた時、彼らは同世代だったし、私も始めたばかりだったので未来には明るい景色しか見えなかったしねえ。けれど、今、私も結構長くやってきて、昔とは違った景色が見えてしまっている。まだまだ勉強もして、もっと面白いものを創りたいとは思っているけれど、色んなことが思い描いた通りに進まないことも知ってしまっている。

 けれど声をかけるのは、私自身がまだまだ坂を登りたいと感じてるからだよね。
 一緒になにかやろうよってことだし。

 次のMONO特別企画に出るメンバーも結局、私が全員に声をかけている。
 3年前の俳優講座がきっかけだ。その中で一番古いのは高橋明日香さん。彼女とは出会って6年になる。
 決して器用な役者さんだとは思わないけど、声をかけた時の直感を私は全く疑っていない。
 こうして一緒に活動を続けていることが何よりの答えだ。

 私が声をかけた5人が出演するMONO特別企画「怠惰なマネキン」。
 絶対に面白くしてやる。
 
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 情報はコチラ
 
 ……人との出会いだけは、外れてない感じがするんだよねえ。

 この前、アトリエ劇研が閉館した。
 私は東京にいたのでクロージングイベントにも参加できなかったけど、Twitterに流れてきた写真を見た。
 吉本有輝子さんが仕込んだ照明が劇研の空間を照らしていた。
 それを眺めながら一時期の京都に思いを馳せた。
 劇作家もたくさんいた。
 マキノノゾミさん、松田正隆さん、鈴江俊郎さん、そして亡くなった深津篤史君……他にもたくさんいたな。一緒に劇作家協会の京都支部を作ったり、特に松田さんと鈴江さんとは同人誌「LEAF」を創ったり。編集作業をやった帰り、朝まで話して、鴨川の河原に座って一緒に朝日を見たりしたね……って、なんだ、この青春群像は。なんだかとても恥ずかしくなった。四杯目になってるからだ。

 話はそれるけど、前にヨーロッパ企画の上田君と話した時、彼はLEAFを全部持っていると言っていた。そうなんだよね。彼も京都だし。
 
 とにかく人との出会いや、そこからの関係は大事だという話だ。
 
 今、ドラマの脚本に取り掛かっているが、これだってそうだ。
 今回の話を持って来てくれたのは、出会って以来、ずっと信頼関係を維持してきた人たちだ。
 プロデューサーのYさんは、先日の打合せの時、局のロビーで私を出迎えてくれた。
 今回初めての本打ちだった。
 目が会うと、彼は立ち上がって走ってきた。
 そして私にハグをしながら言った。

「また一緒にできますよ! 嬉しいです!」

 「俺、あの時泣きそうでしたもん」と後で彼が言って来た時、私は茶化した答えをしたが、もちろん私も泣きそうだった。
 
 ……徒然なるままに書きすぎた。
 どこに着地していいのか全く分からない。
 
 明日は壁ノ花団「ウィークエンダー」の稽古に顔を出すことになっている。
 水沼君が作・演出だし金替君も出てるし。
 あ、あと、MONOの常連である松原由希子さんも出てる。
 出会って関係の続いている人たちがやっている。

 壁ノ花団の情報はコチラ
 
 水割りもなくなった。
 そろそろ眠ってみよう。
posted by 土田英生 at 04:23| 京都 | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月02日

行き来の悩み

 やっと一段落着いた。
 いや、実際には締切を過ぎて終わってないものもあるので、本当はダメなのだけれど、今日はもう限界だ。

 今は東京。
 明日は朝から移動して広島。
 明後日の夜に京都。
 
 だから本当はもう眠らないといけない。
 けれど、いろいろと考えて眠れないのでこれを書いている。

 広島はアステールプラザの演劇学校をする為だけれど、とにかく私は京都⇆東京という移動が多い。
 これには小さな悩みがある。
 移動しなければいけない日が、ゴミの日じゃなかったりする。
 するとゴミも出せない。
 洗濯も前日に終わらせられるとは限らない。
 それに、服だって一々たくさんはもって移動していられない。
 そうなのだ。
 いろいろと困る。

 だから大体は似たようなそれぞれ京都と東京にある。
 レザークラフトの道具も両方にある。
 服も似たようなものがあったりする。
 それでこの前は混乱した。

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 この二着のパンツ。
 こうして写真で見ると全然違うのだが、実際には色はどちらも紺で、しかも裏地が同じ柄だ。
 多分、東京と京都にそれぞれあったはずなのだが、いつの間にか東京に両方来ていた。
 しかし、私は気づいていなかった。
 全く同じものだと思っていたのだ。

 ある時、落ちそうになったので紐を締めようと思ったら……紐がなかった。
 「あれ? 勘違いしてるのか? 紐はなかったんだっけ?」
 その時はそう思った。
 
 ある日、いつもより長く感じた。
 短パンだと思っていたら七部丈になっていた。
 「あれ? 長いな……」と、思ったら紐があった。

 自分がおかしくなったんだと思っていた。
 けれど、解明した。似た物が二着あっただけだ。

 とにかく行き来が頻繁にあることはとても厄介だ。

 そして……なぜか今、突然、忙しくなった。
 去年もそうだった。
 夏は暇だったのに秋から宮崎に書き下ろした「板子乗降臨」、小説「プログラム」、MONO「ハテノウタ」、NHKドラマ「この世にたやすい仕事はない」の執筆が重なって大騒ぎだった。
 
 そして……。
 今年もそうなりそうな予感だ。
 MONO特別企画「怠惰なマネキン」、来年のMONO本公演「隣の芝生も。」、まだ詳細は明かせないが連続ドラマ、新しく出す予定の小説、そして来年の夏に書き下ろす舞台……。考えただけで「うわー」という気分だ。

 けれどどれも大事だしね。
 ちなみに来年のMONOの公演のタイトルを確認も取らずにさらっと書いてしまった。
 9月には発表になると言っていたし……。
 これも構想だけ立っているのだが、MONOにしては大掛かりで面白いものになると思う。

 ドラマは……大好きな人たちとの仕事だ。
 この前、一回目の打合わせをしたのだが、もう楽しくて仕方なかった。
 何より私を褒めて持ち上げてくれるんだよね、この人たちは。
 猿もおだてれば木に登るが、私は猿以上に登れる自信がある。

 さっきは京都と東京の行き来のことを書いたが、人間関係の行き来もとても大事で、そして難しい。
 
 MONO特別企画「怠惰なマネキン」の準備稽古も始まっている。
 ここでも私はとてもそのことに頭を悩ませている。
 出演する5人は私より随分と年齢が下だ。
 けれどとにかく対等にやりたいと思っている。だから私が間違ったら注意してくれれば聞くし、私も思ったことは言う。

 けれど。

 人は褒められば褒め返したくなるし、貶されれば言い返したくなる。
 それが人間というもんだ。
 ただ、私は演出もしている。
 ある役者が伸びるかどうか……技術もさることながら、その人の人間性やコミュニケーション能力も大きく作用する。私は彼ら彼女らを見る立場なので、そのことに気づく。
 だからそれを分かってもらいたい。
 けれど、その伝え方。これが難しい。
 批判めいた言い方をしてしまえば、その相手も反発してしまう。私に対して「お前だってダメなことあるだろう」という気分になってしまう。
 
 そういう勝ち負けを越えたところで理解してもらいたい。
 それには私はまだまだ未熟だな。
 ついつい腹も立ったりするし。

 この三日間の準備稽古では色々なことを試させてもらった。

 
DSC00547.jpg


 これは設定エチュードの写真。
 大村わたると高橋明日香。
 この稽古の日は……明日香さん、舞台が終わった翌日だ。
 わたる君も27日までやっていたしね。

IMG_7026.jpg
 
 
 これは今日の休憩中。
 左から石丸奈菜美、渡辺啓太、立川茜。
 ……なんでこんなに表情が怖いんだろ?

 とにかく行き来は大変だね。

 明日は行かないといけないし、眠ろう。
 
posted by 土田英生 at 04:24| 東京 ☔| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月27日

ハート

 5年ぶりのENBUゼミだった。木曜日1コマ、土曜日2コマで終了。
 合計7時間半なので、じっくりとは出来なかったけど、ダイジェスト的に一通りのことをやった。

 ずっと気になっていることだが、「台詞を喋ろう」「表現しよう」という役者さんが多すぎる気がする。だからそれをいかに排除するかに力点を置いたプログラムにした。
 
 皆から呑もうと誘ってもらったので、少しだけ一緒に行った。

 色々と話した。
 皆、これからのことに希望と不安を抱いている。アドバイスしたかったが、無責任はことは言えない。先のことなど誰にも分からないし、私自身、えらそうに何か言える立場でもないのだ。
 いや、随分と言いかけたけど。
 途中でまずいと思って自戒した。
 私は元々、油断すると語ってしまうタイプなのだ。語りながら自己確認をしようとする困った癖がある。
 もっとも嫌いなヤツだ。

 私は人の相談によく乗る方だと思うし、実際、わりと頻繁に皆からSOSがくる。

 しかし、その事実に私が救済されているのだ。
 優しさなどではなく、自分の為だ。
 私は欲深いし、煩悩の塊だしね。

 時々、そのことに気がついてとても嫌な気持ちになる。

 自分の言葉を信じてもらうことはとても気持ちがいい。
 作品を創る動機だって、このことと無縁ではないと思う。

 けれど、そうしたことから離れて言葉を発してみたい。

 今日、友達を励まそうとして色々と言葉を並べてみた。
 自己確認の道具にはしないと決め、相手の為だけに言葉を発しようと努力してみた。
 なんだか言葉だけが哀しく舞っていた。
 喋りながら、私は勝手に傷ついた。
 まだまだ未熟者だ。
 
 台本を書いている時、常に効果を計りながら台詞を並べる。
 観客にどう届くかばかりを気にしながら書いている。
 ここで笑い、ここで事情を説明し、ここで、ここで、ここで……。

 けれど、時折、無心でページを進めている時がある。
 何かに書かされている気分に陥る。
 その部分はほとんど手直しせずに済む。

 まあ、滅多にそんなことはないんだけどねえ。
 
 ジーンズを履いたらポケットから紙のカタマリが出てきた。
 ポケットに紙を入れたまま洗濯したんだよね。
 元はなんだったんだろ?
 微妙なハート形をしてるな、これ。

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posted by 土田英生 at 03:20| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月25日

全く変わっていない人

 Wさんと最初に会ったのは2001年。
 だから16年前だ。
 MONOの公演「約三十の嘘」をシアタートラムで上演していた時。
 その終演後だった。

 楽屋に突然、背の高い人がやってきた。

「××テレビのWと言います。いやあ、君、面白いねえ。ちょっと話そう……と言いながらさ、俺、ちょっと今日は時間ないんだけどね」
 
 その人はいきなり勢いよく喋った。

 ……MONOは東京公演を定期化させて2年くらい経ち、私自身もアルバイト生活から抜け出し、外部への作品提供をし始めた時期だ。劇団M.O.P.に「遠州の葬儀屋」、G2プロデュースに「いつわりとクロワッサン」、宮本亜門さんのパルコミュージカルに「BOYS TIME」を書いた。そして文学座に「崩れた石垣、のぼる鮭たち」劇団青年座に「悔しい女」を書くことが決まっていた。
 やっと劇作家の仲間入りが出来たと喜んでいた頃だ。舞台だけをやっていくつもりでいたし、映像の仕事にも興味はあったけれど自分には無縁のものだと思っていた。

 終演後は、とあるテレビ局の映画制作の人と約束があった。
 実現はまだまだ先だけど、いずれ映画を一緒にやりましょうと言ってくれていた女性だ。

 待ち合わせ場所であるカフェに向かった。
 と……なぜか隣にWさんも一緒に座っている。

「いやあ、彼女とは同じ局だからさ、偶然いてびっくりしてねえ。で、聞いたら今日は土田さんと喋るっていうもんだからさ、いや、時間ないんで、俺はすぐにいなくなるけど、ちょっとだけでもと思って」

 結局、それからWさんがほとんど喋った。
 最初はやたらめったら褒めてくれ、それから「ここが弱いんだよ」などと勢いよく語って帰って行った。
 映画制作のSさんとはほとんど何も話せなかった。

 それから一ヶ月後。
 公演が終わって京都にいると、いきなりWさんから電話がかかってきた。そして翌日には京都までやってきた。その行動の早さにも驚いたが、Wさんから聞いた話の内容にさらに驚いた。
 草g剛さんのリーディングドラマの作と演出をしてくれという話だった。

 知ったばかりの私にいきなり頼むなんて大丈夫なのかと、こっちが不安になった。
 しかし、Wさんは恩に着せる風でもなく、まるで当然だというように「なんか面白いアイデアない?」とあっけらかんと聞いてくる。そして内容について打ち合わせを始める。

 結果、私は「ヴォイス」という、椿姫を題材にした朗読劇を書いて演出させてもらった。一緒にツアーも回った。Wさんに会って半年後のことだ。

 とにかく決断の早い人だった。

 同じ年、私は初めて地上波の連続ドラマを書くことになった。
 プロデューサーは当然Wさん。
 「天才! 柳沢教授の生活」というドラマだった。
 今でもとても気に入っているドラマだ。MONOの金替君も初めてのレギュラー出演をしている。
 DVD化されていないので今は観られない……と、思う。
 
 それからしばらく経って、Wさんから会いたいと連絡をもらった。
 会ってみるとまたしてもいきなり言った。
 
「北海道にさ、面白い奴がいるんだよ。一回さ、土田君と会わせたいと思ってるんだよ」

 それが……“大泉洋”のことだった。
 で、結局、それが後々「おかしなふたり」という洋ちゃん主演のドラマにつながった。
 
 しばらくWさんと会わなかった。
 その頃になると、私は他局のドラマなども書くようになっていた。
 劇団活動も含め、かなり忙しくなっていた。

 そんな時。
 再びWさんから電話がかかってきた。

 リリーフランキーさんの「東京タワー」をドラマ化するという話だった。
 電話口のWさんは興奮気味に言った。

「演出だれがすると思う? 久世さんだよ。やりたいだろ? で、俺、脚本に土田君を推薦したんだよ」

 久世さんは私にとっても憧れの人だった。
 舞い上がるような気持ちだった。
 もちろんやりたい。
 けれど、私はスケジュールが詰まっていた。どうしても無理だった。

「え? これを断るの? ダメだよ。俺さ、推薦しちゃったんだよ。俺はどうするの? 困るでしょう?」

 書くことになった。

 けれど。
 ここがWさんの面白いところなのだが……。
 初稿を書き終え、本打ちをしていた時だ。
 リップサービスだろうとは思うけど、久世さんがいきなり言った。

「土田君と出会わせてくれてありがとう」

 私は嬉しかった。あの久世さんがそんなことを……。
 笑みを堪えきれない。
 私はWさんを見た。
 
 しかし……彼は狐につままれたような表情で久世さんを見つめていた。
 そして私を指さしてこう言ったのだ。

「え? それ……こいつのことですか?」

 おいおい。
 推薦してくれたのはあなたではないのか、と私は思った。

 それを最後に一緒に仕事をすることはなくなった。
 いや、正確に言えば、一緒にやりかけた仕事は何度かあった。
 けれど実現しなかったり、それからWさんの部署が変わったりしたこともあって、段々と会うこともなくなった。
 時々、ふと思い出しては喋りたいなあと思ったりしていたが、なかなか叶わなかった。

 月日は流れた。

 で……。

 この前の「きゅうりの花」。

 お客さんのリストを確認していると……Wさんの名前があった。

 え?
 
 やはりWさんは勢いよく楽屋にやってきた。
 
「いやあ、やってるねえ。相変わらず、ええ? いや、俺さ、前に偶然、ブログを読んだのよ。普段、全然読まないんだけどね。そしたらさ、土田英生がなんか世の中に対して怒っててさあ。『お、これは、まだやってるなあ』と思ってねえ。で、観に来たのよ。一回、会って色々相談しようよ」

 そしてやはり嵐のように去って行った。

 ……で、今日、会った。

 本当に、本当に……出会った頃と全く変わってなかった。
 相変わらずモチベーションは高いし、私に対して失礼なことも平気で言う。

 けれど、そこには創作に対する愛が溢れていた。

 なんだか妙に幸せな気分になった。
 Wさんもまだまだやってる。

 私もやらないとね。
posted by 土田英生 at 04:30| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月22日

自称牧師と怠惰なマネキン

 酔って帰ってきてウトウトしてたんだけど、なぜか突然パッと目が覚めたので更新。

 今は下北沢にいる。

 19日。京都から広島に向かい、この3年続けてやらせてもらっているアステール演劇学校「俳優コース」を2日間やった。今年は顔なじみもいれば、初めましての人もいるが、比較的若い人が多い。
 10月に試演会がある。
 この構想もかたまりつつある。

 20日の終了後、そのまま新幹線に乗って東京へ移動してきた。
 ちなみに新幹線車内では隣の人と小さな争いを繰り返した。
 なんか……本当にトトロそっくりの人だった。
 まさに「隣のトトロ」だった。
 この争いについても書きたいが、今日は他に書かなければいけないエピソードがある。
 「隣の牧師さん」についてだ。

 28日に花組芝居「いろは四谷怪談」にゲスト出演させてもらうことになったので、今日は稽古を覗きに行かせてもらった。サイトはこちらです!→

 通し稽古を見せてもらうことになり、始まるまで少し時間があった。
 なのでちょっと書き物をしようとカフェに向かった。

 私はノートを広げた。
 隣のテーブルには若い女性と少し年上の男性が向かい合って座っていた。
 ノートに作品の構想などを書き出したその時だった。

「いやあ、それは悪魔の所業なんですよ」

 という男性の声が聞こえてきた。
 “悪魔の所業”というワードを日常会話で使っているのを初めて聞いた。
 私のペンはぴったり止まった。
 そこからは……もう全神経が隣のテーブルに向かった。
 
「そいつは悪魔に取り憑かれていると言わざるを得ませんね」

 女性は小さくうなずいている。
 しばらく聞いていると、男性は牧師さんなんだと分かった。
 会話の中で「僕ら牧師はですね」と言っていたので間違いない。だから悪魔などという例えが出てくるのだろう。そして女性は、牧師さんに相談しているということらしい。

 話から推察したところ、どうやら女性は旦那と別れたばかり。
 その旦那がとんでもない男で、やっと逃れられて安心している。けれど、その旦那がそのままではあまりに理不尽なので、なんとかして反省させたいというようなことだ。

「神は見ています。見ていますから大丈夫なんです」

 牧師さんは言う。
 
「そりゃ見てはくれているんだと思いますが、あの人はきっとあのままですよ」

 女性はどうやら具体的な方策が欲しいようだ。

「大丈夫です。神は見ていますから」
「ということは……そのうち、あの人に何か罰などがくだるんでしょうか?」
「本当にそうしたいのなら……簡単です」
「簡単?」
「はい。祈るんです」
「私が?」
「私も祈ってあげますよ。あのね、神は、意外と残酷なことを平気でしますから」
「どういうことでしょうか?」

 私も女性と全く同じ気持ちだった。
 どういうことなのだ?
 祈ればその元旦那に何かしらの罰がくだるということだろうか?

「殺せますよ、私が祈れば」

 衝撃な的な一言が、洒落た店内に響き渡った。
 私はコーヒーを危うくこぼすところだった。

 おいおいおい。
 
「え? あの人をですか? いや、私は別に死んで欲しいなんて思ってないんです」

 女性は慌てて言う。
 私も全く女性と同意見だ。
 殺さなくたって、ねえ?

「けど、本当なんです。実は僕の場合もそうでした。うちの父が……」

 その後は、もうとんでもない会話が繰り広げられた。

 この自称牧師は論理も倫理もめちゃくちゃなのだ。
 しかも、女性の話は聞かず、すぐに「僕の場合はですね」と自分の話を披露する。
 そして最後には「祈ればいいんです」という言葉だけでまとめてしまう。
 
 しかしだ。

 これは……ここに具体的に全部書くのはやめよう。
 必死にメモは取って来た。けれど……本当に面白かったので、作品に使いたい気持ちが湧いてきた。

 そうしよう。

 次回のMONO特別企画「怠惰なマネキン」の中に多分出てくると思う。

 隣のトトロも牧師の話もやめて、公演について書こう。

 
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 11月に新宿の小さなスペースで公演する。
 ちなみに出演者の一人である立川茜さんは、一昨年、広島でのアステールの演劇学校《俳優コース》に参加していた。昨年、大学を出て東京にやってきて、一緒にワークシップなどを続け、出てもらうことになった。

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 この写真だと一番右端にいるのが立川さんだ。
 
 それ以外の4人は3年前の「俳優育成講座《東京》」の参加者だ。4人は土田英生セレクションvol.3「算段兄弟」にも出てくれている。
 ついでに紹介しよう。
 立川さんの隣が渡辺啓太くん。
 その隣、真ん中に写っているのが高橋明日香さん。彼女は6年前に出会ってから9回も一緒に芝居をやっている。その隣が大村わたる君。
 
 あ、そうか。
 23日から高橋、大村の2人はそれぞれ別の舞台に出ている。
 これも紹介しておかないとね。
 興味のある方はぜひ。

 高橋明日香さんはaibook「疾走」→
 大村わたるくんはKUNIO「夏の夜の夢」→

 で、左端が石丸奈菜美さん。彼女とは「歪(ibitsu)」でも2回一緒にやった。二十代とは思えない昭和の香りをまとった女優さんだ。
 
 とにかく、この5人で芝居を創る。
 この1年、このメンバーでワークショップを続けてきた。
 共通言語もできてきたし、それぞれのメンバーの課題もはっきりしてきた。私がこれまで大事にしてきた呼吸や自意識のことだけでなく、最近は新しいことを色々試している。
 毎回発見があり、演技についてこれまでと違った回路ができつつある。
 
 これはクローズドでやっている。だから私もお金はもらっていない。前にこの話を人にしたら「ボランティアですか」と聞かれたことがあるが、ここに大きな誤解があるよね。
 
 いつからか、「ワークショップ」を講座的な意味合いで使う人が増えた。
 もちろんそれもあるんだと思う。
 実際、私もそうしたワークショップはたくさんやってるし。
 けれど、本来、ワークショップは「工房」という意味で、何かを試す場だ。むしろ、劇作家、演出家にとっての勉強の場なのだ。本当なら私が皆にお金を払って開かなくてはいけない。実際、そうしている人もいるしね。

 新作などを書く時の大きなヒントをもらっている。これがMONOの本公演などにつながって行くのだ。
 
 話がそれた。
 もっと公演のことを具体的に書きたかったけど、また改めよう。

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posted by 土田英生 at 04:00| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月16日

「きゅうりの花」終了

 土田英生セレクション「きゅうりの花」の公演が終わった。
 いやあ、楽しかった。

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 ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。

 実を言えばMONO公演「ハテノウタ」が終わってから、どうも調子が出なかった。
 ま、個人的にも色々あったしね。
 正直にいえば、初めて「そろそろやめた方がいいかも」という考えが頭をよぎったりした。
 やめたところで、他にできることもないんだけど、それでもどうも続けていく自信を失っていたのだ。
 自分の能力に対する疑いがどんどん広がり、もう無理なんじゃないかと思えてしまう。社会の動きを見ていても嫌になることばっかりで、こんな世の中で一体私は何を創って行くつもりなのか、そんな覚悟はあるんだとうかと自問した。

 こんな状態で「きゅうりの花」ができるんだろうか?
 
 そんな時、ケラさんから呑もうよと誘ってもらった。
 あれで助かった。
 差し呑みをしながら色々と話す中で、随分と楽になった。
 
 「きゅうりの花」の稽古が始まったのはそんな時だったのだ。

 この企画の難しいところは、昔、書いた自作を演出することだ。
 どうやら私は、“現在考えていることを作品にして発表すること”が好きらしい。過去にすでに書かれたものにあまり興味が湧かないのだ。それもあって「本当にできるんだろうか」と不安だったのだ。
 
 今回はキャストとスタッフの頑張りに背中を押してもらった。
 金替君は別として、他のメンバーはこの作品をやるのは初めてなわけで、彼らが戯曲に向き合ってくれることで、私自身も新たな発見ができ、結果、モチベーションが上がって行った。

 本当、皆、真面目に稽古に取り組んでくれたしね。
 チームワークも良く、まるで劇団のようだった。とても大人な座組でキャッキャとはしゃぐ訳でもなかったけど、皆が適度な距離を取り、仲良くやってくれてたし。

 大阪の最終日。
 東京に戻るメンバーもいたので、その時間まで皆で焼肉に行った。

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 ……この店がとても美味しかった。
 「うまいよね」という言葉が、皆の口から出た。
 金替君は5回くらい言っていた。

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 とにかく終わった。それもいい感じで。

 そうだ。
 食べ物といえば、諏訪君に影響されて、東京公演に入ってから、私は低糖質ダイエットを試みた。
 始めて四日くらいで痩せてきた。
 お弁当もおかずだけ。朝もパンなどは食べない。
 あんなに大好きなあんぱんすら控えた。
 差し入れにいただいた甘いものなども我慢した。
 いや、正直に言えばちょっとだけ食べたけど。特にアンコのものは……大判焼きなどは何個も食べたけど。

 嬉しかったのは大阪公演に空晴の岡部さんがきてくれた時、彼女は……なんとそのことを知っていて、低糖質のものを差し入れてくれた。あのクッキーはいいね。むさぼり食べたよ。美味しかった……。

 一々、諏訪君に「これ食べてもいいかな」と聞きながら過ごした。
 なんせ私のダイエット師匠なのだ。

 問題は……師匠も時々ブレることだ。
 師匠自身が誘惑に負けて食べてしまうことがある。
 これは困る。
 しかもだ。そういう時、必ず彼は言うのだ。「これくらい大丈夫」と。そして私にも食べることを勧めてくる。元々食べたいのに、師匠にそんなこと言われたら百パーセントの確率で食べてしまう。
 
 東京公演の最終日も、皆で飲んだ後、諏訪君と二人で呑みに行き、二人でレタスチャーハンを食べてしまった。それにしても……アレ……美味しかったな、マジで。

 大阪の最後もそうだった。
 焼肉を食べ、それから私たちはピザが美味しいという飲み屋に入った。
 私は飲むだけで我慢するつもりだったのに。

 なのに。

 師匠は……師匠は……。

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 ……師匠が食べたら弟子も食べてしまう。
 アレも美味しかった……。

 終わってからの二日間、京都の家でじっとしていた。
 戦争のドキュメンタリーばかり見ていた。

 本当に切実になってきたね。

 歴史から学べというけれど、なかなかそうは行かないらしい。

 問題は……人は原理原則だけでは動かないということだ。
 情けないことにすぐに感情に支配される。
 自分と同じ考えでも、嫌いな人が言うから反対に回ったり、面倒になるとスイッチを切ってしまったり。
 一旦言い出すと引けなくなっちゃうし。

 後、怖いのは世の中の動きなどに関して「仕方ないや」と思ってしまうことだ。
 今ある範囲で物事をやろうとしてしまう。
 その範囲がおかしいなら、そこに対して物を言わなければいけないのに。
 根本にある問題をすぐに見失うんだよね。
 
 黒澤明の「七人の侍」を良く思い出す。

 敵から嫌がらせをされて困っている農民たちは、最初、七人の侍たちに助けを求める。
 七人は農民の為に戦う。
 当然、敵の攻撃も激化する。
 と、ある時、農民たちは言うのだ。
 「あんたたちのせいでこんな目に遭う」というようなことを。

 相手を倒さなければ根本解決にはならないのに。
 
 自分が何を望むのか、静かに向き合わなければいけない。

 芝居創りでも一緒だ。
 こんな条件だからこうする、とか、あの人に褒めらるからこうする、とか、そういうことではなく、本当は自分がどんな芝居がしたいのか、それだけは見失ってはいけないしねえ。
 
 色々と嫌な気持ちになるけど、今の私には創作意欲はある。
 どんなことをやりたいか、具体的に見えてもいる。
 
 やって行くしかない。
posted by 土田英生 at 04:38| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月11日

たまには愚痴じゃないことを

 いつも愚痴ばかり書いているという印象があるらしいので、今日は陽気に行ってみよう。
 美味しいものを食べ、帰ってきてからヒンヤリする入浴剤を入れたお風呂に長く浸かり、そしてハイボールを飲んでいるので楽しいことが書ける気がする。

 「きゅうりの花」の東京公演は終了。
 「土田英生セレクション」という、とても申し訳ない気分になる名前の企画もこれで4回目だ。5回目もある……と、思うけど……どうなんだろう。
 「きゅうりの花」はおかげさまで評判もよく……いや、きっとツマラナかった人たちは何も言わずに帰って行くだけなのではっきりは言えないけど、無事に11ステージを終了。

 明日から大阪公演。MONOでもいつも使わせていただいているABCホール。
 
 今日は仕込みだった。
 私は夕方に舞台チェックに行くことになっていた。

 しかしだ。

 その前に私には済ませなければいけないミッションがあった。

 いきなりになるが、私にはとても苦手なことがある。
 だらしないのか、なんなのか……ちょっとしたことが出来ない。
 洗濯とか掃除とか、そんなことはあまり苦にならない。
 問題は……例えばハガキや手紙を出すとか、そういうことがどうしてもパッと済ませられないのだ。
 だいたい、出そうと思ってから3日くらいかかって、やっと手紙などを書く。しかしここからが難関だ。切手も貼る。住所も書く。しかし……それがいつまでも机の上に置いてあったりするのだ。
 で、今日こそ出そうと思ってカバンに入れると、それから一週間くらいカバンに入ったままだったりする。

 ポストに入れる時はだいたい、シワシワになり、妙にアンティークな手紙になったりする。

 私事になるけど、私には今年の4月、ちょっとした転機があった。
 まあ、その、簡単に言ってしまえば一人になった。

 で……ここからがミッションの始まりなのだが……。

 京都の家にはいろいろな支払いの振込用紙などが溜まっていた。税金や保険、年金などの封筒が山のようにある。

 しっかり見ればわかるはずなのだが、どうしてもそれが処理出来ない。
 これまでこうしたことを全く自分でやってこなかったツケだ。

 5月はしばらく京都にいたのだが、その間にもそれが済ませらなかった。
 なので、とにかく全部袋に入れて東京に持って行った。

 「きゅうりの花」の稽古期間、ずっと気になっていた。

 毎朝決心はしていたのだ。

 「今日こそ払おう!」

 そう思って袋から大量の封書を出し、じっくり見てみる。
 中には支払い期限が切れているものあり、コンビニなどでは払えないと書いてある。
 「あああ、嫌だもん」と名古屋弁で独りごちて結局袋に戻す。

 その繰り返しだった。

 その袋は私と一緒に京都に戻ってきてしまった。

 一念発起!

 銀行に向かった。東京公演の時、楽屋でそのことについて喋っていたら、お弁当を食べている金替君が「銀行なら払えると思いますよ」と優しいふにゃふにゃとした言い方で教えてくれたからだ。

 iPhoneにインディージョーンズのテーマ曲を入れ、大音量で聴きながら向かった。
 
 受付番号の票を取る。273番。
 「……じゅうさんばんの方」
 あ、私だ。
 そう思って勇んで窓口に行ってみたら聞き違いだった。
 その間違いを二回した。
 やっと私の番になった。
 窓口のお姉さんはすでに笑っていた。

「やっと順番になりましたね。お待たせして申し訳ありません」

 優しい口調だ。
 すでに私は泣きそうだった。

「今日はどのような御用件で?」

 私は袋から大量の封書を出し、ドサッと置いた。
 そして一気に説明をした。

「いや、本当は、あの、もっと簡潔に済ませらることだと思うんですけど、実は、4月にその私はあの……それで、今まで任せてきてしまっていたので、本当、こんなことじゃダメだと思うんですけど、しかしですね」

 最後には私は涙声になっていた。

「大丈夫でございますよ。一緒に整理しましょう」

 女神だ……。
 桂駅の近くに女神がいたとは。
 阪急電車で嵐山から3区間という近い場所に女神はいたのだ。

 彼女は根気よく、全部整理して、支払いを手伝ってくれた。
 そして最後に彼女は付け加えた。

「いつでもお困りの時はいらしてくださいね」

 もう、これから困ったら女神に会いに行こう。

 そんなこんなで、偉大なる女神のおかげで大きなミッションは終わった。
 銀行を出る時の私は誇らしげな表情をしていたと思う。

 そんな状態だったので、劇場に行って舞台チェックも寛大だった。
 普段なら「あそこのパネルをもっと傾けてくれ」とか「あの照明が目立ちすぎる」とか細々言うのだが、今日はどうも気にならない。
 スタッフの皆に対しても「いい! オッケー! お疲れ様です!」という感じだった。

 劇場を出て、私は淀屋橋に向かった。
 そこには東京組が宿泊しているホテルがある。
 そこで先乗りしていた加藤啓君、内田淳子さんと待ち合わせをしてしゃぶしゃぶを食べた。
 豚しゃぶなのだが、一人用の鍋でそれぞれが食べるのだ。

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 美味しかった。
 途中で柿喰う客の七味まゆ味さんも顔を出した。

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 七味さんはすぐに帰り、店を出る頃、千葉さんが到着したという連絡があった。
 なので四人で今度はカレー屋さんに行った。
 どんだけ食べるねん、という感じだ。

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 で、私は一人京都に帰ってきた。
 けれどその時、グループLINEに神田君がホテルに着いたという連絡があった。
 と……啓くんが「神田君、ご飯食べた? 食べてなかったら付き合うよ」と返信している。
 神田君も「行きたいです」と返信していた。

 おそるべし加藤啓だ。
 しゃぶしゃぶ、カレー、更に何を食べるというのだろうか?

 ……明日は本番だし、朝も早いのでもうやめて眠ろうと思ったが、神田君の話が出たのでもう少し書こう。

 彼は23歳。イケメンのナイスガイだ。
 事務所に入って、つまり俳優業を初めてまだ半年。
 これまでには一回だけアンサンブルの出演があるだけだ。
 だから実質、この「きゅうりの花」が初舞台になる。
 そう考えると……いやあ、本当に立派だ。
 ちゃんと芝居も出来ているし、本番に入ってからもどんどんよくなっている。
 
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 写真は……諏訪君にきゅうり柄の手ぬぐいをもらって嬉しそうにしている神田君。
 楽屋の鏡前にはメイク道具などで汚さないように手ぬぐいを敷くのが通例になっているのだが、神田君はそれを知らなかった。すると諏訪君が休演日に買ってきてあげたのだ。

 そんなかわいい神田君だが……。
 まあ、稽古の最初は……さすがに全然ダメだった。
 台詞も歌ってしまって聞こえないし、動くと身体はバラバラになるし、人の台詞に反応も出来ていなかった。
 
 けれど、私は余裕だった。「できる」と判断した役者は絶対に大丈夫なのだ。

 私なりに順番を考えた。
 最初の一週間は台詞をフラットに言うことだけしか言わなかった。
 次の週になって、反応の説明をした。
 立ち稽古になってからも動きは変だったが、だんだんと芝居に馴染んできた。
 で、通し稽古になってから、動きのことを伝え、更に最後の稽古でやっと感情の話をした。いや、感情じゃないね、流れだね。
 彼は見事だったねえ。どんどん吸収して行くし。
 大阪ではもっと化ける可能性もある。楽しみだ。

 もちろん彼の成長は彼自身の能力と頑張りによるものが大きいけれど、下手な演出の仕方をすればダメになってしまう可能性もあったと思う。

 前にとある稽古場を見学した時だった。
 
 その演出家は出来ていない役者に向かって、延々と「そこどういう気持ちでやってる?」などと聞いていた。
 役者も役者で「こんな気持ちでやっています」とか答えている。
 おいおいと思った。
 そんな稽古では絶対に役者は伸びない。
 
 だいたい、表情とか感情についてどうこうってさ……。
 表情も感情も、演技の結果「役者から出てくるもの」であって「意識して出す」もんじゃない。
 演出家がそうしたいのなら、そうなるように段取りを組むのが仕事なのだ。

 さらにその稽古場では演出家が延々喋っていた。
 「あそこのシーンではどう」とか、「ここでは表情がどうなっている」とか。
 だからそれは結果だし、ただの感想にすぎない。演出家は観客じゃないんだからねえ。
 「ダメ出し」は演出家が感想をいう場ではないしね。

 まあ、私も喋るんだよねえ。
 ほとんど無駄話だけど。中学時代の初恋エピソードとか。
 これは必要ない。だから改めないとな。

 稽古でもっとも大事なことは、身体に馴染ませる機会をいかに役者さんたちに与えられるかだと思っている。
 段取りを組んで、なんどもやってみる。すると役者さんたちは自分でモチベーションを見つけ始める。全ての行動や台詞がモチベーションで埋まってくると、その結果、感情が出てくるものなのだ。

 それにそんなにたくさんの話をしたって、役者さんが処理出来ないし。
 私はどんなベテランの役者さんに対しても1日5つ以上はダメを出さないように心がけている。
 ちなみに神田君には3つにしようと決めていた。
 順番に、ワンステップずつ、問題をクリアにして行けばいいのだ。

 結果、彼は本番の中で舞台を生き、すると私の想像を超えた表情を見せたりしてくれているのだ。

 そんな「きゅうりの花」は明日からですので、皆様お待ちしています。
 チラシをクリックすると特設サイトに飛びます!
 
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posted by 土田英生 at 01:18| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月29日

きゅうりの花、初日。

 「きゅうりの花」の初日が終わった。
 本当は今日も昼に通し稽古をしてから、本番を迎えるつもりだったが、すでに合計で13回も通しているので、今日は小返し(シーンの稽古)に切り替えた。
 演出助手のイーリーこと入倉さんが細かくチェックしてくれているので安心して稽古ができる。
 で、まあ、それなりに初日の緊張感を持って……なんとか無事に終わった。
 もちろんミスはたくさんあったし、まだまだ改善できることは山ほどあるけれど、逆に初日ならではの良さもあった。
 写真は開演前。
 配られたパンフレットに目を通す加藤啓、諏訪雅、神田聖司。
 
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 終演後、ロビーで乾杯をしてから帰った。
 そして帰り道は諏訪君と二人だった。

 ……突然だが、諏訪君はずっとダイエットをしている。
 低糖質ダイエットだ。
 そしてどうやら私はすっかり影響を受けてしまった。そして昨日から突然はじめてみた。
 私にとって諏訪雅は先生だ。
 差し入れなどのお菓子も、いちいち先生に聞いてから食べることにしている。

 で、今日の帰り。
 二人で下北沢で降りた。
 どちらからともなく、もう少し飲みたいねという話になって……二人で焼肉に行った。
 もちろん先生に聞きながら食べた。

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 そういえば、昔、諏訪君がMONOに出てくれた時、一緒に断食もした。
 あの時は、断食明けに諏訪君と二人で食べ過ぎてダイエットに失敗した。
 だから今回はかなりしつこく先生に質問をした。
 先生は言う。

「肉は大丈夫です」

 しかし……気になったのは途中で彼が放った一言だ。

「ま、今日は初日だし、いいんじゃないですか、食べても」
 
 どういうことだろう?
 もしかしたらまた失敗しているのかも知れない。

 ……ま、そんなこんなでとにかく初日が終わった。
 東京では6日までやっているので是非。

 →◉特設サイト
posted by 土田英生 at 02:05| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月26日

28日から!

 28日から「きゅうりの花」が始まる。

 24日が最後の稽古だった。
 通し稽古を2回やり終えると、スタッフの皆が稽古場に組まれていた仮セットを壊して行く。
 
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 壁に貼ってあった衣装デザイン。
 スタッフには本当に頭が下がる。

 この作品の初演は1998年。
 それまでMONOは関西でのみ公演をしていた。しかし、この時、利賀のフェスティバルに呼んでもらい、大阪と利賀村の2箇所で上演した。利賀の工房をそのまま使って上演したので、大阪公演の時は、今はなき扇町ミュージアムスクエアに利賀の工房を再現した。そういえば、金替君がMONOのメンバーになったのもこの公演からだね。

 評判が良かったので2002年に再演。東京、大阪、名古屋、宮崎の4箇所で公演をした。この頃は劇団にも勢いがあり、東京ではお客さんが入りきらず、本番が始まってから追加公演を決めたりした。SNSもなかったのに、どうやってお客さんは追加公演に集まってくれてたんだろうね。
 
 あれから15年経ち、今回、土田英生セレクションとして上演することになった。
 当時、新しいと思ったことも、今ではなんでもないことだったりする。
 だからとにかく、記憶を消し、今回集まったメンバーだけを見ながら演出の仕方を探った。

 けれど、人って考えることはあまり変わらないんだね。
 新しく思いついてアイデアを出しても、制作からは「15年前も同じことしてましたよ」と言われたりする。
 しかもだ。
 役者さんたちも、具体的にこうしてくれと言ってなくても、やっぱり収まるべきところに収まってくる。だから途中からは何も意識せずに、ただ作品に向かおうと思って稽古した。

 けれどそれでも最初は正直言ってかなり困った。
 演出のとっかかりが見つからない。
 昔の作品なので、私自身もどういうつもりで書いたのかは明確に覚えていないのだ。だから他人の作品のつもりで、メッセージを読み取ろうとした……けど、やっぱりわからないのだ。

 だから、前半は役者さんたちの交通整理しかできなかった。
 すると段々わかってきた。
 「きゅうりの花」は人の有様を眺める作品なのだ。何を訴えるとかではなく、過疎の町に暮らす7人の有様をそのまま見せればいいのだ。これと比べると、どうも最近の作品はメッセージがはっきりし過ぎてるのかも知れないねえ。

 だからこそ、役者さんたちが乗ってやってくれることが何より重要だ。

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 今日は劇場に舞台のチェックだけしに行った。
 舞台は出来上がっていた。

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 明日は場当たりと稽古。
 まだ、本番までに2日あるのだ。
 頑張ろ。

 皆様、劇場でお待ちしております!
 公演サイト→
 直前予約もここでできます。→
 前売りは3800円。学生さんは2000円、高校生までは1000円です。

 「きゅうりの花」告知動画→
posted by 土田英生 at 01:32| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月23日

どうか舞台だけは。

 「きゅうりの花」の稽古も残り2日。
 MONO版とは違った面白さも出て来た。
 このまま本番をむかえても大丈夫だと思うけど、もうひとスパイスを入れたいと思って悩み中。
 このセレクションで公演した作品は、自分で演出するのは最後だと決めている。
 だから「─初恋」も「燕のいる駅」も「算段兄弟」も……そして、この「きゅうりの花」とも私は演出としてはお別れになる。そう思うと色々と欲が出てしまうのだ。
 
 けどねえ、役者の皆が本当にいいんだよね。
 加藤啓君もこれまで見たことのない感じだし、あんなに喋り倒している諏訪君も初めてな気がする。
 内田さんも最近はこういう芝居はしていないだろうし、千葉さんも今回はコメディエンヌというよりは艶のある演技を見せてくれている。
 金替君は安定感抜群だし、新人の神田君は……ホントに凄い成長振りだ。
 
 稽古と反比例するように、私の日常はなにかとうまくいかない。
 大きなものから小さなものまで、各種様々な悩みも抱えている。
 けれど、とにかく今は舞台さえうまく行ってくれればいいという気持ちだ。
 皆様、ぜひ、劇場へお越し下さいませー!
 →公演サイト

 人は結構たくましい。
 私も色々と悩んでいると言いながら、それでも楽しく稽古をしている。
 まあ、小さなことはたくさんあるけどね。

 今日は稽古の後、皆で飲みに行った。芝居の話をして楽しく過ごした。
 そして店を出て……諏訪君と二人でダーツバーに行った。
 明日も稽古があるので1ゲームだけやろうという話になっていた。
 勝った方がそこの店のお勘定を払うという約束をしてゲーム開始。
 得点が多い方が勝ちというゲームを選んだ。

 私は序盤調子が良かった。諏訪君は乱れている。
 しかし段々と差が詰まった。
 あ、ちなみに私も諏訪君もほとんど素人だ。

 そして……勝負はついた。
 私が302点、諏訪君が301点。
 一点差だが私の勝ちだ。

 しかし、私は言ってしまった。
「もう一回勝負するか?」

 当然、諏訪君も乗ってくる。そして次は501というゲームをやった。
 これは順番に投げて行き、入った得点が501から引かれて行く。で、ゼロになった方が勝ちだ。
 大差で負けた。
 一対一ということで、もう一回やることになった。
 ……また負けた。

 私は店の勘定を払った。そして駅に行ったら終電が出ていた。井の頭線は終電が早いのだ。

 ああ、あの一ゲームだけで終わっていたら……。
 私が勝って終電にも間に合ったのに。
 絶対にリベンジしてやる。

 稽古前にもモヤモヤした。
 立ち食いのそば屋さんに入った。腹ごしらえをして稽古に臨もうと思ったのだ。
 食券の券売機に並び、かき揚げそばとトッピングの玉子のボタンを押した。
 しかし……玉子のチケットを取るのを忘れてしまった。
 「あ」と思い振り返った時には、すでに長い列が出来ていた。

 私は玉子を諦め、かき揚げそばだけ受け取ってテーブルに座った。

 と、私の後ろに並んでいた人がカウンターで注文をしていた。
 店員さんの声が聞こえる。

「鴨つけそば、トッピングの玉子入ります!」

 ……疑ってはいけない。
 しかし、私はそのサラリーマンが気になって仕方なかった。
 あの玉子は私がごちそうした玉子かも知れないのだ。

 こうして書いてみると……毎日楽しそうだな、私は。
 
 とにかく今は「きゅうりの花」。
 いい舞台にしよう、ホント。

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posted by 土田英生 at 02:56| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月18日

稽古は順調

 随分と更新を怠けた。

 「きゅうりの花」の稽古は着々と進んでいる。
 毎日三鷹に通っている。

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 芝居が本当にいい感じになってきた。すると宣伝したくなる。なので久しぶりに書こうと思った。
 ……なんだこれ?
 「着物をもらった。これは夏に着るものであろう。夏まで生きてみようと思った」みたいな感じだ。
 正確じゃないけど、太宰治の小説にこんなのあったよね。
 
 とにかく稽古はいい感じになって来た。

 私の創る芝居は、どうも役者さんを不自由にさせる。
 そのことは前々から分かっていたことだ。

 役者さんは誰だって自由に伸び伸び演技したいんだと思う。
 けれど、私が書く台詞はあるリズムを共有することで成り立つようにできている。意図的ではないけど、そういう風にしか書けないのだ。

 だから、面白くする為には全員でリズムを作らないといけない。
 当然、制限がかかる。不自由になる。
 一人でもそこで自由自在に演技してしまうと壊れてしまうのだ。
 これは自分の台本の弱点だとも思っている。
 
 MONOでやるときはその文法を皆が共有しているので問題はない。
 しかし、プロデュース公演などをすると、どうしてもそのすり合わせに時間がかかる。
 いくら素晴らしい役者さんたちが揃っても、シーンが成立しなかったりすることがある。

 で、とにかく最初はリズムを揃えることを求めた。
 それが出来上がってから、役者個々の魅力を引き出そうと思ったのだ。
 なので無理を承知で、形を作ることを急いだ。
 
 今回のメンバーはそれに付き合ってくれた。
 と……一昨日くらいから突然芝居が動き出した。
 リズムが出来てきただけではなく、個々の役者も光り出した。

 今日の通し稽古も良かった。

 神田くんはほぼ初舞台なので新鮮なのは当たり前だけど、諏訪雅くんも加藤啓くんも千葉雅子さんも内田淳子さんも……普段の演技と少し違って見える。
 まあ、金替と私は……どうしても新鮮さには欠けるけど、それは仕方ない。

 とにかく今、ここまで行けてたら大丈夫だ。
 あとは精度を高めながら、新しい工夫を入れて行こう。
 幸いにも全部で10回以上通し稽古ができる。
 15年ぶりに上演する「きゅうりの花」だが、うん、いい作品になると思う。
 
 みなさん、お待ちしています、心から。

 「きゅうりの花」特設サイト

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 あ、明日(19日)はトークイベントもします!
 こじんまりした会場(お店)で、のんびりとトークする予定ですので、お時間のある方はぜひ。
 フラッと来てくださっても大丈夫だと思います。諏訪くんと私で喋りますが、もしかしたら他の出演者も顔を出してくれるかも知れません。
 
 詳細はコチラから!

 やっぱり稽古が楽しいと自分自身も落ち着いてくるね。
 
 TwitterやFaceBookなどをスマホから抜いていた。
 少しだけネット上の社会生活に疲れを感じていたからだ。
 けれど、やっぱり不便だね。
 頑張って発信していかないとね。
posted by 土田英生 at 03:19| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月28日

捨てたり大事にしたり

 「きゅうりの花」の稽古が始まった。
 すでに2日目が終わった。
 初日は一度だけ通して読んで終わり。
 今日は1場と2場の本読み。
 私は普段、あまり本読みをじっくりやらない。台本を持ったままでも、すぐに動いてもらって形を作って行く方が好きだ。
 しかし、この戯曲はMONOで2回上演している。だからなんとなく形が頭の中に残ってしまっている。
 とにかくその印象から離れようと思い、本読みをしながら新しいイメージを膨らませている。
 舞台美術もちょっとしたことを変えてもらった。出入り口の位置とか。
 前と同じように創れないようにして、今回ならではの「きゅうりの花」を目指している。

 チケットは絶賛発売中ですー!
 サイトはこちらから。→
 
 京都で引きこもっていたが、先週末広島に向かった。
 毎年やらせてもらっているアステールプラザの演劇学校の講師をやる為だ。
 普段は15時に入り、16時から開始なのだが、この日は朝早くに新幹線に乗った。
 グンジョーブタイという劇団が、私の戯曲「相対的浮世絵」を上演していて、この日は11時開演の回があると分かったので観に行ったのだ。深海くんという役者さんがいて……座長なのかな……とにかく彼がやっている劇団だ。この劇団は旗揚げ公演も私の「燕のいる駅」だった。
 上演するのは難しい戯曲だと思うけど、よく出来ていて面白かった。急遽決まって、終演後のトークにも出してもらった。

 で、そこから二日間のワークショップ。
 終わってから松山の劇団unit out 「食卓心中」の広島公演を観た。作家である玉井さんは私の戯曲講座に来てくれたこともあったので観られて嬉しかった。

 最終の新幹線で東京へ移動。翌日から「きゅうりの花」の稽古だったのだ。
 品川駅に着く直前で箱庭円舞曲の古川くんと会った。同じ車両に乗っていたらしい。

 で……。
 下北沢の事務所に着き、スケジュールの確認をしようとしたら……スケジュール帳がない。
 どこを探してもない。
 お手製の革カバーがしてあり、さらにはお気に入りのペンが挿してあるはずのものだ。
 まあいいか……。
 いやいやいや。
 スケジュール帳もちょっと困るけど、あのペンは……なくなると困る。とても気に入っているものなのだ。
 プラチナのファンクションペンで銀の同軸。
 そんなに高価なものではないけど、一目惚れして買ったものだ。

 しばらく考えていると……ふと、私の脳裏には映像が浮かんだ。
 新幹線の座席についている網。
 その中に入っている手帳とペン。
 そうだ。あそこに入れていた。
 ということは……忘れてきたらしい。

 私はこういう時、すぐに諦める質だ。
 だから「もういいや」とも思ったが、こういうところから変えて行こうと考え直し、とりあえずJR東海のメールフォームから忘れ物届を出した。

 今日、18時に稽古が終わってから私はダッシュした。三鷹から下北沢まで30分で移動しようという作戦だった。18時半からMONO特別企画のワークショップをやることになっていた。
 公演は11月にやる予定で、とてもこじんまりした企画だ。けれど、こういうものこそ、きちんとやって行かないと自分自身が先細って行ってしまう。だから色々と試して行く必要がある。本来の意味でのワークショップだ。

 あ、サイトはこちらです。→

 三鷹駅のホームに着いた。
 空になったペットボトルとライターをなぜか握りしめていた。
 電車が入って来る。
 私はホームにあるゴミ箱にペットボトルを捨てた。
 ゴン。
 音がした。
 手をみると何もない。どうやらライターも一緒に投げ込んでしまったようだ。
 ロンドンで買ったジッポーのライター。
 なのでさすがに手を突っ込んで探した。
 ペットボトルを捨てるところの穴は小さい。そこに腕を入れてゴソゴソする。
 通り過ぎる女子高生たちが怪訝そうな表情で私を見ている。
 けれど構っていられない。
 電車は行ってしまった。そしてまだライターは見つからない。
 次の電車が入ってきた。
 ここにライターを捨てたら、それはそれでダメだしねえ。だからなんとかしようと必死だった。
 けれど、このままだとワークショップには遅刻してしまう。
 列車の発車を告げるアナウンス。
 ワークショップを取るのか、ジッポーを取るのか。
 ……ワークシップを取った。しかし遅刻した。
 
 ワークショップが終わってメールを見ると、JR東海からそれらしきものが見つかったという返信が来ていた。どうやら手帳とペンはあるようだ。
 明日、取りに行こう。
 
 捨てたり大事にしたり。
 忙しいね。
posted by 土田英生 at 03:51| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月19日

まもなく稽古開始

 「きゅうりの花」の稽古がまもなく始まる。
 やっと台本の改訂も終わった。
 キューカンバー(MONO)のサイトにも情報が出ているが、こっちの方が詳しいので、今はこのリンクを貼らせてもらおう。

 →エントレの記事
 
 もうすぐ公演用のサイトなどもできるそうなので、そうしたらまたここで書かせてもらいますー。
 一般前売りも始まるし、関西では記者発表もさせてもらう。
  
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 そして11月には若い俳優たちとMONO特別企画をすることも決まった。
 タイトルは「怠惰なマネキン」。
 この企画は来年のMONOの本公演と自分の中ではリンクしていて、いや、まだそれはいいか。
 今はまだTwitterしかないのでそれを貼っておきます。

 →MONO特別企画vol.6アカウント
 
 私は一人の時は、まるで潜水艦のように静かに海の底を漂うことになっている。
 単純に言えば沈む。
 ここ二ヶ月はまさにそうだった。
 昨年秋からあんなに忙しかったのにMONO「ハテノウタ」が終わって急に暇になったせいだと思う。それに加えて今の日本の状況に対する暗澹たる気分が重なり、さらには個人的な生活の変化があったことで……もうもう不安の塊だった。
 不安の塊は重い。
 まったく浮上する気配がない。
 もっと軽くならなければ。
 状況が変わらなくても、気分だけでもなんとかしないとと思った。
 海の底にばかりいたくない。
 光が見たい。
 よし。だったら軽くなろう。

 まず、iPhoneからSNS系のアプリを全部抜いた。
 これは友達から勧めてもらった。
 パソコンでは見られるので問題ない。電車に乗っている時などもいつも見てしまっていた。
 入っていたゲームもかなり削除したので、暇な時は代わりに本を読むことにした。昔はそうだったしね。

 これだけでずいぶんと楽になった。
 押し寄せてくる人々の感情や、様々な情報から隔離されるだけでこんなに気分が変わるとは思っていなかった。
 
 次に環境を変えようと思った。
 私はインテリアなどが好きだ。
 けど、今はそんなに大掛かりなことはできない。
 なのでドアの色を変えようと思った。

 ペンキを買いに行った。
 そのホームセンターは私が昔住んでいたアパートの近くにある。
 なので買い物が終わってから、ブラブラとそのアパートを見に行った。
 まだあった。
 ほとんど変わっていない。
 「おおおおおお……」
 眺めながら小さな声が出てしまった。

 21歳から29歳までそこに住んでいた。
 劇団を作った時、ここを事務所にしていたなあと思った。
 外から電話がかかってきて「代表の土田さんはいらっしゃいますか?」と聞かれ、「少々お待ちください」と言ってしまったことを思い出した。しばらくして「お待たせしました」と低い声を出してみたものの、向こうは微妙な感じだった。バレてたんだろうね。
 
 それにしても……本当、当時のままだ。
 写真を撮りたかったけど、私のiPhoneはカメラが壊れている。
 インカメラだけは時々動くのだが、気まぐれにしか写らない。
 やってみたけどやっぱりダメだった。

 テンションが上がった私は隣の駅まで歩いた。
 そこには昔、犬飼君が住んでいたマンションがあった。
 よくファミスタをする為に遊びに行ったねえ。いや、遊びに行ったというより、入り浸ってたね。
 私も水沼君も。
 
 そのマンションもまだあった。
 写真を……けどiPhoneは……。
 すると、なぜかインカメラが反応した。

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 撮れた。
 私は入る必要なかったのだが、インカメラにしてしまうとどうも自分を向けてしまうようだ。
 自分抜きでもう一枚撮ろうと思ったら、またカメラが動かなくなった。

 近所をぶらぶらした。
 なんか……なんか……懐かしくて。
 よく通った定食屋さんに入ってご飯を食べた。
 気分が高揚したのか、リュックにペンキを入れたまま、歩いて帰ることにした。
 
 桂川に出る。
 と……夕日が川面に反射し、とてもきれいだった。
 写真は無理だし。
 けど、一応、試してみよう。

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 撮れた。
 今度は最初から自分を入れずに撮った。
 しばらく河原に座ってぼうっとした。
 不思議なことに元気が出てきた。

 家に帰って、仕事をして、夜中にドアを塗った。
 終わったら朝になっていたが、私はずいぶんと海面近くにまで浮上したと思う。
 
 
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 週末は広島に行き、来週から「きゅうりの花」の稽古開始だ。
posted by 土田英生 at 04:02| 京都 | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月10日

寝よう

 朝になったというのに眠れないので書いている。
 
 先月の25日に東京に移動してきて、また今日、舞台を1本観てから京都に戻るつもりなのだが、全くいろんなことが進んでいない。
 本当は書かなければいけないものもあるのに。
 なにより「きゅうりの花」の台本の改訂を急がないといけない。

 プライベートなことなので詳細を書くのを控えるけど、個人的な問題に区切りをつけたことで、新たな問題も浮上してきたりして……まあ、静かに大騒ぎという感じだ。人には「最近は引きこもってまして」と話したりしているのだが、それでも色々と舞台を観ていた。

 浦島りんこさんのライブ、木ノ下歌舞伎「東海道四谷怪談ー通し上演」、匿名劇壇「レモンキャンディ」、iaku「粛々と運針」、マームとジプシー・ひび「ひびの、ひび/3×3=6月。9月じゃなくて」、新感線「髑髏城の七人」、そして今日はFUKAIPRODUCE羽衣「愛死に」を観る。
 観たかったものはたくさんあったけど無理だった。イキウメ「天の敵」とか岩松さんの「少女のミウ」、いや、またまだ他にもあったけど……小説のトークイベントや劇作家協会の月一リーディングのゲストなどもやったし、秋にやる予定の芝居のミーティングなどもしていたし、友達ともたくさん会う約束もあったし。
 
 しかし、人の芝居を観ている場合ではない気がするな。
 他人の舞台などを観ていると色々とアイデアも浮かぶし、人の相談に乗っていると「こうしたら?」などと意見も言えるんだけど、頭の片隅で「お前はどうなんだ」という声がずっと聞こえているんだよねえ。
 いや、実は随分と前から気づいていたんだよね。
 自分の欠点というか、足りないものに。
 だけど目先の仕事などにかまけて見ないようにしていたのだと思う。
 しかし、逃げられないなという気がしてきた。

 この前、ケラさんとサシ飲みをする機会があった。
 先輩とゆっくり喋る機会はなかなかないので、色々と質問をした。

 それからもずっと考えている。
 こんな社会の中で、なにを創っていきたいと私は思っているのか。
 いや、そもそも創作のモチベーションをどこに置いているのかとか、果たして私はこのまま作品を創っていけるのかとか、一度、そのことも含めて見直した方がいいんじゃないかとか……。

 やりたいことは思いつくんだけど、それに自分の実力がついて行ってない気がするんだよね。
 ロマンチックな思いに酔っている場合じゃないけど、これまで持っていると信じていた何かが、気づいたら見当たらなかったような気分だ。
 本当にこのまま書いてていいのだろうか、と考えちゃうんだよね。
 「きゅうりの花」を書き直しが途中でちょっと止まっているのも、それが原因だ。
 昔、上演した時は評判もよかった。劇団の代表作だと言われたりもした。
 けど、その時の記憶だけでは作品は創れない。
 中途半端なことはしたくないし。

 いや、まずだ。
 何より、自信を取り戻さないといけない。
 もしも……いや、やめよう。
 考えるだけでぞっとするし。寝よう。
posted by 土田英生 at 06:10| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月08日

きゅうりの花

 また更新が滞ってしまった。
 しかし告知だけはしなければいけないね。

 間もなく稽古が始まる土田英生セレクションvol.4「きゅうりの花」。
 チケット発売ももうすぐです。
 みなさんよろしくお願いします。
 また、詳細は書きますが、とりあえず7/28〜8/6が東京、8/11〜13が大阪です。
 
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posted by 土田英生 at 06:22| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月23日

もう終わりだという気分

 私はエンターテイメントを創りたいし、これまでだってそうしてきたつもりでいる。
 当然ながら私自身の考えなども作品の中には入ったりしているだろうが、基本的には人の愚かさや哀しみ、楽しさを笑いを交えて描いているつもりだ。
 自分の創る芝居を観てくれた人には“人の有様”を感じてもらえればいい。
 
 本当のことを言えば、今はとんでもなくバカバカしいことを描きたい。
 人の卑小さを大笑いできるような、そんなくだらないものを書きたい。
 けれど……社会がここまで歪んでくると、創作のバランスを取ることすら難しくなってくる。正直言って心が折れそうになる。

 このブログだってそうだ。
 本来は日常の中で起きた面白いことをつらつらと書きたいから続けているのだ。
 実際、なんども書きかけた。
 そして途中でやめた。ニュースを見てそんな気分でなくなってしまうからだ。
 だから一ヶ月も空いてしまった。
 
 ……もうこの世の終わりだという気分になる。
 それほどこの国はおかしなことになってきてしまった。
 言葉の価値や基準も崩れ、もう何が正しいのかは問題ではないようだ。

 政権支持率が落ちないのが不思議だと皆はいう。
 閣僚の不祥事やおかしな答弁、首相自身の解明されていないスキャンダル、これだけのことがあれば、これまでなら大騒ぎになり支持率はとっくに落ちていたはずだからだ。

 しかし、そうはならない。
 これは多くの人が……今の政権の方向と自分自身を一体化させているからだと思う。
 もう内面化しちゃってるんだよね。

 社会が完全に閉じて興奮状態になっている。
 だからスキャンダルの事実がどうなのかよりも、問題にならずに済めばいいという感情なんだと思う。
 加計学園や森友学園のことに関して「説明責任を果たしていない」と思っている人が世論調査では多数を占めているのにさほど盛り上がらないのはそういうことだ。

 指摘されていることが虚偽なのであれば、それをきちんと証明すればいいだけなのにね。
 もし事実であれば責任を取る。
 本当は簡単なことだ。
 それをすることなく、なんとなく済ませられそうな感じになっているのは、「そんなこといいから、このまま行ってしまえ」と皆が容認しているからだ。
 事実なんてどうでもいいのだ。
 興奮に水を差すなという感じなのだと思う。

 この「空気」こそが最も私を憂鬱にさせる。

 興奮している人には何も伝わらない。
 そこには冷静な判断などない。
 自分たちを盛り上げてくれる意見に対しては喝采を送り、反対意見を言う人に対しては感情的に攻撃する。
 興奮している人たちは声が大きいしねえ。
 すると大多数の、いわゆる「サイレントマジョリティー」はさらに口をつぐむ。
 変に目立って攻撃されたくないしね。
 マスコミだって直接的な政府の圧力がどうこう以前に、そうした空気を敏感に察知して静かになって行くのだ。報道されなくなれば、興味のない人たちは問題意識を持たない。
 こうして、社会の中には、興奮状態の人たちの声ばかりが聞こえることになる。

 共謀罪はそれ自体がとんでもない法案だが、私が最も怖いのは、この空気の中で、そんな法案が通ったら、本当に歯止めがきかなくなることだ。

 気に入らない意見を言う人に対して、誰かが犯罪の可能性を密告する。
 嫌がらせでもなんでもいいのだ。
 と、警察や検察が動く。
 その人に罪がなかったとしても、例えば取り調べを受けるだけで人は凹む。
 と、よっぽど度胸のある人しか、物事を言わなくなる。
 なるべく静かにしていようとする。
 直接、国から圧力をかけなくても、人々はお互いに監視し合っておとなしくなる。
 
 本当、この法案が通ってしまったら……ああ、怖い。
 これはダメだ。

 太平洋戦争の時だって、最初から皆が黙っていた訳でなない。
 段階を踏んでとんでもなくなって行ったのだ。
 官憲に拷問されたり、思想弾圧されたりもした事実を引き合いに出すと、「今はそんなこと起きるはずない」と言われたりする。
 けれど、そうした局面にまで到達する前は、つまり最初は「なんとなく容認する空気」があっただけだ。
 その空気に後押しされてああなって行ったのだ。

 この空気を生み出している要因はなんなんだろうね。
 きっと、今、みんな個人に自信がないんだよね。
 自分自身の回復を「日本はすごい」みたいなことに託そうとしている。
 テレビだってそういう番組ばっかりだし。
 そういう下地の上に、今の流れが出来てしまっている。
 今、「日本のここがダメだ」という番組をやったら、すぐに終わるだろうね。
 昔は結構あったのに。
 社会に余裕があったんだよね。
 それくらいでいいのに。
  
 当たり前のことだけど、「日本」という国は、国民主権なので私たち個人がまず最初にある。
 その個々が集まった総体が国であって、皆で話し合って決めて行くのが民主主義だ。
 誰かに支配されている訳じゃない。
 だから文句を言っても、それは自分たちに対して言っている訳であって、それは反日でもなんでもない。
 当たり前のことだ。
 もちろんこれまでの歴史や文化はある。それを受け継いで大事にして行くのはいい。
 けど、今、現在、ここに暮らす私たちが生き生きすることが一番肝要なのだ。
 だから皆が好きなことを言える環境であって欲しいと願う。

 演劇になんか社会を変える力はない。
 けれど、演劇を含めた表現というものは、まあ、簡単に言ってしまえば天邪鬼な存在にならざるを得ない。 
 「道化」なのだ。
 権力を茶化したり、それを笑ってもらったりする。

 このままだとどんどんダメになって行くよねえ……。

 こうした「空気」って、動き出すともうどうしようもないのかなあ。

 演劇の現場でもそうだよね。
 時にはとんでもない演出家もいる。
 役者に暴言を吐いたりして威圧するやつ。
 私が大嫌いなタイプだ。
 役者やスタッフが彼について「変だよね」と言い合っている間はまだいい。
 けど、あまりに怖いと、なるべく怒鳴られないようにという方向に動き出す人たちが出てくる。
 すると真っ当な文句を言う人が「そんなこと言っちゃダメだよ」と周りから怒られたりする。
 と、どんどん現場はその体制になっていく。
 
 独裁国家だって、独裁者個人だけの問題じゃない。
 周りがその体制を作って行く。
 
 だいたい、私たちは民主主義の国に暮らしているのだ。

 こんなこと書きたいんじゃないんだよね。
 私自身、個人的な問題で今はかなり大変なのに。

 今は京都にいる。
 前回も京都にいたけど、あれから東京にいて、やっと戻ってきた。
 と言いながら、またすぐに東京だけど。

 少しでも楽しいことをしようと、リビングのコーヒーテーブルを自作した。
 ちょうどいい大きさの物が欲しいと思って探していたのだが、見つけたものがとても高額だったので諦めていたのだ。
 階段の手すり用の材と、残っていたモールディング材を使って作った。
 
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 今日は3年ぶりに歯医者にも行った。
 先生から「新聞で見ましたよ。小説出したんですね。買おうと思ってたら予約の電話があって驚きました」と言われ、色々と喋りたかったが、口を開けているのであまり話せなかった。
 歯の穴を塞いでもらったので、帰りに美味しい豚カツも食べた。一人だったので小さな声で「ああ、美味しい」とつぶやいてみた。
 そして気分を盛り上げようと思って一時間半歩いた。
 途中の公園で子供達に呼び止められ、なぜか一緒に遊ばされた。

 遊んでいたら泣けてきた。

 けど、けど。
 まあ、負けずにやらないとね。
 一緒にいてくれる仲間もいることだし。
 楽しいことを書きたい。
 私はやっぱりエンターテイメントを創りたい。
posted by 土田英生 at 04:19| 京都 | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする