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MONO代表・土田英生のブログです

2016年08月16日

一割増しと黒い糸くず

 今週は移動が多くて疲れた。
 東京、京都、東京、広島、宮崎。
 このまま月末まで宮崎に滞在するのでやっと落ち着ける。

 広島ではアステール演劇学校の俳優コース。
 ワークショップを2日間。
 2日目にテキストを読んでいると、同じ施設の大ホールで公演をしていた佐々木蔵之介君が顔を出してくれた。公演についているスタッフの佐々木くん……名前同じでややこしいな……に同じ場所で私がワークショップをしていることを伝えていたからだ。
 参加していたメンバーから黄色い声が上がった。
「知り合いなんですか?」
 蔵之介くんが顔を出してくれたおかげで、どうやら私の株が上がった。
 彼が去った後には事実の一割増しで仲良さを強調しておいた。

 そういえば去年もそうだった。
 ホールで小林賢太郎君が公演をしていることを知ったので、私は連絡した。
 その日の夜に彼と会って、次の日は彼がワークシップを見学しに来た。
 一時間くらいいたと思うが、あの時も、賢太郎君のおかげで株が上がった。
 やはり一割増しで仲いいアピールをしておいた。

 そうだ。
 私は周りに株をあげてもらう情けない男のようだ。
 しかも一割増しで喋ってしまう男だ。
 時には三割までは増量オッケーにしている。

 昔、ヨーロッパ企画が評判になり出した頃だ。
 私はフジテレビでドラマの打ち合わせをしていた。
 休憩中にプロデューサーが私に聞いた。

「土田さんも京都だし、ヨーロッパ企画の上田君とかとは親しいんですか?」

 実はその時にはまだ私は上田君と一度しか会ったことがなかった。
 しかも、なにかのパーティー会場で立ち話をしただけだった。
 けれど、私の口からは自分でも驚く一言が出た。

「え? まこっちゃんとですか?」

 上田君の名前は誠という。
 もちろん彼を「まこっちゃん」だなんて呼んだことはなかった。
 しかし、プロデューサーは「へえ、そんなに仲いいんですねえ」と言っていた。
 私は黙っていた。
 何も嘘はついていない。上田君のことをまこっちゃんと呼んだだけなのだ……。
 けれど焦った。
 早く仲良くなって、彼をまこっちゃんと呼ばなければいけない。
 
 現在、彼とは仲良くはなったけれど「上田君」と呼んでいる。

 昨日も広島に泊まり、今日は朝から宮崎に移動。
 福岡から飛行機だったが、久しぶりにプロペラ機に乗った。

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 ここで来年やる芝居の脚本を書く。
 
 着替えなどがたくさん必要なので、久しぶりにスーツケースを転がしてきた。
 けれど……ホテルについてTシャツなどを出してみると、黒い糸くずがやたらついている。
 私はうわーと声をあげて部屋の中を走り回った。

 いや、これは三割増しだ。
 走り回ってはいない。
 うわーとも実際に叫んだかどうかも不明だ。
 けど、驚いたのは確かだ。
 
 なんだ、なんなんだ、この糸くずの山は?

 冷静になって考えたら、理由はすぐに分かった。
 先日終わった「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」は舞台裏という設定で、幕をみんなに縫ってもらった。
 で、その幕の持ち運びにスーツケースを貸していたのだ。

 明日からは宮崎で取材しながらの執筆活動。
 がんばろ。
posted by 土田英生 at 01:21| 宮崎 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月14日

小松幹生さん

 小松幹生さんが亡くなった。

 小松さんは劇作家でありながら、編集者として出版にも関わっていた。劇作家協会の新人戯曲賞で最終候補作をまとめた戯曲集の編集なども一手に引き受けてくださっていた。
 で、Twitterにも書いたけれど、私は個人的にもとてもお世話になった。
 小学館が出していた戯曲雑誌「せりふの時代」に私の戯曲「橋を渡ったら泣け」が掲載されてしばらくした頃だ。
 MONOの稽古のために私は京都芸術センターにいた。
 と、いきなり小松さんから電話があった。

「あれ読んだよ。土田君は戯曲集とかさ、もう何冊か出してるの?」と突然小松さんは質問してきて、私が一冊も出していないと答えるとすぐに「じゃ、出そうよ」と言ってくれた。そして本になったのが「算段兄弟/ー初恋」だ。松田正隆さんの「雲母坂」と一緒に出してもらった。
 
 劇作家協会などで会うとよく話した。
 いや、寡黙な小松さんはいつも私の話を聞いてくれていた。
 そしていつも言った。

「君はよく喋るなあ。書くより、喋る方が向いてるんじゃないの」

 小松さんが癌だとわかってしばらくした時だったと思う。
 いきなり明け方に長いメールをもらったことがある。
 若い時の思い出話が書かれていた。
 どうしていきなりこんな内容のメールをくれたのかは不明だが、「ちょっと書きたくなって」と最後に書かれていた。
 
 6月の終わり。
 小松さんのお見舞いに行った。駅から雨の中を歩いていった。
 ナースセンターでそのことを告げると「ああ、眠ってらっしゃるから、話せないかも知れませんよ」と言われた。で、その看護士さんが声をかけた。
「小松さん、お見舞いの方が来られましたけど、分りますか?」
 やせ細った小松さんは目を開き私を見た。
 そして驚くほど大きな声を出した。
「土田君だよ。分かるよ。当たり前だろう」
 そして小松さんはいきなり色々なことを話し出した。
 そこには過去と現在が入り混じりっていて、内容は正確にはわからなかったが、小松さんの想いだけが伝わってきた。そして私が答えていると小松さんは目を閉じて眠っていく。
 眠ってしまった小松さんを私は見ていた。
 大学の時、友人から借りた「雨のワンマンカー」という戯曲のことを思い出した。
 小松さんの作品だった。
 私が帰ろうとすると小松さんは起きて、再び話し出す。
 それを何度も繰り返した。

 その日の夜、下北沢の事務所で歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の台本を直していた。
 台詞を書きながら、今日見てきた小松さんの顔が何度も脳裏に浮かんだ。
 まだ死など意識していない若い女優たちに当てて書く台詞と病床にある小松さん。
 そのギャップを考えて不条理な気分になった。
 
 覚悟はしていた。
 けれど、実際に訃報に接するとやっぱり沈む。
 
 ありがとうございました。
posted by 土田英生 at 09:31| 広島 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月10日

公演終了と大村わたる

 歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」が終わった。
 たった3日間の本番だったけど、準備を合わせれば結構な期間になる。
 このユニットは去年もカフェ公演のような形でやっているのだが、今回はもう少しだけ本格的というか……小さいながらも劇場での公演だった。

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 去年は優しい後見人的な感じで終われたのだが、大変になった分、今回は自分のエゴも出てしまった。
 稽古や公演準備の過程で、歪のメンバーである3人に対してもかなり言いたいことを言った。
 いや、言ってしまった。
 もちろん……私は落ち込んだし、反省した。

 けれど、そのことは彼女たちにとってはよかったと思えた。
 本番を見ながら「とてもたくましくなったなあ」と感じたし、演技もはっきりと変わった。
 あれはなんだろ?
 私は体育会的な現場が大嫌いだ。
 精神的に追い込むとか、そんなことで変わるなんてのは勘違いだ。
 けれど、他人から見えてることを指摘する、されることは必要なんだよね。
 
 演劇はどうしたって人間が出てしまう。
 演技にもそうだし、作品を書く立場であれば文字にも現れる。
 だから自分の中にある根本的なところと闘わないと、変れない部分は確実にある。

 ただの結果としての話だけど、まあ、今年の公演はそういう意味でも意義があったね。
 本当、上手になったし。

 もちろん、これからが勝負だ。
 経験から得た発見を、きちんと各々が内面化して、解決していかなければいけない。
 そうすれば半年、いや、一年後にもっと大きく変化するのではないかと期待している。
 
 
 彼女たちはよくなったけど、私は自分の中で勝手にダメージを受けてしまったようで、それが今になってじわじわ効いている。
 人に吐く言葉は自分に返ってくるのだ。
 大人にはこれがキツイね。
 3人はまだまだ変われる年齢だけど、私は……大変なんだよねえ。
 
 いいや。
 成長できる大人になればいいんだしね。
 なんなら背も伸ばそう。牛乳をいっぱい飲もう。
 
 ちょっとくだらないことを書く。

 終わって片付けをし、打ち上げをした次の日。
 午後になってから私は起きた。
 夜に人と会う約束をしていたので、それまでのんびりしようと思っていた。

 と、大村わたるから連絡があった。

 彼も歪のメンバーと同じで、私の「俳優育成講座」に参加していた。
 その後、土田英生セレクションにも出てもらった。
 以来、時々、お茶を飲んだりする仲だ。
 最近は活躍している。

 とてもナイスガイなのだが、どことなくズレている男だ。
 イケメンなのだがそうは見えなかったり、真剣に喋っている言葉が嘘くさかったり、変なことを気にしたり、あるいは気にしなければいけないことを気にしなかったり……まあ、簡単にいえば変わっている男なのだ。
 
 で、彼は歪を観にきてくれ、その時にまたお茶を飲もうと言われていたのた。
 私がゴロゴロしていると彼からメッセージがきた。
 お茶飲みましょうと書いてある。
 そこでスケジュールをやりとりしたら、合う日がないことがわかった。
 今日だったら19時までなら空いていると伝えると、30分後に彼は下北沢にやってきた。
 
 大村わたるは人懐っこい男だ。

 例えば、会って喋っていたとして、帰ろうということになって歩いていると、なぜかついてくる。
 よく訓練された盲導犬のようについてくる。
 しかも距離が近い。

 私も実は人と別れるのが苦手なので、私と大村わたるが会うと、「じゃあ、またね」と言ってから30分は意味なく一緒に歩くことになる。
 しかも私も距離が近いので、私とわたるは寄り添って歩く。
 はたから見たらきっとおかしな光景だ。

 そして……。

 彼と会うと必ずされる会話がある。

「お腹空いてる?」
「少し、ええ、そうですかねえ」
「何が食べたい?」
「そうですねえ……パスタとか」

 これはもう「大村わたる会話」のテキストに載せてもいいくらい決まったやりとりだ。
 今後も出てくるのでこの会話をAとしておこう。
 そうすればそのくだりが出てくる時はAと書けば済む。

 そういえば土田英生セレクションの稽古中も何度もAの会話が交わされた。
 で、実際にパスタを食べたことも何度かある。
 
 しかし、問題はパスタを食べる場所が見つからない時だ。
 土田英生セレクションの稽古帰り、吉祥寺を私とワタルくんは歩いていた。
 きっと、この時も距離が近かったと思う。
 
 Aの会話をした。
 しかし、見つからなかった。
 ところで私はタイ料理が大好きだ。
 で、その時はふと美味しそうなタイ料理の店を見つけた。

「タイ料理は?」
「あ、結構、好きです」
「じゃあ、いい?」
「はいはい」

 で、結果は……どうも彼は辛いのがダメだったらしく、水ばかり頼んでいた。
 私はお金を払いながら、なんだか申し訳ない気持ちになった。

「いや、好きなんです、本当、でも、辛かっただけで……」

 と、彼も何度も言っていた。
 
 で、この前だ。
 下北沢で会っですぐ、Aの会話をした。
 しかし、やはりパスタの店が思いつかなかった。
 よく私が行くタイ料理はどうかと聞いてみた。
 その店は辛くないのだ。

「辛くなかったらいいんだよね?」
「そうなんですよ」

 で、彼は辛くないものを頼んだ。
 ……しかしだ。
 私がすっかり食べ終わっているのに、彼は全く箸が進んでいない。
 相談もあると言っていたので、私は早く店を出て、お茶でも飲もうと思っていた。
 
「早く食べなよ。コーヒー飲もうよ」

 と、彼は言った。

「……土田さん、これ、食べます?」
「え? ダメだったの?」
「はい」

 そうなのだ。どうもお口に合わなかったようだ。
 辛くないのに……。
 もう、これからは絶対にワタルくんとはパスタしか食べないと決めた。

 そして別れる時、私が渋谷まで行くと伝えると、やはり彼も渋谷まで一緒に電車に乗った。
 ……おかしな男だ。
posted by 土田英生 at 05:48| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月01日

『夢叶えるとか恥ずかし過ぎる』本番間近

 8月になってしまった。
 歪[ibitsu]の公演、『夢叶えるとか恥ずかし過ぎる』の本番が近づいてきた。
 だからはっきりいって宣伝だ。

 5日(金)から7日(日)までのたった3日間の公演。
 会場も小さいので5日は前売がなくなってしまった。
 けれど、6日、7日はまだまだ大丈夫だ。
 なので、皆さん、そちらへどうぞ。
 チケットの予約はここからできます。
 
 コリッチ・チケット予約→
 
 予約してもらえれば、当日に会場へきて、その場でお金を払って観てもらうだけですので。
 上演時間も75分くらいなので、夜に観ても帰りが遅くなることはないと思います!
 梅ヶ丘は小田急で新宿から15分。
 駅から会場の梅ヶ丘BOXまでは徒歩1分です。

 今日は通し稽古をした。
 で、驚いた。
 ……短いな。それでも見応えはあるけど。

 まあ、私があまり長い芝居が好きではないというのもある。
 だいたい、昔、MONOで55分というのがあって、その時はアンケートに「さすがにもう少し長くやってください」と書かれた。最近、だんだんと上演時間が延びてきて、前回のMONO公演、『裸に勾玉』やその前の『ぶた草の庭』などは1時間50分くらいあった。
 
 私は人の言い合いとかが大好きだ。
 別れ話とか、先輩の自慢話をうんざり聞いている後輩の姿などは最も嬉しい。
 だから普段もカフェなどで隣の会話に聞き耳を立てて情報を収集している。
 だいたい、私がコーヒーをトレイに乗せてウロウロしているのは、揉めている人などがいないか探しているからだ。
 そしてイヤホンをして音楽をかけずに聞いている。
 隣の人たちは安心して喋る。
 けれどあまりの話の衝撃に「え!」と声を出して隣を見てしまい、とても気まずい時間を過ごしたこともある。
 
 今回の『夢叶えるとか恥ずかし過ぎる』は売れいないまま20代後半になってしまったアイドル志望の女性たちが、控え室というか、そういう場所で喋っているだけの話だ。
 そこで展開されるのは嫉妬やお互いに対する不満、そして抱える悩みなどについてだ。
 アイドルという設定ながら、それは私はこれまで聞いてきた様々な会話が反映されているし、また、そこに今回の役者たちに実際に聞き取った内容も盛り込んでいる。
 テーマはない。
 描いているのは「他人との関わり方」や「現実と想いのギャップ」などだ。

 生きるというのはとても難しい。
 ましてや、幸せに生きることはさらに難しい。
 一人でいることは無理だけど、他人と関わることも簡単ではない
 そして、他人と共に幸せな状態でいることは……本当に難しいのだ。

 そんな人の有様を描いているのだと思う。
 きっとそうだ。

 いや、ほんと、そうした人の不器用さを覗き見るつもりで観に来てもらえたらと思ってます。
 どこか思い当たったりしてもらえると思うんですけどね。特に女性は。
 女性三人の芝居が中心になり、そこにMONOの尾方くんと私が絡む形で話は進みます。
 
 待っておりますので!

 歪サイト→

 残りの稽古を頑張ろ。

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posted by 土田英生 at 04:33| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月31日

完全に逆転

 またしても昼夜逆転の生活をしている。
 夜は色々と作業をしたり、考えたりしている。

 今は締め切りの書き物はない。
 長らくかかった小説も初稿を脱稿して、校正をしてもらっているので、それが戻ってきてから書き直す。
 けど……原稿が戻ってくるのが怖いね。

 ああ、才能がないのがばれてしまう。

 これまで戯曲と脚本ばかり書いてきたので、台詞は書けるのだが、描写ができないのだ。
 台本なら「もてそうな男性が出てくる」などとト書きを記して、あとは台詞を書くだけでよかった。いや、「もてそうな」などということすら書いたこともないね。「男が出てくる」だけであとは台詞に頼っていた。
 けれど、小説ではどんな人なのか説明しなければいけないのだ。
 これが……もう、書いていて猛烈に恥ずかしかった。
 形容詞などをつけて書いても、簡単な言葉になってしまう。
 で、慌てて凝った表現を考えるのだが、今度は恥ずかしくて書けない。
 すごいね、小説家。

 あとは秋にやるリーディングの台本の構想を立てているのと、来年やる舞台の台本を今年の夏に書かなければいけないので、その準備だ。あ、来年のMONOの新作も構想をまとめなければいけない。
 けど、あんまり進んでないね。
 公演が近いので、その準備に追われている為だ。

 歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」。
 稽古は残り一週間を切った。
 梅ヶ丘BOXは小さい会場なので、あまり大げさな芝居はできない。
 だからこそ細かいところまで気を配らないといけないのだ。
 
 面白くなってきてるんだけどね。
 ただ、日によってできが全然違うので、精度を高めないといけない。
 まあ、繰り返し稽古をするのみだけど。

 三日間だけの公演なのだが、5日、金曜日は前売りがなくなったみたいなので、できれば土曜、日曜にきてください。この2日は昼、夜共にまだ大丈夫です。特に夜の公演は余裕ありますので、ぜひ。
 上演時間も1時間半以内だし、梅ケ丘は小田急線で新宿から15分です。しかも駅から歩いて1分!

 お待ちしていますね。
 歪のサイトからチケットも予約できますので。
 →歪サイト

 創作日誌も書いてますので、こっちも読んでください→創作日誌

 ということで、稽古が昼間なのにこんな時間まで眠れない。
 寝ないとね、なんとかして。
posted by 土田英生 at 05:21| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月26日

全く書いていなかった

 こっちを全く書いていなかった。
 仕事などでバタバタしていた上に、ブログ的なものをココに書いていたのですっかり更新した気になっていた。
 
 これから随分と直すと思うが、書いていた小説の初稿がほぼあがった。
 締め切りを15回以上、遅らせてもらった。
 しかも途中、全く連絡していない期間もあった。

 そもそも話をいただいたのはもう二年以上前になる。
 その時は、半年後に出しますと約束をしながら、そのまま一年以上が過ぎてしまった。一応、3分の1くらいは書いてはいたのだが、なんか気が乗らないまま止まってしまっていた。
 去年、改めて「どうしましょうか」という話になり、そこまで書いたアイデアは全て捨てて新たに書くことになった。それから……約束しては書けずに延ばしてもらい……それを繰り返していたのだ。
 本当ならそれも5月くらいには終わっているはずだったのに。
 
 普段は戯曲や脚本しか書いてないせいで、なかなか馴染めなかった。
 いや、まだ完全には終わってないしね。
 
 歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の改訂は数日前に終わった。
 稽古には毎日行っている。
 おかげで随分と助かっている感じだ。
 芝居は面白い。
 だから皆さん、きてくださいね。
 あ、5日だけ前売りが残りわずかなので、できれば6日、7日だと助かります。
 情報はこちらです!→
 
 前に人生の谷間だと書いた気がする。

 ……実際にその通りだ。現実に様々な問題が私の肩の上に乗っかっている。
 そう書くと「どうしたんですか?」ということになるが、まあ、大したことじゃないね。
 誰でもそれぞれ問題や悩みは抱えているしね。
 いや、そういう気分になってきただけかも。
 状況に慣れてしまって麻痺しているのかもしれない。

 でも、そんな時こそ周りを見ないとね。
 余裕がなくなると、どんどん内側に入っていく。
 そういう性格でもあるし、特に何か書き物をしている時は、余計にそれがひどくなる気がする。
 自分のことばかりになってしまう。

 けど、少しそこから抜けてきた。
 きっかけは二つあった。

 一つは友達とちょっとした言い合いになり、その時は自分の言いたいことがうまく伝わらないもどかしさでいっぱいだったのに、次の日になると自分に対する反省が押し寄せてきた。
 で、冷静になった。
 そうだな。
 俺、ダメだな、これでは。……そんな気になった。
 
 もう一つは一週間前くらいだ。

 稽古にいく前に歪のメンバーからLINEがあった。
 スマホを稽古場に忘れたという。
 その稽古場は下北沢にあり、その日の稽古は阿佐ヶ谷だった。
 だから私が代わりに取ってきてあげようと思った。

 その稽古場に連絡を取ると、12時半以降なら大丈夫だということだった。
 しかし、稽古は阿佐ヶ谷で13時から。
 12時半に受け取って、そこから急いだとして少し遅刻してしまう。

 12時15分くらいにそこまで行って待機していた。
 すると20分にはスマホを受け取ることができた。
 電車を調べる。
 井の頭線で吉祥寺、そこから総武線で阿佐ヶ谷。
 乗り換え時間は4分。
 それなら間に合うということがわかった。

 私は急いだ。
 予定通りの電車に乗れた。
 これで間に合う。
 
 目の前には小さな女の子がいて、横にはおばあさんが立っていた。
 と、おばあさんが私に声をかけてきた。

「これ、吉祥寺まで行きますか?」

 私は行きますよと答えて、目が合った女の子にも微笑みかけた。
 女の子は照れてうつむいた。
 列車は順調に走る。
 彼女はドアの前に立ち、手すりに手を突っ込んで遊んでいた。
 電車がすれ違ったりすると「うわ、電車」などとおばあちゃんに言ったりする。
 微笑ましい。

 と……

「痛い……抜けない」

 と、女の子が慌てだした。
 見ると、手すりの間に腕が入ってしまい、抜こうと思っても抜けなくなってしまっていることがわかった。
 おばあちゃんは女の子の腕を掴んで引き抜こうをするが、「痛いよ」と女の子は叫んで泣き出してしまった。
 と、おばあちゃんは私を見た。

「ああ、どうしましょう、どうしましょう」

 自分でも驚いたのだが、明らかに自分の頭の中で「カチ」っという音がした。
 気がつくと、私は女の子の横にしゃがみ、頭を撫でながら大きな声で喋っていた。

「大丈夫だからね。お兄ちゃんが……いや、おじさんだね……ついてるからね。力を抜いて。だって、入ったんだから絶対に抜けるよ。大丈夫だからねえええ」

 私の口からあんなに高い声が、しかもちょっとしたオモシロトーンで出るとは驚きだ。
 女の子は頷く。
 ……しかし、汗をかいているためか、手すりに引っかかってしまい、どうやっても女の子の腕は抜けなかった。
 女の子はさらに泣く。
 横に立っていた大学生くらいの男子もとても優しく女の子を慰め始めた。
 おばあちゃんはオロオロしてパニック状態になっているだけだ。
 
 おかしな光景だった。
 私とその大学生が二人で女の子を励まし、そしてなんとか腕を抜こうと奮闘していた。
 後ろではおばあちゃんが「ああ、どうしましょう」と騒いでいる。

 どうやっても抜けない。
 
 電車が永福町に到着した。
 私は叫んだ。

「駅員さん呼んでください!」

 しかし、駅員さんは見当たらない。
 おばあちゃんはノックしたらいいですかね、と、まだパニック状態が続いている。
 私は電車を降りて、運転席まで行った。
 窓を叩き、「女の子の腕が手すりに挟まってるんです!」と伝えた。

 アナウンスが流れ、列車は停車したままになった。
 運転手、そして駅員さんが二人やってきた。
 私と大学生を加えた、五人が女の子を取り囲む。
 女の子がふとした拍子に腕の角度を変えた。
 今まではそうしようとすると「痛い」と泣いていたのだが、たくさんの人集まってきてびっくりしたせいか、腕を動かしたのだ。

 と、するりと腕は抜けた。
 歓声があがる。
 おばあちゃんも喜んでいる。隣に座っていた女性も「ああ、よかったねえ」と女の子に言った。

 そして運転手さんは戻り、列車は走り出した。

 すると、永福町から乗ってきた子ずれの母親が私に言った。

「いやあ、うちの子も、そこに手をすぐに入れるんですよ」

 ……父親だと思われたようだ。

 説明するのも面倒なので「この子も懲りたでしょう、はははは」と話を合わせた。

 「お客様対応により、遅れて運行しております」というアナウンスがなんども流れる。
 
 おばあちゃんはその度に「すみません」と謝っていた。

 で、吉祥寺に着いたのだが……乗り換えには間に合わずに遅刻してしまった。

 けれど、あの「カチ」っというスイッチのせいで私はなんだか元気になった。
 
きっと、自分のことばかりになっていたのに、スマホを取りに行き、女の子と関わったせいで、他人に目が向いたんだと思う。

 あれから随分と踏ん張りがきいている気がする。
 
 どこまで持つかわからないけど、このまま乗り切ろう。
posted by 土田英生 at 05:34| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月15日

開く!

基本的に毎日「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の稽古をして、他の時間は書き物をするという毎日だ。
稽古はとても地味にやっている。
その辺りの過程はこっちに書くことにした。まあ、公演が終わるまでの期間限定だけど。→「土田英生の創作日誌」

稽古していて、役者をどう開いてもらうかで悩んでいる。

役者は自分の経験や感覚に置き換えて理解して演技をしようとするが、知識や想像力がないと小さな理解しかできない。自分が見て信じている世界が全てではないのだ。
だから、役者自身にも開いてもらわないといけない。
自分の思い込みを自覚し、その自分を編み変えてもらうことも必要になる。
けれど、役者は無意識に抵抗してしまう。
まあ怖いしね。

その恐怖を押しのけ、未知の自分に出会っていける人は、どんどん伸びていく。
今の自分にしがみつく人は変化していけないし、何も発見しない。

社会もそうだなと思う。
開く動きがあれば、必ずそれに抵抗して閉じようする動きが出てくる。

明らかに今はそうした力が働いている。
なんで、こんなに日本、日本とうるさいんだろ?
確かにここは日本と呼ばれる国で、そこに問題があればよりよくしていけばいい。
問題を具体的に考えるのはいい。
というより、考えなければいけない。
だけど、そこを飛び越し、いきなり「日本人の精神性」だとか、そういうところに考えが行ってしまうのは違うと思う。
それは明らかに自分を守るだけの……つまり閉じる動きだ。

テレビを見ていても、やたら日本人をフィーチャーした番組が多い。
世界に行って日本人に会ったり、逆に外国から来た人たちに日本の魅力や独自性を語らせたりする。
日本であるとか、日本人であるとかいう事実に極端にこだわるのは閉じようとする力だ。

私だって日本で生まれて育った。愛知県だったので、何にでも味噌をつけて食べ、パンにはアンコを塗って食べていた。そしてそれは今でも好きだ。食べると「ああ美味しい」と思う。
けどね、それは慣れ親しんだものだからであって、その食文化が特に優れているわけでもない。

私は10年前にイギリスに留学していた。
皆は「イギリスって食べ物まずいんでしょ」と言う。
今はそんなことはない。けど、問題はそこではない。

私は今でも時々無性にイギリスのソーセージが食べたくなることがある。パン粉とひき肉、それにハーブなどが入っている太いソーセージ。なかなか日本では売ってない。あれは特別美味しいものなんだろうか?
私は大好きなのだが、食べ物として優れているのかどうかは分からない。

留学していた時、よくソーセージ&マッシュを食べた。大量のマッシュポテトに大きなソーセージが二本どんと乗っていたりするだけのものだ。けど、一年留学しただけの私でもあの味を懐かしく思い出したりする。食べたい食べたい。
わたしにとってはあんトースト並みに好きなものだ。

話がそれた。

外国のこういうところが素晴らしいと話すと、途端に不機嫌になる人がいる。そして反論のように「でも、日本だってこうですよ」的なことをアピールしてきたりする。いや、分かってるって。私だってここで生まれ育ったんだから。
けど、どこの国にもいいところがあり、悪いところがあるだけの話だ。
さらにいえば、日本人はどう、イギリス人はどう、韓国人はどう、中国人はどう……そんなことどうでもいいよという気分だ。

私は日本人で嫌いな人たちもたくさんいる。
それより好きな人たちはたくさんいる。
そして……それはどこの国に行っても感じることだ。留学中だって嫌いなイギリス人もいた。けれど大好きなイギリス人はたくさんいた。
最近、韓国にいく機会も結構ある。
ソウルで何度も作品を上演してもらっているからだ。で、韓国にはとても仲のいい、信用できる演出家や役者が何人もいる。しかし仕事を一緒にしても仲良くならない人だってもちろんいる。それは日本で仕事をしている時と全く同じ比率だ。

〇〇人だからどうだということは全くない。

とにかく、大事なのは個人を鍛えることだ。
日本人であるとか、愛知県出身だとか、そうした外側で自分のアイディンティティを保つのではなく、自分自身の考え方であるとか、知識であるとか、恥ずかしい言い方になるけど生き方であるとか……そうした部分を鍛えて行けば、存在が不安になることはない。

私は最終的に開く動きが勝っていくのではないかと考え、そこに光を見出す。

時々、私はロンドンでとても仲のよかったサリーという女性のことを思い出す。
彼女はマンチェスター出身で、小学校の時はクラスはほとんど白人だったそうだ。
ある時、パブのテラスで私とサリーは一緒にランチをしていた。多分、私はビールを片手にソーセージ&マッシュを食べていただろう。
と、前の道を黒人と白人のカップルが通り過ぎた。
アジア人と白人の混じったグループが談笑していた。
サリーはポツリと私に言った。

「美しいね」

……確かに開くことは怖い。
しかし、開きたい。
もちろん全部開き切ってしまったら、真っ白な世界に漂うだけになってしまうけど、限界まで開き、いろいろな考えを受け入れたい。
きっと、そこには美しいものがあるはずだし。

社会も役者も……開かないとね。

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全然関係ない写真になってしまった。

稽古場は事務所から歩いていける場所にある。
毎日、途中のローソンで買い物をする。
今日は唐揚げの梅しそ味とアイスカフェオレを買った。
そして稽古場に着いて、とりあえず荷物を置いた。

私はリトルシガーと呼ばれる、タバコ型の葉巻を吸っている。
カフェオレとリトルシガーは合うのだ。

私は外の喫煙スペースでカフェオレを飲みながらゆっくりしようと思った。

……で、外に出て気がついた。
私が手に持っていたのは唐揚げだった。
どっちもプラスチックカップだったので間違えたようだ。

残念ながらリトルシガーと唐揚げの梅しそ味は合わない。

……いくら開いて自分を変えようが……どうもそれは無理だね。
posted by 土田英生 at 04:46| 東京 🌁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月05日

きれいごとを言わせてもらうけど

 今は歪[いびつ]公演「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の稽古中。
 別の仕事もあったり、様々な問題もあったりするので、それらと並行しながらやっている。

 昨年、カフェで公演した「ソラミミホンネレソラシド」をベースにしつつ、そこに別の角度からの光を入れて新たしい作品にしようと試みている。
 20代の女性三人が会話するだけの舞台だった前作は、もともとは出演者たちにインタビューして彼女たちの本音を滑り込ませてそれをフィクションにした。今回は登場人物を二人増やすことで、別の構造を創っている。少しだけ枠組みをずらしたりすることで、より大きなことが描けたりする……はずだ……と、私は睨んでいるのだが、どうなるのか。ま、面白いものになるんだけどね。

 で……ここからは愚痴だ。

「土田さんの作品で次に観られるのはなんですか?」 

 と、ある人から聞かれたので私は歪の話をした。
 すると……。

「いや、本格的なやつはいつあるんですか?」とその人は聞いてきた。

 私は感情が表に出るのを抑えて「どういう意味ですか?」と聞き返してみた。
 しかし、相手も私がムッとしたのを察したのだろう。
 慌てて「いや、MONOがいつなのか知りたくて」と質問を変えた。 

 ある後輩の劇作家からも似たようなことを言われた。
「なんか若い子たちとやってるんですよね?」
 ああ……。
 これは文章だと伝わらないけど、その人の言葉のトーンにはどこか軽いものが含まれていた。
 なんといったらいいのか、ちょっと見下した感じというのか。

 内容は間違いではない。
 《若い子たち》と《なんか》はやっている。
 正確に言えば、《二十代の女優たち》と《「夢叶えるのは恥ずかし過ぎる」という舞台》をやっている。
  
 なんだろ?
 少しムカつくんだよね、はっきり言って。

 いや、その人たちのいっていることは分かる。
 MONOだって小さな劇団だが、セットなどにもそれなりのお金をかけて製作している。そして東京や大阪、名古屋などでツアーをする。スタッフだってたくさんいるし、予算もかかっている。動員だってそれほど多くもないが、それでも一定のお客さんが観に来てくれる。
 MONOはずっと続けている劇団だし、そりゃ観に来て欲しいと思う。

 それに比べて……。
 歪というユニットは女優が三人で立ち上げたものなので、はっきりいって予算はないに等しい。
 セットにかけるお金もないし、ツアーもない。
 
 だけどね、私はいい加減にやっているわけではない。
 同じように力を入れ、同じように悩み、色々と頭を使い、面白い舞台を創ろうとしている。この舞台を誰に見られても恥ずかしくないし、どんな人にも観に来てもらいたいと思っている。
 もし、私の作る作品を好きだと思ってくれるのならなおさらだ。
 同じように観に来て欲しいと願っている。

 きれいごとを言わせてもらうけど、作品を創るのに、大きいも小さいもないのだ。

 ……ま、いいんだけどね。そういうことを人から言われると、「絶対に面白いものにしてやるからな。見てろよ、ちくしょう」という気持ちが増すだけなので。
 
 さて、愚痴はやめよう。
 
 みなさん、そんなこんなで、面白い作品なので……。
 ぜひ、来てください。日時指定の自由席です。毎回、50人くらいしか入れないので予約はお早めにお願いします。

 歪[ibitsu]公演
「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」
 8月5日《金》ー7日《日》
 梅ヶ丘BOX
 作・演出 土田英生
 出演 阿久澤菜々 高橋明日香 石丸奈菜美/尾方宣久《MONO》 土田英生

 チケットの予約はコチラからどうぞ。→
 
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posted by 土田英生 at 02:54| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月01日

人生の谷間で稽古開始

 誰にでも様々な場面で壁にぶつかる時期というのはあって、まさしく私は今そうかもなと思ってる。
 劇団のこと、自分が取締役を務める会社のこと、ここに書けない個人的なこと、各方面の問題が一気に重なってやってきてしまった。

 まあ、状況としては完全に人生の谷間だね。
 その谷間から空を見上げる。
 空も曇っている。
 社会の行き先を案じると、暗澹たる気分になる。
 
 私は普段、ほとんど政治のことなどもここに書かない。
 あまり熱心でもないしね。
 けど、さすがに怖いんだよね、今。

 みんなに余裕があれば、政治的なスタンスの差など問題ではない。
 大多数の人たちが、目先の個人的な幸せを求めている時は、あまり他のことは気にならないしね。
 ただ、現在は余裕がない。
 経済的にダメになってくると、人は他にすがるものが欲しくなる。
 これが自分だと言えるものが欲しくなる。
 まあ、それで……求める対象が『国』とかそういうことになっちゃうんだろうね。
 アイデンティティ探しをしちゃうんだよね。

 最も不安に思っているのは、急激に社会が閉じる方向に動いていることだ。

 とにかく基本的人権を制限するという方向にだけは行って欲しくない。
 すぐに演劇などの表現活動だって規制されてしまう。
 国にアイデンティティを求める人たちは、国のためには仕方ない、というけど……だってさ、国民主権だよ。国って私たち全員のことなんだよね。
 だったらなんのためにって話だよ。
 自分たちの首をしめてどうするんだろ。

 犯罪には手を染めないよう、みんなで決めたルールは守りながら、けれど誰もが好きなことをやって暮らす。もう、それだけですわ、私が願うのは。

 なんだか死ぬ間際の老人のつぶやきになってしまったけど、頼むよ。

 ……ま、そんな閉じた社会の中、谷間に落ち込んだ私はそれでも色々と自分のことも考える。
 このまま自分のいいように生きていきたい。
 けれど、現実はなかなか許してくれない。
 何かを捨てなければ、欲しいものなど手に入らないのだ。
 
 だから自分が何を望んでいるのかだけを考えてみる。

 人は自分を変えようとして、色々と考えてみるけれど、だいたいは変わらない。
 ああするのは◯◯という理由で無理、こうするのは××だから無理。
 すると結果、今と同じになってしまう。
 これまでだって自分なりのルールがあり、その範囲で生きている結果が今なのだ。
 だからそれを変えようとしたら、◯◯だから無理だと思っている、そのことを疑ってみることが必要なのだ。
 これまでだって、そうして私は様々な壁を乗り越えてきた。
 ……なんだか、妙に気取った言い方になってしまった。
 乗り越えてきた、だなんて。
 そんなに冒険家でもないくせに。

 けど、まあ、今回も乗り越えるんだけどね。

 まあ、こうして書いていると暗いことばかりのようだが、それでも創作意欲満々なのだ。
 遅れに遅れている原稿も次の締め切りまでには完成させる。

 さらにはちゃんと風呂上がりに意味なく踊るくらいは元気だ。
 目的のない腕立て伏せだってするし、口の中で舌をぐるぐる回して法令線解消だってしている。
 昨日は逆立ちをしてみたりしたし、夜中にダッシュもした。
 
 そして今日からは歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の本格的な稽古が始まる。

 どんな状況にいたって、どんな規模だって、芝居を創るのは楽しい。
 自分の感覚を信じて、方法を考えて、ああだこうだと試してみる。
 と、愉快なものが出来上がるのだ。
 本当、不思議だ。
 ちゃんとやれば、絶対に面白くなるしね。
 
 谷間に気持ちのいい日が差してくれることを願う。
 さ、稽古に行ってこよ。

 あ、毎回客席が少ないので、ご予約はお早めに。
 人生を明るくする舞台にいたしますので。→公演情報

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 写真は松江で訪れた興雲閣。
 私の大好きな擬洋風建築だった。

 正面から入って二階の踊り場を見上げる。
 光が差していることに希望を持ちたい。
posted by 土田英生 at 11:22| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月25日

猛然と書くはずだった

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 松江にいる。
 ホテルの窓から宍道湖が見渡せる。
 
 これまで何度も延ばしてもらってきた原稿がまだまだ終わらない。
 一昨日、書きかけの状態で打合せをさせてもらったのだが、アドバイスもらったことですっきりした。
 もう、行ける。

「次の締め切りには出します! もう今から猛然と書きます」

 と、宣言をして編集者の人と別れ、さらに自分に勢いをつけようとお寿司を食べて事務所に戻った。
 私はやる時にはやるのだ。
 食べ過ぎたのか眠気に襲われ……気がついたら眠ってしまっていた。
 
 起きてシャワーを浴びたが、ちょっとむしゃくしゃすることもあって落ち着かない。
 まずは横山拓也くん、「よっこん」に電話をした。
 よっこんと話す時の私は結構な毒舌だ。
 彼は黙って聞いてくれる。
 すっきりしたところでパソコンに向かったら、久しぶりの女友達から下北沢にいると連絡をもらった。
「暇ですか」と尋ねている。

 いや、無理だ。
 無理なんです。
 私は仕事をするんです。猛然と書くんです。

 ……一杯だけビールを飲もうという話になった。
 よく行く店にした。
 と、ヨーロッパ企画の上田君や本多君が、隣のテーブルで話していた。
 
 気がついた時には一緒になって喋っていた。
 上田君とすっかり話込んでしまった。
 店も閉店時間になっている。
 一杯だけだったはずのビールは5杯以上になり、ウイスキーに変わっていた。

 皆とさよならをした。
 女友達は下北沢の街に消えて行った。

 よし、今から猛然と書こう。
 と思ったのに……事務所で上田君と二人で話し込んでしまった。

 ヨーロッパ企画はとても人気のある劇団だ。
 そしてMONOと同じく京都を拠点にしている。
 
 いやあ、楽しかった。
 そして窓の外は明るくなっていた。
 5時過ぎている。
 さすがにお開きにした。

 それから一応、そっとパソコンを開いてみたが……無理だった。

  少しだけ眠った。

 朝、9時から知り合いの映画監督と会った。
 実現するかどうかわからないが、一緒にやろうと話しているので、あれこれ好き勝手なアイデアを話した。彼女と別れ品川でマネージャーと打ち合わせをして、そのまま羽田から松江に移動。
 
 松江では戯曲の書き方講座をするのだ。
 ただ、昨日は打ち合わせだけだったので、そのままホテルにチェックインした。
 さてと、今度こそ、猛然と原稿の続きを書こう。

 ホテルには温泉がある。
 まずはリフレッシュだ。
 宍道湖が見える大浴場は気持ち良かった。
 身体がふやけた。 
 部屋に戻って……戻って……気持ちよく眠った。
 さすがに寝不足だったのだ。

 起きた時、電話があった。
 今からちょっとお店に行くんですけど、土田さんはどうしますか。
 猛然と書くつもりだったのに、猛然とお店に行ってしまった。
 何を飲みますかと聞かれたので、いや、今日は……。
 日本酒をいただいた。

 けれど。
 部屋に戻ってからベッドの上で腹筋したり、シャワーを浴びたりして酔いをさまし、それから3時間ほど書いた。あまり……進まなかったけど……まあ、でも、やらないよりは……ねえ。

 今日は今から夕方まで、1日かけて戯曲講座をする。
 自分も書けてないくせに、と少し後ろめたく思うが、それとこれは別だしね。
posted by 土田英生 at 08:40| 島根 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月22日

吐き出す

 締切りも遅れている中、こんなことを書いている場合ではないんだけど……仮眠を取ろうとベッドに入ってもやるせなさがぐるぐる駆け巡って落ち着かない。

 こんな気持ちでは仕事もできないので吐き出そうと思った。
 まだ自分が何を書きたいのかも分かってないけど。

 情報を知るのが嫌になる。
 ニュースはもちろん、SNSなどの情報だってメールすらそうだ。
 とんでもないことが起き、知り合いがどんどん亡くなって行き、お世話になった人が入院し、友達が自らの陣地を守り合おうと張り合って喧嘩している。
 
 平和主義、国民主権、基本的人権をなくさないと自主憲法にはならないと発言している動画を見てしまった。
 さらにそこに入っている拍手を見て、もう終わりだと思った。
 これ、政治がどうこういう以前の問題だしね。
 不条理コントのセリフだし。
 
 いや、ここで少し耐えて、踏ん張って別の角度からの言葉を探そう。

 私たちが今必要としているのは、人をつなぐ言葉なのだ。
 「つなぐ」というのは「絆」と呼ばれるようなものではない。自分と違う考えの人と、自分とをつなぐための言葉だ。

 今の社会の不寛容さが私は本当に怖い。
 それぞれが自分の立ち位置に固執し、相手を攻撃することだけに躍起になる。
 そこには柔軟な理解や、議論などはない。
 「まあ、お前の言ってることもわかるけどねえ。でもさあ……」と話していればいいものを、ありとあらゆる材料を動員して相手をやり込めようとする。
 そんなことしてて、相手の気持ちが動くはずない。
 
 人の考えというのは100パーセントということはあまりない。
 今、ここにあることが議論になっているとする。
 そして、Aは「やるべきだ」と思い、Bは「思いとどまるべきだ」と思っているとしよう。
 そして二人が話し合っている。

 こういう時、極端にいえば、Aの中では「やるべきだ」という思いが51パーセントで、「とどまるべきだ」という考えが49パーセントだったりする。そして結果的には「やるべきだ」という立場に立っている。
 もし、Bが逆に51パーセント「とどまるべき」だと思い、49パーセント「やるべきだ」と思っているとすれば、この二人はほぼ同じようなことを考えているはずだ。
 これ、冷静に、楽しく喋っていたら「どっちがいいのかねえ」と2人で笑い合っててもおかしくない。

 けれど、結果的に立場は逆の2人は話し出すとどんどん敵対して行く。
 これが人間の悲しいところだ。
 人は常に他者より優位に立ちたいと思ってしまう。
 自分を否定されることは、存在を脅かされることなのだだと反射的に感じてしまう。

 Aが「◯◯だからやるべきだと思うんだよ」というと、Bは反射的に「でもさ……」と言葉を発する。
 この時からすでにAの理由を覆す根拠を探し出す。
 それはAも同じで、Bに反論されれば、すぐに自分の中で有利な根拠を探し出す。
 そして……最終的に決裂していく。
 お互いの中にあった51対49は崩れ、もう本当の考えなどどうでもいい。
 
 さらに怖いのはこれがグループ同士になるとどんどん対立は激化する。
 それぞれの個人的なコンプレックスを吸い上げ、集団は勝手に興奮していく。

 こうここには議論はない。
 存在するのは敵か味方かの二択だ。
 
 どっちが正しいのか決めかねて静観していた人たちは、ギスギスとした空気がいやで「自分は知ったことでないよ」と背を向ける。この人たちの割合が多いんだよね。
 
 大げさにいえば今の社会はこうしたことが各所で起こっているのだと思う。

 MONOで上演した舞台に「少しはみ出て殴られた」という作品がある。
 ある日、刑務所の中に国境線が引かれる。すると、途端に敵と味方に分かれ、それまでワイワイやっていた犯罪者たちが少しずつ対立を始め、抗争になっていくという話だった。

 ま、そういうことだ。
 人はチームに分かれた途端、相手チームより勝とうとする。
 辛い辛い辛い。
 だけど、投げ出したら終わりだしね。
 
 人をつなぐ言葉を探さないと。

 ま、こういうことばかり言ってるからAからもBからも攻撃されたりするんだけどね。
 
 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 昨日、歪(いびつ)の稽古があった。
 「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」という作品。
 売れないアイドルの三人が揉めるだけの話だ。
 
 もともとは三人のメンバーに個別に取材して書いた「ソラミミホンネレソラシド」という作品がベースになっている。
 高橋明日香、阿久澤菜々、石丸奈菜美という同世代の3人の女優。
 彼女たちは多分、一般的にいって仲がいい。
 けれど当然のように考えも違うし、お互いに対してそれなりに思うところはあるはずだ。
 3人いればそれは小さな社会だ。

 去年よりも色々と意見の違いを言い合うようになっている。
 そして妥協点を見つけることも上手になってきた。
 稽古の合間、3人で喋っているのを私はぼんやり聞いていた。
 意見の違いがあった後、コーヒーをこぼして笑い声が起きる。

 ……いいことだ。

 人が相手を攻撃するのは、自分への自信のなさが原因だったりする。
 まずは自分のコンプレックスを引き受け、それでも大丈夫なんだと覚悟を決めることが大事だ。
 
 「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」は、そんな作品だ。
 
 最後は公演の宣伝になっている。

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 吐き出そうと何も考えずに書き出したので、当然のように結論はない。
 しかも……仕事する時間がなくなってきた。
 
posted by 土田英生 at 13:06| 東京 🌁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月15日

大分県とか爽やかな女性とか。

 頭を使うことが多くて苦しい。
 そんな中、大分へ行ってきた。
 演劇大学というイベントで、創作ワークショップなどをする為だ。
 
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 もちろん大分ではそれに集中はするつもりだったけど、少しくらいは暇な時間があるのではと考え、書けていなかったいくつかの原稿を「大分に滞在している済ませます」と、伝えて出かけた。
 
 ……結果から言えばまったく他の仕事などはする時間がなかった。
 ワークショップをしたり、創作をしたり、トークをしたり、同じく参加していたアヤマドリの広田淳一君やA級Missinglinkの土橋君のワークショップを見学したり。
 
 私が創作を担当したチームの参加者は多種多様な人たちだったが、稽古で変化していく様がとても印象深く、このことは細かく書きたいくらいだが、今は時間がないしね。
 出会いもたくさんあって楽しかったのだが、問題は他の仕事がすっかり残ってしまっていることだった。

 最終日。
 打ち上げを途中で抜けて、ホテルに戻って朝まで書いた。
 翌日の午後、羽田についた時には疲れすぎて気分も沈んでしまった。
 夕方からはリーディングの稽古があるのだ。
 こんな状態でできるのか心配になった。

 羽田から品川を経由して渋谷についた。
 荷物を置きに下北沢の事務所に戻ろうと思ったからだ。
 井の頭線のホームを先頭車両に向かって歩いていた。

 と、後ろから走る足音が聞こえてきた。

「すいません、すいません!」

 振り返ると若い女性が走ってくる。
 私めがけてまっすぐ走ってくるのだ。
 私は立ち止まって待った。

 と、私の前で止まった彼女は息を切らせてすぐに喋れない状態だった。

「え? 私ですか?」

 と、聞くと声を出さずに何度も頷く。
 そして手に持っている空箱のような物を差し出して、

「これ、落としましたよね?」と聞いてきた。

 ……それは見覚えのないものだった。
 どうやら充電器が入っていたような透明な箱で、中には変換プラグが一つだけ入っていた。
 多分、誰かが買って必要な物を取り出し、いらない変換プラグだけを箱の中に入れていたのだろう。捨てるつもりだったのかも知れない。
 
「あ、いや……僕のじゃないと思うんですけど」

 そういうと彼女は悔しそうな表情をして、

「そうなんですか……いや、落とした瞬間は見てなくて、あれ、と思って拾ってキョロキョロしたんですけど……そしたらホームをスタスタと歩いている人が見えたんで、てっきり……」

 どう表現したらいいのか分からないが、とにかくそれは爽やかだった。
 走ったせいで額には汗をかいている。そして押し付けがましさを微塵も感じさせない親切心が滲み出ていた。

「なんか、申し訳ないですね。でも、ありがとうございます」

 私がそういうと、

「いや、勘違いしちゃっただけなんで。お礼を言ってもらうのおかしくないですか?」
 
 と、彼女は笑った。そして、

「でも、これ、どうしよう?」

 私は自然に「駅員さんに渡しましょうよ」と、言って歩き出した。
 彼女も一緒に歩き出す。
 そして二人で駅員さんにそれを渡した時、不思議そうに私たちを見ていた。
 こんなゴミのようなものを、なんで二人で渡しに来たのだろうという疑問がはっきりと顔に出ていた。
 
「付き合ってくれてありがとうございました」
「いや、こっちこそ」

 と、なんだかおかしな会話をして私たちは別々の車両に乗った。
 私の疲れは消えていた。
 あまりの彼女の爽やかさに感動すら覚えた。

 そしてリーディングの稽古に参加した。
 下北沢に戻って来た時、親しい制作者であるMさんにばったり会った。
 横には知らない女性が一緒にいたので私は挨拶をした。
 Mさんが「劇作家の土田さんです」と、紹介してくれた。
 すると……

「あ、はいはい。私、ブログ読んでます。ほら、革の……ねえ?」

 私がレザークラフトにハマっていることを書いたのを読んでくれていたのだろう。
 事務所に戻ってまた仕事。
 ただ、さすがに……知らない間にイスに座ったまま眠ってしまっていた。

 そして朝、イスの足にしがみつき、カーペットで眠っている自分に気がついた。
 
 今日は眠ろう。
 本当は気分を切り替える為にこれを書いていたのだが、もう今日はこのまま書いてもきっと無駄だ。
 また、イスにしがみつくことになるだけだ。
posted by 土田英生 at 01:51| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月09日

ガンガンイヤー+歪[ibitsu]

 わりと……忙しい。
 いや、かなり忙しい。
 しかしこれまでとは違うのだ。
 勝手に忙しいのだ。

 これまで、忙しい時というのは依頼してもらった仕事の締切りに追われている状態だった。
 例えば連ドラの脚本を書きながら舞台をやる。こういう時は確かに時間がなくて苦しい。何度も泣いた記憶がある。しかし、これははっきりいって私の経済活動としても重要だ。完全に約束した仕事だからだ。

 で、今の忙しさはどこが違うのかというと、直接は経済につながっていない。
 将来的に花が開くこともあるかも知れないが、ただ土を耕している感じなのだ。
 だから……現在の私はまさに貧乏暇なしだ。

 とにかく5月から6月の前半にかけてがパニックだった。
 テレビドラマの企画が2本。
 どちらも着地するかどうか分からないが、先方とやり取りしながらプロットをつくった。
 そのうちの一つは随分と前から進めているものなので、そろそろ決まって欲しい。
 かなりプロットや構想もできているしね。面白いドラマになると思うんだけどなあ。

 そして……遅れに遅れている小説の原稿。
 これは3分の2くらいはできている。
 だから10日間欲しい。それだけに集中して書く時間が10日間あれば絶対に完成させられる。

 なのに色々なことに忙殺されていて、それで段々とズレてきてしまっているのだ……。

 編集の人にも迷惑をかけ、申し訳ないことにこれまでに7回くらい締切りをずらしてもらっている。なんだ、7回って。
 ……実はその締切りが……昨日だった。
 けれど他のものを書いていた。
 なので……なので。
 ああ、メールをして謝らないといけない。
 とうとう8回目のお願いをしなければいけないのだ。

 気が重い。

 着物姿で腕組みした人に向かって「娘さんを私に下さい」と言う前のような、そんな大時代的なハードルの高さだ。

 実際、編集の方はとても温和で素敵な人だが、いきなり怒り出すんじゃないだろうかと心配になる。
「もうお前になど、娘はやらん!」とちゃぶ台をひっくり返されるかもしれない。
 どうしよう。
「待って下さい、お父さん!」
 そう言って、すがりつけばいいのか?
「お前にお父さんなどと呼ばれる筋合いはない!」
 まあ、それはそうだ。
 編集者は女性だし、お父さんではないしね。
  
 ああ、本来ならメールをしてからここを更新すべきだった。
 このブログを先に読んでしまったらどうしよう?
 こんなことを書いている場合ではなかった。
 今からすぐにメールしてみよう。

 そんな状態なのに……。

 今年は自分でやりたいことをガンガン企画するイヤーなので、実は別のドラマのプロットも書きかけている。
 やめとけよと思うけど、もう既にペラで三枚くらいは書いてしまった。
 前に、とあるプロデューサーと飲んだとき、こんなことがやりたいと話しているのを聞いて、だったらこうすればと勝手にやる気になって書きかけたものだ。とても気の合う人で、彼とはまた仕事をしたいので、早々に書いて渡そうと思っている。

 さらに……途中で止まっている映画の話。
 これもいつ動き出すか分からない。
 なのに、ある人と組んで別の映画もやろうと相談している。
 これはちょっと前からやってみたかった形なのだ。
 普段ならやらなかったことなのだが、「ガンガンイヤー」である今年はなんでもやるのだ。
 
 こんなにやっているのに、どれもすぐに実を結ぶものではない。
 けど、大事なことだしね。
 確実に決まっていることを進めることももちろん大切だ。
 来年の舞台のキャスティングとか……。
 MONOもそうだが、プロデュース公演もあるし。これも早く決めないといけない。

 いつ考えるんだろ?
 催促のメールはいただいているから、すぐだよね、すぐ。
 
 さらには来週はリーディングドラマの演出をするのだが、それも脚本を書くことにしてしまった。
 打合せの時……思わず「書きますよ」と口走ってしまったのだ。今日、必死でそれを書いた。全部は終わってないが、展開は見えた。

 私は今いくつくらい何をやろうとしてるんだろ?
 その内、自分が誰か分からなくなりそうな気もする。

 こんな状況の中。
 4月のことだったと思う。
 仲のいい若い女優さん3人が揃って事務所に訪ねて来た。
 この3人は「土田英生俳優育成講座」に参加していて、去年、舞台を創っている。
 歪というユニット名で「ソラミミホンネレソラシド」という芝居を私が書いて演出した。

 メンバーの1人は高橋明日香で、2011年のMONO特別企画に出てもらってから、なにかと一緒に活動をしている、私にとっては目に入れても痛くない存在だ……いやいや、この表現考えた人ってなんだろ? 言うに事欠いて目に入れなくなっていいのにねえ。それは私はイヤだ。目には入れないけど、まあ、近しい女優さんだ。
 とにかく、その高橋明日香が阿久澤菜々、石丸奈菜美に声をかけてつくったのが「歪」というユニットなのだ。そういう縁があったので、去年、彼女たちにインタビューをしてそれを元に書き下ろし、演出をした。
 私にとっては初めての劇場以外での公演だった。

 その彼女たちが話し合い、あの作品をもう一度やりたいと言って来た。
 同じ作品をやるのは、役者として成長したいからで、さらには劇場で公演をするという。
  
 うん、まあねえ。
 それはさすがにねえ。
 わりと忙しいんだよね、私も。

 ……やることになった。

 全く同じものはやりたくないので、改訂することにした。それは私が言い出したことだ。
 どうせやるなら、あれをこうして、ここをああしたいんだよ、などと話していたら……何だか新作っぽくなって来た。大体、設定自体を変えてしまったしね。売れないアイドル達の生々しい話にしようと思った。もちろん3人がメインだが、登場人物を増やしたくなった。どんどんと構想が膨らんだ。なんかね、これ、面白い作品になると思っちゃったんだよねえ。
 
 こうなったら、すごいものを創ってやろう。
 出演者は……あと2人必要だ。
 ハイになった私は自分で出ることにした。
 けれど、もう一人いるんだよ。
 今から探して、しかも信用のできる役者なんて……。
 MONOの尾方君にLINEをした。
 「出て」「うん」
 ヤツは本当にナイスガイだ。
 
 ということで、ガンガンイヤーな私は色々な企画を進行させつつ、夏に芝居を創ることにした。

 もう情報公開されてるね。
 これ、普遍的な作品になると思うので、皆さん、ぜひ、来て下さい。

歪[ibitsu]vol.2
「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」
作・演出 土田英生
出演 阿久澤菜々 高橋明日香 石丸奈菜美 / 尾方宣久(MONO) 土田英生
8月5日〜7日
梅ヶ丘BOX

 
 歪サイト公演情報→
 
 ……明日から大分に行くんだった。
 ちょっと眠らなきゃ。
 
 
 
 
 
posted by 土田英生 at 01:41| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月07日

リアルな夢

 ここにも何度か書いているが、私は眠っている時、寝ぼけて行動する癖が残っている。
 微かには覚えているのだが、知らない間に大胆な行動に出たりする。
 朝起きた時、あんトーストを食べた痕跡あったりするのはしばしばだ。
 あれは夢だったのかなと思うと実際に食べていたり、また食べてしまったと思うと夢だったりする。

 いきなり起きて「はーい」と返事をしてドアを開けたりもする。
 誰かがブザーを鳴らしたと確信して飛び起きる。
 しかも前々から起きていた風を装って、わりと元気にドアを開ける事が多い。
 ほとんどの場合、誰もいない。

 小さい頃、と言っても、小学校の半ばまで私はいわゆる夜尿症だった。
 経験がある人は多いと思うが、失敗する時は必ずといっていい程、夢を見ていた。
 トイレに行きたいなあと思っていると、気がつくとちゃんとトイレにいるのだ。
 なんだ、トイレにちゃんと来たんだと思って用を足すと……段々と股間が温かくなって行く。

 気がついた時には失敗しているのだ。

 しかもこの夢が巧妙なのだ。
 どう考えても実際にトイレにいる感じがするのだ。

 まあ、さすがに小学校の高学年ではそれは治った。
 ただ……夢と現実の区別が曖昧なことは結構あった。
 それで人と喧嘩したこともある。
 実際に喋ったとどう考えても思えてしまうのだが、それが夢だったりするのだ。
 
 昨日のことだ。
 昼間、ちょっと別のことをしていて、締切りの原稿に取りかかるのが遅れた。
 夜になってやり出したが、なかなか進まない。
 締切りは朝までだった。
 朝の6時くらいまで頑張っただろうか……けれど、あまり捗っていなかった。
 9時には提出しないといけない。
 残りは3時間。
 書いていたのはドラマのプロットだ。
 プロットと言ってもペラで数枚というよりは、二〇枚くらいの割と細かいストーリーを書かなければいけないものだった。

 眠くて頭が働かなくなったので、仮眠をとることにした。
 15分だけ眠ろうと思った。
 起きたら一気に残りを書こう。
 アラームをセットし横になった。
 と、すぐにアラームが鳴った。
 私は止めて、仕事をすることにした。

 ……ここからだ。

 仕事は捗った。アレをああして、ここをこうして……プロットはどんどんでき上がって行く。
 主人公の設定をこう変えて……。
 おおおお、いい調子だ。

 と、ふと目が覚めた。
 あれ? 
 なんだ?
 気がつくと私はベッドに寝たままだ。

 まずい。夢だったのか?
 そのわりには細かく内容ができていた気がする。
 しかし、実際にはどんなものだったのか思い出せない。

 起きなければ。
 そして実際にやらなければ。

 今度は分かり易いように、プロットを動画で作ってみた。
 これならプロデューサーは分かり易いだろう。
 台本にするより動画で撮った方がいいに決まってる。

 いやいやいや。
 これは完全に夢だ。

 時計を見た。
 締切りの時間だった。
 私はマネージャーにメールをした。
 ちょっと遅れるということを説明した。
 
 さて……。

 そこから同じことの繰り返しだった。
 マネージャーにメールをしたことで安心したのか、プロットを考えては夢だと気づき、また眠って夢で考えるという繰り返しだった。

 正午。
 ハッとして目が覚めた。
 完全に目が覚めた。

 そして……青ざめた。

 眠ってしまっていたのだ。
 けれど、私は思った。
 いや、でも……ほとんどでき上がっているので……問題は……ないはずだ……と思ってパソコンを起ち上げた。画面にはまだまだ全然途中段階のプロットがあった。
 まだ寝ぼけていたらしい。
 ほとんどでき上がっていると思ったのも夢だったようだ。

 マネージャーに電話して事情を話した。
 そしてそこからは実際に書き出した。
 けれど、何度も夢ではないのかと疑った。
 さすがに今度は違ったようだ。

 夢の中とは違って難航した。
 でき上がったのは夜の9時。
 またしても12時間遅れだ。

 そこから休憩し、また手を入れた。
 送信したのは2時半。
 ああ……。

 それにしても今日の昼間の夢はあまりにリアルだった。
 今でもちょっと信じられない。
 
 困ったもんだ。
posted by 土田英生 at 03:56| 東京 🌁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月28日

時差と掃除

 本当は昨日の夕方に提出するつもりだった。
 それがさっきになってしまった。

 昨夜は舞台を観る予定が入っていて、本当は出かける前に終わらせるつもりだった。
 後、少しというところで時間が来てしまい、慌てて劇場に向かった。
 開演時間ギリギリに飛び込んだ……つもりが……30分間違えていて早く着いてしまった。
 ああ、30分あれば原稿が出せたかも知れない。
 仕方ない。

 昨日観た舞台は初演も観ていて、ストーリーは知っていた。
 なので役者の演技に集中して観ていた。
 皆、とても上手だった。アンサンブルも取れてたし。中でも私にとっては初めてだった女優さんにすっかり心奪われてしまった。なんだろ? 距離の取り方とか、出す出さないの微妙なサジ加減とか……。

 けれど、そんなことを考えている余裕はなかった。

 急いで下北沢に戻った。
 早く続きを書いて送らなければ。

 けれどお腹が空いていた。
 で、帰る途中でラーメンを食べた。

 私はすっかり大人のくせに、食べたらすぐに眠たくなる。
 それも尋常じゃないのだ。
 時には食べている最中にも目が充血して来たりする。
 きっと、ずっと好きに暮らしてきたせいだ。
 身体に我慢がない。

 事務所に戻ってパソコンの前に座ったが……眠い。
 後、少しのはずなのに進まない。

 自分に苛立った。
 時間があって眠ろうとしても眠れないくせに、締切り前や、人と約束があったりする時だけ眠れるのだ。
 精神的なもんだとは分かっているが、本当にコントロールが利かない。
 
 で……少しだけ眠った。
 
 起きたら12時半だった。
 
 問題はここからだ。

 12時半という時間は常識的に考えて、そろそろ人が眠る時間だ。
 こうなったら2時に提出しようが、4時に提出しようが、いや、なんなら7時に提出しようが変わらないだろうと考えてしまう。

 これが駄目だ。
 勝手な時差があるのだ。
 いつそんなことを覚えたのか分からないが、例えば水曜日が締切りです、と言われると水曜日の夜までを想定してしまう。で、相手は普通、会社に勤めている人が多いので、7時とか8時を過ぎると「あれ? これは明日の朝までに出せばいいのではないか」と、極めて自己都合で考える傾向にある。
 だから私の場合、水曜日が締切りと言われると、それは=木曜日の朝までだと解釈しがちなのだ。
 まあ、それで何度か怒られてるんだけどね。
 
 で、今日も、まあ、そんなことを考えてしまったわけだ。
 すると、不思議なことに途端に書くペースが落ちる。
 急げば30分、いや、かかったとしても1時間半もあれば終わるはずのものなのに進まない。

 書いていたはずが、気がついたらテーブルの汚れを必死で掃除していたり、綿棒でパソコンのキーの間のホコリを取っていたり、爪を切ったり、コーヒーメーカーを掃除したり……そうなのだ。やたらなにかをクリーンにする作業に没頭してしまう。
 
 気がついた時には3時半になっていた。
 きれいになったコーヒーメーカーでコーヒーを淹れる。
 さて、取りかかろう。
 コーヒーを注ごうとカップを見ると、コーヒーのシミというか、洗っても落ちない感じの汚れを発見した。
 早速、漂白する。
 ついでに他のカップもきれいにする。

 4時過ぎたのでさすがにまずいなと思ったが、4時だということは……まあ、6時までに書けばいいだろうと思った。少しずつは進んでいたので、後、1時間は絶対にかからない。
 ということは……5時から書けばいいのだ。

 昨日、劇場でMONOの制作の垣脇に会った。
 その時『裸に勾玉』の仮編集されたDVDを受け取った。
 チェックをしなければいけないのだ。
 まあ、もちろん、それは今日やることではない。

 ……最初のシーンだけ観てみようと思った。

 そして……メモを片手に観始めた。
 これだって、普段、何もない時にチェックしてくれと言われたら面倒なくせに。
 他にやらなければいけないことがあると、こうして観てしまう。
 
 時計を見たら5時を過ぎていた。

 さすがにやばいと思い、そこからは必死でパソコンに向かった。
 で、6時40分頃、原稿を送信。

 予定よりも12時間遅れだ。
 ……ああ、この時差をなんとかしなければ。
 時差12時間って地球の反対側だよ。
 ブラジル辺りだよね。
 ブラジルに住んで、日本の仕事すればきちんと締切りを守れるのかも知れない。
 それだと打合せとか面倒だしね。

 だけど……この時間のせいで色々とキレイになるんだけどね。
 締切りがなくなったら、きっと掃除もしなくなるしね。
 だって掃除が好きな訳ではないし。

 うんんんんん。

 時差と掃除にこんな因果関係が……いやいや、ないよね。
posted by 土田英生 at 07:34| 東京 🌁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月21日

面倒なことが好き

 面倒な物が好きだ。

 ノートで仕事する時は万年筆を使っている。
 マニアではないが20本くらいは持っている。
 新しく万年筆を買う時は必ずコンバータも買う。
 これはインクカートリッジを挿すところにつける。するとインクを瓶から吸い上げて補充できるものだ。
 
 現在、使っている万年筆は4本。それぞれ違う色のインクが入っている。
 で、インクが切れてくると、インクを吸い上げ、そしてペン先をキレイにしなければいけない。
 しかもインクを変えたい時などは、中を洗浄して乾かしてからでないと駄目だ。
 
IMG_2359.jpg
 

 ライターもZIPPOを使っている。
 マニアではないが15個くらいは持っている。
 オイルが切れたら補充しないといけないし、フリントという石がすり減れば新しいものを入れなければいけない。

 使っているカバンも革ばっかりだ。
 全くマニアではないが、現在使っている革のカバンは3つ。
 革は時々クリームを塗らないと乾いて駄目になってしまう。
 
 面倒くさい。けれど、インクやオイルを補充したり、革にクリームを塗っているとき、どうやら私はいい気分だ。
 
 そういえば、役者さんを演出している時もそうだ。
 器用にできてしまう人よりも、なかなか上手くならない面倒な役者さんが好きだったりする。
 そういう役者が伸びて行くとき、なにより幸せを感じる。

 私が演劇をやったり、台本を書いているのは自己救済だとよく考える。
 人は誰でも自分の存在を確認したい。
 面倒で手間がかかるということは、自分がいなければいけない気分にさせてくれる。
 
 だから面倒なことが好きなんだと思う。
posted by 土田英生 at 07:25| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月20日

同じ店に三回入る

 今日は劇作家協会の戯曲セミナーの講評をまとめてさせてもらった。
 昨年の受講生が最後に書き上げた作品で、書いた生徒が読んで欲しい人に添削希望を出すのだ。
 今年は三本。
 どれも私を指名してくれた人の作品なので、私なりに一生懸命読ませていただいた。
 昨日の夜は何を喋るか考えながら、もう一回ずつ全部読んだ。
 で、今日、それぞれの作者と会ったのだ。

 下北沢にある店で15時半から22時半まで。
 間に30分ずつ休憩を入れて6時間喋り続けた。
 最後の人のときは、喉がかれて声が上手く出なかった。
 
 ……それにしても後悔した。
 どうせなら違う店にしてもらえればよかった。
 店の人は、私を何者だと思っただろうか?
 一人終わる毎に、一々店を出た。
 なのにだ。
 30分するとまたしても登場してくるのだ。
 さらにはずっと同じ店員さんが注文を取ってくれたので、その人は毎回私に「いらっしゃいませ」と言い、そして『ありがとうございました』と言った。

 私は……どんだけその店が好きなんだよ。

 帰ったと思ったのに、30分すると現れる男なのだ。
 これではまるで『その店中毒』ではないか。
 30分店から離れただけで禁断症状が出て、ガマンができずにまたやってくる。
 しかも毎回アイスコーヒーを頼む。
 だから正確に表現すれば『その店のアイスコーヒー中毒男』だ。

 で、相手を変えて2時間喋りっぱなしなのだ。
 なにかの勧誘だと思われたかも知れないね。
 
 更にだ。
 私は恥ずかしさを微妙にアップさせることをしてしまった。

 最後の人と会った時、つまり三回目に店に入りテーブルに座った時だ。
 注文を聞きにきた店員さんは私に微笑んだ。
 私にはその微笑みの意味が分からなかったが「また来ちゃいました」という感じで応えてみた。

 しかしだ。
 その時に気づいたのだ。
 自分の服が替わっていることに。
 
 二人目が終った時、とても疲れていた。
 次の人まで25分あったので、一旦、事務所に戻った。
 片道5分。
 事務所に滞在していた時間は10分ちょっと。
 そんな短い間なのに、くつろぎたくて部屋着に着替えた。
 全く休む時間もなく、慌てて事務所を出たのだが、その時、なぜか前と違う服を着てしまったのだ。

 ……どうして着替えちゃったんだろ?
 
 しばらくあの店に行くのはやめよう。
 
posted by 土田英生 at 04:20| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月19日

自分のことは棚に上げて書く

 自分のことを棚に上げて書く。 

 今日はKAKUTAを観て来た。あ、その感想を書こうというのではない。なんだか「そうだそうだ」と勝手に感じたことがあったので、それを書くきっかけとして使わせてもらっている。きちんとショーアップされた演劇作品だったけど、名目はリーディング公演で、しかも今日の話は寓話だったので、普段の作品とは趣が違った。

 私がいいなあと思ったのは、誤摩化さずに稽古されていることが伝わったからだ。
 ここでこんなことしといたらいいや、というような演出はどこにも見当たらず、桑原さんが一つ一つ判断した痕跡が見て取れる。そのことにとても安心を覚えた。
 真摯に創っているんだなあと嬉しくなったのだ。
 エンターテイメントを創るのはこうでなくちゃね。

 演劇のお客さんが少ないと嘆く声を耳にする。
 けれど、敢えて言わせてもらえば、やっぱり面白くないものが多すぎるんだよね。もっと言えば、いい加減に創られているものが多いような気がする。
 
 心配になってきたので、この辺りでもう一度、挟んでおこう。
 自分のことを棚に上げて書いている。 

 台本を書くのだって、演出をするのだって技術は必要だ。
 それにはやっぱり真っ当に物事を判断するだけの知識を持っていなければいけない。

 例えば、普通にコメディを創ろうと思ったとする。
 設定を作り、そこにズレを生み出す。
 けれど、これがズレとしてしっかり機能する為には、ベースの設定に説得力がないと駄目なのだ。
 そしてベースに説得力を持たそうと思えば、知識に裏打ちされた常識がないとどうにもならない。さらには知識があっても、それをリアリティある形にするのに技術が必要なのだ。

 それができないと、荒唐無稽なものになってしまう。
 分かっている人が“敢えて”荒唐無稽なことをやるのは大丈夫だが、技術やセンスの不足で不条理になってしまうものは面白くない。「ここでこんなことしたら面白い気がする」という曖昧な判断では駄目なのだ。もちろん言葉で全て理解して創るということではない。けれど、コレでいいか悪いか、きちんと自分に問えば、自ずと分かってくるはずなのだ。

 私も作品を創っていて、違和感のある場所を、どうすればいいか分からずに終わることは多々ある。
 けれど、それでは駄目だということを自覚しておかないと、創るものがどんどん緩くなってしまう。

 いや、これは自分を棚に上げて書いているので、まあいい。
 私ももっともっともっと勉強が必要だし、技術も身につけなければいけない。
 それは肝に銘じておこう。
 
 普通に面白く見られるもの。
 それを創るには力が必要だ。
 頑張ろう、一つ一つ。

 明日、戯曲の講評を3本もするので、ずっとその作品を読んでいる。
 それでこんなことを書きたくなった。

 最後にもう一度書いておく。
 自分のことを棚に上げて書いた。
posted by 土田英生 at 01:32| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月14日

自分を転がす

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 トークイベントが終了した。
 なんだかんだ2時間ほど喋らせてもらった。
 参加してくれた皆さんがとても優しい雰囲気だったので、ついつい赤裸々になってしまった。

 そもそも、私は喋ってはいけないことと、いいことの区別が少しだけ曖昧だ。
 時々、後で「なんであんなこと言ったの?」と、人から言われることもあるし、口での失敗はこれまで枚挙に暇がない。

 ただ、今年は反動が少なかった。

 喋ることが大好きな癖に、喋るとその分のツケが後でやってくるというシステムになっている。普通に呑んだりしても、喋り過ぎた次の日確実に落ち込む。
 去年はトークイベントが終わって4日間くらい闇の中をさまよった。
 もう二度とやるもんかと誓った。
 だから今年も怖かった。

 そんなこともトークで喋ったせいか、終わってから参加してくれた皆から、やたら「大丈夫ですよ」とか、「落ち込まないで下さいね」などという声をかけてもらった。

 自分の喋りを「同情トーク」と名付けてもいいとすら思った。

 次の日、目が覚めてすぐに私は自分の気分を確認した。
 そんなに暗くなかった。
 これは驚きだ。
 もっとも、起きて仕事をしていたら、段々、喋った内容を思い出して来て、それに伴って下降しては行ったが、それでもマシだった気がする。
 
 トークでは皆に自分の多動症的行動についても話したのだが、話したことで自分でもとても自覚的になった。
 なにかしていても、自分の行動に一貫性がないことに気づく。

 まさに今日はそうだった。
 起きてすぐ、洗濯をしようと思い、服を洗濯機に入れた。
 洗剤を出そうとしたとき、シンクの中に洗っていないカップがあるのが目に入った。
 なので洗濯機はそのままで、カップを洗った。
 見ると……洗ったのにコーヒーのシミが付着しているのが気になった。
 漂白剤を取り出し、カップをつけた。
 ついでに布巾もつけた。
 しばらく待たなければいけない。
 その間にコーヒーを淹れておこうと思った。
 そうすればキレイになったカップでコーヒーが飲める。
 コーヒーメーカーのスイッチを入れた時、そもそもは洗濯をしようとしていたことを思い出した。
 そこで考えた。
 どうせ洗濯をするなら、今、着ているものも洗いたい。
 考えもなしに服を脱いで全裸になった。
 ……ここで再び考えた。
 洗濯機はベランダにある。
 全裸では出られない。
 実はこれまで何度か同じようなことがあり、全裸のままカーテンに包まって無理矢理ベランダにでようとして失敗したりもしている。
 前の道を歩くおばあちゃんが私を見上げていたこともある。
 だからそれは駄目だ。
 そうか! 
 どうせならこのままシャワーを浴びればいいのだ。
 ついでに洗面所のタオルも取り替えないと。

 この辺りで、トークで喋っていた内容を思い出した。
 こういうことだよな、と思った。ホント、行動に一貫性がない。
 トークの時はレザークラフトのこととか、絵を描いたりすることも喋ったっけ?
 と……。
 最近、描いていた、描きかけの絵のことを思い出してしまったのだ。
 さすがに自分でも分かっていた。
 洗濯をしようとしていて、カップの漂白に目移りし、コーヒーを淹れていて、全裸になり、シャワーを浴びようとしている最中だ。とても忙しい身の上なのだ。
 だからさすがに駄目だ。
 絵の方に興味が向くのだけは禁止だ。
 ……。
 ガマンができない。
 描きかけの絵をチラッと見てみようと思った。見るだけならいいだろう。
 そしてスケッチブックを開いた。

 見たら駄目だった。
 そのまま鉛筆を取り出し、机に座った。
 寒い。全裸なのだ。
 だったら服を着ればいいものを、脱いだスエットだけを肩にかけた。
 そしてそのまま絵の続きを描いた。
 肩にかけたスエットが邪魔で、結局、全裸で描いた。
 1時間くらい描いていた。
 絵は完成してしまった。

 さすがにそれからシャワーを浴び、カップも洗い、洗濯も済ませてから、コーヒーを飲んだ。
 全部終わったのだから結果オーライだ。

 もう一つ、気分がすぐれないなあと思い、外に出ようと思った。
 気分転換に渋谷に出て東急ハンズにでも行こう。
 着替えていると仕事のことが気になった。
 気になり出すと、不安な気持ちがどんどん押し寄せてきた。
 ホント、書かないと。
 結局、出かける格好のままパソコンを起ち上げ、机に座ってみた。
 そしたら……四時間も仕事ができた。

 切れないハサミも使い方で切れたりする。
 とにかく、こうして自分をうまく転がして行くしかないんだよね。
 ああ、それにしても厄介だ。
posted by 土田英生 at 05:04| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月04日

現実感がない!

 最近、カレンダーの感覚が全くない。いや、時間の感覚がない。
 気がつけば夜中だったり、昼間だったりする。日付を見て驚く。知らない間に変わっているのだ。

 4月30日は忙しかった記憶がある。
 朝も用事があったし、そのまま昼から打合せ、そして夜はリーディングを観に行った。
 そしてそれ以降、この3日間は全く外に出ていない。
 基本的には事務所にこもってずっと書き物をしている。
 やたらコーヒー豆がなくなる。コーヒーばかり飲んでいるんだと思う。

 書いていると現実がよく分からなくなるね。

 稽古があれば、外にも出るし、人とも会うのでバランスが取れるけれど、今は本当に書いているだけなのだ。しかも書いているのは戯曲ではない。
 戯曲だと役者の顔を思い浮かべたりするせいか、まだ現実との回路がある気がするけど、完全に物語だけ書いていると文字の中に埋没してしまう。
 だから、シャワーを浴びる時や、買物で外に出た時に違和感を抱く。
 普通のことが難しいのだ。
 ボディソープで髪を洗ったり、歯ブラシを持って考え込んだりする。
 コーヒーに入れる為の牛乳を買いに出て、水を買って帰ってきたりする。
 
 で、戻って来て書き始めるとほっとする。
 おお、ここだ、という気になる。
 書いている世界に安心や懐かしさを感じる。

 今は心の浮き沈みだけが私の全てだ。
 これまでの価値観が崩壊する。
 好きだった事や人への考え方が変化したり……まあ、その分、新しい発見もあるんだけど。
 
 こうやって人は引きこもりになっていったりするのだろうか?

 私はお喋りなので、まあ、その心配はないと思うけど。
 そろそろ誰かと会わないとヤバいね。

 ま、だけどトークもするし。
 こういうこともしないと、本当に混乱してしまうしね。
 楽しく喋ろう。
 そして皆と交流しよう。
 
 11日[水]19時からです。詳しいことはここに書きました→

 当日来ていただいても大丈夫ですが、小さな店なので万が一の時は予約優先になります。
 予約フォームも作ってもらいましたので、簡単に予約できます。
 こちらから予約してください。→予約フォーム
 
 個人的なことから演劇のこと、仕事のことから社会のことまで、ランダムに喋るつもりです!
 私の幼い頃のライバルだったゴロの話もします。
 いや、しないかも知れません。
 ゴロのことを書いていたから、そんな気になったのだと思う。

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 早く書き終えて、現実に焦点を合わせておかなければ。

 とにかく皆さんのおこしをお待ちしております!
 
posted by 土田英生 at 04:24| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする