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MONO代表・土田英生のブログです

2016年10月04日

心技体のバランス

 全く休みのない日々が始まった。

 これまでもバタバタしていた。29日の夜だけは空いていたが、30日は大阪へ日帰りで行きヒアリングとミーティング、翌日からは泊まりで群馬に行き2日間のワークショップ、今日は「解夏」の稽古初日で、朝の10時半から夜の9時まで稽古。しかも終わってからは……個人的なことで深刻な話し合いもあった。
 明日も朝から稽古だから、眠ろうとベッドに入ったのだが……ダメだ。
 眠たいはずなのに眠れない。

 稽古は体もキツイけど、頭が疲れる。
 「解夏」は二人でやるリーディングドラマだが、違う組み合わせで9組もあるので、演出である私はずっと頭を使っていなければいけない。この稽古が4日続き、翌日からは香川で3日間の戯曲講座、戻ってきて1日だけ稽古オフの日があるので、昼と夜にそれぞれ芝居を見て、翌日はまた「解夏」の稽古、さらにその翌日からは4日間広島に滞在して稽古と本番。次の日から31日まではずっと「解夏」の稽古と本番だ。しかも戯曲賞の審査をしているので戯曲も読まなければいけない。

 ……ああ、踏ん張らないと。

 心技体という言葉がある。
 精神、技術、身体。
 今の私は……全部がバラバラな感じだ。
 心、体はもちろん、私がこれまで頼ってきた技の部分まで危うい。
 自業自得だけどね。

 この前、唯一空いていた夜、少し友達と喋った。
 私の中に伝えたいことがあったので、私はそれを勢い込んで話した。
 すると……今度は違う角度から、私に対しての指摘があった。

 私が話そうと思っていたことと……角度の違う切り込み方だった。

 自分が崩れて行くのを感じた。そんな話になるのだとしたら、さっき話したことを取り消したかった。いや、違う形にして、まとめて話したかった。けれど、もう遅いのだ。
 
 ここは反論せずに聞かないとダメだと思った。
 こんな機会はなかなかないからだ。
 もともと、私の方から伝えたいことがあったので、一瞬は「いや、でもね」という気持ちが芽生えたが、そこで言い合いをしたところで、どちらにもメリットはない。
 もったいないと思った。
 私が伝えたいことは、また、別の形でゆっくりと伝えればいい。
 そう、もっと、柔かい形で。
 ちゃんと相手に届く方法で。
 それが、私にはそもそも欠けていたのだ。
 
 私に関しての指摘はとてもよくわかった。
 ただ、時間が経つと、話の本筋以外の、尖った言葉の破片ばかりが心に残る。

 あ、具体的な内容を書きたいわけではない。
 それは話した私たちの問題だからだ。ざっくりいえば、私にとっての、人との距離の取り方というか、自分の見せ方というか、つまりコミュニケーションの方法に関することだった。つまり技の部分だ。少なくとも、その友達にそれがどう映っているのかを聞くことができた。
 で、考えた。
 そうか、少しだけ変えてみよう。
 そう思った。
 
 群馬でのワークショップは楽しかった。
 ほとんど眠っていない状態で向かったのだが、積極的な受講生の前に立つと私は自然にテンションが上がる。
 みなもよく笑ってくれ、説明する内容が伝わって行くのも感じる。
 群馬での公演などはしたことがないので、完全アウェー覚悟で臨んだのだが、私の戯曲を読んだりしてくている人もたくさんいたし、地元の劇団がよく上演もしてくれているらしい。中には私すら持っていない、これまでの私の戯曲集や小説、DVDなどを山のように持ってきて、サインしてくださいなどと言ってきてくれる人もいた。夜の懇親会はほとんど全員が出席して、いろんな話をした。
 本来なら私はゴキゲンMAXの環境だ。

 しかし、何度も私は考えた。
 その調子に乗っいる自分に疑いを持った。
 これこそ、今までの技ではないか。
 まったく同じじゃないか。
 
 懇親会が終わってホテルに戻り、私はさらに考え込んだ。
 
 翌日、再び私は喋り、大きな声を出し、意味なく身体を動かした。
 一緒だ。
 まったく変わらない。
 ワークショップはいい感じで終了した……と、思う。

 群馬からの帰り、またしても私は考えてみた。
 
 そして今日。「解夏」の稽古。
 若い俳優と女優が4人。
 私は落ち着いた感じで稽古をスタートした。

 ……気がついた時にははしゃいでいた。
 結局、朝から晩までフルテンションだった。
 やっぱりそこは変わらないらしい。
 
 まあ、これは仕方ないんだけどね。

 もう、ずっとそうなのだ。人といる時は「悩みのない人」だとか「楽しそう」だと言われ、一人になった時は異様に暗くなるというのを繰り返してきた。死ぬまでこうなんだろうか?

 とにかく10 月は乗り切る。
 そして、心技体のバランスを取り戻さないといけない。
 そうだ、バランスだね。

 ……そういえば、平均台とか 苦手だったしね、昔から。
posted by 土田英生 at 03:29| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月28日

BAR土田

 相変わらず下北沢に色々な人がやってくる。

 いや、ほとんどの人は「今、なにしてますか?」という感じで連絡が来るので、多分、下北沢近辺にいて、時間が空き、「そういえばあいついるな」と考えて連絡をくれているんだと思う。
 その証拠に、ほとんどが稽古帰りの人か、下北で芝居を観た帰りの人か、打ち合わせ終わりの人だ。
 なんだろう。
 私は帰りに立ち寄るタイプなんだろうか?

 だとしたら、私はBARだ。これからはBAR土田と名乗ろう。蝶ネクタイにベストをきて、シャカシャカとシェーカーを振って出迎えることにする。

 ああ、来年のキャスティングが中々思い通りにいかない。
 けど、諦めずに頑張ろう。やっぱりやりたい人とやりたいし。

 いろんな人と会って喋りながら、人との関わりの不思議や、分岐点について思いをはせたりする。
 俯瞰してしまったりするね。
 会いにきてくれる人は、もちろん現在仲のいい人たちだ。知り合って間もない人もいるし、昔から続いている人もいるし、それはまちまちだ。

 けれど、こうして喋っていても、数年後には全く話さなくなったりする人もいるんだろうなあと思うと、少しだけ切ない気持ちになる。

 これまでだってそうだったからだ。
 
 一人の人間が出会う人の数なんてたかが知れている。
 ましてや、ずっと関係が続く人なんて本当に限られている。
 最近、つくづくそう思う。
 若い時はこれから無尽蔵に人に出会うと思い込んでいた。
 だから、簡単に関係を途絶えさせてしまった人たちもたくさんいた。
 あの時は、またこういう人に出会えると思っていたけれど、今になって考えると、やっぱりその人でしかなかったりするんだよね。

 まあ、それでも出会いに関しては私は恵まれているとは思う。
 MONOだってそうだ。彼らとこんなに長く一緒にいるとは想像もしていなかった。何度も分岐点はあったと思うけど、お互いにどこかで「こんな人はいない」と思えたから、こうして続いてるんだしね。お互いの努力もあるんだろうけど。

 けど、それは後になってしかわからないことなんだよね。
 現在、BAR土田に来店する人達との関係だって、十年後に振り返ったら全然違うんだろうし。

 昨日、広島で来月やる試演会の台本を書かなければいけなかった。
 けれど、いろいろな事務作業などをやっていたら夜になってしまった。
 さて書こうと思うのだが、眠気に襲われた。
 と、夜、かなり遅くなって……友達からLINEがきた。下北沢にいるという。やはり何かの帰りだ。

 しかしだ。私は朝までに書かなければいけない。遊んでいる時間はないのだ。
 けれど、このままだと眠ってしまう。だから会うついでに見張ってもらうことにした。

 ……おかげでパソコンに向かうことができ、そして書き終わった。

 情けないことなのだが、私はとても過保護に育った。
 小学校の時などは、親が後ろに立っていてくれないと宿題すらやらなかった。ただの漢字の書き取りなのに、父親は「そうだ。そこはハネて。そうそう」などと言いながら最後までいてくれていた記憶がある。
 だからなのか、今でも人が見ていると仕事ができたりする。MONOの最初の頃もそうだった。書けない時は水沼君などに部屋にきてもらったりしていた。
 
 話がそれた。
 
 まあ、忙しくなるから、しばらくはBAR土田は休業だ。
 
 
 
 
posted by 土田英生 at 07:41| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月22日

パターンを変える

 なぜだか分からないけど、今月に入って異様に「ちょっと会いませんか」という連絡が多い。
 常連の人からも、本当に意外な人からも来る。
 最後に会っておこうとでもいうような勢いだ。
 間も無く私の身に何があるんじゃないかと不安になるではないか。

 気がついたらここ1週間は毎日誰かと会うという事態になっていた。
 知り合いとご飯を食べたり、ただただダラダラ喋ったり、意外な人と水タバコの店に行ったり、今頃になって公演の反省会をしたり、若い俳優の相談に乗ったり、劇作家や演出家と芝居の話をしたり、カメラマンの友達に写真の撮り方を教えてもらったり、一緒にゲームをしたり……これではまるで大学生だ。
 
 会おうと約束して果たせていない人もまだたくさんいるのだが、どうしたらいいのか。書くことや、準備しなければいけないこともあるしね。まあ、ちゃんと進めてはいるんだけどね。
 10月にある『解夏』のリーディング公演も脚本はほぼ出来上がったし、書き下ろし小説も最終の校正をしてもらっている段階まで来た。
 残っているのは……広島でやる演劇学校の台本、戯曲賞の候補作を読むこと、MONOの次回公演を書くこと、宮崎のプロデュース公演の台本を完成させることぐらいだ。いや、おかしいな。結構あるな。
 
 今日も午後からは人と会う約束だ。
 とにかく今は誘われたら会っている。

 私には時々こういう時期がある。
 そしてそういう時、何かが変わる。
 自分で自分のパターンを決めてしまっている人は結構多い。
 しかし、うまく回らないのはそのパターンのせいだったりする。
 性格は一生変わらないと考えているけど、環境によって考え方は変えられる。
 育った過程や性格で出来上がった自分の行動パターンはそれなりに意味がある。自分にとって、それが快適に生きる方法だからだ。けれど、そのパターンの中にいるだけでは同じことの繰り返しにしかならない。新しい展開を望むならパターンを崩さなければいけない。
 私はそういう時に他人を使わせてもらってきた。
 人から言われたことをそのままやってみたり、流れに身を任せてみたり。
 すると環境が変化し、自分のパターンが崩れる。
 と、意外なところに道が見えたりするのだ。
 変わるね、また。
 どんなことになるのか、楽しみだね。
 
posted by 土田英生 at 08:18| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月15日

守るものと捨てるもの

 何を守ればいいのか、何を捨てればいいのかを考える。
 もちろん物事は1か0ではなくて、その間もあるわけで簡単に線を引けるものでもない。
 けれど、やっぱり物事には優先順位があって、一番やりたいことや欲しいものを手に入れると、二番目のものは捨てなければいけなかったりする。

 私はかなり俗な欲も持ち合わせているので、できればやりたいことをやりながら、それでも社会的にも認められたいとずっと願ってきた。
 けれど、やっぱり全部は無理なんだよね。
 都合いいところだけを欲しいということには無理がある。

 前に、とあるワークショップで「劇作家で食べるのはどうしたらいいですか?」と聞かれ、「面白いものを書くしかないんじゃないですかね」と答えたら、「いや、食べられないなら劇作家を目指すのをやめようと思って」と答えた人がいた。
 だけどねえ。
 そんなことは誰も保証できないし。
 そもそも金持ちになりたかったら、劇作家なんて目指さない方がいいよね。売れたとしたってたかが知れてるんだし。
 まあ、自分のやりたいことをやりながら、それでもなんとか生活したいというのならなんとなく分かるけど。
 
 20代の頃、とにかくバイトをやめたいと願っていた。けど、具体的な勝算や方法もなく、ただ、劇団で公演を繰り返し、そして赤字を作っていた。ある時、お客さんが増えだした。東京から声もかかり公演をした。公演の成功だけを願って芝居を作っていた。
 そしたら脚本の依頼がきたり、テレビドラマを書いてくれと言われたりして、気が付いたら生活ができていた。まあ、今だってそれがいつまで続くかわからないけどね。
 
 何かをやるには、何かを諦めなければいけない。
 守るものは一番大事なところだけにしないといけない。
 それは人によって違ったっていいしね。

 まあ、初心に帰って頑張ろうと思う次第だね。
 
posted by 土田英生 at 03:34| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月09日

下北沢で回収

 この先私はどうにかなるんじゃないかと心配になるくらい色々な人から連絡があった。
 すっかりご無沙汰だった人や、知り合って間もない人、珍しい人から仲のいい人まで、この3日間、不思議なほど皆からの誘いが重なったのだ。中には「嘘だろ」と思うような人までいた。
 書かないといけないものもあるので、1日に一人だけにして会ったりした。
 皆、下北沢まで来てくれた。
 いや、問題はそのたびに私は店に何かを置いてくるということだった。
 昨日、万年筆がないことに気がついた。
 そしてよく考えてみるとライターもない。
 さらにはお気に入りのイヤホンもケースごと見当たらなかった。
 なので、この3日間で行った店を巡ってみた。
 全部、回収できた。

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 今年は色々と決断を迫られる。
 宮崎に滞在している期間に考えることができた。
 だから今はすっきりしている。
 進んでみて後で考えればのだ。

 なくしたものがあったとしても、きっと回収できるしね。
 
posted by 土田英生 at 07:12| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月03日

深津君の台本を読んで

 今日はコンブリ団の公演『カラカラ』をウィングフィールドで観て、それから「深津篤史の戯曲を読む」というイベントに参加した。
 『海が私を嫌っている』を私もリーディングしたのだ。
 これは当時も読んでいるし、芝居も観ている。
 まあ、すっかり内容は忘れていたけど。

 今日、上演された『カラカラ』も一番最初の上演を観ている。
 全然、分からなかった記憶だけがある。しかし、今日は、彼が何を書いているのか掴めた気がした。掴めるというか、なんだか入ってくる感じがしたのだ。
 で、リーディングでは実際に私も手書き台本を読んだ。
 深津君の書いた台詞を声に出して読むなんてこと初めてだったし、さらにはお客さんがいるし、そして役が関西弁だったので愛知県出身の私はとても困ったけれど、それでも興味深い体験だった。
 最近はお決まりの冗談として喋っているけど、生前の深津君とはそんなに仲がよくなかった。
 むしろ喧嘩すらした。演劇観も違うので、お互いに「フン」という感じだった。
 けれど、読んでいると……なんか分かるんだよねえ。
 彼はもうこの世にいないのだけど、読んでいると生々しく存在を感じたんだよね。
 
 なんか、そのことで、私も安心した。
 自分がいなくなった後でも、誰かが私の書いたものを上演してくれたら、こうして生き返れるんだなあという気がしたのだ。そう考えると、台本を書く仕事も悪くないね。
posted by 土田英生 at 02:42| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月30日

宮崎、今後。

 宮崎から戻ってきて3日経った。
 やっと現実に戻った気がする。
 それにしても宮崎の最後の5日間は本当に最高の環境だったね。
 青島のビーチから徒歩3分。

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 ホテルには露天の広い天然温泉もある。
 朝食を食べて、少し泳いだりして、それから温泉に入り、昼寝してから執筆。
 ……なんだ、このご身分は。
 これが永遠に続くなら、私は迷いなく宮崎に引越したいと思った。
 書いている芝居にサーフィンが出てくる。
 なので……体験もさせてもらった。
 ひっくり返りながら、それでも何回かはボードの上に立てて……まずいね、ハマりそうな気がする。けれど、かなりキツイのだ。あんなに体力を消耗するとは思ってもみなかった。やっていたのは2時間半くらいなのだが、途中で休憩した時、息が完全に上がってしまっていた。
 さらには休憩中も私は喋りまくったので、休憩にならなかった。

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 サーフィンが取材なのかどうか……ここで頑張らないとただ遊んでいると思われてしまう。
 だからその日はめちゃくちゃ頑張って書こうと思っていた。けれど……ホテルに戻って温泉に入り、そしたらとても気持ち良く昼寝してしまった。
 
 けれど、それでバチが当たったのかもしれない。
 夜、スーパーまで買い物に行こうと夜道を歩いていたら、思い切り転んだ。
 iPhoneの画面はバリバリに割れ、膝からは血が流れた。
 ホテルに戻っても血は止まらない。ホテルのフロントに行って、手当てをしてもらった。

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 まだ、結構、痛い……。
 iPhoneも直さなければいけない。
 
 最終日の朝、チェックアウトしてからは飛行機の時間まで、最後の取材に連れて行ってもらった。
 飛行機が羽田に着くと、いきなり色々な知り合いから連絡がきていた。
 なんでみんな、分かるんだろう?
 その夜は三人と会うことになった。
 皆から「焼けてますね」と言われた。
 そりゃ、そうだ。
 歪の「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」で、私は「エロかりんとう」と呼ばれる役をやったが、本当にかりんとうになってしまった。しかも黒糖かりんとうという感じだ。
 
 翌日は壁ノ花団「水入らずの星」を見た。
 MONOもメンバー5人のうち、3人がかかわっている公演だ。
 水沼くんが演出、金替くんは出演、そして奥村くんは舞台美術。

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 夜にはそのままMONOのミーティングをする予定だったので、バラシを少し手伝だった。

 で、8時から10時まで話し合い。
 MONOの今後についてだ。まあ、わりとシビアな話。
 プラン9の公演に大阪で出演していた尾方くんは来られなかったけど、現状の話をして、私が考えている案を話し、それについて皆から様々な意見をもらった。
 私も宮崎にいる間に、自分のことを含めて色々と考えた。
 大きな転換点にいるのは確かだ。
 
 MONOは結成26年。
 メンバーもほぼ変わっていない。
 それにしては人間関係などもうまく行っている方だと思うし、大きな問題もない。
 けれど、これまで安定しすぎていたのかもしれないね。
 主宰者と一部のメンバーだけが上にいて、下がそれを支えるという構造の集団にしたくなくて、これまで気をつけていたつもりだ。おかげで派閥やイジメもなく、かなりフラットに活動してきてこれたと思う。
 メンバー5人も仲がいい。信用している。
 人気劇団ではないが、それなりに評価もしてもらってきたのだと思うし、今でも楽しみにしてくれるお客さんはいる。私自身もまだまだ書きたいことはたくさんある。もっと面白い舞台を創れると思っている。
 
 ただ、このままでいいのか?
 個人的にはここ5年くらいずっと考えていた気がする。
 だから若いメンバーとkittというユニットをやったり、俳優講座をやってみたり、歪にも関わった。
 
 私の出した案には色々と懸念も出た。
 正直いって、細かいプランや勝算があるわけではないのだ。
 けれど、まずは一歩踏み出し、そこからまた様々な問題や利点を発見し、形を変えていけばいい。
 これまでだって、その時々で流れるようにやってきた。
 けれど、危ないと思えば立ち止まり、軌道修正を繰り返して今があるのだ。

 だから、これからだってそうしてやっていくしかない。
 
 もっと具体的にはしないとダメだと思うけど、新しいものを生み出す気概をなくさず頑張ろう。
 昨日、久しぶりに「バロン」を観た。
 毎回、同じ台詞、同じシーンで泣いてしまう。
 想像力が、ものを生み出す力が現実を変える。

 そんな夢物語だが、作品を創ることで、社会や人にコミットできるという希望はなくしたくないしね。

 そのためにも真っ直ぐやっていこう。サーフィンも楽しかったけど、やっぱり私は舞台を創るのが一番楽しいいしね。
posted by 土田英生 at 14:48| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月23日

ビャンビャンとキーボードを叩く

 今日はホテルを移動した。
 海の目の前。
 天然温泉もある。
 近くにいい感じのカフェもある。
 極楽だ。

 ただ、問題はホテルの移動だった。
 私は落ち着いて仕事をするために、ホテルだろうが、マンスリーマンションだろうが、部屋を自分仕様にカスタマイズしてしまう癖がある。だから困るのだ。全てを元に戻し、広げていた荷物を全て詰めて移動する。

 だいたい、昨日までいたホテルでも最終日に部屋を途中で変えてもらったのだ。
 その時も時間がかかった。
 そしてまたしても居心地を追求する。
 けれど、おかけで昨日は三時間くらい集中できて、結構な量を書いた。
 スラスラと筆が進んだのだ。

 これ困るね。
 昨日はパソコンで仕事してたしね。
 スラスラと筆が進むというけど、パソコンの場合はどうしたらいいんだろう。
 「スラスラとキーボードが進んだ」では変だし、「パチパチと進んだ」でもダメだし。

 「パチパチとキーボードを打った」では、はかどっている雰囲気が出ないし。
 「パッチンパッチンとキーボードを打った」はどうだろう?
 いやいや、これだとふざけてる感じだ。

 「ビャンビャンとキーボードを叩いた」。
 これ結構感じ出てるね。
 ビャンビャンに勢いも感じるし、叩いたというのがいい。
 そうしよう。
 これを使おう。
 
 部屋を移って、快適にカスタマイズしたせいでビャンビャンとキーボードを叩くことができた。

 ……やっぱりこれもダメだな。難しい。

 夜はは東京から来てくれてた知り合いがいたので合流。
 久しぶりにかなりのお酒を飲んでしまった。
 夕方に友達が嫌な目に遭ったニュースを聞いて憤りを感じていた上に、知り合いとの話が楽しかったので、どうやら調子に乗ってたくさん飲んでしまったようだ。
 そしていつものように喋りすぎた。
 帰り道、まっすぐに歩けなかったこと、そして深い自己嫌悪に陥っていたことだけは覚えている。
 
 で、朝起きて再び広げた部屋を元に戻し、そして移動した。
 もう最後までこの部屋だ。
 だから思う存分、カスタマイズだ。

 こんな環境にいさせてもらってるんだから、しっかりと書こう。
 ジャジャンジャジャンとキーボードを打とう。
 ……いい表現がない。
 
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posted by 土田英生 at 02:14| 宮崎 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月21日

行き当たりばったり

 昨日、ゆっくり自分について考えるとか書いていたくせに、私の行動はどうも行き当たりばったりだ。
 まあ、これは子供の頃からそうだから仕方ない。

 朝ごはんを食べてすぐ、私はノートなど一式を小脇に抱えて颯爽とホテルを出た。
 他の仕事もしないといけないのでパソコンも持った。
 迷うことなく歩いた。
 初日から何度も使わせてもらっているカフェで書こうと前もって決めていたからだ。
 あそこならフリーのwifiもあるし電源もある。

 
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 橘通り。
 何度も往復している道だ。
 ここをまっすぐ歩けばいいのだ。
 けれど、ちょっとだけ脇道に入りたくなった。この道を通ることに飽きてしまった。
 で、入って歩いていたら、ごくごく普通の喫茶店があった。
 考えもせずに店に入ってしまった。
 行き当たりばったりだ。

 しかし、ここはよかった。
 テーブルは広い。
 コーヒーは安い。
 そして喫煙もできる。
 さらには他に誰もお客さんがいなかった。

 ノートを広げて書き出した。
 なぜか次々のアイデアが浮かぶ。そして話がつながってくる。
 書いているとこういう時がある。
 ふと思いついたことが、前にあったアイデアとリンクして行くのだ。

 背景をもう一度詰めて、人物の相関図を書き、そして箱書きをする。
 まあ、台本の元になる流れのようなものだ。
 1時間もすると箱書きが終わった。
 私はとても満足した。
 休憩を挟みながらさらに書いた。
 落ち着いたので、今度はパソコンを出した。
 もってきていた他の原稿を直そうと思ったのだ。
 電源がない。wifiもない。
 そうか、それを忘れていた。

 私は店を出た。
 そういえば目指していたのはこの店ではなかったのだ。
 まあ、進んだからいいものの、計画とは違う。
 あそこへ行こう。

 歩いているとトイレに行きたくなった。
 店でいけばいい。
 ああ、暑い。
 すぐに汗が滲む。
 髪の毛が気になる。

 ……どういうことだろう?
 気がついたら私は美容院に入ってしまった。

「いらっしゃいませ。ご予約は?」
「いや、えっと……してません」

 行き当たりばったりだ。
 1時間後、髪の毛を切りシャップーしてもらってすっきりした私がいた。

 今度こそ店を目指そう。

 気がつくと私はダイソーにいた。
 一直線でカフェを目指すつもりだったので、カバンも持たず、パソコンや書類を脇に抱えていて歩きにくかったのだ。そこでブリーフケースを買う。
 書類などをそこに詰め込み、今度こそカフェに向かった。
 お腹が空いてきたが、そこでサンドウィッチでも食べればいいのだ。

 ……宮崎牛を使ったハラミ丼はとても美味しかった。
 なぜだろう?
 カフェまであと少しの距離だったのに。
 焼き肉屋さんに入ってしまったのだ。
 
 そしてカフェに向かった。
 混雑していたので諦めた。

 結局、そのままホテルに戻り、部屋でパソコンを打った。

 行き当たりばったりだが、台本は進み、髪を切り、ハラミ丼も食べ、他の仕事も進んだ。
 だから……まあいい。
 これまでもずっとそうだった。
 思いつきで大学を中退し、思いつきで東京に行き、思いつきで京都に戻って劇団をつくり……しかし、正直な気持ちで動いていればちゃんとつながってくるのだ。

 けれど、計画も必要だ。
 明日は、あのカフェに一直線に向かって台本の続きを書こう。
 
posted by 土田英生 at 02:45| 宮崎 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月20日

宮崎で考える

 今日からホテルが変わった。
 朝、チェックアウトしてから次のチェックインまで時間があいたので、再び車を出してもらって取材をさせてもらう。作品の骨子は固まったし、残ったピースをはめ込むような作業だ。
 もう取材は大丈夫かもしれない。
 あ、あとは……ちょっとだけサーフィンのことを調べたい。
 それはまた改めて取材させてもらうことにする。

 新しいホテルにチェックインして、夜は自ら志願してワークショップをさせてもらう。
 急に決めたにもかかわらず16人が参加してくれた。
 敢えて自分の基本を確認するように間と呼吸だけをやった。
 
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 それにしても宮崎にきてから山の緑と海の青ばかり見ている気がする。
 京都からも東京からも距離があるので考えるのにとてもいい。
 ちょっとした孤独も素敵だ。
 何人かの友達が宮崎に遊びに来るという連絡をくれたりしたので、後半はそうでもないかもしれないけど。
 
 作品を書きながらとにかく考えている。
 MONOのこと、自分の仕事のこと、極めて個人的なこと。
 これからまだまだ生きていかないといけないのだ。
 
 つい最近、あることを決め、それが前に進んだ。
 無意識に目を向け、認めたくない自分も受け入れたところで出てきた結論なので、そこを信じてやってみるしかない。大切にすることを絞って、それを大事にしよう。まあ、それはこれまでと変わらないことだけど。
 
 けど、本当に冷静に考えないとね。
 世の中も気持ち悪くなってきたし。
 オリンピックも観ているけど『日本が勝った、メダルを取った』ということばかりが耳に入ってくる。相手のいいプレーもちゃんと評価してほしいよ。相手が失敗すると「よし!」と叫んだりして。
 
 明日はまたこもって書く。
 ただ、宮崎にはカフェが少ないことがわかった今、どこで書くのかという問題だけが残っているけど。
 
posted by 土田英生 at 02:08| 宮崎 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月19日

カフェGO

 宮崎に来て3日が過ぎた。
 ここを題材にした作品を書くために滞在させてもらっているのだ。
 着いた日は簡単に打ち合わせし、翌日は取材に回らせてもらった。

 前もって簡単な構想は立てていたのだが、ある事情でそのまま進められないことになり、新しく物語を考え直さなければいけない状況だったのだ。
 それがわかったのは広島にいる時で、宮崎に来る前日だった。

 だから最初は取材も手探りだった。
 地元に詳しいアナウンサーの方などにも協力してもらい、様々な場所に連れていってもらった。

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 いやあ、予想以上の収穫があった。
 いろいろ見ているうちに、あるストーリーがぼんやりと浮かんできた。
 それが形になり、取材の後半になればなるほど、知りたいことが具体的になった。
 そして、どんどん裏付けされて行く。

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 これは直接的には関係ないのだが、私が書きたいことが象徴されている写真だ。
 観光地にあった兜だが、よく見ると洗面器にハンガーがつけられている。
 たまらないね、これ。

 取材に満足し、夜は一人で焼肉を食べた。
 そしてホテルに戻ってきて温泉に浸かる。
 極楽だ。

 昨日はそれを元に話をまとめて行く。
 同じカフェに通うこと三回。やっぱり構想を立てる時は手書きじゃないとまとまらない。
 そして仕事しやすい店を探すことはとても大事なのだ。
 京都にも下北沢にも仕事をする時に使う店がある。
 まあ、そこはそんなに書きやすい場所ではなかったけれど、ホテルから近かったのと、他にコレという店が見つからなかったのだ。

 ホテルに温泉がついているので食べて温泉につかり、出かけてコーヒーを飲みながら書き、そして戻ってきて温泉に入りちょっと昼寝して……また出かけてご飯を食べて書き……いいご身分だ。話も随分と形になった。
 夜はこっちの皆と飲んだ。
 極楽、againだ。
 
 しかし、今日は……ダメだった。
 起きてすぐに温泉につかり、食事をして……ここまではよかった。きっと今日も極楽な1日が始まると期待した。自分を追い込むためにホテルの近くではないところで書こうと思った。
 宮崎駅まで歩き電車に乗った。
 隣の「宮崎神宮」で降りる。
 そこでカフェを探した。
 ……ない。
 歩き回った。
 人に聞いてみた。
 優しい女性が「そこを真っ直ぐ行ったところにありますよ」と教えてくれたので、行ってみると定食屋さんだった。ここでは仕事はできない。
 カフェを求めて歩き回る。
 私が探しているのはポケモンではないのだ。カフェだ。
 カフェGOだ。
 途中、神社の森に迷い込む。

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 なにをしてるんだろう?

 結局、最終的には1時間半歩いただけだった。
 ばててしまい、入った場所はとんかつ屋さんだった。
 冷汁とトンカツを食べる。

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 とても美味しかった。
 けれど、仕事は進んでいない。
 トンカツGOになってしまった。
 
 そこからさらに仕事しやすいカフェを求めて歩き出した。
 再び、1時間歩いた。

  ……店を見つけられず、ホテルに戻った。
 ホテルを出てから3時間も経っている。

 少し休んでから……またしても昨日と同じ店に行った。
 青い鳥はやっぱり近くにいるのだ。
posted by 土田英生 at 03:02| 宮崎 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月16日

一割増しと黒い糸くず

 今週は移動が多くて疲れた。
 東京、京都、東京、広島、宮崎。
 このまま月末まで宮崎に滞在するのでやっと落ち着ける。

 広島ではアステール演劇学校の俳優コース。
 ワークショップを2日間。
 2日目にテキストを読んでいると、同じ施設の大ホールで公演をしていた佐々木蔵之介君が顔を出してくれた。公演についているスタッフの佐々木くん……名前同じでややこしいな……に同じ場所で私がワークショップをしていることを伝えていたからだ。
 参加していたメンバーから黄色い声が上がった。
「知り合いなんですか?」
 蔵之介くんが顔を出してくれたおかげで、どうやら私の株が上がった。
 彼が去った後には事実の一割増しで仲良さを強調しておいた。

 そういえば去年もそうだった。
 ホールで小林賢太郎君が公演をしていることを知ったので、私は連絡した。
 その日の夜に彼と会って、次の日は彼がワークシップを見学しに来た。
 一時間くらいいたと思うが、あの時も、賢太郎君のおかげで株が上がった。
 やはり一割増しで仲いいアピールをしておいた。

 そうだ。
 私は周りに株をあげてもらう情けない男のようだ。
 しかも一割増しで喋ってしまう男だ。
 時には三割までは増量オッケーにしている。

 昔、ヨーロッパ企画が評判になり出した頃だ。
 私はフジテレビでドラマの打ち合わせをしていた。
 休憩中にプロデューサーが私に聞いた。

「土田さんも京都だし、ヨーロッパ企画の上田君とかとは親しいんですか?」

 実はその時にはまだ私は上田君と一度しか会ったことがなかった。
 しかも、なにかのパーティー会場で立ち話をしただけだった。
 けれど、私の口からは自分でも驚く一言が出た。

「え? まこっちゃんとですか?」

 上田君の名前は誠という。
 もちろん彼を「まこっちゃん」だなんて呼んだことはなかった。
 しかし、プロデューサーは「へえ、そんなに仲いいんですねえ」と言っていた。
 私は黙っていた。
 何も嘘はついていない。上田君のことをまこっちゃんと呼んだだけなのだ……。
 けれど焦った。
 早く仲良くなって、彼をまこっちゃんと呼ばなければいけない。
 
 現在、彼とは仲良くはなったけれど「上田君」と呼んでいる。

 昨日も広島に泊まり、今日は朝から宮崎に移動。
 福岡から飛行機だったが、久しぶりにプロペラ機に乗った。

IMG_9094.jpg


 ここで来年やる芝居の脚本を書く。
 
 着替えなどがたくさん必要なので、久しぶりにスーツケースを転がしてきた。
 けれど……ホテルについてTシャツなどを出してみると、黒い糸くずがやたらついている。
 私はうわーと声をあげて部屋の中を走り回った。

 いや、これは三割増しだ。
 走り回ってはいない。
 うわーとも実際に叫んだかどうかも不明だ。
 けど、驚いたのは確かだ。
 
 なんだ、なんなんだ、この糸くずの山は?

 冷静になって考えたら、理由はすぐに分かった。
 先日終わった「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」は舞台裏という設定で、幕をみんなに縫ってもらった。
 で、その幕の持ち運びにスーツケースを貸していたのだ。

 明日からは宮崎で取材しながらの執筆活動。
 がんばろ。
posted by 土田英生 at 01:21| 宮崎 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月14日

小松幹生さん

 小松幹生さんが亡くなった。

 小松さんは劇作家でありながら、編集者として出版にも関わっていた。劇作家協会の新人戯曲賞で最終候補作をまとめた戯曲集の編集なども一手に引き受けてくださっていた。
 で、Twitterにも書いたけれど、私は個人的にもとてもお世話になった。
 小学館が出していた戯曲雑誌「せりふの時代」に私の戯曲「橋を渡ったら泣け」が掲載されてしばらくした頃だ。
 MONOの稽古のために私は京都芸術センターにいた。
 と、いきなり小松さんから電話があった。

「あれ読んだよ。土田君は戯曲集とかさ、もう何冊か出してるの?」と突然小松さんは質問してきて、私が一冊も出していないと答えるとすぐに「じゃ、出そうよ」と言ってくれた。そして本になったのが「算段兄弟/ー初恋」だ。松田正隆さんの「雲母坂」と一緒に出してもらった。
 
 劇作家協会などで会うとよく話した。
 いや、寡黙な小松さんはいつも私の話を聞いてくれていた。
 そしていつも言った。

「君はよく喋るなあ。書くより、喋る方が向いてるんじゃないの」

 小松さんが癌だとわかってしばらくした時だったと思う。
 いきなり明け方に長いメールをもらったことがある。
 若い時の思い出話が書かれていた。
 どうしていきなりこんな内容のメールをくれたのかは不明だが、「ちょっと書きたくなって」と最後に書かれていた。
 
 6月の終わり。
 小松さんのお見舞いに行った。駅から雨の中を歩いていった。
 ナースセンターでそのことを告げると「ああ、眠ってらっしゃるから、話せないかも知れませんよ」と言われた。で、その看護士さんが声をかけた。
「小松さん、お見舞いの方が来られましたけど、分りますか?」
 やせ細った小松さんは目を開き私を見た。
 そして驚くほど大きな声を出した。
「土田君だよ。分かるよ。当たり前だろう」
 そして小松さんはいきなり色々なことを話し出した。
 そこには過去と現在が入り混じりっていて、内容は正確にはわからなかったが、小松さんの想いだけが伝わってきた。そして私が答えていると小松さんは目を閉じて眠っていく。
 眠ってしまった小松さんを私は見ていた。
 大学の時、友人から借りた「雨のワンマンカー」という戯曲のことを思い出した。
 小松さんの作品だった。
 私が帰ろうとすると小松さんは起きて、再び話し出す。
 それを何度も繰り返した。

 その日の夜、下北沢の事務所で歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の台本を直していた。
 台詞を書きながら、今日見てきた小松さんの顔が何度も脳裏に浮かんだ。
 まだ死など意識していない若い女優たちに当てて書く台詞と病床にある小松さん。
 そのギャップを考えて不条理な気分になった。
 
 覚悟はしていた。
 けれど、実際に訃報に接するとやっぱり沈む。
 
 ありがとうございました。
posted by 土田英生 at 09:31| 広島 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月10日

公演終了と大村わたる

 歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」が終わった。
 たった3日間の本番だったけど、準備を合わせれば結構な期間になる。
 このユニットは去年もカフェ公演のような形でやっているのだが、今回はもう少しだけ本格的というか……小さいながらも劇場での公演だった。

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 去年は優しい後見人的な感じで終われたのだが、大変になった分、今回は自分のエゴも出てしまった。
 稽古や公演準備の過程で、歪のメンバーである3人に対してもかなり言いたいことを言った。
 いや、言ってしまった。
 もちろん……私は落ち込んだし、反省した。

 けれど、そのことは彼女たちにとってはよかったと思えた。
 本番を見ながら「とてもたくましくなったなあ」と感じたし、演技もはっきりと変わった。
 あれはなんだろ?
 私は体育会的な現場が大嫌いだ。
 精神的に追い込むとか、そんなことで変わるなんてのは勘違いだ。
 けれど、他人から見えてることを指摘する、されることは必要なんだよね。
 
 演劇はどうしたって人間が出てしまう。
 演技にもそうだし、作品を書く立場であれば文字にも現れる。
 だから自分の中にある根本的なところと闘わないと、変れない部分は確実にある。

 ただの結果としての話だけど、まあ、今年の公演はそういう意味でも意義があったね。
 本当、上手になったし。

 もちろん、これからが勝負だ。
 経験から得た発見を、きちんと各々が内面化して、解決していかなければいけない。
 そうすれば半年、いや、一年後にもっと大きく変化するのではないかと期待している。
 
 
 彼女たちはよくなったけど、私は自分の中で勝手にダメージを受けてしまったようで、それが今になってじわじわ効いている。
 人に吐く言葉は自分に返ってくるのだ。
 大人にはこれがキツイね。
 3人はまだまだ変われる年齢だけど、私は……大変なんだよねえ。
 
 いいや。
 成長できる大人になればいいんだしね。
 なんなら背も伸ばそう。牛乳をいっぱい飲もう。
 
 ちょっとくだらないことを書く。

 終わって片付けをし、打ち上げをした次の日。
 午後になってから私は起きた。
 夜に人と会う約束をしていたので、それまでのんびりしようと思っていた。

 と、大村わたるから連絡があった。

 彼も歪のメンバーと同じで、私の「俳優育成講座」に参加していた。
 その後、土田英生セレクションにも出てもらった。
 以来、時々、お茶を飲んだりする仲だ。
 最近は活躍している。

 とてもナイスガイなのだが、どことなくズレている男だ。
 イケメンなのだがそうは見えなかったり、真剣に喋っている言葉が嘘くさかったり、変なことを気にしたり、あるいは気にしなければいけないことを気にしなかったり……まあ、簡単にいえば変わっている男なのだ。
 
 で、彼は歪を観にきてくれ、その時にまたお茶を飲もうと言われていたのた。
 私がゴロゴロしていると彼からメッセージがきた。
 お茶飲みましょうと書いてある。
 そこでスケジュールをやりとりしたら、合う日がないことがわかった。
 今日だったら19時までなら空いていると伝えると、30分後に彼は下北沢にやってきた。
 
 大村わたるは人懐っこい男だ。

 例えば、会って喋っていたとして、帰ろうということになって歩いていると、なぜかついてくる。
 よく訓練された盲導犬のようについてくる。
 しかも距離が近い。

 私も実は人と別れるのが苦手なので、私と大村わたるが会うと、「じゃあ、またね」と言ってから30分は意味なく一緒に歩くことになる。
 しかも私も距離が近いので、私とわたるは寄り添って歩く。
 はたから見たらきっとおかしな光景だ。

 そして……。

 彼と会うと必ずされる会話がある。

「お腹空いてる?」
「少し、ええ、そうですかねえ」
「何が食べたい?」
「そうですねえ……パスタとか」

 これはもう「大村わたる会話」のテキストに載せてもいいくらい決まったやりとりだ。
 今後も出てくるのでこの会話をAとしておこう。
 そうすればそのくだりが出てくる時はAと書けば済む。

 そういえば土田英生セレクションの稽古中も何度もAの会話が交わされた。
 で、実際にパスタを食べたことも何度かある。
 
 しかし、問題はパスタを食べる場所が見つからない時だ。
 土田英生セレクションの稽古帰り、吉祥寺を私とワタルくんは歩いていた。
 きっと、この時も距離が近かったと思う。
 
 Aの会話をした。
 しかし、見つからなかった。
 ところで私はタイ料理が大好きだ。
 で、その時はふと美味しそうなタイ料理の店を見つけた。

「タイ料理は?」
「あ、結構、好きです」
「じゃあ、いい?」
「はいはい」

 で、結果は……どうも彼は辛いのがダメだったらしく、水ばかり頼んでいた。
 私はお金を払いながら、なんだか申し訳ない気持ちになった。

「いや、好きなんです、本当、でも、辛かっただけで……」

 と、彼も何度も言っていた。
 
 で、この前だ。
 下北沢で会っですぐ、Aの会話をした。
 しかし、やはりパスタの店が思いつかなかった。
 よく私が行くタイ料理はどうかと聞いてみた。
 その店は辛くないのだ。

「辛くなかったらいいんだよね?」
「そうなんですよ」

 で、彼は辛くないものを頼んだ。
 ……しかしだ。
 私がすっかり食べ終わっているのに、彼は全く箸が進んでいない。
 相談もあると言っていたので、私は早く店を出て、お茶でも飲もうと思っていた。
 
「早く食べなよ。コーヒー飲もうよ」

 と、彼は言った。

「……土田さん、これ、食べます?」
「え? ダメだったの?」
「はい」

 そうなのだ。どうもお口に合わなかったようだ。
 辛くないのに……。
 もう、これからは絶対にワタルくんとはパスタしか食べないと決めた。

 そして別れる時、私が渋谷まで行くと伝えると、やはり彼も渋谷まで一緒に電車に乗った。
 ……おかしな男だ。
posted by 土田英生 at 05:48| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月01日

『夢叶えるとか恥ずかし過ぎる』本番間近

 8月になってしまった。
 歪[ibitsu]の公演、『夢叶えるとか恥ずかし過ぎる』の本番が近づいてきた。
 だからはっきりいって宣伝だ。

 5日(金)から7日(日)までのたった3日間の公演。
 会場も小さいので5日は前売がなくなってしまった。
 けれど、6日、7日はまだまだ大丈夫だ。
 なので、皆さん、そちらへどうぞ。
 チケットの予約はここからできます。
 
 コリッチ・チケット予約→
 
 予約してもらえれば、当日に会場へきて、その場でお金を払って観てもらうだけですので。
 上演時間も75分くらいなので、夜に観ても帰りが遅くなることはないと思います!
 梅ヶ丘は小田急で新宿から15分。
 駅から会場の梅ヶ丘BOXまでは徒歩1分です。

 今日は通し稽古をした。
 で、驚いた。
 ……短いな。それでも見応えはあるけど。

 まあ、私があまり長い芝居が好きではないというのもある。
 だいたい、昔、MONOで55分というのがあって、その時はアンケートに「さすがにもう少し長くやってください」と書かれた。最近、だんだんと上演時間が延びてきて、前回のMONO公演、『裸に勾玉』やその前の『ぶた草の庭』などは1時間50分くらいあった。
 
 私は人の言い合いとかが大好きだ。
 別れ話とか、先輩の自慢話をうんざり聞いている後輩の姿などは最も嬉しい。
 だから普段もカフェなどで隣の会話に聞き耳を立てて情報を収集している。
 だいたい、私がコーヒーをトレイに乗せてウロウロしているのは、揉めている人などがいないか探しているからだ。
 そしてイヤホンをして音楽をかけずに聞いている。
 隣の人たちは安心して喋る。
 けれどあまりの話の衝撃に「え!」と声を出して隣を見てしまい、とても気まずい時間を過ごしたこともある。
 
 今回の『夢叶えるとか恥ずかし過ぎる』は売れいないまま20代後半になってしまったアイドル志望の女性たちが、控え室というか、そういう場所で喋っているだけの話だ。
 そこで展開されるのは嫉妬やお互いに対する不満、そして抱える悩みなどについてだ。
 アイドルという設定ながら、それは私はこれまで聞いてきた様々な会話が反映されているし、また、そこに今回の役者たちに実際に聞き取った内容も盛り込んでいる。
 テーマはない。
 描いているのは「他人との関わり方」や「現実と想いのギャップ」などだ。

 生きるというのはとても難しい。
 ましてや、幸せに生きることはさらに難しい。
 一人でいることは無理だけど、他人と関わることも簡単ではない
 そして、他人と共に幸せな状態でいることは……本当に難しいのだ。

 そんな人の有様を描いているのだと思う。
 きっとそうだ。

 いや、ほんと、そうした人の不器用さを覗き見るつもりで観に来てもらえたらと思ってます。
 どこか思い当たったりしてもらえると思うんですけどね。特に女性は。
 女性三人の芝居が中心になり、そこにMONOの尾方くんと私が絡む形で話は進みます。
 
 待っておりますので!

 歪サイト→

 残りの稽古を頑張ろ。

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posted by 土田英生 at 04:33| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月31日

完全に逆転

 またしても昼夜逆転の生活をしている。
 夜は色々と作業をしたり、考えたりしている。

 今は締め切りの書き物はない。
 長らくかかった小説も初稿を脱稿して、校正をしてもらっているので、それが戻ってきてから書き直す。
 けど……原稿が戻ってくるのが怖いね。

 ああ、才能がないのがばれてしまう。

 これまで戯曲と脚本ばかり書いてきたので、台詞は書けるのだが、描写ができないのだ。
 台本なら「もてそうな男性が出てくる」などとト書きを記して、あとは台詞を書くだけでよかった。いや、「もてそうな」などということすら書いたこともないね。「男が出てくる」だけであとは台詞に頼っていた。
 けれど、小説ではどんな人なのか説明しなければいけないのだ。
 これが……もう、書いていて猛烈に恥ずかしかった。
 形容詞などをつけて書いても、簡単な言葉になってしまう。
 で、慌てて凝った表現を考えるのだが、今度は恥ずかしくて書けない。
 すごいね、小説家。

 あとは秋にやるリーディングの台本の構想を立てているのと、来年やる舞台の台本を今年の夏に書かなければいけないので、その準備だ。あ、来年のMONOの新作も構想をまとめなければいけない。
 けど、あんまり進んでないね。
 公演が近いので、その準備に追われている為だ。

 歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」。
 稽古は残り一週間を切った。
 梅ヶ丘BOXは小さい会場なので、あまり大げさな芝居はできない。
 だからこそ細かいところまで気を配らないといけないのだ。
 
 面白くなってきてるんだけどね。
 ただ、日によってできが全然違うので、精度を高めないといけない。
 まあ、繰り返し稽古をするのみだけど。

 三日間だけの公演なのだが、5日、金曜日は前売りがなくなったみたいなので、できれば土曜、日曜にきてください。この2日は昼、夜共にまだ大丈夫です。特に夜の公演は余裕ありますので、ぜひ。
 上演時間も1時間半以内だし、梅ケ丘は小田急線で新宿から15分です。しかも駅から歩いて1分!

 お待ちしていますね。
 歪のサイトからチケットも予約できますので。
 →歪サイト

 創作日誌も書いてますので、こっちも読んでください→創作日誌

 ということで、稽古が昼間なのにこんな時間まで眠れない。
 寝ないとね、なんとかして。
posted by 土田英生 at 05:21| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月26日

全く書いていなかった

 こっちを全く書いていなかった。
 仕事などでバタバタしていた上に、ブログ的なものをココに書いていたのですっかり更新した気になっていた。
 
 これから随分と直すと思うが、書いていた小説の初稿がほぼあがった。
 締め切りを15回以上、遅らせてもらった。
 しかも途中、全く連絡していない期間もあった。

 そもそも話をいただいたのはもう二年以上前になる。
 その時は、半年後に出しますと約束をしながら、そのまま一年以上が過ぎてしまった。一応、3分の1くらいは書いてはいたのだが、なんか気が乗らないまま止まってしまっていた。
 去年、改めて「どうしましょうか」という話になり、そこまで書いたアイデアは全て捨てて新たに書くことになった。それから……約束しては書けずに延ばしてもらい……それを繰り返していたのだ。
 本当ならそれも5月くらいには終わっているはずだったのに。
 
 普段は戯曲や脚本しか書いてないせいで、なかなか馴染めなかった。
 いや、まだ完全には終わってないしね。
 
 歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の改訂は数日前に終わった。
 稽古には毎日行っている。
 おかげで随分と助かっている感じだ。
 芝居は面白い。
 だから皆さん、きてくださいね。
 あ、5日だけ前売りが残りわずかなので、できれば6日、7日だと助かります。
 情報はこちらです!→
 
 前に人生の谷間だと書いた気がする。

 ……実際にその通りだ。現実に様々な問題が私の肩の上に乗っかっている。
 そう書くと「どうしたんですか?」ということになるが、まあ、大したことじゃないね。
 誰でもそれぞれ問題や悩みは抱えているしね。
 いや、そういう気分になってきただけかも。
 状況に慣れてしまって麻痺しているのかもしれない。

 でも、そんな時こそ周りを見ないとね。
 余裕がなくなると、どんどん内側に入っていく。
 そういう性格でもあるし、特に何か書き物をしている時は、余計にそれがひどくなる気がする。
 自分のことばかりになってしまう。

 けど、少しそこから抜けてきた。
 きっかけは二つあった。

 一つは友達とちょっとした言い合いになり、その時は自分の言いたいことがうまく伝わらないもどかしさでいっぱいだったのに、次の日になると自分に対する反省が押し寄せてきた。
 で、冷静になった。
 そうだな。
 俺、ダメだな、これでは。……そんな気になった。
 
 もう一つは一週間前くらいだ。

 稽古にいく前に歪のメンバーからLINEがあった。
 スマホを稽古場に忘れたという。
 その稽古場は下北沢にあり、その日の稽古は阿佐ヶ谷だった。
 だから私が代わりに取ってきてあげようと思った。

 その稽古場に連絡を取ると、12時半以降なら大丈夫だということだった。
 しかし、稽古は阿佐ヶ谷で13時から。
 12時半に受け取って、そこから急いだとして少し遅刻してしまう。

 12時15分くらいにそこまで行って待機していた。
 すると20分にはスマホを受け取ることができた。
 電車を調べる。
 井の頭線で吉祥寺、そこから総武線で阿佐ヶ谷。
 乗り換え時間は4分。
 それなら間に合うということがわかった。

 私は急いだ。
 予定通りの電車に乗れた。
 これで間に合う。
 
 目の前には小さな女の子がいて、横にはおばあさんが立っていた。
 と、おばあさんが私に声をかけてきた。

「これ、吉祥寺まで行きますか?」

 私は行きますよと答えて、目が合った女の子にも微笑みかけた。
 女の子は照れてうつむいた。
 列車は順調に走る。
 彼女はドアの前に立ち、手すりに手を突っ込んで遊んでいた。
 電車がすれ違ったりすると「うわ、電車」などとおばあちゃんに言ったりする。
 微笑ましい。

 と……

「痛い……抜けない」

 と、女の子が慌てだした。
 見ると、手すりの間に腕が入ってしまい、抜こうと思っても抜けなくなってしまっていることがわかった。
 おばあちゃんは女の子の腕を掴んで引き抜こうをするが、「痛いよ」と女の子は叫んで泣き出してしまった。
 と、おばあちゃんは私を見た。

「ああ、どうしましょう、どうしましょう」

 自分でも驚いたのだが、明らかに自分の頭の中で「カチ」っという音がした。
 気がつくと、私は女の子の横にしゃがみ、頭を撫でながら大きな声で喋っていた。

「大丈夫だからね。お兄ちゃんが……いや、おじさんだね……ついてるからね。力を抜いて。だって、入ったんだから絶対に抜けるよ。大丈夫だからねえええ」

 私の口からあんなに高い声が、しかもちょっとしたオモシロトーンで出るとは驚きだ。
 女の子は頷く。
 ……しかし、汗をかいているためか、手すりに引っかかってしまい、どうやっても女の子の腕は抜けなかった。
 女の子はさらに泣く。
 横に立っていた大学生くらいの男子もとても優しく女の子を慰め始めた。
 おばあちゃんはオロオロしてパニック状態になっているだけだ。
 
 おかしな光景だった。
 私とその大学生が二人で女の子を励まし、そしてなんとか腕を抜こうと奮闘していた。
 後ろではおばあちゃんが「ああ、どうしましょう」と騒いでいる。

 どうやっても抜けない。
 
 電車が永福町に到着した。
 私は叫んだ。

「駅員さん呼んでください!」

 しかし、駅員さんは見当たらない。
 おばあちゃんはノックしたらいいですかね、と、まだパニック状態が続いている。
 私は電車を降りて、運転席まで行った。
 窓を叩き、「女の子の腕が手すりに挟まってるんです!」と伝えた。

 アナウンスが流れ、列車は停車したままになった。
 運転手、そして駅員さんが二人やってきた。
 私と大学生を加えた、五人が女の子を取り囲む。
 女の子がふとした拍子に腕の角度を変えた。
 今まではそうしようとすると「痛い」と泣いていたのだが、たくさんの人集まってきてびっくりしたせいか、腕を動かしたのだ。

 と、するりと腕は抜けた。
 歓声があがる。
 おばあちゃんも喜んでいる。隣に座っていた女性も「ああ、よかったねえ」と女の子に言った。

 そして運転手さんは戻り、列車は走り出した。

 すると、永福町から乗ってきた子ずれの母親が私に言った。

「いやあ、うちの子も、そこに手をすぐに入れるんですよ」

 ……父親だと思われたようだ。

 説明するのも面倒なので「この子も懲りたでしょう、はははは」と話を合わせた。

 「お客様対応により、遅れて運行しております」というアナウンスがなんども流れる。
 
 おばあちゃんはその度に「すみません」と謝っていた。

 で、吉祥寺に着いたのだが……乗り換えには間に合わずに遅刻してしまった。

 けれど、あの「カチ」っというスイッチのせいで私はなんだか元気になった。
 
きっと、自分のことばかりになっていたのに、スマホを取りに行き、女の子と関わったせいで、他人に目が向いたんだと思う。

 あれから随分と踏ん張りがきいている気がする。
 
 どこまで持つかわからないけど、このまま乗り切ろう。
posted by 土田英生 at 05:34| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月15日

開く!

基本的に毎日「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の稽古をして、他の時間は書き物をするという毎日だ。
稽古はとても地味にやっている。
その辺りの過程はこっちに書くことにした。まあ、公演が終わるまでの期間限定だけど。→「土田英生の創作日誌」

稽古していて、役者をどう開いてもらうかで悩んでいる。

役者は自分の経験や感覚に置き換えて理解して演技をしようとするが、知識や想像力がないと小さな理解しかできない。自分が見て信じている世界が全てではないのだ。
だから、役者自身にも開いてもらわないといけない。
自分の思い込みを自覚し、その自分を編み変えてもらうことも必要になる。
けれど、役者は無意識に抵抗してしまう。
まあ怖いしね。

その恐怖を押しのけ、未知の自分に出会っていける人は、どんどん伸びていく。
今の自分にしがみつく人は変化していけないし、何も発見しない。

社会もそうだなと思う。
開く動きがあれば、必ずそれに抵抗して閉じようする動きが出てくる。

明らかに今はそうした力が働いている。
なんで、こんなに日本、日本とうるさいんだろ?
確かにここは日本と呼ばれる国で、そこに問題があればよりよくしていけばいい。
問題を具体的に考えるのはいい。
というより、考えなければいけない。
だけど、そこを飛び越し、いきなり「日本人の精神性」だとか、そういうところに考えが行ってしまうのは違うと思う。
それは明らかに自分を守るだけの……つまり閉じる動きだ。

テレビを見ていても、やたら日本人をフィーチャーした番組が多い。
世界に行って日本人に会ったり、逆に外国から来た人たちに日本の魅力や独自性を語らせたりする。
日本であるとか、日本人であるとかいう事実に極端にこだわるのは閉じようとする力だ。

私だって日本で生まれて育った。愛知県だったので、何にでも味噌をつけて食べ、パンにはアンコを塗って食べていた。そしてそれは今でも好きだ。食べると「ああ美味しい」と思う。
けどね、それは慣れ親しんだものだからであって、その食文化が特に優れているわけでもない。

私は10年前にイギリスに留学していた。
皆は「イギリスって食べ物まずいんでしょ」と言う。
今はそんなことはない。けど、問題はそこではない。

私は今でも時々無性にイギリスのソーセージが食べたくなることがある。パン粉とひき肉、それにハーブなどが入っている太いソーセージ。なかなか日本では売ってない。あれは特別美味しいものなんだろうか?
私は大好きなのだが、食べ物として優れているのかどうかは分からない。

留学していた時、よくソーセージ&マッシュを食べた。大量のマッシュポテトに大きなソーセージが二本どんと乗っていたりするだけのものだ。けど、一年留学しただけの私でもあの味を懐かしく思い出したりする。食べたい食べたい。
わたしにとってはあんトースト並みに好きなものだ。

話がそれた。

外国のこういうところが素晴らしいと話すと、途端に不機嫌になる人がいる。そして反論のように「でも、日本だってこうですよ」的なことをアピールしてきたりする。いや、分かってるって。私だってここで生まれ育ったんだから。
けど、どこの国にもいいところがあり、悪いところがあるだけの話だ。
さらにいえば、日本人はどう、イギリス人はどう、韓国人はどう、中国人はどう……そんなことどうでもいいよという気分だ。

私は日本人で嫌いな人たちもたくさんいる。
それより好きな人たちはたくさんいる。
そして……それはどこの国に行っても感じることだ。留学中だって嫌いなイギリス人もいた。けれど大好きなイギリス人はたくさんいた。
最近、韓国にいく機会も結構ある。
ソウルで何度も作品を上演してもらっているからだ。で、韓国にはとても仲のいい、信用できる演出家や役者が何人もいる。しかし仕事を一緒にしても仲良くならない人だってもちろんいる。それは日本で仕事をしている時と全く同じ比率だ。

〇〇人だからどうだということは全くない。

とにかく、大事なのは個人を鍛えることだ。
日本人であるとか、愛知県出身だとか、そうした外側で自分のアイディンティティを保つのではなく、自分自身の考え方であるとか、知識であるとか、恥ずかしい言い方になるけど生き方であるとか……そうした部分を鍛えて行けば、存在が不安になることはない。

私は最終的に開く動きが勝っていくのではないかと考え、そこに光を見出す。

時々、私はロンドンでとても仲のよかったサリーという女性のことを思い出す。
彼女はマンチェスター出身で、小学校の時はクラスはほとんど白人だったそうだ。
ある時、パブのテラスで私とサリーは一緒にランチをしていた。多分、私はビールを片手にソーセージ&マッシュを食べていただろう。
と、前の道を黒人と白人のカップルが通り過ぎた。
アジア人と白人の混じったグループが談笑していた。
サリーはポツリと私に言った。

「美しいね」

……確かに開くことは怖い。
しかし、開きたい。
もちろん全部開き切ってしまったら、真っ白な世界に漂うだけになってしまうけど、限界まで開き、いろいろな考えを受け入れたい。
きっと、そこには美しいものがあるはずだし。

社会も役者も……開かないとね。

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全然関係ない写真になってしまった。

稽古場は事務所から歩いていける場所にある。
毎日、途中のローソンで買い物をする。
今日は唐揚げの梅しそ味とアイスカフェオレを買った。
そして稽古場に着いて、とりあえず荷物を置いた。

私はリトルシガーと呼ばれる、タバコ型の葉巻を吸っている。
カフェオレとリトルシガーは合うのだ。

私は外の喫煙スペースでカフェオレを飲みながらゆっくりしようと思った。

……で、外に出て気がついた。
私が手に持っていたのは唐揚げだった。
どっちもプラスチックカップだったので間違えたようだ。

残念ながらリトルシガーと唐揚げの梅しそ味は合わない。

……いくら開いて自分を変えようが……どうもそれは無理だね。
posted by 土田英生 at 04:46| 東京 🌁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月05日

きれいごとを言わせてもらうけど

 今は歪[いびつ]公演「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の稽古中。
 別の仕事もあったり、様々な問題もあったりするので、それらと並行しながらやっている。

 昨年、カフェで公演した「ソラミミホンネレソラシド」をベースにしつつ、そこに別の角度からの光を入れて新たしい作品にしようと試みている。
 20代の女性三人が会話するだけの舞台だった前作は、もともとは出演者たちにインタビューして彼女たちの本音を滑り込ませてそれをフィクションにした。今回は登場人物を二人増やすことで、別の構造を創っている。少しだけ枠組みをずらしたりすることで、より大きなことが描けたりする……はずだ……と、私は睨んでいるのだが、どうなるのか。ま、面白いものになるんだけどね。

 で……ここからは愚痴だ。

「土田さんの作品で次に観られるのはなんですか?」 

 と、ある人から聞かれたので私は歪の話をした。
 すると……。

「いや、本格的なやつはいつあるんですか?」とその人は聞いてきた。

 私は感情が表に出るのを抑えて「どういう意味ですか?」と聞き返してみた。
 しかし、相手も私がムッとしたのを察したのだろう。
 慌てて「いや、MONOがいつなのか知りたくて」と質問を変えた。 

 ある後輩の劇作家からも似たようなことを言われた。
「なんか若い子たちとやってるんですよね?」
 ああ……。
 これは文章だと伝わらないけど、その人の言葉のトーンにはどこか軽いものが含まれていた。
 なんといったらいいのか、ちょっと見下した感じというのか。

 内容は間違いではない。
 《若い子たち》と《なんか》はやっている。
 正確に言えば、《二十代の女優たち》と《「夢叶えるのは恥ずかし過ぎる」という舞台》をやっている。
  
 なんだろ?
 少しムカつくんだよね、はっきり言って。

 いや、その人たちのいっていることは分かる。
 MONOだって小さな劇団だが、セットなどにもそれなりのお金をかけて製作している。そして東京や大阪、名古屋などでツアーをする。スタッフだってたくさんいるし、予算もかかっている。動員だってそれほど多くもないが、それでも一定のお客さんが観に来てくれる。
 MONOはずっと続けている劇団だし、そりゃ観に来て欲しいと思う。

 それに比べて……。
 歪というユニットは女優が三人で立ち上げたものなので、はっきりいって予算はないに等しい。
 セットにかけるお金もないし、ツアーもない。
 
 だけどね、私はいい加減にやっているわけではない。
 同じように力を入れ、同じように悩み、色々と頭を使い、面白い舞台を創ろうとしている。この舞台を誰に見られても恥ずかしくないし、どんな人にも観に来てもらいたいと思っている。
 もし、私の作る作品を好きだと思ってくれるのならなおさらだ。
 同じように観に来て欲しいと願っている。

 きれいごとを言わせてもらうけど、作品を創るのに、大きいも小さいもないのだ。

 ……ま、いいんだけどね。そういうことを人から言われると、「絶対に面白いものにしてやるからな。見てろよ、ちくしょう」という気持ちが増すだけなので。
 
 さて、愚痴はやめよう。
 
 みなさん、そんなこんなで、面白い作品なので……。
 ぜひ、来てください。日時指定の自由席です。毎回、50人くらいしか入れないので予約はお早めにお願いします。

 歪[ibitsu]公演
「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」
 8月5日《金》ー7日《日》
 梅ヶ丘BOX
 作・演出 土田英生
 出演 阿久澤菜々 高橋明日香 石丸奈菜美/尾方宣久《MONO》 土田英生

 チケットの予約はコチラからどうぞ。→
 
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posted by 土田英生 at 02:54| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月01日

人生の谷間で稽古開始

 誰にでも様々な場面で壁にぶつかる時期というのはあって、まさしく私は今そうかもなと思ってる。
 劇団のこと、自分が取締役を務める会社のこと、ここに書けない個人的なこと、各方面の問題が一気に重なってやってきてしまった。

 まあ、状況としては完全に人生の谷間だね。
 その谷間から空を見上げる。
 空も曇っている。
 社会の行き先を案じると、暗澹たる気分になる。
 
 私は普段、ほとんど政治のことなどもここに書かない。
 あまり熱心でもないしね。
 けど、さすがに怖いんだよね、今。

 みんなに余裕があれば、政治的なスタンスの差など問題ではない。
 大多数の人たちが、目先の個人的な幸せを求めている時は、あまり他のことは気にならないしね。
 ただ、現在は余裕がない。
 経済的にダメになってくると、人は他にすがるものが欲しくなる。
 これが自分だと言えるものが欲しくなる。
 まあ、それで……求める対象が『国』とかそういうことになっちゃうんだろうね。
 アイデンティティ探しをしちゃうんだよね。

 最も不安に思っているのは、急激に社会が閉じる方向に動いていることだ。

 とにかく基本的人権を制限するという方向にだけは行って欲しくない。
 すぐに演劇などの表現活動だって規制されてしまう。
 国にアイデンティティを求める人たちは、国のためには仕方ない、というけど……だってさ、国民主権だよ。国って私たち全員のことなんだよね。
 だったらなんのためにって話だよ。
 自分たちの首をしめてどうするんだろ。

 犯罪には手を染めないよう、みんなで決めたルールは守りながら、けれど誰もが好きなことをやって暮らす。もう、それだけですわ、私が願うのは。

 なんだか死ぬ間際の老人のつぶやきになってしまったけど、頼むよ。

 ……ま、そんな閉じた社会の中、谷間に落ち込んだ私はそれでも色々と自分のことも考える。
 このまま自分のいいように生きていきたい。
 けれど、現実はなかなか許してくれない。
 何かを捨てなければ、欲しいものなど手に入らないのだ。
 
 だから自分が何を望んでいるのかだけを考えてみる。

 人は自分を変えようとして、色々と考えてみるけれど、だいたいは変わらない。
 ああするのは◯◯という理由で無理、こうするのは××だから無理。
 すると結果、今と同じになってしまう。
 これまでだって自分なりのルールがあり、その範囲で生きている結果が今なのだ。
 だからそれを変えようとしたら、◯◯だから無理だと思っている、そのことを疑ってみることが必要なのだ。
 これまでだって、そうして私は様々な壁を乗り越えてきた。
 ……なんだか、妙に気取った言い方になってしまった。
 乗り越えてきた、だなんて。
 そんなに冒険家でもないくせに。

 けど、まあ、今回も乗り越えるんだけどね。

 まあ、こうして書いていると暗いことばかりのようだが、それでも創作意欲満々なのだ。
 遅れに遅れている原稿も次の締め切りまでには完成させる。

 さらにはちゃんと風呂上がりに意味なく踊るくらいは元気だ。
 目的のない腕立て伏せだってするし、口の中で舌をぐるぐる回して法令線解消だってしている。
 昨日は逆立ちをしてみたりしたし、夜中にダッシュもした。
 
 そして今日からは歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」の本格的な稽古が始まる。

 どんな状況にいたって、どんな規模だって、芝居を創るのは楽しい。
 自分の感覚を信じて、方法を考えて、ああだこうだと試してみる。
 と、愉快なものが出来上がるのだ。
 本当、不思議だ。
 ちゃんとやれば、絶対に面白くなるしね。
 
 谷間に気持ちのいい日が差してくれることを願う。
 さ、稽古に行ってこよ。

 あ、毎回客席が少ないので、ご予約はお早めに。
 人生を明るくする舞台にいたしますので。→公演情報

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 写真は松江で訪れた興雲閣。
 私の大好きな擬洋風建築だった。

 正面から入って二階の踊り場を見上げる。
 光が差していることに希望を持ちたい。
posted by 土田英生 at 11:22| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする