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MONO代表・土田英生のブログです

2018年10月29日

ゴドーとの電話(3)

しばらくウラジミールは行ったり来たりする。
そして自分から電話をする。

ウラジミール「もしもし」
ゴドー「あれ? もう電話もしないんじゃなかったのか?」
ウラジミール「……冷静に考えたんだよ。いい方法がある」
ゴドー「なんだよ?」
ウラジミール「え? お前もあれだろ? その、こうして電話はしたいんだよな?」
ゴドー「まあな」
ウラジミール「しかも……ゼロではない?」
ゴドー「なにが?」
ウラジミール「お前が駅に来る可能性」
ゴドー「ああ。そんなことはわからないからな」
ウラジミール「だとしたらだ。その、一回、『今から行くよ』と言ってくれないか?」
ゴドー「は?」
ウラジミール「今、お前は来たくない。それはわかってる。だからお前がな『今から行くよ』と言う、そしたら『俺が来なくていいよ』と言う」
ゴドー「なんだそりゃ?」
ウラジミール「そしたら俺はお前がくる気なんだと安心するし、お前も来なくて済むし一石二鳥だろ?」
ゴドー「嘘をつけってことか?」
ウラジミール「嘘っていうなよ。段取りだよ」
ゴドー「そのことになんの意味がある?」
ウラジミール「俺が待たされただけだという、その惨めさから俺は解放される」
ゴドー「行かなくていいんだな?」
ウラジミール「うん」
ゴドー「言うだけでいいんだな?」
ウラジミール「そうだ」
ゴドー「わかったよ。あの……今からさ」
ウラジミール「うん」
ゴドー「そっちへ行くよ」
ウラジミール「本当か?」
ゴドー「いや、本当ではない」
ウラジミール「待てよ! それを言うなよ」
ゴドー「ええ?」
ウラジミール「お前はあくまでも行くと言い続けないと」
ゴドー「だけど実際には俺は行かないんだから」
ウラジミール「……いくら段取りだからって、そんなにあからさまにネタバラシされたら、俺は惨めから解放されるどころか、さらに辛いだろ?」
ゴドー「そうなのか?」
ウラジミール「そういうもんだよ。だからさ、お前はあくまでも来ようとする。そしたら俺がこなくていいと言うから」
ゴドー「わかった」
ウラジミール「ほら」
ゴドー「ああ。あのさ、今から行くよ」
ウラジミール「本当か?」
ゴドー「本当だ」
ウラジミール「来る気になってくれたのか?」
ゴドー「あ、まあ」
ウラジミール「どうして急に?」
ゴドー「いや、それは……なんとなく」
ウラジミール「いや、嬉しいよ。待った甲斐があったよ」
ゴドー「待ってくれ。あの、ほら」
ウラジミール「え?」
ゴドー「俺、本当にはいかないからな」
ウラジミール「……」
ゴドー「え? だろ?」
ウラジミール「だから最後まで言い通してくれよ」
ゴドー「お前がいつまでも言わないから、来なくていいって」
ウラジミール「リアリティだろ?」
ゴドー「もう面倒くさいよ」
ウラジミール「それくらい付き合ってくれたっていいだろ?」
ゴドー「……」
ウラジミール「随分、譲歩した提案なんだから」
ゴドー「ううんんんん……」
ウラジミール「ま、それも嫌ならいいよ」
ゴドー「嫌じゃないけど、だいたい、お前が勝手に待ってるんだからさ」

ウラジミールはため息をつく。

ウラジミール「……そもそもの話になるけど、どうして俺が待ってるのか? 最初はエストラゴンと一緒に待ってた。でも、あいつは別の駅で待つと言い出した。だから俺たちは一人で待つことになった」
ゴドー「ああ」
ウラジミール「知ってるよ。エストラゴンにはお前が待っててくれと言ったんだろ?」
ゴドー「そうだ」
ウラジミール「で、お前はそこに行った」
ゴドー「うん」
ウラジミール「でも、電車には乗らなかった」
ゴドー「ま、ちょっとした諍いもあってな。それで俺は帰ってきた。随分と疲れて帰ってきた。もう誰かと待ち合わせるのは二度とごめんだとすら思ったよ」
ウラジミール「……その時電話くれただろ?」
ゴドー「したな」
ウラジミール「で、お前は言ったんだよ。エストラゴンとは電車には乗っていけない。けど、お前とはこれからも色んな意味で一緒だしなって」
ゴドー「言ったか?」
ウラジミール「言ったよ。だから、だから俺は待ってるんだよ」
ゴドー「待合せしようとは言ってないだろ?」
ウラジミール「そうだけど、あれは、ほら、待合せしてもいいという雰囲気だったよ」
ゴドー「お前は俺のせいで待ってると言いたいのか?」
(続く)

posted by 土田英生 at 20:29| 京都 ☀| 遊び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゴドーとの電話(2)

ウラジミールは帰ろうとするが、また戻ってくる。
電話が鳴る。

ウラジミール「もしもし」
ゴドー「まだいるの?」
ウラジミール「……迷ってる」
ゴドー「そっか」
ウラジミール「え? なに? くる気になったのか?」
ゴドー「いや」
ウラジミール「だったらなんで?」
ゴドー「退屈だろうから、楽しい話でもしようと思って」
ウラジミール「あのさ……」
ゴドー「退屈だろ?」
ウラジミール「そりゃそうだよ」
ゴドー「そこは寒くないか?」
ウラジミール「寒いよ」
ゴドー「大丈夫か?」
ウラジミール「なんだよ。なんでそんなに気を使ってくれるんだよ?」
ゴドー「そりゃ心配だからさ」
ウラジミール「……だったら来てくれよ」
ゴドー「出たよ。また、それか? こっちかせっかく心配してやってるのに、どうしてそればかり言うんだよ?」
ウラジミール「だって来てくれたら、電車に乗ってさ、一緒に暖かい場所も行けるんだよ」
ゴドー「……いや、行くのは無理だよ」
ウラジミール「どうして?」
ゴドー「その気になれないからさ」
ウラジミール「だったら電話なんかしてくるなよ」
ゴドー「わかったよ。こっちは心配して電話してやってるのに。そんな風に言うなら電話もしないよ」
ウラジミール「……」
ゴドー「そうするよ。切るよ」
ウラジミール「え? でもさ、くる気になる可能性はどうなんだ?」
ゴドー「何度も言ってるだろ? ゼロじゃないし、そんなことは誰にもわからない。ふと、行きたくなるかもしれないし。でも、お前がそれを聞いてくる度に俺の行く気はどんどんなくなるんだよ」
ウラジミール「じゃ、黙って待ってたらいいのか?」
ゴドー「そう。普通にな」
ウラジミール「普通ってなんだよ?」
ゴドー「だから、お前はそこで楽しんでもらって、で、時々こうして電話でしゃべっていよう」
ウラジミール「……」
ゴドー「お前だって喋るのは嫌いじゃないんだろ? ほら、なんというか、俺とお前はこうして喋ると相性もいいし」
ウラジミール「だけど寒いんだよ、ここ」
ゴドー「なんか着たらどうだ?」
ウラジミール「ないよ、なんにも」
ゴドー「そっか……それは辛いな。風邪ひかないようにな」
ウラジミール「だけど、ほら、来てくれたら解決するんだよ」
ゴドー「あ! また、言った」
ウラジミール「だってそうだろ? わかった。じゃ、こうしよう。来るのは来てくれ。でも、電車に乗るかどうかはそこで決めればいいだろ?」
ゴドー「駅に行ったら電車に乗ることになるだろ?」
ウラジミール「そんなのはお前の自由だよ」
ゴドー「おいおい。俺をまるめこむのはやめてくれよ。駅まで行って電車にのらないなんてこと、ないだろ? お前、絶対に俺を電車に乗せようとするよ」
ウラジミール「しない」
ゴドー「信じられないね」
ウラジミール「……」
ゴドー「それに……駅まで行った時には俺も電車に乗るよ」
ウラジミール「わかった。譲歩するよ。今、なにしてる?」
ゴドー「楽しくお前と話してる」
ウラジミール「いや、電話する前は?」
ゴドー「まあ、わりと退屈なしてたかな」
ウラジミール「退屈だったの?」
ゴドー「まあな」
ウラジミール「着替えたりは?」
ゴドー「してない」
ウラジミール「せめて時刻表を調べてみたり」
ゴドー「(笑って )そんなことするかよ」
ウラジミール「じゃ、出かけるとしたら、あの服着ようとは考えたりしてみた?」
ゴドー「どうだろうなあ。それくらいは考えたかもしれない」

間。

ウラジミール「俺、思うんだけど」
ゴドー「なに?」
ウラジミール「来る気はないよな?」
ゴドー「今はな」
ウラジミール「この先は?」
ゴドー「だからさ……」
ウラジミール「わからないんだよな? そんなことは」
ゴドー「その通りだよ」

ウラジミールは深呼吸して、

ウラジミール「俺、帰る」
ゴドー「え?」
ウラジミール「もうゴドーを待つのはやめる」
ゴドー「そっか。そりゃそうだよな。そこは寒いだろうし、俺がお前でも辛いだろうなと思うよ」
ウラジミール「じゃ、そうするよ」
ゴドー「わかった。また、電話するわ」
ウラジミール「……あの、それも全部なしだ」
ゴドー「電話も?」
ウラジミール「うん」
ゴドー「一回も?」
ウラジミール「金輪際だ」
ゴドー「まあ、それは仕方ないけど……そんなことできるか?」
ウラジミール「そうしないとしないと俺はこの寒い駅でいつまでも立ってることになるだろ?」
ゴドー「それは理解できるよ。でも、電話までやめるっていうのはなんなんだよ?」
ウラジミール「俺のプライドだ」
ゴドー「え?」
ウラジミール「そうだろ? 待合せしてだ。いや、お前はそのつもりじゃなかったと言うけど、とにかく俺は駅で待ってた。でもすっぽかされたんだよ。なのに電話で楽しい話だけするなんて無理だろ」
ゴドー「すっぽかしてはないよ」
ウラジミール「すっぽかしただろ?」
ゴドー「今は行く気になれないって言っただけだろ?」
ウラジミール「それはすっぽかしたってことなんだよ」
ゴドー「なんだよ、それ」
ウラジミール「じゃ、電話切るからな」
ゴドー「ああ……」

ウラジミールは電話を切る。
そして思い切り伸びをする。
そして帰っていく。

しかし……しばらくするとまた戻ってくる。

(続く)
posted by 土田英生 at 18:56| 京都 ☀| 遊び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゴドーとの電話

ウラジミールが立っている。
自信に満ちた表情。
笑顔にすら見える。
と、電話が鳴る。

ウラジミール「もしもし」
ゴドー「あ、ゴドーだけど。何してるの?」
ウラジミール「いや、取り敢えずゴドーを……つまりお前を待ってるんだけど」
ゴドー「あ、そっか」
ウラジミール「そっか? え? なに?」
ゴドー「いや、そのことなんだけど……俺、行けないかも知れないんだよね」
ウラジミール「え? なんで? 来てよ。待ってるのに」
ゴドー「……あ、でも、うん、でもねえ……」
ウラジミール「どういうこと?」
ゴドー「その気になれないんだよね」
ウラジミール「は?」
ゴドー「うん、悪いんだけど」
ウラジミール「なんだよ、それ」
ゴドー「でも事実そうなんだよ」
ウラジミール「……じゃ、もう待合せ自体をなしにしよう。ここで待ってるの辛いし。それでいいよね?」
ゴドー「いや、行く可能性はゼロではない」
ウラジミール「どういうこと?」
ゴドー「言葉通りだよ。ゼロではない」
ウラジミール「じゃ、待ってていいの?」
ゴドー「待ってていいっていうか……」
ウラジミール「来ないの?」
ゴドー「今はね」
ウラジミール「今は? あとで来るかもしれないってこと?」
ゴドー「そういうことかなあ……うんん……」
ウラジミール「すぐ?」
ゴドー「すぐじゃない。すぐは無理」
ウラジミール「ああ。じゃ、まあ、一応、待ってるよ」
ゴドー「いや、待たなくていい」
ウラジミール「は?」
ゴドー「待たれたくはないんだよ」
ウラジミール「でも、もう待合せ場所にいるんだよ。てことはさ、俺、待ってる状態なんだから」
ゴドー「意味がわからない」
ウラジミール「わかるだろ? 俺の選択肢は待つか待たないかしかないだろ?」
ゴドー「待たずに普通にしててくれ」
ウラジミール「普通って……だけど、待ってるからさ」
ゴドー「じゃ、電話でこのまま話してるっていうのは?」
ウラジミール「そんなことより……来るのか来ないのかはっきりしてくれれば」
ゴドー「はっきりなんてできないよ」

やや間。
ウラジミールは息を吸ってから、

ウラジミール「……あのさ、絶対に来られないなら待合せはなしにするしかないよ」
ゴドー「おい、脅さないでくれ」
ウラジミール「脅してるつもりはないけど」
ゴドー「そんな風に聞くのって、なんか、ひどいよ。暴力だよ」
ウラジミール「そんなつもりはないけど。……ごめん。じゃ、来る可能性があるかどうかだけでも教えてよ?
ゴドー「そんなことわからないよ、俺にも」
ウラジミール「でも、それだと困るんだよ」
ゴドー「なんで?」
ウラジミール「なんでって? 一回、待ち始めちゃったからさ」
ゴドー「だからなに?」
ウラジミール「待つことになったんだから、お前が来るのか来ないのかだけでも知りたいし」
ゴドー「だけど、そもそも俺は待合せしたつもりないけどな」
ウラジミール「は? ないの?」
ゴドー「うん」

ウラジミールは気分を落ち着けてから、

ウラジミール「……じゃ、俺の勘違いだったんだね。わかった。もういっさい待つのはやめる。で、帰るよ」
ゴドー「帰る?」
ウラジミール「うん。もう二度と戻って来ない」
ゴドー「(笑って)それは大げさだよ。普通に待っててよ」
ウラジミール「普通に待つって?」
ゴドー「だから早く来いとか言わずに」
ウラジミール「じゃ、来る確率とかは?」
ゴドー「それもわからない」
ウラジミール「でも、じっと駅で立ってる身になってよ」
ゴドー「まあ、それは辛いだろうけど」
ウラジミール「俺の気持ちわかるだろ?」
ゴドー「……けどさ、そんな風に言われて困ってる俺の身にもなってくれよ」
ウラジミール「よし、いいよ。一つだけ教えてくれ。……来る気はあるの?」
ゴドー「……」
ウラジミール「それもわからないの?」
ゴドー「難しいなあ」
ウラジミール「難しくないだろ? 来るつもりがあるのなどうかだけでも教えてくれよ。だって、実際に、俺はここで待ってる羽目になってるんだから」
ゴドー「そんな風に待ってるとか言わない方が行く気になるかもしれない」
ウラジミール「そうなの?」
ゴドー「うん」
ウラジミール「わかった」
ゴドー「普通にしててよ。俺も普通にしてるから」
ウラジミール「でも、俺はさ……ま、いいや。わかったよ。なるべく普通にしてるよ」

間。

ゴドー「ふふふ。聞いてくれよ。この前、面白いことがあって。俺がエストラゴンと待合せしてた時にね……」
ウラジミール「待って。なんの話?」
ゴドー「いや、普通に楽しい話を……」
ウラジミール「いやいや、そんな話はいいからさ。今、来るのか来ないのか」
ゴドー「またそれ?」
ウラジミール「だって……」
ゴドー「今は行けないって言っただろ?」
ウラジミール「でも、待ってるんだし」
ゴドー「待ってるとか言うなって」
ウラジミール「……ええ?」
ゴドー「さっき言っただろ? わからないんだから」
ウラジミール「でもさ、なんか、ほら、手がかりとかあるだろ? ちょっと着替えようとしてるとか、少し来てみようという気になったとか」
ゴドー「それは変わってない」
ウラジミール「え? じゃ、来ないの?」
ゴドー「だからわからないって」
ウラジミール「でもさ、俺、待ってるからさ」
ゴドー「そんなこと頼んだ覚えないんだよ」
ウラジミール「……わかったよ。じゃ、もう待合せはなしで、電話も切る」
ゴドー「電話くらいいいだろ? もう少し話してようよ」
ウラジミール「来ないのに、電話でだけ話してるっていうのも」
ゴドー「そっか。そうなのか……じゃ、また、今度電話するよ」
ウラジミール「いや、もう電話もしない」
ゴドー「ええ? それはなに?」
ウラジミール「だって、待ってるのに、また電話って言われても」
ゴドー「じゃ、どうしたらいいんだよ?」
ウラジミール「だから一回来てみるとか」
ゴドー「今は無理」
ウラジミール「だったら、電話でいいから。来るのか来ないのかだけでもだけでも」
ゴドー「しつこいなあ……だからわからないって」
ウラジミール「じゃ、来る努力だけでもしてみてくれよ」
ゴドー「努力か……」
ウラジミール「そうしたら俺も普通にしてる。待ってるとか言わない」
ゴドー「うん、じゃ、努力してみるよ」
ウラジミール「ありがとう」

間。

ゴドー「ふふふ。聞いてくれよ。この前、面白いことがあって。俺がエストラゴンと待合せしてた時にね……」
ウラジミール「待って。だからなんの話?」
ゴドー「普通に楽しい話を……」
ウラジミール「いや、そんな話してる場合じゃないだろ? 努力をさ……」
ゴドー「してるよ」
ウラジミール「ええ?」
ゴドー「そんなさ、努力ったってすぐには無理だよ」
ウラジミール「でもね、いい? とにかく俺は待ってるわけ。で、普通に話してるのはいいんだけどさ、いつかお前が来ると分かってるなら俺だって聞いてられる。だけど来ないかも知れないなら、そんな話は聞いてられないんだよ」
ゴドー「……ひどい。ひどいな。天秤にかけるのか?」
ウラジミール「え?」
ゴドー「俺が行かないなら話も聞けないって……そんな、そんな条件つけて……」
ウラジミール「待ってくれよ」
ゴドー「ひどい。お前がそんなやつだとは思わなかったよ、信用してたのに」
ウラジミール「いや、もちろん、話は話で聞く。けど、俺がここで立ってなくちゃいけない状況にあることも理解してくれよ」
ゴドー「それは理解してる」
ウラジミール「だったら、来てくれたらいいだろ?」
ゴドー「だからそれはもう話しただろ?」
ウラジミール「なんか、なんか違うよ。今、お前が来るつもりないことはわかってる。でもね、来ることに向けて努力だけでもしてくれたら、俺は普通にしてられるんだよ」
ゴドー「努力って、なにをしたらいいんだ?」
ウラジミール「来る気になるような、なんかだよ」
ゴドー「そんなの気分の問題なんだから、努力でどうにかなるもんでもないだろ?」
ウラジミール「は?」
ゴドー「無理だよ」
ウラジミール「話が違うだろ? さっき努力するって言ったろ?」
ゴドー「だからこうして話してる」
ウラジミール「これ、努力?」
ゴドー「まあ、そうかな」
ウラジミール「頑張って話してるの?」
ゴドー「いや、まあ、話すのは嫌じゃないよ。こうしてお前と話してるのは楽しいし」
ウラジミール「だったらとにかく来てくれれば……」
ゴドー「それとこれとは違うんだよ。行くのはちょっとなあ」
ウラジミール「え? だったら、絶対に来ないってことだな?」
ゴドー「それは、だから、誰にもわからないって」
ウラジミール「俺、どうしてたらいいの?」
ゴドー「だから待たずに、普通に……」
ウラジミール「……無理なんだよ。いいか? 一度、俺は待ってしまったんだよ。俺だって来なきゃよかったと思ってる。俺がここにこなかったら、もしかしたらお前がここに来て、俺を待ったのかも知れない」
ゴドー「まあな」
ウラジミール「だけどな、一回、待ってしまったんだよ、俺。そうしたら待つしかないだろ?
それを終わらせるにはさ、お前が来るか、それとも待合せがなかったことにするかしか方法ないんだよ」
ゴドー「……」
ウラジミール「わかるか?」
ゴドー「まあ、わからないでもないけど」
ウラジミール「そんなに来たくないのか?」

ゴドーは珍しく暗い声で、

ゴドー「……俺、エストラゴンと待合せしてたんだよ。で、実際、そこには行った。自分から待合せ場所に行ったんだよ」
ウラジミール「……知ってるよ」
ゴドー「でも、そこから帰ってきたばかりなんだ。疲れてるんだ。だから今は行きたくないんだよ、実際の話が」

間。

ウラジミール「……いいよ。だったら待合せはなかったことにしよう」
ゴドー「また脅しか?」
ウラジミール「違うよ。俺も待ちたくない。そして俺だって待たれてたりするかも知れない」
ゴドー「じゃ、俺を待つのはやめて、お前がそこに行けばいいんじゃないか?」
ウラジミール「そういう話じゃないだろ? それにそんなことお前が言うことじゃない」
ゴドー「そう?」
ウラジミール「そうだろ? これは俺とお前の問題なんだから」
ゴドー「……うんんんんん……」
ウラジミール「簡単なことなんだよ。来る気が少しでもあるなら俺は待つ。いや、待っている感じすら見せず普通に立ってる。でも、絶対に来ないなら待合せ自体をないものにするし、ゴドーを待ちながら何かをするという、その行為自体とさようならをする」
ゴドー「(笑って)大げさな言い方して」
ウラジミール「大げさじゃないよ……」
ゴドー「いったい、俺はどうしたらいいんだよ?」
ウラジミール「だから……もうわかるだろ?」
ゴドー「わからないから聞いてるんだよ」
ウラジミール「 取り敢えず来てくれよ」
ゴドー「取り敢えずでなんて行けないよ。行く気にならないと」
ウラジミール「……」
ゴドー「……悪かったよ。電話切るよ」
ウラジミール「切ってどうなる?」
ゴドー「どうもならない」
ウラジミール「俺は?」
ゴドー「知らない。元気にしててくれ」
ウラジミール「元気に? どうやって?」
ゴドー「また、電話するから」
ウラジミール「その電話は今から行くとかそういう?」
ゴドー「そういうのじゃ……ないかもな」
ウラジミール「その間俺は?」
ゴドー「だから普通にしててくれよ」
ウラジミール「でも普通にしてるためにはさ……着替えくらいしてくれるとか……出かける素振りくらいはさ」
ゴドー「同じ話だろ?」
ウラジミール「同じ話なんだよ。でも、なにも解決してないんだよ」
ゴドー「……わかったよ」
ウラジミール「なにが?」
ゴドー「考えてみる」
ウラジミール「なにを?」

と、聞いた時には電話が切れているようだ。

ウラジミールは……立っている。
もう自信に満ちた表情はどこにもない。

(続く)
posted by 土田英生 at 02:02| 京都 ☀| 遊び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月19日

そろそろ限界。

男1 パンチョっていうのは……その……あれ……呼び名?

 三人の顔色が変わる。

女2 まずい。本当にまずいですよ。
男2 お前、自分がパンチョだってことすら分からないの?
女1 ね? 変でしょ? 明らかにおかしいよね?
男1 待って。ちょっと待って。考えさせて……考えさせてよ。あれ? あ……あああ!
女1 どうしたんですか?
男1 そっか……そうか……。
男2 (女1に)なんか思い出して来たんじゃないか。
女1 (男1に)そうなんですか?
男1 うん……。

 見守る三人。

男1 あ……そうか……そうだったんだよな。

* * * *


 ……ああ、もう駄目だね。
 何がそうだったのか……分からない。
 誰か分かる人がいたら教えて下さい。
posted by 土田英生 at 00:02| 京都 ☀| 遊び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月15日

やっぱり思いつきは思いつきだ。

* * * *


男1 はあ? これ……この服は……。

 男1は驚いて女1の顔を見る。

女1 そうです。 
男1 ……私は男性なんですけど。
女1 ええ。
男1 これ……女性モノですよね? だってこれ……スカートですもんね……。
女1 そうですよ。だってあなたがそれを用意しろって要求したんじゃないですか。だから昨日必死で探してきたんですよ。
男1 え? あの……本当に訳が分からないんですけど。
女1 冗談はやめて下さい。
男1 冗談じゃなくって……。
女1 とにかく早くして下さいよ。皆さん待ってるんですから。
男1 これに着替える?
女1 はい。
男1 皆さんが待ってる?
女1 驚きましたよ。来ないから覗きに来たら……まだパジャマで座ってるんですから。
男1 本当に分からないんです。え? 皆さんって誰ですか?
女1 え……。
男1 というか……あなたは?
女1 はあ? 
男1 あなたは……誰なんでしょうか?
女1 (笑って)待って下さいよ。私? 私が誰かって聞いてるんですか?
男1 ええ……。

 女1は心配そうな表情になる。

女1 本当に聞いてるんですか?
男1 ええ……。
女1 私が分からない?
男1 です……ねえ。

 女1はしばらく黙って男1を見ているが突然、

女1 (後に)ちょっと、誰か……誰か来て! おかしいの。
男1 え? 誰を……?
女1 (叫ぶように)来てよ! 早く! おかしいのよ。

 外でガヤガヤと声がして男2と女2が顔を出す。

男2 ……どうしたの?
女2 あれ、まだパジャマで座ってるの。
女1 そんなことよりさ……私のことも分からないみたいなの。
女2 はあ?
男2 え? (笑いながら男1に)パンチョ。おい、パンチョ。早くしろよ。
男1 パンチョ?
男2 うん。
男1 パンチョって……何?
男2 パ、パンチョ……お前……。

 三人は顔を見合わせる。

女1 でしょ? ずっとこの調子なの。
女2 確かに……おかしいですよね。
男1 待って……パンチョって何?
女2 ……自分のことも分からないんですか?
女1 みたいねえ。
男2 (男1に)おい、ふざけてる訳じゃないよな、パンチョ。
男1 ……パンチョって僕のこと?
男2 ふざけるなよ。
男1 ふざけてなんかないんですけど……。
女1 (男2達に)とにかく中止しよ。こんなことやってる場合じゃないもん。
男1 待って、待って。説明して。説明してくれたら分かるかも知れないし。
三人 ……。

 三人はなにも言わない。

男1 え? 僕は……。
男2 お前は……パンチョだろ。
男1 パンチョっていうのは……その……あれ……呼び名?

 三人の顔色が変わる。

女2 まずい。本当にまずいですよ。

* * * *


 昨日の夜、気まぐれに書き始めた会話。
 無構想でアドリブで続けて行く戯曲。
 もしかしたら面白いものになってしまうのではないかと淡い期待をした。
 しかし……やっぱり思いつきは思いつきだ。
 ああ、遊びとはいえ書き直したい。考えて構成したい。
posted by 土田英生 at 16:13| 京都 ☁| 遊び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

思いつき

 このブログも結構長い間続いている。
 しかしいつからか個人的な愚痴しか書かなくなってしまっている。
 これではいけない。
 で、さっき思いつきでカテゴリに「遊び」というのを付け加えてみた。
 別にレジャーについて書こうというのではない。
 アドリブで何か作品を書いてみようと思ったのだ。
 しかし真剣な作品だと思われたら困る。なんせアドリブの思いつきで書くのだから。
 という訳で「遊び」にした。

 まあ、一応、劇作家ということになっているので戯曲形式で書いてみよう。
 しかし一切構成などを考えずに適当に書き、詰まったらそこでやめる。
 そして気が向いたらその続きを書く。
 すぐに飽きてやめるかも知れない。
 逆に盛り上がってしまって長編戯曲になってしまうかも知れない。
 
 場所は……どうしよう……まずはどこだか分からない空間にしておいた方がいいね。書いているうちに限定されて来るかも知れないし。
 登場人物は……これも適当に男1とかにして進めて行こう。

* * * *


第一場

 なにもない場所。
 男1がイスに座っている。
 天井を黙って見つめている。
 と、ドアが開く。
 女1が顔を出す。

男1 ……。

 黙って女1を見る。

女1 あの……時間ですけど。
男1 はあ?
女1 時間です。
男1 時間?
女1 はい。というか……もう過ぎてるんですよね、5分も。
男1 ああ……だから……え? 何の時間なんですか?
女1 えええ? ええええ?

 女1は驚く。

女1 あなた……(笑って)何を言ってるんです? 時間なんですよ、だから早く。
男1 ……。
女1 困るんです。早く着替えて下さい。
男1 着替える? 何にですか?
女1 クローゼットに入ってますから。一番上にある服に早く着替えて下さい。

 男1は怪訝そうな顔をして動かない。

女1 早く! いい加減にして下さい! 着替えて!

 男1はその剣幕に押されて立ち上がる。そしてクローゼットを開ける。

男1 はあ? これ……この服は……。

 男1は驚いて女1の顔を見る。

女1 そうです。 

* * * *


 ……すでに詰まってしまった。
 服は何だったんだろうと考えてしまったので……ここで今日はやめる。

 ……っていうか……続きそうもない予感満載だ。
 でも、まあ、気が向いたら続きを書いてみよう。
posted by 土田英生 at 01:56| 京都 ☔| 遊び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする