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MONO代表・土田英生のブログです

2017年09月02日

行き来の悩み

 やっと一段落着いた。
 いや、実際には締切を過ぎて終わってないものもあるので、本当はダメなのだけれど、今日はもう限界だ。

 今は東京。
 明日は朝から移動して広島。
 明後日の夜に京都。
 
 だから本当はもう眠らないといけない。
 けれど、いろいろと考えて眠れないのでこれを書いている。

 広島はアステールプラザの演劇学校をする為だけれど、とにかく私は京都⇆東京という移動が多い。
 これには小さな悩みがある。
 移動しなければいけない日が、ゴミの日じゃなかったりする。
 するとゴミも出せない。
 洗濯も前日に終わらせられるとは限らない。
 それに、服だって一々たくさんはもって移動していられない。
 そうなのだ。
 いろいろと困る。

 だから大体は似たようなそれぞれ京都と東京にある。
 レザークラフトの道具も両方にある。
 服も似たようなものがあったりする。
 それでこの前は混乱した。

IMG_6973.jpg

 
 この二着のパンツ。
 こうして写真で見ると全然違うのだが、実際には色はどちらも紺で、しかも裏地が同じ柄だ。
 多分、東京と京都にそれぞれあったはずなのだが、いつの間にか東京に両方来ていた。
 しかし、私は気づいていなかった。
 全く同じものだと思っていたのだ。

 ある時、落ちそうになったので紐を締めようと思ったら……紐がなかった。
 「あれ? 勘違いしてるのか? 紐はなかったんだっけ?」
 その時はそう思った。
 
 ある日、いつもより長く感じた。
 短パンだと思っていたら七部丈になっていた。
 「あれ? 長いな……」と、思ったら紐があった。

 自分がおかしくなったんだと思っていた。
 けれど、解明した。似た物が二着あっただけだ。

 とにかく行き来が頻繁にあることはとても厄介だ。

 そして……なぜか今、突然、忙しくなった。
 去年もそうだった。
 夏は暇だったのに秋から宮崎に書き下ろした「板子乗降臨」、小説「プログラム」、MONO「ハテノウタ」、NHKドラマ「この世にたやすい仕事はない」の執筆が重なって大騒ぎだった。
 
 そして……。
 今年もそうなりそうな予感だ。
 MONO特別企画「怠惰なマネキン」、来年のMONO本公演「隣の芝生も。」、まだ詳細は明かせないが連続ドラマ、新しく出す予定の小説、そして来年の夏に書き下ろす舞台……。考えただけで「うわー」という気分だ。

 けれどどれも大事だしね。
 ちなみに来年のMONOの公演のタイトルを確認も取らずにさらっと書いてしまった。
 9月には発表になると言っていたし……。
 これも構想だけ立っているのだが、MONOにしては大掛かりで面白いものになると思う。

 ドラマは……大好きな人たちとの仕事だ。
 この前、一回目の打合わせをしたのだが、もう楽しくて仕方なかった。
 何より私を褒めて持ち上げてくれるんだよね、この人たちは。
 猿もおだてれば木に登るが、私は猿以上に登れる自信がある。

 さっきは京都と東京の行き来のことを書いたが、人間関係の行き来もとても大事で、そして難しい。
 
 MONO特別企画「怠惰なマネキン」の準備稽古も始まっている。
 ここでも私はとてもそのことに頭を悩ませている。
 出演する5人は私より随分と年齢が下だ。
 けれどとにかく対等にやりたいと思っている。だから私が間違ったら注意してくれれば聞くし、私も思ったことは言う。

 けれど。

 人は褒められば褒め返したくなるし、貶されれば言い返したくなる。
 それが人間というもんだ。
 ただ、私は演出もしている。
 ある役者が伸びるかどうか……技術もさることながら、その人の人間性やコミュニケーション能力も大きく作用する。私は彼ら彼女らを見る立場なので、そのことに気づく。
 だからそれを分かってもらいたい。
 けれど、その伝え方。これが難しい。
 批判めいた言い方をしてしまえば、その相手も反発してしまう。私に対して「お前だってダメなことあるだろう」という気分になってしまう。
 
 そういう勝ち負けを越えたところで理解してもらいたい。
 それには私はまだまだ未熟だな。
 ついつい腹も立ったりするし。

 この三日間の準備稽古では色々なことを試させてもらった。

 
DSC00547.jpg


 これは設定エチュードの写真。
 大村わたると高橋明日香。
 この稽古の日は……明日香さん、舞台が終わった翌日だ。
 わたる君も27日までやっていたしね。

IMG_7026.jpg
 
 
 これは今日の休憩中。
 左から石丸奈菜美、渡辺啓太、立川茜。
 ……なんでこんなに表情が怖いんだろ?

 とにかく行き来は大変だね。

 明日は行かないといけないし、眠ろう。
 
posted by 土田英生 at 04:24| 東京 ☔| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月27日

ハート

 5年ぶりのENBUゼミだった。木曜日1コマ、土曜日2コマで終了。
 合計7時間半なので、じっくりとは出来なかったけど、ダイジェスト的に一通りのことをやった。

 ずっと気になっていることだが、「台詞を喋ろう」「表現しよう」という役者さんが多すぎる気がする。だからそれをいかに排除するかに力点を置いたプログラムにした。
 
 皆から呑もうと誘ってもらったので、少しだけ一緒に行った。

 色々と話した。
 皆、これからのことに希望と不安を抱いている。アドバイスしたかったが、無責任はことは言えない。先のことなど誰にも分からないし、私自身、えらそうに何か言える立場でもないのだ。
 いや、随分と言いかけたけど。
 途中でまずいと思って自戒した。
 私は元々、油断すると語ってしまうタイプなのだ。語りながら自己確認をしようとする困った癖がある。
 もっとも嫌いなヤツだ。

 私は人の相談によく乗る方だと思うし、実際、わりと頻繁に皆からSOSがくる。

 しかし、その事実に私が救済されているのだ。
 優しさなどではなく、自分の為だ。
 私は欲深いし、煩悩の塊だしね。

 時々、そのことに気がついてとても嫌な気持ちになる。

 自分の言葉を信じてもらうことはとても気持ちがいい。
 作品を創る動機だって、このことと無縁ではないと思う。

 けれど、そうしたことから離れて言葉を発してみたい。

 今日、友達を励まそうとして色々と言葉を並べてみた。
 自己確認の道具にはしないと決め、相手の為だけに言葉を発しようと努力してみた。
 なんだか言葉だけが哀しく舞っていた。
 喋りながら、私は勝手に傷ついた。
 まだまだ未熟者だ。
 
 台本を書いている時、常に効果を計りながら台詞を並べる。
 観客にどう届くかばかりを気にしながら書いている。
 ここで笑い、ここで事情を説明し、ここで、ここで、ここで……。

 けれど、時折、無心でページを進めている時がある。
 何かに書かされている気分に陥る。
 その部分はほとんど手直しせずに済む。

 まあ、滅多にそんなことはないんだけどねえ。
 
 ジーンズを履いたらポケットから紙のカタマリが出てきた。
 ポケットに紙を入れたまま洗濯したんだよね。
 元はなんだったんだろ?
 微妙なハート形をしてるな、これ。

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posted by 土田英生 at 03:20| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月25日

全く変わっていない人

 Wさんと最初に会ったのは2001年。
 だから16年前だ。
 MONOの公演「約三十の嘘」をシアタートラムで上演していた時。
 その終演後だった。

 楽屋に突然、背の高い人がやってきた。

「××テレビのWと言います。いやあ、君、面白いねえ。ちょっと話そう……と言いながらさ、俺、ちょっと今日は時間ないんだけどね」
 
 その人はいきなり勢いよく喋った。

 ……MONOは東京公演を定期化させて2年くらい経ち、私自身もアルバイト生活から抜け出し、外部への作品提供をし始めた時期だ。劇団M.O.P.に「遠州の葬儀屋」、G2プロデュースに「いつわりとクロワッサン」、宮本亜門さんのパルコミュージカルに「BOYS TIME」を書いた。そして文学座に「崩れた石垣、のぼる鮭たち」劇団青年座に「悔しい女」を書くことが決まっていた。
 やっと劇作家の仲間入りが出来たと喜んでいた頃だ。舞台だけをやっていくつもりでいたし、映像の仕事にも興味はあったけれど自分には無縁のものだと思っていた。

 終演後は、とあるテレビ局の映画制作の人と約束があった。
 実現はまだまだ先だけど、いずれ映画を一緒にやりましょうと言ってくれていた女性だ。

 待ち合わせ場所であるカフェに向かった。
 と……なぜか隣にWさんも一緒に座っている。

「いやあ、彼女とは同じ局だからさ、偶然いてびっくりしてねえ。で、聞いたら今日は土田さんと喋るっていうもんだからさ、いや、時間ないんで、俺はすぐにいなくなるけど、ちょっとだけでもと思って」

 結局、それからWさんがほとんど喋った。
 最初はやたらめったら褒めてくれ、それから「ここが弱いんだよ」などと勢いよく語って帰って行った。
 映画制作のSさんとはほとんど何も話せなかった。

 それから一ヶ月後。
 公演が終わって京都にいると、いきなりWさんから電話がかかってきた。そして翌日には京都までやってきた。その行動の早さにも驚いたが、Wさんから聞いた話の内容にさらに驚いた。
 草g剛さんのリーディングドラマの作と演出をしてくれという話だった。

 知ったばかりの私にいきなり頼むなんて大丈夫なのかと、こっちが不安になった。
 しかし、Wさんは恩に着せる風でもなく、まるで当然だというように「なんか面白いアイデアない?」とあっけらかんと聞いてくる。そして内容について打ち合わせを始める。

 結果、私は「ヴォイス」という、椿姫を題材にした朗読劇を書いて演出させてもらった。一緒にツアーも回った。Wさんに会って半年後のことだ。

 とにかく決断の早い人だった。

 同じ年、私は初めて地上波の連続ドラマを書くことになった。
 プロデューサーは当然Wさん。
 「天才! 柳沢教授の生活」というドラマだった。
 今でもとても気に入っているドラマだ。MONOの金替君も初めてのレギュラー出演をしている。
 DVD化されていないので今は観られない……と、思う。
 
 それからしばらく経って、Wさんから会いたいと連絡をもらった。
 会ってみるとまたしてもいきなり言った。
 
「北海道にさ、面白い奴がいるんだよ。一回さ、土田君と会わせたいと思ってるんだよ」

 それが……“大泉洋”のことだった。
 で、結局、それが後々「おかしなふたり」という洋ちゃん主演のドラマにつながった。
 
 しばらくWさんと会わなかった。
 その頃になると、私は他局のドラマなども書くようになっていた。
 劇団活動も含め、かなり忙しくなっていた。

 そんな時。
 再びWさんから電話がかかってきた。

 リリーフランキーさんの「東京タワー」をドラマ化するという話だった。
 電話口のWさんは興奮気味に言った。

「演出だれがすると思う? 久世さんだよ。やりたいだろ? で、俺、脚本に土田君を推薦したんだよ」

 久世さんは私にとっても憧れの人だった。
 舞い上がるような気持ちだった。
 もちろんやりたい。
 けれど、私はスケジュールが詰まっていた。どうしても無理だった。

「え? これを断るの? ダメだよ。俺さ、推薦しちゃったんだよ。俺はどうするの? 困るでしょう?」

 書くことになった。

 けれど。
 ここがWさんの面白いところなのだが……。
 初稿を書き終え、本打ちをしていた時だ。
 リップサービスだろうとは思うけど、久世さんがいきなり言った。

「土田君と出会わせてくれてありがとう」

 私は嬉しかった。あの久世さんがそんなことを……。
 笑みを堪えきれない。
 私はWさんを見た。
 
 しかし……彼は狐につままれたような表情で久世さんを見つめていた。
 そして私を指さしてこう言ったのだ。

「え? それ……こいつのことですか?」

 おいおい。
 推薦してくれたのはあなたではないのか、と私は思った。

 それを最後に一緒に仕事をすることはなくなった。
 いや、正確に言えば、一緒にやりかけた仕事は何度かあった。
 けれど実現しなかったり、それからWさんの部署が変わったりしたこともあって、段々と会うこともなくなった。
 時々、ふと思い出しては喋りたいなあと思ったりしていたが、なかなか叶わなかった。

 月日は流れた。

 で……。

 この前の「きゅうりの花」。

 お客さんのリストを確認していると……Wさんの名前があった。

 え?
 
 やはりWさんは勢いよく楽屋にやってきた。
 
「いやあ、やってるねえ。相変わらず、ええ? いや、俺さ、前に偶然、ブログを読んだのよ。普段、全然読まないんだけどね。そしたらさ、土田英生がなんか世の中に対して怒っててさあ。『お、これは、まだやってるなあ』と思ってねえ。で、観に来たのよ。一回、会って色々相談しようよ」

 そしてやはり嵐のように去って行った。

 ……で、今日、会った。

 本当に、本当に……出会った頃と全く変わってなかった。
 相変わらずモチベーションは高いし、私に対して失礼なことも平気で言う。

 けれど、そこには創作に対する愛が溢れていた。

 なんだか妙に幸せな気分になった。
 Wさんもまだまだやってる。

 私もやらないとね。
posted by 土田英生 at 04:30| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする