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MONO代表・土田英生のブログです

2016年11月24日

刺激

 今日は劇作家協会関西支部のイベント『劇作バトル!』。
 会場は大阪だ。
 朝、下北沢から移動。

 それにしても先月あたりからかなりウロウロしているな。
 東京→大阪→東京→群馬→東京→坂出→東京→広島→東京→京都→奈良→宮崎→東京→姫路→東京→大阪→京都……今はここだ。

 あまりに不規則なせいか、なんだか食欲などがおかしい。
 この前、姫路から東京に移動した時もそうだった。
 一睡もせずに6時代の新幹線に乗り、妙にお腹が空いていた私は但馬牛の牛めし弁当を買った。そして食べたら思いの外美味しかった。
 ちょうと食べ終わった時だ。
 前に座っていた女性が、立ち上がって伸びをした。
 そして振り向いた。
 どういう訳だか長い間目が合った。
 と、私は無意識に「ああ、美味しかった」と彼女に向かって言ってしまった。
 そういえば、今日も朝から焼肉弁当を食べた。
 
 このイベントは去年が最初で、前回はイキウメの前川知大君の『語る室』だった。
 今年はヨーロッパ企画の上田誠君。
 取り上げさせてもらった戯曲は『月とスイートスポット』だ。
 これは上演も私は観ている。

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 最初に前半30分くらいのリーディング。
 横山拓也君が演出して、関西で活躍している役者さんたちが読んだ。
 それから……私と上田君でトークだ。
 彼のことはわかっているつもりになっていたが、話せば話すほど、自分との違いが明確になっていく。
 しかし、そういう書き方もあるのかと勉強になった。
 
 こういう企画は何より私にとって刺激になる。
 他人の書いたものを何回も読むし、そして話して理解も深まり、私の視野は広がる。
 お得だ。
 随分と前のことになるが、『劇作解体新書』というイベントをやらせてもらった時もそうだった。
 あの時も大変なメンバーだったしね。敬称略するが、小林賢太郎、長塚圭史、倉持裕、ケラリーノ・サンドロヴィッチ。
 
 まあ、そうした刺激を自作に生かさないとね。
 情報公開されたので一応宣伝。
 
 MONO公演『ハテノウタ』……これについては改めて。
 
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posted by 土田英生 at 03:32| 京都 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月17日

出会った二人の女性

 姫路のホテルにいる。
 明日は早い。
 なのでベッドに入った……けれど、眠れない。
 分かってはいる。
 こういう時はじっとしていればいい。
 けれど、私は……落ち着きがない。
 それでも30分以上は頑張った。

 結局、起きだしてコンビニに行ってしまった。
 ウイスキーを買ってきた。
 ちょっとだけ飲んで眠ろうという作戦だ。アーモンドとチョコレートはある。
 
 ……どうでもいいことを書いて眠ろう。
 よし、今日、私と出会った二人の女性についてだ。


 姫路までの新幹線は比較的空いていた。
 私はA席だった。
 つまり3列席の一番窓側だ。
 BもCも空席で誰もいない。
 だからのんびりだ。
 品川駅で買ったシュウマイ弁当が崎陽軒のではなかったことに驚き、しかし食べてみたら予想より美味しくて喜び、食べたら眠たくなったので30分くらい眠り、起きてから車内販売でコーヒーを買い、ノートを広げた。
 
 MONOの新作の人物相関図を書いた。
 時々、新幹線が揺れるので、関係があったらだめな二人が線でつながってしまったりしたが、それでも結構はかどった。こうなったら姫路に着くまでにこれは完成させようと思った。
 相関図が決まると、途端に話は進むのだ。

 名古屋に着いても隣には誰も乗ってこない。
 考えるのに疲れて、喫煙コーナーに行こうと思った……その時だ。
 車掌さんが「ここになります」と女性を案内してきた。
 スーツケースに、鞄が一つ、それにパンパンに膨らんだエコバックと、さらにお土産っぽい紙袋を持っている。彼女はC席だ。
 私は「上にあげるの手伝いましょうか?」
 と、声をかけた。
 
「いや、ここに置くのでいいです」

 と、爽やかな笑顔でBに荷物を置き、さらにその前にスーツケースを置いた。
 私は完全にふさがれてしまった。
 まるで要塞ではないか。
 これでは私はトイレにも行けない。
 なので「あ、上あげますよ」
 もう一度言ってみた。
 彼女はまたしても爽やかに笑って、

「いいですよ。あ、通る時はおっしゃってください」

 なぜか笑顔がとても自然だ。

「いや、あの喫煙コーナーにも行ったりしますので」

 私はささやかな抵抗を試みた。
 と……。

「ああ、大丈夫です。私も行きますから」

 そう言って彼女は座っている。
 人間は不条理に弱い。
 私は意味がわからなかったが、とっさに「そうですか」と言って引き下がってしまった。
 どういうことだろう?
 喫煙コーナーに私が行きたい時、彼女も行くということなのか?
 私は諦めてじっとしていた。
 彼女はお弁当を食べ、そして……しっかり眠った。
 ああ。もう私はカゴの中の鳥だ。
 
 相関図を書くのは止まってしまった。
 アイデアが煮詰まった時、そのためのタバコなのだ。
 私は昔、禁煙に成功した。
 その状態で台本を1本書いた。内容が浅い気がした。
 まあ、それは言い訳だと思うが、タバコを吸いながら塾考する時間がなかったせいだと思った。
 
 新幹線は京都に着いた。
 まだ彼女は眠っている。
 
 ……諦めて私も眠った。

 目がさめると彼女はいなかった。
 荷物だけがあった。
 どうやら喫煙コーナーに行っているらしい。
 私は今なら出られると思ったが、どうも動く気がしなかった。
 かといって、もう書く気も起こらない。
 ……それにしても彼女は全く戻ってこない。
 戻ってきたのは新神戸をすぎてからだ。
 30分くらい経っている。
 そして戻ってくると、私を見てなぜか微笑んだ。
 さらに鞄をゴソゴソして、「食べてください」と、私にチョコレートを差し出した。
 とても自然な笑顔だった。
 ……。

 姫路に着いてホテルにチェックインする時、応対してくれたのはベテランの風情を醸し出している女性だった。
 しかし……声が小さいのだ。
 雰囲気だけは手馴れているのに何を言っているのか全く聞き取れない。

「……でございます……ふにゅふにゅ……」

 けれど、予想はできるので私は名前を記入したりした。

「……1階の……して……から……9時まで……す」

 聞こえないが、朝食について教えてくれているのだろう。
 私はうなずいていた。
 と……。

「あ、もうし訳……ん……ほん…………すか?」

 何かを私に聞いた。
「はい?」私は聞き返した。

「ほん……ちゅう……は……すか?」

「え?」と、も一度聞き返した。

「あの……本日……ちゅう……は……すか?」

 ……本当に聞こえないのだ。
 仕方ないので「あの、なんでしょうか?」と聞き返した。
 すると、今度は驚くような声で

「本日、駐車場のご利用はございますかっ?」

 と非常に大きな声で質問された。

「ありません!」と、つられて私は大きな声で答えてしまった。

 さっき……眠れずにベッドから出て、コンビニに行こうと思った。
 真っ暗なフロントには、あの彼女が一人でいた。
 大きなホテルなのでロビーも広い。
 暗い中、そこだけが明るい。

「コンビニ行ってくるだけなんですけど、カギ預けた方がいいですか?」

 と、私は通る時に聞いてみた。

「……す……は」

 聞き取れなかった。
 なので、そのまま通り過ぎようとしたら。

「あ、お預けに!」

 と、急に彼女の大きな声がロビーに響いた。
 私はなぜか動悸を激しくしながらカギを預けた。
 で、だ。
 コンビニに行っていた時間は5分だ。
 戻ってきて、私はフロントにいた彼女に会釈した。
 それは当然、カギをもらうためだ。
 彼女は笑って私を見た。
 私はうなずいた。
 ……カギが出てこない。

「いや、あの……」

 と、私が言うと、

「いかが……たか?」

 聞き取りにくいが、「いかがいたしましたか?」と聞いている。
 
「いやあ、カギを……」

 もちろんちゃんと言わなかった私も悪いが、流れからして当然覚えていてくれていると思ったのだ。
 さっきもいたのは私だけ。
 今も私だけだ。

「お……ごうを?」

 お部屋番号と言っているらしい。
 私が番号を告げると、なぜか困ったような顔になって、変な間があった。
 やがて気がついたようにカギを持ってきて、そして、なぜか、もう一度元に戻り、何かをじっと見てから、

「……ださまですか?」

 私はもう読心術が身につき初めていた。

「土田です!」

 私の声が暗いロビーに響き渡った。

 では眠る。
posted by 土田英生 at 02:07| 兵庫 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月16日

目的

 昨日、舞台を観ていて……どう表現したらいいのか、「ああ、わかる」という気がした。
 作者の現在の心情のようなものが、作品の至る所にこぼれ出ている気がして、その想いに勝手に共感した。もちろん作品はそんなことは描いていない。けれど、本当に私の自分勝手な解釈で「わかるなあ」という気がしたのだ。
 
 昨日観た劇団は人気があって、劇作家としてだって、誰もが羨むポジションを獲得している。だから周囲は「順風満帆じゃないの」という感じで眺めているんだと思う。けれど本人はきっと……。

 いや、私の勘違いかもしれないね。

 表現するにあたって、社会的な認知が拡大していくことは大きな支えだ。
 やっていたことが認められたという気分になれるし自信にもつながる。
 けれど、そのグラフは自分が思い描いているように右肩上がりには進まない。というより、あるところまで認められると、周囲はまた新しい才能を探して去って行く。「うわ、あなたが◯◯さんですか?」と、最初の頃に皆が集まってきた感じは全くなくなる。自分では進歩して行っているつもりだし、前よりも面白い作品を創っているのに、最初の頃のようには誰も騒いでくれない。少なくとも本人はそう感じる。

 隣の芝生はいつも青いし。
 
 京都でチヤホヤしてくれなくなったなあと寂しく思っていた頃、気が付いたら周囲の興味はヨーロッパ企画に行っていた。
 どんな劇団なんだろうと、「サマータイムマシーンブルース」をDVDで観た。
 実際に面白かった。こんな風に会話を創る劇団があるんだとショックを受けたのは確かだ。
 まあ、自信喪失もしたね。

 だけどねえ、自分で面白いと思うことをやり続けるしか道はないしね。

 まあ、そんなこんなで今でもやっている。
 上田君とも仲良くしている。そして……結構、話は合う。
 この前、偶然、飲み屋で会い、朝まで二人で話したりもした。

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 そんな上田君と、彼の劇作方法について話すイベントがある。
 劇作家協会関西支部の企画で『劇作バトル』というものだ。
 自然な感じで告知につなげられたな。
 詳しくは劇作家協会関西支部facebookページを見てください
 →

 そういえば……。

 京都でヨーロッパ企画が話題になり始めた頃、ネットで叩かれているという話を聞いた。
 その時、私は彼らと知り合いではなかったけれど、人から教えられて好奇心からそのページを読んだことがある。そこには妬みから出てくる様々な言葉が並べられていて、ひどいなあと思った。
 けれど、「いい加減なこと書くのやめろよ」と書いている人も中にはいた。
 私は「おお、お前、頑張れ」と思ってその人の文章を読んだ。
 しかしだ。
 なんと……その人の文章の最後に……「どうせこれって、MONOの人たちがヨーロッパ企画の人気に嫉妬して悪口を広めてるんでしょ」と、いうようなことが書かれていた。
 おいおい、と思った。
 さっきまで応援してあげてたのに。
 なんだか裏切られた気分だ。

 と……。
 さらにそれに対する弁護をしている人が出てきた。
「土田さんはそんな人じゃないと思いますよ」と、書いてくれていた。
 もう私はそのコメントをした人が大好きになった。
 愛を伝えたいとすら思った。
 けれど、続きのコメントをみてまたしても驚いた。
 「お、本人登場」と書かれていた。
 おいおいおいおいおい、と、さっきよりも「おい」の回数を増やしながら思った。
 私が愛したその人は「違いますよ」と否定するのだが、「必死さが怪しい」などと、どんどん私だということになっていってしまっている。
 『本人はここに登場だ!』と、思わず書き込みそうになった。
 
 完全に話がそれた。

 大事なことは、常に自分の興味を失わず、謙虚に創るしかないということだよね。

 今日、ちょっと試したいことがあったので、知り合いの役者に集まってもらってワークショップをした。
 こういう作業はとても大事だね。
 役者と言葉の距離を試したいと思って、わざわざ一晩かけてかなり長い台詞を書き、それをやってもらった。
 結構な分量の一人台詞だ。これまでに私が書いたこともない内容だった。読むと10分以上あった。

 ……全然、自分の予想通りにはならなかった。
 そのことで逆に考えが変わったりした。
 そうか、そういうことなのか。
 役者の皆には申し訳ないと思ったけど、これこそワークショップだしね。
 ワークショップ=工房なんだから、作品に直接繋がらなくても、色々と試してみればいいのだ。なにより、私は発見があったし、そのことで次に試してみたいこともはっきりした。
 参加者の皆に言いたい。
 あの台本だけは捨ててくださいね。
 
 こうして、試行錯誤を重ね、それが次の作品につながっていけばいい。
 目的がなくなることが一番怖い。
 目標など何もないけど、やりたいことはまだまだある。
 ああ、幸せだ。
 今日の昼間はMONOの次回公演『ハテノウタ』のチラシの打合せだった。
 これも楽しみだ。
 作品については情報が公開されてから書こう。
 
 風邪も治らず、頭痛も続いているけど、それくらいがちょうどいい気がした。
 ワークショップの場でも必要以上にはしゃがないで済んだし。
 けれど、また朝になってしまったよ。
 今日は姫路に移動。
 準備して眠ろう。
posted by 土田英生 at 05:19| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする