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MONO代表・土田英生のブログです

2017年08月27日

ハート

 5年ぶりのENBUゼミだった。木曜日1コマ、土曜日2コマで終了。
 合計7時間半なので、じっくりとは出来なかったけど、ダイジェスト的に一通りのことをやった。

 ずっと気になっていることだが、「台詞を喋ろう」「表現しよう」という役者さんが多すぎる気がする。だからそれをいかに排除するかに力点を置いたプログラムにした。
 
 皆から呑もうと誘ってもらったので、少しだけ一緒に行った。

 色々と話した。
 皆、これからのことに希望と不安を抱いている。アドバイスしたかったが、無責任はことは言えない。先のことなど誰にも分からないし、私自身、えらそうに何か言える立場でもないのだ。
 いや、随分と言いかけたけど。
 途中でまずいと思って自戒した。
 私は元々、油断すると語ってしまうタイプなのだ。語りながら自己確認をしようとする困った癖がある。
 もっとも嫌いなヤツだ。

 私は人の相談によく乗る方だと思うし、実際、わりと頻繁に皆からSOSがくる。

 しかし、その事実に私が救済されているのだ。
 優しさなどではなく、自分の為だ。
 私は欲深いし、煩悩の塊だしね。

 時々、そのことに気がついてとても嫌な気持ちになる。

 自分の言葉を信じてもらうことはとても気持ちがいい。
 作品を創る動機だって、このことと無縁ではないと思う。

 けれど、そうしたことから離れて言葉を発してみたい。

 今日、友達を励まそうとして色々と言葉を並べてみた。
 自己確認の道具にはしないと決め、相手の為だけに言葉を発しようと努力してみた。
 なんだか言葉だけが哀しく舞っていた。
 喋りながら、私は勝手に傷ついた。
 まだまだ未熟者だ。
 
 台本を書いている時、常に効果を計りながら台詞を並べる。
 観客にどう届くかばかりを気にしながら書いている。
 ここで笑い、ここで事情を説明し、ここで、ここで、ここで……。

 けれど、時折、無心でページを進めている時がある。
 何かに書かされている気分に陥る。
 その部分はほとんど手直しせずに済む。

 まあ、滅多にそんなことはないんだけどねえ。
 
 ジーンズを履いたらポケットから紙のカタマリが出てきた。
 ポケットに紙を入れたまま洗濯したんだよね。
 元はなんだったんだろ?
 微妙なハート形をしてるな、これ。

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posted by 土田英生 at 03:20| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月25日

全く変わっていない人

 Wさんと最初に会ったのは2001年。
 だから16年前だ。
 MONOの公演「約三十の嘘」をシアタートラムで上演していた時。
 その終演後だった。

 楽屋に突然、背の高い人がやってきた。

「××テレビのWと言います。いやあ、君、面白いねえ。ちょっと話そう……と言いながらさ、俺、ちょっと今日は時間ないんだけどね」
 
 その人はいきなり勢いよく喋った。

 ……MONOは東京公演を定期化させて2年くらい経ち、私自身もアルバイト生活から抜け出し、外部への作品提供をし始めた時期だ。劇団M.O.P.に「遠州の葬儀屋」、G2プロデュースに「いつわりとクロワッサン」、宮本亜門さんのパルコミュージカルに「BOYS TIME」を書いた。そして文学座に「崩れた石垣、のぼる鮭たち」劇団青年座に「悔しい女」を書くことが決まっていた。
 やっと劇作家の仲間入りが出来たと喜んでいた頃だ。舞台だけをやっていくつもりでいたし、映像の仕事にも興味はあったけれど自分には無縁のものだと思っていた。

 終演後は、とあるテレビ局の映画制作の人と約束があった。
 実現はまだまだ先だけど、いずれ映画を一緒にやりましょうと言ってくれていた女性だ。

 待ち合わせ場所であるカフェに向かった。
 と……なぜか隣にWさんも一緒に座っている。

「いやあ、彼女とは同じ局だからさ、偶然いてびっくりしてねえ。で、聞いたら今日は土田さんと喋るっていうもんだからさ、いや、時間ないんで、俺はすぐにいなくなるけど、ちょっとだけでもと思って」

 結局、それからWさんがほとんど喋った。
 最初はやたらめったら褒めてくれ、それから「ここが弱いんだよ」などと勢いよく語って帰って行った。
 映画制作のSさんとはほとんど何も話せなかった。

 それから一ヶ月後。
 公演が終わって京都にいると、いきなりWさんから電話がかかってきた。そして翌日には京都までやってきた。その行動の早さにも驚いたが、Wさんから聞いた話の内容にさらに驚いた。
 草g剛さんのリーディングドラマの作と演出をしてくれという話だった。

 知ったばかりの私にいきなり頼むなんて大丈夫なのかと、こっちが不安になった。
 しかし、Wさんは恩に着せる風でもなく、まるで当然だというように「なんか面白いアイデアない?」とあっけらかんと聞いてくる。そして内容について打ち合わせを始める。

 結果、私は「ヴォイス」という、椿姫を題材にした朗読劇を書いて演出させてもらった。一緒にツアーも回った。Wさんに会って半年後のことだ。

 とにかく決断の早い人だった。

 同じ年、私は初めて地上波の連続ドラマを書くことになった。
 プロデューサーは当然Wさん。
 「天才! 柳沢教授の生活」というドラマだった。
 今でもとても気に入っているドラマだ。MONOの金替君も初めてのレギュラー出演をしている。
 DVD化されていないので今は観られない……と、思う。
 
 それからしばらく経って、Wさんから会いたいと連絡をもらった。
 会ってみるとまたしてもいきなり言った。
 
「北海道にさ、面白い奴がいるんだよ。一回さ、土田君と会わせたいと思ってるんだよ」

 それが……“大泉洋”のことだった。
 で、結局、それが後々「おかしなふたり」という洋ちゃん主演のドラマにつながった。
 
 しばらくWさんと会わなかった。
 その頃になると、私は他局のドラマなども書くようになっていた。
 劇団活動も含め、かなり忙しくなっていた。

 そんな時。
 再びWさんから電話がかかってきた。

 リリーフランキーさんの「東京タワー」をドラマ化するという話だった。
 電話口のWさんは興奮気味に言った。

「演出だれがすると思う? 久世さんだよ。やりたいだろ? で、俺、脚本に土田君を推薦したんだよ」

 久世さんは私にとっても憧れの人だった。
 舞い上がるような気持ちだった。
 もちろんやりたい。
 けれど、私はスケジュールが詰まっていた。どうしても無理だった。

「え? これを断るの? ダメだよ。俺さ、推薦しちゃったんだよ。俺はどうするの? 困るでしょう?」

 書くことになった。

 けれど。
 ここがWさんの面白いところなのだが……。
 初稿を書き終え、本打ちをしていた時だ。
 リップサービスだろうとは思うけど、久世さんがいきなり言った。

「土田君と出会わせてくれてありがとう」

 私は嬉しかった。あの久世さんがそんなことを……。
 笑みを堪えきれない。
 私はWさんを見た。
 
 しかし……彼は狐につままれたような表情で久世さんを見つめていた。
 そして私を指さしてこう言ったのだ。

「え? それ……こいつのことですか?」

 おいおい。
 推薦してくれたのはあなたではないのか、と私は思った。

 それを最後に一緒に仕事をすることはなくなった。
 いや、正確に言えば、一緒にやりかけた仕事は何度かあった。
 けれど実現しなかったり、それからWさんの部署が変わったりしたこともあって、段々と会うこともなくなった。
 時々、ふと思い出しては喋りたいなあと思ったりしていたが、なかなか叶わなかった。

 月日は流れた。

 で……。

 この前の「きゅうりの花」。

 お客さんのリストを確認していると……Wさんの名前があった。

 え?
 
 やはりWさんは勢いよく楽屋にやってきた。
 
「いやあ、やってるねえ。相変わらず、ええ? いや、俺さ、前に偶然、ブログを読んだのよ。普段、全然読まないんだけどね。そしたらさ、土田英生がなんか世の中に対して怒っててさあ。『お、これは、まだやってるなあ』と思ってねえ。で、観に来たのよ。一回、会って色々相談しようよ」

 そしてやはり嵐のように去って行った。

 ……で、今日、会った。

 本当に、本当に……出会った頃と全く変わってなかった。
 相変わらずモチベーションは高いし、私に対して失礼なことも平気で言う。

 けれど、そこには創作に対する愛が溢れていた。

 なんだか妙に幸せな気分になった。
 Wさんもまだまだやってる。

 私もやらないとね。
posted by 土田英生 at 04:30| 東京 ☀| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月22日

自称牧師と怠惰なマネキン

 酔って帰ってきてウトウトしてたんだけど、なぜか突然パッと目が覚めたので更新。

 今は下北沢にいる。

 19日。京都から広島に向かい、この3年続けてやらせてもらっているアステール演劇学校「俳優コース」を2日間やった。今年は顔なじみもいれば、初めましての人もいるが、比較的若い人が多い。
 10月に試演会がある。
 この構想もかたまりつつある。

 20日の終了後、そのまま新幹線に乗って東京へ移動してきた。
 ちなみに新幹線車内では隣の人と小さな争いを繰り返した。
 なんか……本当にトトロそっくりの人だった。
 まさに「隣のトトロ」だった。
 この争いについても書きたいが、今日は他に書かなければいけないエピソードがある。
 「隣の牧師さん」についてだ。

 28日に花組芝居「いろは四谷怪談」にゲスト出演させてもらうことになったので、今日は稽古を覗きに行かせてもらった。サイトはこちらです!→

 通し稽古を見せてもらうことになり、始まるまで少し時間があった。
 なのでちょっと書き物をしようとカフェに向かった。

 私はノートを広げた。
 隣のテーブルには若い女性と少し年上の男性が向かい合って座っていた。
 ノートに作品の構想などを書き出したその時だった。

「いやあ、それは悪魔の所業なんですよ」

 という男性の声が聞こえてきた。
 “悪魔の所業”というワードを日常会話で使っているのを初めて聞いた。
 私のペンはぴったり止まった。
 そこからは……もう全神経が隣のテーブルに向かった。
 
「そいつは悪魔に取り憑かれていると言わざるを得ませんね」

 女性は小さくうなずいている。
 しばらく聞いていると、男性は牧師さんなんだと分かった。
 会話の中で「僕ら牧師はですね」と言っていたので間違いない。だから悪魔などという例えが出てくるのだろう。そして女性は、牧師さんに相談しているということらしい。

 話から推察したところ、どうやら女性は旦那と別れたばかり。
 その旦那がとんでもない男で、やっと逃れられて安心している。けれど、その旦那がそのままではあまりに理不尽なので、なんとかして反省させたいというようなことだ。

「神は見ています。見ていますから大丈夫なんです」

 牧師さんは言う。
 
「そりゃ見てはくれているんだと思いますが、あの人はきっとあのままですよ」

 女性はどうやら具体的な方策が欲しいようだ。

「大丈夫です。神は見ていますから」
「ということは……そのうち、あの人に何か罰などがくだるんでしょうか?」
「本当にそうしたいのなら……簡単です」
「簡単?」
「はい。祈るんです」
「私が?」
「私も祈ってあげますよ。あのね、神は、意外と残酷なことを平気でしますから」
「どういうことでしょうか?」

 私も女性と全く同じ気持ちだった。
 どういうことなのだ?
 祈ればその元旦那に何かしらの罰がくだるということだろうか?

「殺せますよ、私が祈れば」

 衝撃な的な一言が、洒落た店内に響き渡った。
 私はコーヒーを危うくこぼすところだった。

 おいおいおい。
 
「え? あの人をですか? いや、私は別に死んで欲しいなんて思ってないんです」

 女性は慌てて言う。
 私も全く女性と同意見だ。
 殺さなくたって、ねえ?

「けど、本当なんです。実は僕の場合もそうでした。うちの父が……」

 その後は、もうとんでもない会話が繰り広げられた。

 この自称牧師は論理も倫理もめちゃくちゃなのだ。
 しかも、女性の話は聞かず、すぐに「僕の場合はですね」と自分の話を披露する。
 そして最後には「祈ればいいんです」という言葉だけでまとめてしまう。
 
 しかしだ。

 これは……ここに具体的に全部書くのはやめよう。
 必死にメモは取って来た。けれど……本当に面白かったので、作品に使いたい気持ちが湧いてきた。

 そうしよう。

 次回のMONO特別企画「怠惰なマネキン」の中に多分出てくると思う。

 隣のトトロも牧師の話もやめて、公演について書こう。

 
1707_monospecial_omote.jpg


 11月に新宿の小さなスペースで公演する。
 ちなみに出演者の一人である立川茜さんは、一昨年、広島でのアステールの演劇学校《俳優コース》に参加していた。昨年、大学を出て東京にやってきて、一緒にワークシップなどを続け、出てもらうことになった。

IMG_6674.jpg

 
 この写真だと一番右端にいるのが立川さんだ。
 
 それ以外の4人は3年前の「俳優育成講座《東京》」の参加者だ。4人は土田英生セレクションvol.3「算段兄弟」にも出てくれている。
 ついでに紹介しよう。
 立川さんの隣が渡辺啓太くん。
 その隣、真ん中に写っているのが高橋明日香さん。彼女は6年前に出会ってから9回も一緒に芝居をやっている。その隣が大村わたる君。
 
 あ、そうか。
 23日から高橋、大村の2人はそれぞれ別の舞台に出ている。
 これも紹介しておかないとね。
 興味のある方はぜひ。

 高橋明日香さんはaibook「疾走」→
 大村わたるくんはKUNIO「夏の夜の夢」→

 で、左端が石丸奈菜美さん。彼女とは「歪(ibitsu)」でも2回一緒にやった。二十代とは思えない昭和の香りをまとった女優さんだ。
 
 とにかく、この5人で芝居を創る。
 この1年、このメンバーでワークショップを続けてきた。
 共通言語もできてきたし、それぞれのメンバーの課題もはっきりしてきた。私がこれまで大事にしてきた呼吸や自意識のことだけでなく、最近は新しいことを色々試している。
 毎回発見があり、演技についてこれまでと違った回路ができつつある。
 
 これはクローズドでやっている。だから私もお金はもらっていない。前にこの話を人にしたら「ボランティアですか」と聞かれたことがあるが、ここに大きな誤解があるよね。
 
 いつからか、「ワークショップ」を講座的な意味合いで使う人が増えた。
 もちろんそれもあるんだと思う。
 実際、私もそうしたワークショップはたくさんやってるし。
 けれど、本来、ワークショップは「工房」という意味で、何かを試す場だ。むしろ、劇作家、演出家にとっての勉強の場なのだ。本当なら私が皆にお金を払って開かなくてはいけない。実際、そうしている人もいるしね。

 新作などを書く時の大きなヒントをもらっている。これがMONOの本公演などにつながって行くのだ。
 
 話がそれた。
 もっと公演のことを具体的に書きたかったけど、また改めよう。

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posted by 土田英生 at 04:00| 東京 ☁| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする